「卵巣がん」を発症しやすい「年齢層」はご存知ですか?症状についても解説!
卵巣がんは、初期にはほとんど自覚症状がないため早期発見が難しい女性特有の病気です。卵巣がんは、気付いたときには進行しているケースがほとんどで、婦人科がんのなかでも死亡率が高いのが特徴です。
卵巣がんは近年発症する人が増えていますが、厚生労働省が推進するがん検診の対象に入っていないため、認識されていない方もいるでしょう。
卵巣がんを早期に発見するためには、自ら定期的に婦人科を受診して、卵巣のチェックを受けることが大切です。
本記事では、卵巣がんを発症しやすい年齢や症状、予防法を解説します。卵巣がんの適切な知識が身に付き、ご自身の健康を守る一助にしていただければ幸いです。
監修医師:
阿部 一也(医師)
目次 -INDEX-
卵巣がんとは?
卵巣がんは、子宮の両隣にある卵巣に発生する悪性の腫瘍です。卵巣がんは発生する組織によって、上皮性腫瘍・胚細胞腫瘍・性索間質性腫瘍に分けられ、卵巣を覆っている上皮から発生する上皮性腫瘍が90%を占めています。
卵巣は通常うずら卵くらいの大きさですが、卵巣がんになると腫大し、大きいものでは30cmを超える場合もあります。初期の自覚症状が乏しいため早期発見が難しく、卵巣がある程度腫大し腹水が貯留するなど、がんが進行してから症状が現れて診断されるケースが少なくありません。
卵巣がんの原因は、排卵回数が多いことが挙げられます。月経不順・肥満・子宮内膜症・家族に卵巣がんになった人がいる・高タンパク・高脂質の食事などもリスク要因です。
食生活の欧米化や出産年齢の高齢化などライフスタイルの変化などにより、国内の卵巣がん患者さんは増加傾向にあります。年間に約13,000人の女性が罹患し、約5,000人が亡くなっている現状です。
卵巣がんは婦人科がんのなかでは診断された人の約半数が亡くなっている、女性にとって注意が必要ながんのひとつです。
卵巣がんを発症しやすい年齢
卵巣がんは上皮性腫瘍・胚細胞腫瘍・性索間質性腫瘍に分けられ、なかでも90%以上を占めるのが上皮性腫瘍です。
年齢が上がるにしたがって卵巣がんのリスクは高くなり、死亡率も増加傾向にあります。発症しやすい年齢をみてみましょう。
発症しやすい年齢は40~60代
卵巣がんは、40~60歳代の女性に多くみられる病気です。発症には排卵の回数が関係しており、排卵が多い程リスクが高くなると考えられています。卵巣がんの約90%は卵巣を覆う被膜に発生する上皮性腫瘍です。卵巣は成熟した卵子を周期的に排卵する器官で、毎月の排卵のたびに傷つき、次の排卵までに修復を繰り返します。
卵巣被膜の傷つきと修復の繰り返しが、遺伝子の情報伝達ミスを起こし、がん化につながるといわれています。
閉経を迎える40~60歳代の方は排卵回数が多いと考えられるため、卵巣がんを発症しやすいです。
高齢になる程死亡率が高くなる傾向にある
卵巣がんの死亡率は50歳以降増加し、高齢になる程高くなる傾向にあります。がんになりやすい大きな理由は高齢化の影響であると考えられています。
卵巣がんの症状
卵巣がんは、初期の段階では自覚症状がほとんどありません。みつかったときには進行しているケースも少なくないため、以下のような症状がみられた場合には早めに婦人科を受診しましょう。
初期は無症状のことが多い
卵巣は骨盤の奥にあるため、がんが進行するまで症状が現れにくく、初期は無症状のことがほとんどです。卵巣腫瘍があっても月経は順調なことが多く、子宮がん検診や内科などを受診した際に偶然発見されることも少なくありません。
下腹部にしこりができる
本来はうずら卵くらいの大きさの卵巣が、こぶし大くらいまで大きくなると、しこりとして感じるようになります。横になって下腹部を触ってみて硬いしこりが触れたら、卵巣がんの可能性があります。
服のウエストがきつく感じる
いつも着ているスカートやズボンがきつく感じる場合には、腫瘍によってウエストが大きくなっている可能性があります。
食欲が低下する
腹水で胃や腸が圧迫されると、すぐにお腹がいっぱいになったり、食べ物のとおりが悪くなったりして食欲低下がみられます。
お腹が前に突き出る
腫瘍が大きくなったり腹膜播種を引き起こしたりすると、がん細胞による炎症を和らげようとして腹腔内に腹水が溜まります。腹水が溜まると腹囲が増大し、臨月の妊婦のようにお腹が前に突き出ることがあります。
頻尿になる
腫瘍が大きくなったり腹水が溜まったりすると、膀胱が圧迫されて少しの尿でも尿意を感じ、トイレの回数が増えます。
便秘になる
大きくなった腫瘍が直腸を圧迫するため、便秘になる場合があります。
脚がむくむ
腫瘍が大きくなると、リンパ管の圧迫や血液循環の悪化により、脚がむくむことがあります。
卵巣がんの予防法
卵巣がんの予防法は確立されておらず、子宮頸がんのような予防ワクチンなどもないのが現状です。卵巣がんを防ぐには、若いときから低用量ピルを服用し、排卵を抑えるのが有効といわれています。
あわせて卵巣がん予防に重要なのは、婦人科の定期健診による早期発見・早期治療です。一般的な子宮がん検診では、内診と子宮頚部の細胞検査だけが行われることが少なくない現状です。まれに卵巣がんが発見されることもありますが、初期の卵巣がんの場合、内診だけでは見落としてしまう可能性があります。
卵巣がんを調べるには、経腟超音波検査やがんマーカーなど病院で行う婦人科の個別検診を受けることが重要です。卵巣がんは月単位で病変が変化する場合があるので、毎年の定期的な検診が早期発見につながります。
がんの発症には、食事・ストレス・喫煙・過度な飲酒・運動不足・肥満・免疫低下も関係しているといわれています。卵巣がんのリスクになる高脂質の食事を改善したり、リラックスできる時間を持ったりするなど、がんになりにくい体づくりを心がけましょう。
また、特定の遺伝子(BRCA1遺伝子・BRCA2遺伝子)に変異が認められた女性には、卵巣卵管の予防切除を行う場合があります。
卵巣がんの年齢についてよくある質問
ここまで卵巣がんを発症しやすい年齢・症状・予防法などを紹介しました。ここでは「卵巣がんと年齢」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
若い人でも卵巣がんになる可能性はありますか?
阿部 一也 医師
卵巣がんは上皮性腫瘍・胚細胞腫瘍・性索間質性腫瘍に分けられますが、胚細胞腫瘍は、主に10歳代の小中学生から20歳代の女性に発生します。ほとんどが良性の奇形腫ですが、まれに悪性腫瘍が発生します。卵巣がんの5%程度が悪性の胚細胞腫瘍です。卵巣がんは頻度の高い病気ではありませんが、若い女性にまったく無関係な病気ではありません。
卵巣がんは遺伝しますか?
阿部 一也 医師
近年、卵巣がんの約10%は遺伝が原因であることがわかってきました。遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)が有名で、主に乳がんの原因遺伝子(BRCA)の異常で発生するといわれています。親子や姉妹に若くして乳がんや卵巣がんになった人がいた場合は、注意が必要です。
編集部まとめ
卵巣がんは、初期症状がほとんどなく、早期発見が難しい病気です。
閉経を迎える40~60歳代の方の発症が少なくないのが特徴ですが、種類によっては若い人も卵巣がんになる可能性があります。
定期的に子宮がん検診を受けている方もおられると思いますが、視診や内診だけでは卵巣の状態を正確に判断するのは困難です。
ご自身の身体を守るためには、年に1回は卵巣の検査を受けることが重要です。まずは卵巣がんをよく理解し、気になる症状がみられたらすぐに婦人科を受診しましょう。
卵巣がんと関連する病気
「卵巣がん」と関連する病気は2個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
卵巣と子宮をつなぐ管に発生する卵管がんと、腹部の内側を覆う組織のがんである腹膜腫瘍は、卵巣がんと同様に検診が確立していません。また、腹腔内の病気であるため早期では症状が現れず、進行した段階で診断される特徴があります。診断や治療方法も卵巣がんと同じです。早期発見のためには、ご自身で定期的に検診を受けることが必要です。
卵巣がんと関連する症状
「卵巣がん」と関連する症状は6個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
卵巣がんの自覚症状は、加齢や閉経の影響によって起こる一般的な症状と似ているため、受診が遅れかなり進行してしまう可能性があります。症状だけで自己判断せず、定期的な検診を受けましょう。