「肺がんステージ3の平均余命」はどれくらい?症状・治療法も解説!【医師監修】
肺がんは喫煙者だけではなく、非喫煙者にも関係のある病気です。
喫煙者は減少傾向にありますが、2019年では126,548人と診断されており、2020年には75,585人が亡くなられています。
肺がんは早期発見が重要です。しかし、初期段階での特有の症状がなく、発見が難しいといわれています。
この記事では、肺がんステージ3の平均余命や生存率、あわせて症状や治療方法も解説していきます。ぜひ参考にしてください。
監修医師:
松本 学(きだ呼吸器・リハビリクリニック)
目次 -INDEX-
肺がんとは?
肺がんとは、言葉のとおり肺にがん細胞が発生する病気の総称です。これは気管支や肺胞の細胞が何かしらの原因により傷つけられ、がん細胞が発生することが多いとされています。
肺がんは大きく分類すると、気管支や肺の細胞から発生する原発性肺がんと、ほかの臓器に発生したがんが血液やリンパ節を通って肺にがんが転移する転移性肺がんの2種類です。さらに原発性肺がんのなかにも、非小細胞肺がんと小細胞肺がんがあり、肺がんの割合は非小細胞肺がんが80〜85%、小細胞肺がんが10〜15%を占めています。
肺がんの原因はさまざまですが、主にタバコや大気汚染などの有害物質である場合が多い傾向です。
非喫煙者の方と比較した際、喫煙者の方が肺がんになるリスクは、男性は4.8倍、女性は3.9倍に増加することがわかっています。喫煙年数、喫煙本数が多い程リスクは高くなるため、喫煙者の方は要注意です。
肺がんステージ3の平均余命と生存率
生存率とは、肺がんと診断されてから生存している人の割合を示す基準です。その生存率は肺がんのステージによって異なり、がんの大きさ・位置・広がりによってステージが決められます。
治療法の進歩や肺がんの早期発見により、生存率は向上しています。これらの数値はあくまで推定値であることを前提として、参考にしてみてください。
肺がんステージ3の平均余命
直近の肺がんステージ3の平均余命は3年で37.2%・5年で26.6%・10年で10.6%です。前回の統計と比較して生存率が延びていることがわかっていますが、年齢や性別によっても異なります。
肺がんステージ3の3年生存率
直近の非小細胞肺がんの3年生存率は39%、小細胞肺がんの生存率は25.4%となっており、どちらも前回の統計と比較して生存率が延びていることがわかっています。
3年生存率とは、「国民が必要な時に、自分に合った正しい情報を入手し、適切に治療や生活などに関する選択ができるよう、科学的根拠に基づく情報を迅速に提供するための体制を整備する」という背景から平成30年3月に閣議決定され、3年生存率が示されるようになりました。
肺がんステージ3の5年生存率
直近の非小細胞肺がんの5年生存率は28.2%、小細胞肺がんの生存率は16.3%となっており、どちらも前回の統計と比較して生存率が延びていることがわかっています。
5年生存率はがんのステージ・がんの位置・肺がんの種類・患者さんの全身状態などの要因によって影響されることがあります。
肺がんステージ3の10年生存率
直近の非小細胞肺がんの10年生存率は11.2%、小細胞肺がんの生存率は7.5%となっており、どちらも前回の統計と比較して生存率が延びています。しかし、5年生存率と比べるとはるかに生存率が低くなっていることがわかり、早期発見が重要であることが認識されます。
肺がんステージ3の症状
肺がんはステージ1と2の状態では初期症状がみられないケースが少なくありません。そして、進行して初めて症状がでることがあります。
また肺がん特有の症状はなく、症状のみで肺がんと判断することは不可能といわれています。医療機関へ受診し、検査を行い正確な診断を確定させることが重要です。
発熱
がんが肺やほかの臓器に転移すると、炎症や感染を引き起こし、熱が出ることがあります。発熱だけでは一般的な呼吸器疾患と症状が同じであるため、熱が5日以上下がらない場合は、近くの医療機関に受診するのが望ましいでしょう。
声のかすれ
声のかすれが起きる原因は、声帯を動かしている反回神経にがんが発生したり、リンパ節にがんが転移して神経を圧迫したりした場合などが挙げられます。この症状は、喉頭がんや声帯ポリープなどにもみられる症状です。
顔や首の腫れ
がんがリンパ節に転移している場合に、がんによって上大静脈が圧迫されて血液の戻りが悪化し、顔や首が腫れることがあります。上大静脈とは、上半身に流れた血液が心臓に戻るときに通過する太い血管のことを指します。
肺がんステージ3の治療方法
肺がんの治療方法は、がんのステージ・種類・発生位置・健康状態などで異なります。それらの状態に適した治療方法を基本に、ご本人の希望や年齢、生活環境などを含めて医師と検討していきます。
説明を理解し、ご自身が納得したうえで治療方法を決定していきましょう。そのためにも、医師との信頼関係を構築していくことが大切です。
手術療法
肺がんステージ3の状態での手術は肺の一部を切除することもあるのですが、完治ではなく症状を軽減し進行を遅らせることを目的としています。
肺がんの手術療法は患者さんのがんの状態と身体的負担により決定され、切除する範囲が異なります。肺がんの手術療法は下記の4種類です。
- 肺全摘術
- 肺葉切除
- 区域切除
- 楔状切除
上から順に切除する部分が増え、それに伴い肺活量を損なわれるため心肺機能や体力が低下します。ただし、肺がんステージ3のなかでも組織の型によっては完治を目的として手術を行うこともあります。
放射線療法
放射線療法は、手術を行える程の体力がない方や、手術ではがんを取り切るのが難しい方の場合に選択される治療方法です。
肺がんステージ3の状態での放射線療法は、症状の軽減と緩和、延命などを目的として行っています。医学的に手術が可能な方でも本人が希望しない場合には放射線療法を選択されることがあります。
化学療法
化学療法とは、体内にひろがったがん細胞に抗がん剤を使用する全身に対する治療方法です。がん細胞が増えるのを阻止し、死滅を促す役割があります。手術や放射線治療を行うことができない場合に選択されることが多いのですが、化学療法のみでの完治は難しいといわれています。
化学療法ではがんの縮小や進行を遅らせ、症状をやわらげる効果が期待できます。患者さんのがんの進行度や健康状態にあわせて、手術や放射線治療との併用か単独での治療かになります。
また、抗がん剤の投与量や投与期間についても個人差があるため理解したうえで慎重に検討しましょう。
肺がんステージ3の平均余命についてよくある質問
ここまで肺がんステージ3の平均余命・生存率・症状・治療法などを紹介しました。ここでは「肺がんステージ3の平均余命」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
肺がんステージ3の余命を延ばす方法はありますか?
松本 学(医師)
肺がんや治療による体への負担に対する回復力を向上させたり、残っている身体能力を維持・向上させたりするための方法として、リハビリテーションが挙げられます。主には、息切れにならない程度のウォーキングや胸部・手足の筋肉のストレッチなどの有酸素運動が有効的であるといわれています。また、肺がんの原因の多くはタバコであることから、禁煙は必須です。タバコをやめられない患者さんの場合、肺炎や心筋梗塞などの合併症リスクが高くなり、化学療法や放射線療法においても治療効果が低くなるといわれています。医師のもとで指導をしっかり受け、治療に専念していきましょう。
肺がんステージ3は完治できますか?
松本 学(医師)
肺がんステージ3での一般的な完治率は20〜40%といわれています。肺がんの治療成績は年々向上していますが、ステージが進んでいる程患者さんの生存率は低くなっており、完治しにくいことがわかっています。治療後の経過観察として5年間は定期的に受診して検査を受け、再発がないかどうかを調べていくのも重要です。治療終了後は体を動かす機会が減り、身体機能が低下するため、医師の指示のもと日常生活でも可能なトレーニングを行っていくのが望ましいでしょう。また、喫煙は再発する可能性が高いので、リスクを減らすためにも禁煙をしてください。
編集部まとめ
肺がんの種類はいくつかありますが、どの肺がんでもタバコが大きく関わっており、禁煙をするだけでもリスクを大きく減らせるといわれています。
肺がんは早期の段階では症状があらわれにくい病気です。見えないリスクを減らすために、喫煙している方はまず禁煙に向けて本数を減らしてみましょう。
また、肺がんはほかの病気の検査のなかで偶発的に発見されることもあります。喫煙の有無に限らず定期的に検診を受け、早期発見を心がけましょう。
肺がんと関連する病気
「肺がん」と関連している病気は6個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
肺の手術を行うと、上記の合併症や肺障害が発生する可能性が高いといわれています。特に喫煙者や年齢の高い人に多い傾向があります。少しでも合併症を予防するために、手術前や手術後に深呼吸の呼吸訓練をすることが大切です。
肺がんと関連する症状
「肺がん」と関連している、似ている症状は4個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
上記の症状は、風邪や肺炎などの呼吸器疾患の症状にもあらわれます。肺がん特有の症状がないため、発熱は5日以上、ほかの症状に関しては2週間以上続く場合近くの医療機関に受診することをおすすめします。血痰の症状がある場合は、気道が傷ついている可能性があるため速やかに受診してください。