「卵巣がん発覚のきっかけとなる症状」はご存じですか?早期発見のポイントも医師が解説!

卵巣がんは初期症状が出にくく、見つかったときには進行がんになっているケースが少なくありません。
卵巣がんの患者数は増加傾向にあり、毎年新たに13,000人程が診断され5,000人程度が死亡すると報告されています。
卵巣にがんが現局している場合、5年後に生きている確率が90%を超えますが、一方でほかの臓器に転移している場合には20%台と生存率が低くなる傾向があります。
早期発見が難しいがんの一つではありますが、体からのSOSを見逃さないために卵巣がんについて学んでいきましょう。

監修医師:
馬場 敦志(宮の沢スマイルレディースクリニック)
目次 -INDEX-
卵巣がんとは?
卵巣とは子宮に付属している卵子を育てるクルミ大の器官です。卵巣を形成している細胞の一部ががん化したものを卵巣がんと呼びます。
卵巣の表面を形成している卵巣上皮細胞・将来卵子となる胚細胞・性ホルモンを分泌する細胞など多様な細胞からできており、そのすべての細胞ががん化する可能性を持っているのです。そのため、ひとことで卵巣がんといってもその種類は多くあります。
それぞれ治療法が違うため卵巣がんが疑われた際には専門の医師に相談しましょう。
卵巣がん発覚のきっかけは?
卵巣がんは発見しにくいといわれていますが、では卵巣がんの患者さんはどのようなことをきっかけにして受診し卵巣がんと診断されたのでしょうか。
服のウエストがきつくなった
卵巣がんは進行すると腹膜というお腹の臓器を覆っている膜にがん細胞が転移する腹膜転移を起こし、この状態になると腹水という水がお腹の中に溜まります。腹水が増えてくるとお腹が膨らんできます。
最初は服のウエストがきつくなってきて太ったと思いダイエットを始める方もいますが、お腹だけが膨らんできて腕や脚が太っていない場合には病院で受診しましょう。また、腹水によって横隔膜や肺が圧迫され呼吸困難や咳の症状で受診される方もいます。
食欲がなくなった
卵巣がんに限った症状ではありませんが、がんができると食欲が低下するのはよく見られる症状です。がん細胞や免疫細胞から放出される炎症を引き起こす物質が脳の食欲を制御する部分の働きを邪魔することによって食欲が低下します。
加えて卵巣がんでは、先でお話しした腹水が物理的に胃や腸を圧迫することによって、食欲低下の原因となるのです。すぐに満腹になってしまう・嘔気や嘔吐がある・味がおいしく感じられないといった症状がある場合には、病院で受診しましょう。
下腹部にしこりが触れた
卵巣は体の深部にある親指大の臓器のため、通常体の表面から触ってその存在がわかることはありません。しかし卵巣が体表から触ってもわかる程巨大化した場合には卵巣がんを含めた腫瘍性病変である可能性を考えます。触っても痛みが少ないことがほとんどです。
ほかに下腹部にしこりが触れる病気としては、子宮筋腫・大動脈瘤・大腸がんなどがあります。主に婦人科疾患や消化器疾患が中心ですが、月経不順や過多月経などほかの女性特有の症状も合併している場合には女性診療科で受診してください。
卵巣がんの自覚症状
ここまで卵巣がんが見つかるきっかけになりやすい症状をご紹介してきました。できるだけ早期に発見するために、卵巣がんで出やすい症状をさらに詳しくみていきましょう。
初期には自覚症状が少ない
卵巣がんは初期の小さい段階では気が付くのが難しく進行してから見つかることが少なくないため、サイレントキラーとも呼ばれています。
痛みがあったり体の外からわかったりする場合には気が付きやすいですが、卵巣がんは基本的には痛みはありませんし、進行するまで体の外から気が付くのは困難です。
頻尿
卵巣ががん化して大きくなってくると物理的に膀胱を圧迫することによって頻尿の症状が出ます。
中高年女性では骨盤の筋力が低下してくることにより尿失禁を起こすことや、過活動膀胱で膀胱が収縮してくる病気も発症しやすいです。過活動膀胱の背景には膀胱炎やがんがある場合があります。
便秘
卵巣がんは膀胱だけでなくその周辺にあるほかの臓器も圧迫し、腸管が圧迫された場合には便の通過障害が起きるため便秘になります。便秘症はよくある疾患ではありますが、がんによる閉塞や甲状腺疾患や糖尿病などの代謝異常、薬剤性など原因は多種多様です。
放置しておくと便で腸管が閉塞してしまうリスクもありますし、下剤を長期服用すると耐性が出てきて薬が効きにくくなります。短期間の下剤の使用で改善しない場合にはきちんと原因を精査することが重要です。
脚のむくみ
卵巣がんでは脚のむくみが出ることもあります。骨盤内には複雑に血管が走っており、がんが静脈を圧迫することで脚の血液が静脈から還ってきにくくなることで脚がむくみます。
がんはリンパ管という管を通って遠隔の臓器に転移することがありますが、その過程でがん細胞がリンパ管を塞ぐことによっても脚がむくむこともあるのです。また、がんが体内にできると血液が固まるように体が反応します。
脚に血液の塊が詰まることによって脚のむくみが出る方もいるため、脚のむくみが続いている場合には医師にご相談ください。
お腹が前に突き出る
服のウエストがきつくなったという症状でもご紹介しましたが、卵巣がんが大きくなってきたときや腹水が溜まってきたときは背部の変化が乏しく腹部が張って前に突き出てきます。肥満であれば腰の方にも脂肪がつきますが、お腹だけが変化している場合には注意が必要です。
卵巣がんを早期発見するポイント
卵巣がん初期に症状から発見するのが困難であることをご説明してきました。しかし、進行がんになってから発見すると予後が悪いため早期発見が重要です。それではどのようなことに心がけていれば早期発見できるのでしょうか。
定期的に婦人科検診を受ける
婦人科検診は主に子宮頸がんを対象とした検診です。実際に死亡率が減少すると証明されているのは子宮頸がんのみで、卵巣がんによる死亡率減少はデータ上では示されておりません。
しかし、婦人科検診では子宮や卵巣の内診や超音波検査で卵巣の観察を行います。そのため子宮頸がんだけではなく、子宮体がんや卵巣がんも見つかることがあります。婦人科検診を定期的に受けておくことで婦人科腫瘍を早期発見できる可能性が高まるのです。
家族に卵巣がんの人がいる場合は若いうちから検査を受けておく
卵巣がんのなかには遺伝性乳がん卵巣がん症候群というものがあり、もともとBRCA1遺伝子BRCA2遺伝子という遺伝子に変異があると発症します。血のつながったご家族のなかに乳がんや卵巣がんの方がいる場合には、変異遺伝子を持っている可能性があり、もし持っていれば乳がんや卵巣がんを発症するリスクが高いです。
遺伝性の卵巣がんの存在を知っておくことで、若いうちから婦人科検診を受けておくことが早期発見の一助となります。
卵巣がんが発覚するきっかけについてよくある質問
卵巣がんが発覚するきっかけについてよくお受けする質問についてご紹介していきます。
卵巣がんになりやすい年齢層を教えてください。
いわゆる一般的な卵巣がんと呼ばれる卵巣の表面を形成する細胞ががん化するタイプの卵巣がんでは50代が特に多いです。将来卵子になっていく胚細胞と呼ばれる細胞ががん化するタイプのがんは35歳までの若年女性に多いですが、このタイプの卵巣がんは稀です。性ホルモンを分泌するがん細胞ができるのは若年者に発症するものと高齢者に発症するものがあります。全体としては50代がピークです。
卵巣がんは進行が速いのですか?
卵巣がんは進行が早く、約半数の方が進行した状態で見つかっているのです。進行がんの5年生存率は低く、普段から婦人科検診を受ける重要性を示唆しています。
編集部まとめ
50代付近の女性は体の変化を感じやすい方が多く、これまでなかった症状が出ても年齢による変化や更年期による症状ととらえがちです。
しかし、同時に乳がんや卵巣がんといった女性に特有のがんが診断されやすい年齢でもあります。
体の異変を感じた際には早めに病院を受診するのはもちろんのこと、普段から健康診断や検診を受けておくことで早期に異常を発見することができます。卵巣がんは早期に見つかれば手術で取り切ることもできる疾患です。
若い頃からの健康に対する意識が健康寿命を長くしますので、この記事を読んだことが健康な体づくりのきっかけとなれば幸いです。
卵巣がんと関連する病気
「卵巣がん」と関連する病気は3個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
婦人科がんは中年以降に頻度が増えてきます。しかし若年女性でも子宮頸がんになることがありますし、若年女性でも見られる子宮内膜が卵巣に定着した子宮内膜症は卵巣がんのリスクです。若い頃から婦人科検診をし、婦人科疾患を早期発見・早期治療できるように心がけましょう。
卵巣がんと関連する症状
「卵巣がん」と関連している、似ている症状は6個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
卵巣がんの好発年齢は50代前後で更年期とも重なります。症状からは更年期障害を考えてしまう方もいらっしゃるかもしれません。体調が変わってくる年齢だからこそ、小さな変化も見逃さず、病院で受診するようにしましょう。




