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「放射線治療で治せる病気」はご存知ですか?治療の流れについても医師が解説!

 公開日:2024/06/28
「放射線治療で治せる病気」はご存知ですか?治療の流れについても医師が解説!

放射線治療で治せる病気とは?Medical DOC監修医が放射線治療で治せる病気・目的や治療の流れなどを解説します。

木村 香菜

監修医師
木村 香菜(医師)

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名古屋大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院や、がんセンターなどで放射線科一般・治療分野で勤務。その後、行政機関で、感染症対策等主査としても勤務。その際には、新型コロナウイルス感染症にも対応。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。

「放射線治療」とは?

放射線治療とは、手術療法、化学療法と並ぶ、がん治療の三本柱の一つです。
がんの部分に集中的に放射線を当てることで、まわりの正常な臓器や組織へのダメージを極力減らしつつ、がんを完全に治す(根治:こんち)ことを目指します。また、がんによる症状を和らげる(緩和:かんわ)ためにも用いられます。
一方、放射線治療は甲状腺眼症やケロイドといった、良性の疾患に対しても行われることがあります。
がん細胞は、遺伝子の異常があるために無秩序に分裂したり増殖したりするようになっています。その反面、正常な細胞と比較して遺伝子が傷つきやすく、修復しにくいという特徴もあります。放射線には、細胞の中のDNAを切断する作用があり、がん細胞にダメージを与えるのです。
使用される放射線は、X線や電子線、または陽子線や重粒子線などがあります。
放射線治療の最中、つまり放射線が体に当たっている際には、特に痛みやかゆみなどを感じることはありません。
副作用としては、治療中のものである急性期の副作用と、放射線治療が終わってから数ヶ月経ってから生じる晩期の副作用があります。具体的には、放射線を当てている部位の皮膚に赤みやヒリヒリ感が生じたり、頭髪などが抜けてしまったりすることがあります。晩期の副作用としては、肺炎や二次発がんといったものがあります。

放射線治療で治せる病気

放射線治療が、根治目的で行われる病気について解説していきます。
放射線治療のみの場合と、化学療法を組み合わせる化学放射線治療が行われる場合があります。

頭頸部のがん

頭頸部がんは、口腔、咽喉、喉頭など、頭と首の領域に発生するがんを指します。
喫煙やアルコールの摂取がリスク因子とされています。
耳鼻咽喉科や口腔外科で診断された後、放射線治療科で治療が行われます。
手術による治療が困難な場合や、がんが局所的に限定されている場合に根治的な放射線治療が選択されます。
特に、上咽頭がんという鼻の後ろと口の上部に位置する喉の部分にできるがんがあります。
この上咽頭がんは、がん細胞が放射線治療に反応しやすく、この治療によりがんを小さくし、消すことが可能です。上咽頭の場所は手術が難しいため、早期から進行期のがんに対して放射線治療が主に用いられます。さらに、薬物療法と組み合わせることで治療効果が向上するため、多くの場合、これら二つの治療を併用する化学放射線療法が推奨されます。この治療法は、患者の体調を考慮しながら行われます。

子宮頸がん

子宮頸がんは、子宮の入り口部分である子宮頸部に発生するがんです。このがんは、特にヒトパピローマウイルス(HPV)に感染することが主な原因とされています。
子宮頸がんの治療は主に婦人科で行われますが、放射線治療が必要な場合は放射線治療科の専門医が治療を担当します。
放射線治療のみの場合には、通院で治療を受けることも可能ですが、化学放射線治療を行う場合には入院することが一般的と考えられます。
子宮頸がんに対する放射線治療は、遠隔転移(他の臓器にがんが広がっていない)していない全ての病期での根治的な治療法です。
特に、がんの大きさが4㎝以上のⅠ〜II期、また、進行したがんであるIII〜ⅠⅤA期に対しては、根治的な放射線治療が行われます。内臓機能や全身状態に問題がなければ、シスプラチンという抗がん剤を中心とする化学療法を同時に使用する、同時化学放射線治療が勧められます。

前立腺がん

前立腺がんは、男性の前立腺に発生するがんです。初期段階では症状がほとんどないことが多いですが、進行すると排尿困難などの問題が生じることがあります。
前立腺がんの治療は泌尿器科で行われます。専門の放射線治療科で放射線治療が施されることもあります。

根治的放射線治療は、主に局所的に限定された前立腺がん(特に初期から中期の段階)に対して用いられます。高い精度でがん細胞を狙い撃ちすることが可能なため、手術が困難な患者や手術を選択しない患者に推奨されます。
IMRT(Intensity-modulated Radiation Therapy;強度変調放射線治療)や、IGRT(Image-Guided Radiation Therapy;画像誘導放射線治療)、小線源治療、粒子線治療などの技術も普及しており、手術と同等の治療選択肢となっています。

肺がん

肺がんは、肺の組織で発生するがんで、喫煙が主なリスク因子です。肺がんは早期に発見しづらく、進行が早いことが特徴です。
肺がんの診断と治療は主に呼吸器科や胸部外科で診断されます。放射線治療は放射線治療科で行われます、
放射線治療は、手術が適さない場合や再発がん、進行がんに対して用いられます。また、放射線治療は単独で行われることもあれば、化学療法と組み合わせて行われることもあります。特に小細胞肺がんや進行した非小細胞肺がんに対して有効です。
肺がんに対する放射線治療は特に、手術が不可能なケースや進行がんで重要な役割を果たします。小細胞肺がんと非小細胞肺がんとでは、放射線治療の適用が異なります。
非小細胞肺がんでは、手術が主な治療選択肢ですが、進行した場合や手術が不可能な場合に放射線治療が利用されます。
小細胞肺がんでは、手術療法と組み合わせるよりも、化学療法と組み合わせた放射線治療が一般的です。
さらに、定位放射線治療(SBRT; Stereotactic Body Radiation Therapy)という照射法もあります。
この高精度放射線治療は、非常に正確にがん細胞を標的とし、周囲の正常組織への影響を最小限に抑えます。特に、小さな非小細胞肺がんに対して効果的で、短期間で高線量の放射線を照射できることが特徴です。

食道がん

食道がんは食道の細胞が異常に増殖することによって発生します。食事の際の飲み込み困難や胸焼けが主な症状です。食道がんの治療は消化器科や外科で行われます。放射線治療は放射線腫瘍科で提供されることが一般的です。
根治的放射線治療は、内視鏡で切除が難しいがん表在がんや、内視鏡的切除後にがんが残っていることが疑われる場合に治療の選択肢となります。また、手術が困難な場合や手術によるリスクが高い進行がん患者に対して選択されることが多いです。

放射線治療を行う目的

それでは、放射線治療を行う目的について解説します。

ガンを完全に直す目的:根治的照射

根治的照射は、がんを完全に治すことを目的とした放射線治療です。
放射線治療のみを行う放射線単独治療や、化学療法と一緒に行う化学放射線治療があります。
一般的には、がんがその部位のみにとどまっており、他の臓器に転移していないようながんに対して行われます。
例えば、前立腺がんや頭頸部がん、子宮頸がん、肺がん、食道がんなどに対して行われます。
がんの診断を、消化器内科や耳鼻咽喉科などのそれぞれの専門科で受けた後、放射線治療科へ紹介され、治療を受けることになります。

症状を和らげる目的:緩和的照射

がんが脳や骨などにも転移すると、麻痺や痛みなどの症状が出る場合があります。
そうした症状をやわらげるために、緩和照射が行われます。
また、気管にがんが及んでいる場合には呼吸困難感を生じることもあります。そうした症状が急速に進行している場合には、緊急照射といって通常よりも準備期間を短縮した放射線治療が行われる場合もあります。

手術の前にがんを小さくする目的

手術前にがんを縮小させ、手術の成功率を高めるために放射線治療を行います。
がんの縮小により、手術が容易になり、完全切除の可能性が高まります。
大きな腫瘍や手術が困難な位置にあるがん(例:軟部肉腫、直腸がん)に対して行われることがあります。

手術の後の再発防止目的:術後照射

手術後に残存するかもしれないがん細胞を破壊するために行われます。
再発率を低下させ、長期的な無病生存を目指します。
手術後のがん細胞の残存が懸念されるがん(例:乳がん、脳腫瘍)に対して適応されます。

将来の再発防止目的:予防的照射

主にリンパ節領域に対して放射線治療を行い、まだ残っているかもしれないがん細胞を予防的に破壊します。
がんでのリンパ節転移のリスクを低減します。
乳がんや頭頸部がんなど、リンパ節転移のリスクが比較的高いがんに用いられます。
また、肺の小細胞肺がんの場合、脳転移のリスクを減らすために予防的全脳照射が行われることもあります。

放射線治療の流れ

それでは、ここでは放射線治療が実施にはどのように行われているのかをご紹介しましょう。

診察・検査

放射線治療を受ける最初のステップとしては、主治医から放射線治療科へ紹介されることが一般的です。
放射線治療医がまずは診察をします。
がんの広がりなどに関する画像検査や病理検査は、すでに主科の方で行われていることが多いです。必要に応じて、MRI画像などの追加検査を放射線治療科で行います。
放射線治療医は、患者のがんの進行状況や全身状態、あるいは過去の放射線治療歴がないかどうかなどを踏まえ、放射線治療が可能かどうかを判断します。
そして、放射線治療の具体的な方法や目的、効果、副作用について患者やその家族に説明をしていきます。

治療計画

放射線治療は、実際にはCT画像を元にして計画されることが多いです。
そこで、正確に腫瘍に放射線を当てるために、CTやMRIを使って治療の位置や方向を決めるシミュレーションを行います。この際、患者の体位を固定するためにマーキングや専用の固定具が使用されます。
次に、治療計画装置を使用して、放射線の量や照射回数を決定し、最適な治療方法を計画します。放射線治療計画用のCT画像で、照射したいがんの部位を同定します。そこに放射線がきちんとあたり、かつ周りの正常組織に過剰な放射線があたらないようにします。具体的には、放射線をさまざまな角度やエネルギー量で当てることをコンピューター上で計算し、最良の計画を立てていきます。
医師や放射線物理士などが協力して、治療計画を立案します。

治療

治療は通常、外部から放射線を照射する方法で行われ、患者は治療機器の前で正確な位置に固定されます。必要な部位にのみ放射線が照射されるように調整されます。
放射線のビームが出ている時間は数分であり、治療室に入ってから出るまでの時間は15分くらいのことが多いです。照射範囲が広い場合には、もう少し時間を要することもあります。

治療後

多くの放射線治療は外来で行われるため、通常は入院の必要はありません。しかし、患者の状態や治療の種類(化学療法を組み合わせるかどうかなど)によっては短期間の入院が必要になることもあります。
放射線治療中には、副作用として肌の赤みや疲労感が起こることがあります。これらの副作用の管理としては、医師の指導に従い、必要に応じて薬を使用して症状を和らげます。喉の痛みに対してはうがい薬や痛み止め、皮膚の赤みやかゆみに対しては保湿薬などが処方されます。
放射線治療後も、効果や晩期障害の有無などを確認するために、定期的にフォローがされることもあります。これは、放射線治療科で行ったり、主科で行ったりしますが、その医療機関によります。

「放射線治療で治せる病気」についてよくある質問

ここまで放射線治療で治せる病気を紹介しました。ここでは「放射線治療で治せる病気」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

放射線治療が有効ながんはありますか?

木村 香菜医師木村 香菜(医師)

はい、放射線治療は多くの種類のがんに有効です。特に、前立腺がん、頭頸部がん、乳がん、肺がんなどがあります。これらのがんに対して放射線治療は、がん細胞を破壊し、腫瘍の成長を抑える効果が期待されます。また、放射線治療は他の治療法と組み合わせて使用されることも多く、手術が難しい場合や他の治療法で十分な効果が得られない場合に選択されることがあります。

放射線治療は複数回行うのでしょうか?

木村 香菜医師木村 香菜(医師)

はい、放射線治療は通常、複数回にわたって行われることが大半です。治療は数日から数週間にわたって続けられることが一般的で、1回の治療では十分な効果が得られないためです。放射線の総量と照射回数は、がんの種類、位置、大きさ、および患者の健康状態に応じて個別に計画されます。

放射線治療の効果が出るまでどれくらいかかりますか?

木村 香菜医師木村 香菜(医師)

放射線治療の効果が現れるまでの時間は、治療対象となるがんの種類や進行状態によって異なります。例えば、痛みやその他の症状の緩和を目的とした場合、治療後数日から数週間で効果が感じられることがあります。しかし、がん細胞を縮小させるための治療効果を確認するには、数週間から数ヶ月かかることもあります。具体的な期間は、放射線の種類、照射される部位、および患者の個々の反応によって変わります。

編集部まとめ

今回の記事では、放射線治療で治せる病気について詳しく解説しました。
治療効果はがんの種類や進行度、患者個人の体力や持病などによっても変わります。しかし、頭頸部がんや子宮頸がん、前立腺がんなど、手術に劣らない治療効果が期待できる病気も多くあります。また、手術や化学療法と組み合わせることで、治療効果を高めることができる病気もあります。
放射線というと、なんとなく怖いなというイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれません。しかし、放射線治療の際には、放射線についての理解の深い医師や専門の技師が対応します。安心していただければと思います。
今回の記事が、みなさんの放射線治療への理解を深める上で役立てば幸いです。

「放射線治療で治せる病気」と関連する病気

「放射線治療で治せる病気」と関連する病気は8個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

泌尿器科の病気

耳鼻咽喉科の病気

  • 頭頸部がん

乳腺外科の病気

呼吸器科の病気

婦人科の病気

皮膚科の病気

眼科の病気

  • 甲状腺眼症

これらのがんは放射線治療により、病変部分に集中的に高エネルギーの放射線を当てることで、がん細胞を効率的に破壊することが可能です。また、がん以外にも放射線治療が用いられる疾患があります。

「放射線治療で治せる病気」と関連する症状

「放射線治療で治せる病気」と関連している、似ている症状は10個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 痛み
  • 出血
  • 呼吸困難
  • 血痰
  • 腸閉塞
  • 腹部膨満感
  • 意識障害
  • 視力障害
  • 麻痺

がんが大きくなると、周囲の臓器を圧迫したり浸潤したりすることでさまざまな症状を引き起こします。こうした症状を改善するために、放射線治療が効果的である場合があります。

この記事の監修医師