「急性白血病は治る病気」なのか?検査・治療方法も医師が解説!

白血病は、血液のがんとして知られている病気です。白血病というと、治療が難しい病気のイメージを持っている方もいるのではないでしょうか。 白血病のうち急性白血病は経過が早く、放置すると命の危険がある病気です。 しかし白血病はほかのがんに比べて、抗がん剤が効きやすいとされており、早期に適切な治療をすれば回復する可能性もあります。 本記事では、急性白血病が治る可能性や検査・治療方法を解説します。

監修医師:
山本 佳奈(ナビタスクリニック)
目次 -INDEX-
急性白血病とは
白血病は、血液細胞ががん化することで引き起こされる病気です。白血病は、進行の早さによって急性・慢性の2種類に分けられます。急性白血病は急速に進行するタイプで、がん化した細胞の由来により骨髄性・リンパ性に分けられます。まずは、急性白血病がどのような病気なのか確認しましょう。
白血病細胞が無制限に増える病気
急性白血病は、血液中の白血病細胞が無制限に増えてしまう病気です。血液中の細胞は骨髄にある造血幹細胞から作られ、血球(赤血球・白血球・血小板)に成熟します。急性白血病は、造血幹細胞が成熟せずにがん化して白血病細胞となり、骨髄内で増殖する病気です。白血病細胞が異常に増えると正常な血球を作る機能が妨げられ、血液中の赤血球・白血球・血小板が減少して貧血・出血・感染などの症状が現れます。
子孫に伝わる遺伝病ではない
急性白血病をはじめとしたがんは、遺伝子の突然変異が原因といわれています。遺伝子の異常による病気となると、子孫に遺伝するのではと心配になる方もいるかもしれません。しかし、がんの遺伝子異常の大部分は放射線・紫外線・ウイルスなどによって後天的に偶然生じたものであり、子孫に遺伝する可能性は低いと考えられています。親が急性白血病になったからといって、子どもも発症するわけではありません。
急性白血病は治る病気?
白血病は、治りにくい病気というイメージを持っている方もいるでしょう。しかし、白血病は治らない病気ではありません。医学の進歩により回復する患者さんも少なくなく、早期発見し適切な治療をすれば寛解する可能性も十分にあります。医学の進歩にて寛解しやすくなっている
以前は治療が難しい病気といわれていた急性白血病も、現在は医学の進歩により寛解しやすくなっています。化学療法が進歩し、病気や状態に合わせて適切に薬を使用することで効果的にがんを治療できるようになりました。また、治療をサポートする支持療法も発達しています。急性白血病になっても、病気を克服して長生きする患者さんは少なくありません。
どの種類の白血病も早期発見がカギ
急性白血病は治らない病気ではありませんが、経過が早く日・週単位で症状が進行します。治療が遅れれば重症化し、適切な治療ができずに短期間で命を落とす可能性が高くなります。白血病の種類に関わらず、寛解を目指すには早期発見が重要です。初期の段階では自覚症状に乏しく気付きにくいため、定期的な検診が大切です。
健康診断の血液検査で異常を指摘され、病気が発覚するケースもあります。年に1度は健康診断を受け、貧血・出血・発熱などの白血病にみられる症状が続く場合は早めに医療機関で受診しましょう。
年齢が若いと回復も望みやすい
年齢が若いと、回復する可能性も高いとされています。白血病の治療では、がんに対抗するために強い薬や毒性のある治療を行う必要があります。抗がん剤の副作用の辛さを耳にしたことがある方もいるのではないでしょうか。副作用が強い治療法は危険が伴うため、高齢の方には使用しないケースが多いでしょう。年齢が若いと副作用に耐えられる体力があり治療方法の選択肢が多くなるため、回復する可能性も高くなります。
急性白血病の検査法
急性白血病は症状だけでは診断できません。また、白血病のタイプによって適した治療方法が異なります。以下では、急性白血病の診断や治療方法の検討のために行う検査を解説します。骨髄検査・生検
骨髄検査・生検は、白血病の確定診断に欠かせない検査です。血液検査の結果、白血病の疑いがあると判断された場合に行います。骨髄検査・生検は骨髄を少量採取し、白血病細胞が増殖しているかどうか調べる検査です。局所麻酔をした後、腰骨のなかに針を刺して骨髄液を採取します。骨髄中の芽球(白血病細胞の可能性が高い細胞)の数が20%以上ある場合に、急性白血病と診断されます。そのうち、ペルオキシダーゼ染色という検査で陽性の芽球が3%未満の場合が急性リンパ性白血病、3%以上の場合が急性骨髄性白血病です。
血液検査
血液検査では、血液中の赤血球・白血球・血小板の数を調べます。白血病の場合、白血球の数は異常に増えているケースと少ないケースがありますが、赤血球と血小板は減少しています。血液検査で異常がみられたら、血液内科のある医療機関で精密検査をしたほうがよいでしょう。マーカー検査
マーカー検査は、フローサイトメトリーという機器を使用して血液や骨髄血などの細胞表面の抗原を調べる検査です。抗原は細胞の目印のようなもので、病気のタイプによって特有の抗原があります。マーカー検査は顕微鏡ではわからない白血病のタイプをすぐに判断できるため、早期治療につながります。また、治療後にがん細胞が残っているかどうか調べるときにも使える検査です。
遺伝子検査
異常な遺伝子の有無や種類を調べ、がんの診断・予後の予測・治療方法の選択・治療効果の判断などに活用します。検査で白血病に特有の遺伝子が検出されると、白血病と診断されます。遺伝子検査は白血病のタイプもわかるので、適した治療薬の選択にも役立つ検査です。
急性白血病の治療方法
急性白血病は進行が早いため、病気が確定したらすぐに薬物療法をして進行を抑える必要があります。血液のがんなので、手術でがんを取り除くことはできません。治療の副作用に対する支持療法も、白血病治療では重要です。また、寛解後に造血幹細胞移植をする場合もあります。薬物療法
薬でがん細胞を減らしていく治療です。薬物療法には、化学療法(細胞障害性抗がん薬)・内分泌療法(ホルモン療法)・分子標的療法などの種類があります。抗がん作用のある複数の薬を組み合わせ、検査上白血病細胞が検出されない状態(寛解)を目指すのが目的です。適切な薬物療法を行えば、65歳未満の成人急性リンパ性白血病および急性骨髄性白血病の約80%は完全寛解します。65歳以上の患者さんの完全寛解率は60%台にとどまります。寛解後も体内には白血病細胞が残っているため、薬物療法の継続が必要です。
寛解後に治療をやめると再発の可能性が高いので、寛解状態を維持するには薬物療法を続けることが大切です。
造血幹細胞移植療法
寛解後、健康な造血幹細胞を点滴で入れる治療法です。自分の造血幹細胞を使う場合(自家移植)と、ほかの人のものを使う場合(同種移植)があります。薬物療法だけでは再発の可能性が高い場合に実施され、白血病の有効な治療法ですが、毒性が強いため適応しない方もいます。
支持療法
支持療法はがん治療の副作用に対する治療方法で、以下のような治療を行います。- 感染予防や感染時の抗生剤投与
- 貧血や出血に対する輸血
- 吐き気に対する制吐剤投与
- 体力消耗に対する点滴
白血病が治るについてよくある質問
ここまで急性白血病が治る可能性・検査・治療法などを紹介しました。ここでは「白血病が治る」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
治療にて予後は確保しやすくなったでしょうか?
急性白血病は抗がん剤が効きやすく、医学の進歩もあって65歳未満の成人急性リンパ性白血病・急性骨髄性白血病の約80%の患者さんが寛解します。寛解後5年再発しなかった場合、白血病が治った可能性が高いでしょう。急性骨髄性白血病は、化学療法のみでも20~30%の患者さんが治るといわれています。また、薬物療法の後に造血幹細胞移植を行うことで長期生存率が上がっています。
現代の医学で再発はどの程度しやすいとされますか?
現代の医学で、65歳未満の合併症のない急性骨髄性白血病の患者さんの約80%の方は寛解しますが、寛解しても半数以上の方で再発するといわれています。急性リンパ性白血病の場合、寛解状態の患者さんが造血幹細胞移植療法を行うと約半数の方が治るとされていますが、30~40%の患者さんで再発するといわれていますします。また、抗がん剤治療によって数年後にがんが誘発される可能性も数%あるため、治療後も定期的な検査がおすすめです。
編集部まとめ
本記事では、急性白血病が治る可能性や検査・治療法を解説しました。 急性白血病は進行が早く、放置すると命の危険が高くなる病気です。しかし、早期発見をして適切な治療をすれば治る可能性があります。 早い段階でがんを見つけ治療を受けるためにも、定期的に検診を受け、気になる症状があれば早めに医療機関で受診しましょう。白血病と関連する病気
「白血病」と関連する病気は3個程あります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
白血病には、進行が緩やかな慢性白血病もあります。また、悪性リンパ腫や多発性骨髄腫も血液のがんとして知られています。いずれも注意が必要な病気ですが、特に急性白血病は進行が早いため定期的な検診が大切です。
白血病と関連する症状
「白血病」と関連している、似ている症状は5個程あります。各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
急性白血病の症状は、日常生活でも生じやすいものが少なくありません。白血病は目立った初期症状がなく、気付かないうちに進行しやすい病気です。気になる症状が続くようなら、ぜひ早めに医療機関で受診してください。


