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「慢性リンパ性白血病の生存率」はご存知ですか?症状も解説!【医師監修】

 公開日:2024/03/18
「慢性リンパ性白血病の生存率」はご存知ですか?症状も解説!【医師監修】

慢性リンパ性白血病(CLL)は血液のがんです。大人が罹患する白血病の中では、中年以降の男性に発症する割合が高い病気です。

元々欧米での発症率が高い病気で、日本では少ない傾向がありました。しかし、最近では日本でも慢性リンパ性白血病(CLL)の発症が増加しています。

日本でも患者数が増えている慢性リンパ性白血病(CLL)とは、一体どのような病気なのでしょうか。

そこで本記事では、慢性リンパ性白血病(CLL)の生存率・症状・予後について詳しく解説します。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

慢性リンパ性白血病(CLL)とは?

慢性リンパ性白血病(CLL)は血液の細胞であるBリンパ球が、がん化することで発症する病気です。Bリンパ球は白血球を構成する要素の1つで、本来人間を感染から守るための働きをします。
しかし、このBリンパ球が勝手に異常増殖すると、慢性リンパ性白血病(CLL)を引き起こします。慢性リンパ性白血病(CLL)は自覚症状が出にくい病気で、健康診断などで血液検査を受けた際に、白血球数の多さから病気の発見に繋がるケースが多いです。
この病気は発症してもゆっくりと進行するのが特徴で、進行のスピードは年単位です。一般的に悪性度が低く進行速度が遅いため、治療で病気の勢いをコントロールできる場合もあります。
ただ、まれに増大速度の速い「アグレッシブリンパ腫」に移行する場合があります。慢性リンパ性白血病(CLL)はがんの進行が低リスクと診断されると、すぐに治療を開始しないケースがある病気です。
治療開始のタイミングは、がんの進行速度・病状の有無・白血球細胞の状態を総合的にみて、決定されます。

慢性リンパ性白血病(CLL)の生存率

慢性リンパ性白血病(CLL)の生存率は、病期・症状・年齢によって異なりますが、一般的に生存期間は1.5〜10年以上です。この病気は完全治癒を目指すのではなく、病気をコントロールしながら治療を続けます。
また、症状が低リスクの場合や初期段階の場合、治療は行わずに経過観察をするケースもあります。そのため、無治療で5〜20年生存するケースもみられるのです。
慢性リンパ性白血病(CLL)の生存率としては、治療を受けた患者さんの5年生存率は83%で、無治療の場合でも67%というデータもあります。
病状や健康状態などの個人差に左右されるものの、適切なタイミングで治療を開始し病状をコントロールすれば、生存期間が長くなる可能性がある病気です。

慢性リンパ性白血病の症状

慢性リンパ性白血病は自覚症状が出にくい病気で、健康診断などの血液検査で初めて罹患に気づくケースがほとんどでしょう。
そこでここからは、慢性リンパ性白血病を患っているかどうかの目安となる症状について説明します。

初期にはほとんど症状がみられない

慢性リンパ性白血病は、初期の段階ではほとんど症状がみられません。
そのため先述したように、健康診断などの血液検査で白血球数の異常から、罹患に気づく場合が多いです。

貧血

貧血の症状が現れる場合もあります。慢性リンパ性白血病にかかると、血液中の正常な白血球の数が減ります。
そのため、赤血球や血小板の数も減り、貧血の発生に繋がるのです。

リンパ節の腫れ

病状が進行するとリンパ節にも影響を及ぼし、腫れとなって現れます。
リンパ節の腫れは痛みがないものの、1期以降にみられる症状で、リスクとしては中リスクまで進行しています。

体重減少

体重減少は慢性リンパ性白血病にみられる症状の1つです。特に、半年で10%以上の体重減少がみられた場合、治療開始の目安となります。

倦怠感

慢性リンパ性白血病のがん細胞が増え、正常な血液細胞が減ることで倦怠感が引き起こされます。この病気による倦怠感は、日常生活や仕事に支障をきたすほどです。

大量の寝汗

風邪や感染症に罹っていないにもかかわらず、大量の寝汗が出るのは、慢性リンパ性白血病が疑われます。
なお、感染症に罹っていなくても、38度以上の熱が2週間以上続く場合も慢性リンパ性白血病の可能性があります。

慢性リンパ性白血病の予後について

白血病と聞くと、病状が急激に進行したり、いずれ死に至るのではないかと不安を持ったりするかもしれません。
しかし、慢性リンパ性白血病は罹患しても生存期間が長い病気です。また、適切な診断に沿った治療を受けることで、病状をコントロールできます。
そのため、予後は患者さんの病状によって違いが生じやすいです。ここでは、慢性リンパ性白血病の予後について解説します。

病期による違い

慢性リンパ性白血病は病期によって予後に違いがみられます。次に示すのは、病期ごとの生存年数です。

  • 0期(低リスク)10年以上
  • 1〜2期(中間リスク)7年
  • 3〜4期(高リスク)1.5〜3年

上記の生存年数はそれぞれの病期の中央値のため、個人差があります。なお、0期での治療は、生存期間に変化を及ぼさないため、ほとんどが経過観察となります。
1〜2期もがんの進行が遅いため、0期と同様に経過観察となるでしょう。
また、慢性リンパ性白血病は中高年以降に罹患するケースが多くみられます。病期によっては経過観察のまま、寿命を全うする人もいます。

患者さんの全身の状態による違い

一般的に慢性リンパ性白血病は、予後が良好な傾向にあります。しかし、患者さんの全身状態によって違いがみられます。
特に、高リスクの病期では抗がん剤を使用するため、治療により免疫力が落ちるので感染症に注意が必要です。
なお、染色体異常(11qや17pなど)や遺伝子変異は、予後悪化に関係する因子です。

慢性リンパ性白血病の生存率についてよくある質問

ここまで慢性リンパ性白血病の特徴・生存率・症状・予後などを紹介しました。ここでは「慢性リンパ性白血病の生存率」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

慢性リンパ性白血病で生存率が下がるのはどのようなケースですか?

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

慢性リンパ性白血病で生存率が下がるのは、高リスクの病期に病状が進行している場合です。また、病期が高リスクの場合、リンパ節や脾臓腫の増大を伴ってびまん性大細胞型リンパ腫に転化するケースがあります。

慢性リンパ性白血病は完治しますか?

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

慢性リンパ性白血病は病状の進行が遅く、初期段階では治療の必要もない病気ではあります。しかし、完治は難しいです。経過観察や適切なタイミングで治療を受け、病状のコントロールを続ける必要があります。
本記事でも説明したように治療を開始する目安があり、血液細胞の数・血小板の減少・貧血の有無など、定期的な検査が必要です。

編集部まとめ

慢性リンパ性白血病は病状の進行が遅く、初期段階では治療も行われない病気です。予後も良好で生存年数が長いのが特徴です。

病期や病状によっては、治療開始を急ぐ必要がないでしょう。しかし、完治しない病気のため、病状をコントロールしながら長期間に及ぶ治療を続ける必要があります。

急激な進行がないとはいえ、病状が進むと自己免疫疾患の合併などが発症する恐れがあるため、油断はできません。

罹患に気づきにくい病気ですが、定期的に健康診断などで血液検査を受け、血液の状態をチェックすることをおすすめします。

慢性リンパ性白血病と関連する病気

慢性リンパ性白血病と関連する病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

  • 感染症
  • 自己免疫性溶血性貧血
  • 自己免疫性血小板減少症
  • 自己免疫性疾患

慢性リンパ性白血病は、正常な白血球が減少するため感染症にかかりやすくなります。また、赤血球や血小板を攻撃する自己抗体が出現し、免疫性溶血性貧血や自己免疫性血小板減少症などを合併する場合があります。
免疫力が落ちやすい状態なため、風邪などの感染予防対策や健康状態を良好に保つ工夫を、日頃から取り入れると良いでしょう。

慢性リンパ性白血病と関連する症状

慢性リンパ性白血病と関連する症状は8個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • リンパ節の腫れ
  • 肝臓・脾臓の腫れ
  • 体重減少
  • 大量の寝汗
  • 貧血
  • 出血

上記は慢性リンパ性白血病と関連する症状であるものの、ほかの病気や体調不良によっても現れる場合があります。特に、発熱・体重減少・倦怠感・寝汗などは風邪の症状とも似ています。
しかし、これらは身近な症状でありながらも、慢性リンパ性白血病においては治療を開始するかどうかの判断基準にもなる症状です。これらの症状が気になったら、一度医療機関を受診すると良いでしょう。

この記事の監修医師