「放射線治療中に食べてはいけないもの」はご存知ですか?医師が監修!
放射線治療中は吐き気・食欲不振・口内炎・食道炎などの影響で食事が摂れないことがあるでしょう。
そのため、放射線治療中は食べてはいけないもの、避けた方がよいものがあると知られています。
食事が十分に摂れない理由と食事を摂りやすくするポイント、よくある質問や放射線治療と関連する病気・症状などを解説しましょう。
この記事で放射線治療中の食事に対する理解を深め、症状の改善のお役に立てれば幸いです。ぜひ参考にしてみてください。
監修医師:
木村 香菜(医師)
目次 -INDEX-
放射線治療とは?
放射線治療とは、がんの部分に放射線をあてて治療する方法です。胸部X線撮影と同じように、痛みや熱を感じることはありません。
治療目的は完治をめざす場合と苦痛を和らげる場合とに分かれ、放射線治療だけで行われたり、手術や薬物療法と組み合わせて行われたりするときもあります。放射線治療では副作用が出ないように、あるいは副作用が極力小さくなるように細心の注意が払われています。
放射線治療中に食べてはいけないものはある?
放射線治療中に食べてはいけないものはあるのでしょうか?放射線治療中の食事を正しく理解するためにまず、控えた方がよい食品や調理方法などを解説します。
消化のよくないもの
腹部への放射線治療の場合には、放射線治療中は胃の中に食べ物が長く留まっていることで吐き気をもよおしたり、嘔吐により消化や呼吸の動きの低下が考えられます。胃の中に留まっている時間が短い炭水化物などの食べ物を中心に摂り、胃への負担を軽くすることがとても大切です。
繊維の多い野菜や脂質は控えましょう。きのこ類・こんにゃく・脂肪の多い肉は消化がよくない食品です。
刺激が強いもの
放射線治療中はお口の中に炎症があると塩分が刺激になる場合があります。できるだけ刺激が少ない食品を選びましょう。煮る・蒸す・ゆでる調理方法は消化もよく、胃への負担も少ないといわれています。以下は控えた方がよい刺激の強い食品と飲み物です。
- 熱い食品
- 辛い食品
- すっぱい食品
- 酸味の強いくだもの
- 甘みの強い飲み物
放射線治療中に食事が十分に摂れない理由
放射線治療では放射線照射の場所により、さまざまな副作用が出ることもあるでしょう。放射線治療中に食事が十分に摂れない理由を解説します。
口周辺への照射の場合口内炎ができるケースがあるため
放射線が照射された場所へ効果を発揮するため、照射部位で副作用が出ます。お口の中やのどの粘膜が荒れると、痛くてしみる・歯磨きやうがいができない・食事が摂れず栄養低下・炎症がひどくなり痛みが強くなるなどの症状が出るでしょう。
荒れたところに雑菌が入りこむと感染を起こしやすくなり、ますます荒れます。感染予防のため清浄・粘膜保護作用のあるうがい薬を使ってもよいでしょう。
舌やのどへの照射の場合味覚の変化が起こるケースがあるため
放射線治療後、多くはゆっくりと回復へ向かうでしょう。お口の中を清潔に保ち口内炎を悪化させないことで、味覚の変化を軽くできます。
水分補給で口内の乾燥を防いで歯磨き・うがい・アメをなめるのも効果的です。味覚変化の原因は以下のとおりです。
- 味を感じる味蕾細胞の変化
- 味覚に関する神経系の障害
- お口の中の乾燥
- 亜鉛欠乏症
- 心因性によるもの
- 口内の不潔
食道への照射の場合食道に潰瘍や炎症が生じるケースがあるため
正常な食道の一部が傷ついて炎症や潰瘍ができ、食物や水分を摂るときに痛みや違和感が出ることがあるでしょう。食事は心の健康にも影響します。
がん診断で将来を悲観したり、痛みが強かったりするときは食事を摂る気にもなれません。心が反応していることもあります。例えば、以前に抗がん剤で嘔吐がひどかった場合、その点滴を見るだけで吐き気をもよおす場合などです。
腹部への照射の場合大腸の下部や直腸に影響が出るケースがあるため
子宮や前立腺のがんの放射線治療では大腸下部や直腸が影響を受け、渋り腹のような下痢や血便がみられることがあります。胃や大腸のがんでは病状が進み、がんの一部がくずれ潰瘍ができると食欲がなくなったり痛みが強かったりするでしょう。
がんが腸をふさいで腸閉塞を起こし、がんが原因で腸に穴があくと激しい痛み・吐き気・嘔吐が生じ、食事は禁止されます。静脈栄養やチューブ栄養などの医学的処置が施されるでしょう。
放射線宿酔が起こるケースがあるため
吐き気・食欲不振・だるさ・頭痛などの症状を、放射線宿酔といいます。放射線治療の開始初日から数日の時期に出てくることがありますが、最初の頃だけです。
放射線治療中に食事を摂りやすくするポイント
無理のない食べ方・手軽に栄養補給できる食品・味付けの工夫など、放射線治療中に食事を摂りやすくするポイントやおすすめのメニューなどをご紹介します。
少量ずつ数回に分けて食べる
放射線治療中は無理せず気分よく食べられる量を小分けにし、よく噛んでゆっくりと食べましょう。少量ずつ飲み込むようにしてください。むせてしまうときは、汁気にとろみをつけるといいでしょう。
まずは少量でもおいしく楽しく食べられることが大切です。以下は口当たりやのどごしがよく胃腸にも優しい、エネルギー補給もできる、おすすめのメニューです。
- 茶碗蒸し
- 野菜のポタージュ
- くず湯
- パン粥
ドリンク・スープ・ゼリータイプの食品を活用する
手軽に栄養補給できるので体調不良時に用意するのもよいでしょう。少量で高エネルギーなものやたんぱく質・ビタミン・ミネラルを強化したものなど種類も豊富です。
食欲がなく食べにくいときは、食べたいものを食べたいときに、おいしく楽しく食べることを心がけてください。以下は市販や通信販売でも購入できる食品です。
- ドリンクタイプの濃厚流動食
- スープタイプの濃厚流動食
- ゼリータイプの栄養補助食品
味付けに工夫をする
放射線治療中は食べてはいけないものがあります。味覚障害があると味付けを濃くしがちですが、お口のなかに炎症があると塩分が刺激になります。
香りのある野菜やかつお・昆布の天然だしを使い、うす味でもおいしく食べられる工夫をしてみてください。食材1~2種類でシンプルな味付けにし、汁物は食べられることが多いので試しましょう。まったく味を感じない場合、食事の温度を人肌程度に下げてみてください。
放射線治療中に食べてはいけないものについてよくある質問
ここまで放射線治療中に食べてはいけないもの・食事のポイントなどを紹介しました。ここでは「放射線治療中に食べてはいけないもの」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
治療後どのくらいで普通の食事ができるようになりますか?
木村 香菜(医師)
放射線照射の場所によって異なりますが、食道がんでは多くの場合2~3週間で徐々によくなり、もとの食事に近づけていけるといわれます。治療によりつかえ感が出るようになったり、強い痛みが出たりすることで食事が困難となります。症状が辛いときには、食べやすいものを食べられるときに食べるようにしましょう。点滴で栄養を補うこともあります。栄養バランスのとれた食事にしましょう。
放射線治療中に控えた方がよい飲み物はありますか?
木村 香菜(医師)
以下は個別密封の製品を選びます。
- アイス
- シャーベット
- ゼリー
- プリン
以下の清涼飲料は開封後は冷蔵保存し、24時間を目安に破棄しましょう。
- 缶
- ペットボトル
- ブリックパック
編集部まとめ
この記事では放射線治療中に食べてはいけないもの、治療中の副作用や治療後の後遺症などを解説しました。
食事は人生の大きな楽しみの1つです。食事が十分に摂れないのは辛いですが、工夫次第で改善できる方法や選択肢が少なくありません。
少しずつ、食べたいものを食べたいときに、おいしく楽しく食べることを意識しましょう。
患者さんとご家族の人生においしく食べる喜びをもう一度得られるよう、この記事がお役に立てたら幸いです。
放射線治療と関連する病気
「放射線治療」と関連する病気は16個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
胃・結腸(直腸を除く大腸)・腎臓・卵巣・子宮体のがんなどは根治的治療を目的として放射線治療を行うことは、あまりありません。緩和的治療を目的とする場合はすべてのがんが対象となります。一部の良性病変も対象です。定期的な検診を行って早期発見と早期治療で寛解を目指しましょう。
放射線治療と関連する症状
「放射線治療」と関連している、似ている症状は7個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 放射線性皮膚炎
- 脱毛
- お口やのどの乾燥(ドライマウス)
- 全身の倦怠感
- 放射線肺炎
- 放射線性直腸炎
- 放射線性膀胱炎
放射線治療には複数のメリットがありますが、放射線照射による副作用や後遺症などデメリットもあります。副作用は照射場所のみ起こる特徴があり、照射場所以外の場所には原則として出ません。いつもとどこか違う、またはこれらの症状が長引いていると感じたなら、ぜひ早めに医療機関で受診してください。