「肝臓がんの初期症状」はご存じですか？『血液検査』でどう調べるかも医師が解説！
公開日:2025/11/20
肝臓がん（肝細胞がん）は、肝臓の細胞ががん化した病気です。ウイルスの感染や肝臓の炎症などによって引き起こされるといわれています。 肝臓がん（肝細胞がん）には特有の症状がほとんどないといわれており、気付くのが難しいと考えられます。 では、肝臓がん（肝細胞がん）の初期ではどのような症状が現れるのでしょうか。今回の記事では肝臓がん（肝細胞がん）の初期症状について詳しく解説します。 また、血液検査・治療も紹介していますので、少しでも気になる方は参考にしてください。
監修医師：
甲斐沼 孟（上場企業産業医）
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大阪市立大学（現・大阪公立大学）医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急１病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。
目次 -INDEX-
肝臓がん（肝細胞がん）とは
肝臓がん（肝細胞がん）とは、肝臓の細胞ががん化することで発症する病気です。なお、肝臓にできるがんには肝細胞がんだけではなく、肝内胆管がん（胆管細胞がん）もあります。肝内胆管がん（胆管細胞がん）は肝臓の中を通る胆管ががん化したものです。日本で発生する肝臓がんのうち、約9割が肝細胞がんといわれています。そのため、肝臓がんといえば肝細胞がんを指すことが少なくないようです。肝臓がん（肝細胞がん）の主な原因は、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスへの感染・アルコール性肝障害や非アルコール性脂肪肝炎の罹患などです。
さらに、加齢・喫煙なども肝臓がん（肝細胞がん）のリスク要因として考えられています。肝臓がん（肝細胞がん）は男性に発症しやすい傾向にあります。
肝臓がん（肝細胞がん）の初期症状
肝臓がん（肝細胞がん）の初期では、自覚症状がほとんど出ないといわれています。進行すると肝臓の機能が低下し、黄疸・むくみ・かゆみ・倦怠感などの症状が現れます。ここからは、肝臓がん（肝細胞がん）の初期症状を詳しくみていきましょう。初期には自覚症状がほとんど出ない
肝臓がん（肝細胞がん）は、初期には自覚症状がほとんど出ないといわれています。そのため、肝臓は沈黙の臓器とも呼ばれています。健康診断やほかの病気の検査の際に、見つかるケースも少なくありません。
黄疸
進行すると肝臓の機能が低下し、皮膚や目が黄色くなる黄疸が現れます。黄疸は血液中のビリルビンが増加することで、発症するものです。ビリルビンはヘモグロビンが分解されることで生じるもので、通常であれば肝臓で処理されます。しかし、肝臓の機能が低下するとビリルビンが処理されなくなり、血液中に増加し黄疸が現れます。黄疸は皮膚や目が黄色くなるのが主な症状ですが、疲労感や頭痛などが現れることもあるようです。
むくみ
肝臓がん（肝細胞がん）になると、むくみやすくなるといわれています。むくみとは、何らかの原因によって皮膚もしくは皮膚の下に水がたまっている状態です。肝臓は不要な物質を解毒し排出するはたらきがあります。そのため、肝臓の機能が低下すると不要な物質が排出されず血液循環が悪化しむくみが発生するといわれています。
かゆみ
かゆみも肝臓がん（肝細胞がん）の症状の1つです。肝臓がん（肝細胞がん）になると、肝臓で代謝される物質が代謝されなくなり、体内の物質が不足したり過剰となったりします。これによりかゆみが生じると考えられています。倦怠感
肝臓の機能が低下することで、倦怠感が現れます。倦怠感とは、体が重くて力が入らない・集中できないといったようにいつもの生活が送りづらいと感じる症状です。腹部のしこり・圧迫感・痛み
肝臓がん（肝細胞がん）の腫瘍が大きくなると、腹部のしこり・圧迫感・痛みが生じることがあります。また、しこりはみぞおちに感じることもあり、肝臓の左側にがんが発生した場合にみられます。みぞおちのしこりは肝臓がん（肝細胞がん）の特有の症状だと考えられているようです。
肝臓がん（肝細胞がん）の血液検査
肝臓がん（肝細胞がん）を診断するためには、超音波検査・画像検査などさまざまな検査が行われます。そのうち血液検査を詳しく解説します。肝臓がん（肝細胞がん）の血液検査は、主に腫瘍マーカーを調べるために行われる検査です。腫瘍マーカーとはがんの種類によって特徴的に作られる物質で、がん細胞やがん細胞に反応した細胞によって作られます。腫瘍マーカーの数値は、がんが大きくなるにつれて増加するといわれています。
しかし、がんがあっても腫瘍マーカーが陰性である・がんがなくても陽性である場合があるため、正確な診断をするにはほかの検査も欠かせません。なお、血液検査は治療方針を決定する際に肝機能を調べる目的で行われるケースもあります。
肝臓がん（肝細胞がん）の治療方法
肝臓がん（肝細胞がん）と診断されたら、治療に進みます。肝臓がん（肝細胞がん）の治療方法には、以下の5つがあります。- 肝切除
- ラジオ波焼灼療法（RFA）
- 肝動脈化学塞栓療法（TACE）
- 薬物療法
- 肝移植
肝切除
肝切除とは、肝臓のがんとその周囲の部分を手術によって取り除く治療法です。一般的に、がんが肝臓にとどまっている・がんの数が3個以内・肝機能が保たれている場合に行われます。ラジオ波焼灼療法（RFA）
ラジオ波焼灼療法（RFA）は腹部の皮膚から特殊な針をがんに直接刺し、針の先端部分に高熱を発生させることで、がんを焼いて死滅させる治療法です。手術と比べると体への負担はありませんが、発熱や出血などの合併症が起こる可能性があります。肝動脈化学塞栓療法（TACE）
肝動脈化学塞栓療法（TACE）は、がんに栄養を運んでいる血管を人工的に塞ぐことで、がんの増殖を抑える治療法です。肘や手首の動脈からカテーテルという細い管を挿入し肝動脈まで入れ、抗がん剤と造影剤を注入します。その後に閉塞物質を注入することで、血管を塞ぎます。肝動脈化学塞栓療法（TACE）も腹痛や吐き気などの副作用が現れる可能性があるため、注意が必要です。
薬物療法
肝切除・ラジオ波焼灼療法（RFA）・肝動脈化学塞栓療法（TACE）などが行えない場合は、薬物療法を行います。肝臓がん（肝細胞がん）の薬物療法では、分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬が用いられます。肝移植
肝硬変などで肝臓の治療が困難な場合は、肝移植を行うこともあります。肝移植は肝臓をすべて取り出し、臓器提供者の肝臓を移植する治療法です。日本では、親近者から肝臓の一部をもらうケースが一般的といわれています。肝臓がん（肝細胞がん）の初期症状・血液検査についてよくある質問
ここまで肝臓がん（肝細胞がん）の初期症状・血液検査・治療方法などを紹介しました。ここでは「肝臓がん（肝細胞がん）の初期症状・血液検査」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
肝臓がん（肝細胞がん）が疑われる場合に行う血液検査以外の検査を教えてください。
血液検査以外に行う検査には、超音波検査・CT検査・MRI検査があります。超音波検査は腹部にあてた器具から超音波を出し、臓器で反射した超音波の様子を画像にして観察する検査です。がんの大きさや個数・がんの広がりなどを調べられます。CT検査・MRI検査はがんの性質や転移を調べるために行われます。CT検査はX線を使って体の断面を画像にする検査、MRI検査は強い磁力と電波を使って体の内部を画像にする検査です。
肝臓がん（肝細胞がん）の腫瘍マーカーにはどのような項目がありますか？
肝臓がん（肝細胞がん）の腫瘍マーカーには、主に以下の3つの項目があります。
- AFP（アルファ・フェトプロテイン）
- PIVKA-Ⅱ（ピブカ・ツー）
- AFP-L3分画（AFPレクチン分画）
編集部まとめ
肝臓がん（肝細胞がん）の初期症状はほとんどないといわれているため、初期の段階で気付くのが難しいと考えられます。そのため、定期的な検査を受けることが大切です。 また、肝臓がん（肝細胞がん）の疑いがある場合は、血液検査や超音波検査などを組み合わせて行い診断します。 血液検査では肝機能を見るだけではなく腫瘍マーカーを調べるために行い、発症していると肝臓がん（肝細胞がん）の腫瘍マーカーが上昇している可能性があります。 検査や治療方法などで少しでも不安なことがあれば、担当の医師に確認しましょう。肝臓がん（肝細胞がん）と関連する病気
「肝臓がん（肝細胞がん）」と関連する病気は5個程あります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
上記の病気は肝臓がん（肝細胞がん）の発症に影響を与えることがあります。特に慢性肝炎や肝硬変を発症している方は、肝臓がんの発症リスクが高い傾向にあるため、詳しく検査をすることをおすすめします。
肝臓がん（肝細胞がん）と関連する症状
「肝臓がん（肝細胞がん）」と関連している、似ている症状は3個程あります。各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 腹部のしこり
- 黄疸
- 倦怠感
参考文献
