「骨肉腫になりやすい人」の特徴はご存知ですか?症状や原因も医師が徹底解説!
骨肉腫になりやすい人の特徴とは?Medical DOC監修医が骨肉腫になりやすい人の特徴・症状・原因・治療法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
相原 大和(緑風荘病院)
目次 -INDEX-
「骨肉腫」とは?
骨肉腫とは、骨を形成するがんの中で最も頻度が高いがんです。しかし、がんの中では非常に稀な病気であり、日本国内で発生する人数は1年間に200人程度です。10代に発生しやすい病気ですが、約3割は40歳以上でも起こります。
骨肉腫に対する治療に化学療法が導入されるようになり、初診時に遠隔転移がない症例では5年生存率は70~80%程度と改善しています。しかし、遠隔転移がある症例では依然として予後不良です。このため、骨肉腫を疑ったときに早めに受診をすることが非常に重要といえます。骨肉腫を疑ったときに、骨肉腫の症状や特徴を理解して早めに受診をするようにしましょう。
骨肉腫になりやすい人の特徴
骨肉腫の原因については、未だにはっきりとしていません。現在のところ分かっている危険因子について解説いたします。
年齢・性別
骨肉腫は成長期に発生しやすい病気です。おおよそ6割が10~20歳代で発症します。また、男女比では1.5:1とやや男性に起こりやすいです。この時期に起こる痛みとして、成長痛があります。なかなか区別はつきづらいですが、成長痛だろうと放置せず、同じ場所が長く痛むときには一度整形外科を受診したほうが良いでしょう。
遺伝子変異
骨肉腫の発生には遺伝子の変異が原因の一つであると考えられています。がん抑制遺伝子の一種であるRB1遺伝子やTP53遺伝子の変異が確認されています。RB1遺伝子の変異によっておこる網膜芽細胞腫の患者さんでは骨肉腫の発生が起こりやすいです。また、TP53遺伝子の変異が原因のLi-Fraumen症候群の患者でも骨肉腫の発生が起こりやすいことが知られています。
放射線療法の後
放射線治療を行った部位から骨肉腫が発生することがあります。放射線治療を行った部位が痛む場合には注意が必要です。
骨Paget病
骨の代謝異常により起こる病気で、骨がもろくなります。欧米では多い病気ですが、日本では非常に頻度が少ないです。骨Paget病の患者さんでは骨の変形した部位から骨肉腫が発生しやすいと報告されています。骨Paget病の患者さんでは、痛みと変形が元々あるため定期的に整形外科を受診して経過を見てもらうことが大切です。また、普段と違う痛みが出た場合には主治医に相談をしましょう。
骨肉腫の代表的な症状
痛み
骨肉腫の発生した部位の痛みが持続します。膝の上下の骨(大腿骨と脛骨の膝関節側)に発生することが約6割と最も多いです。次に上腕骨の肩に近い部分、大腿骨の股関節に近い部分など骨端線と言われる骨の成長が早い部分で起こりやすいです。10歳代の成長期では成長に伴い成長痛が起こることもあり、痛みが起こっても違いが分かりにくいかもしれません。初めは運動時や歩行時のみ痛むことが多いですが、次第に安静にしていても痛みが出てきます。同じ部分の痛みが長く続く場合には、整形外科を受診しましょう。
腫れ
骨肉腫ができた部位に痛みと同時に腫れがみられることが多いです。膝周囲や肩周囲の痛みと腫脹が長く持続する場合には注意をしましょう。痛みや腫れはケガなど他の病気でも起こり得るため、放置しがちです。長く持続する場合には整形外科で相談をしましょう。
骨折
腫瘍ができた部位がもろくなり、骨折することもあります。これを病的骨折といいます。転んだり、つまずいたりといった軽い力でも骨折を生じることで初めて骨肉腫が見つかることもあります。普段であればなんともないような転倒やつまずきで急激な痛みが出た場合、病的骨折かもしれません。早急に整形外科を受診しましょう。
骨肉腫の主な原因
骨肉腫の原因ははっきりしていません。今まででわかっている原因について以下に解説します。
遺伝子異常
がん抑制遺伝子の一つである網膜芽細胞腫遺伝子(RB1遺伝子)やTP53遺伝子の変異が骨肉腫の発生に関与していることが分かってきました。多くの患者さんでの骨肉腫ができた遺伝的背景ははっきりしていませんが、網膜芽細胞腫にかかった患者さんの二次がんや、家族性にがんが多く発生するLi-Fraumen症候群で骨肉腫が多く発生することが知られています。
放射線療法後
がんによる放射線療法を受けた部位では骨肉腫の発生率が高まります。40歳以上の骨肉腫の症例では放射線療法による二次性骨肉腫と考えられる方もいます。放射線療法を以前受けた部位が痛む場合には、整形外科で相談をしましょう。
Paget病
Paget病は骨の代謝異常によって、骨の一部で異常に亢進した骨吸収と過剰な骨形成が起こった結果骨の腫大・変形が起こり、骨がもろくなる病気です。欧米では頻度が高いですが、日本では非常に稀な病気です。Paget病を発症した骨は、まれに骨肉腫などの悪性疾患が発生することがあります。
骨肉腫の主な治療法(手術方法など)
骨肉腫の治療は切除可能か切除不能か(多発転移など)で分けて考えます。
現在の骨肉腫に対する切除可能例での標準治療は、手術療法と手術前後の化学療法を組み合わせた治療となります。
広範切除術
骨肉腫に対しての治療は、広範切除術(腫瘍細胞を残さないように、腫瘍を正常な組織で包むように一塊として切除すること)が基本です。適切な広範切除術が行われた場合には、切断術とほぼ同等の治療効果を得ることができます。
手術で切除した骨の部分には人工関節を入れたり、一旦切除した後にがんを殺す処置をした骨を元の位置にもどしたりして再建をします。また、自分の骨を別の部分から取って、移植をすることもあります。
現在は、骨肉腫に対する患肢温存術は90%程度と多くなっていますが、骨肉腫が重要な神経や血管を巻き込んでいる場合には、切断をしなければならないこともあります。
また、骨肉腫は骨端線のそばでできることが多いため、手術で残すことは難しく、膝の骨端線をとってしまうことで成長期が終わると、手術をしていない足との成長の差が出てしまい生活に支障が出ることもあります。このため、切断をして義足を使う方が生活しやすい場合もあります。
患者さんごとに病気の状態は違います。まず主治医に今後の治療方針を確認しましょう。
化学療法
骨肉腫は1970年以前、手術だけで治療されていました。この治療法では、90%近くの再発があり予後は5年生存率で5~10%と極めて悪い状態でした。しかし、現在では手術前後に化学療法を行うことで、再発率が下がり、生存率が上がっています。
通常2か月から3か月にわたる化学療法の後に手術を行い、さらに数か月化学療法を追加することが標準治療となっています。
化学療法の併用により、初診時に遠隔転移がない症例では、5年生存率が70~80%程度と大きく改善しました。しかし、初診時にすでに遠隔転移がある症例や治療後に再発や転移をきたした症例では依然として予後が悪いです。このため、早めに発見をすることがとても大切です。
「骨肉腫になりやすい人」についてよくある質問
ここまで骨肉腫になりやすい人の特徴を紹介しました。ここでは「骨肉腫になりやすい人」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
骨肉腫を発症すると体のどこが痛くなりますか?
相原 大和 医師
骨肉腫の好発部位は膝の周囲の大腿骨と脛骨、上腕骨の肩に近い部位です。特に膝の周囲に約6割発生するため、この付近の痛みが持続する場合には気をつけましょう。
また、中高年の骨肉腫では脊椎や骨盤に発生することもあります。膝周囲などの好発部位ではなくとも、痛みが持続する場合には整形外科を受診して相談しましょう。
骨肉腫の好発年齢を教えてください。
相原 大和 医師
骨肉腫の約6割は10~20歳代に発症します。若い人で好発しますが、40歳以上も約3割の発症があるため、骨の痛みが長引く場合には注意が必要です。
編集部まとめ 骨の痛みが持続する場合には整形外科へ
骨肉腫の頻度は稀ですが、若者で多く起こる病気です。成長期でもあるため成長痛と考えてしまい、受診まで時間がかかることもあります。骨肉腫は転移のない早期であれば現在は予後が改善していますが、転移のある進行した病期ではいまだに予後が悪いです。早めに診断をし、治療を開始することが非常に大切です。痛みがなかなか治らない場合には、一度整形外科を受診して相談をしてみましょう。
「骨肉腫」と関連する病気
「骨肉腫」と関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
骨の痛みというだけでは良性のものから悪性のものまでさまざまあり、なかなか区別がつきません。同じ場所が持続して痛む場合には骨肉腫の可能性もあります。一度整形外科を受診して相談してみましょう。
「骨肉腫」と関連する症状
「骨肉腫」と関連している、似ている症状は4個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 骨の痛み
- 腫れ、しこり
- 関節の動かしずらさ
- 歩行障害(足を引きずる)
骨肉腫の症状としては、骨の痛みが最も多くみられます。これに伴い上のような症状が見られることがあります。痛みのみでは、病気を区別することは難しいです。長く同じ場所が痛む場合には、早めに整形外科を受診することをお勧めします。