「お腹がゴロゴロ鳴るのは大腸がん」を疑った方がいい?自覚症状も解説!【医師監修】
大腸がんで死亡する人の数は徐々に増加傾向にありますが、早期に発見すれば治療可能な病気です。
では、大腸がんの早期発見のためにどういった点に注意すればよいのでしょうか。
この記事では大腸がんの自覚症状・検査方法を解説し、「ゴロゴロ鳴るお腹と大腸がんの関係」についてもお答えします。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
目次 -INDEX-
大腸がんとは?
大腸がんは、大腸(結腸・直腸)に生じるがんです。大腸内の腺腫(良性ポリープ)ががん化するケースと、大腸内の粘膜からがんが発生するケースがあります。
結腸は盲腸・上行結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸に、直腸は直腸S状部・上部直腸・下部直腸に分かれていていますが、特に日本人はS状結腸と直腸にがんが生じやすいと考えられています。
お腹がゴロゴロ鳴るのは大腸がんと関連性がある?
お腹がゴロゴロ鳴ると心配になってしまうかもしれませんが、それだけで「大腸がんと関連性がある」とは断言できません。
ただし、頻度が多ければ注意が必要です。大腸がんが進行すると腸の幅が狭まり、そこにガスや消化物が溜まることによってお腹がゴロゴロと鳴るケースもあるからです。
お腹がゴロゴロ鳴る頻度が多ければ、なるべく早めの受診を心がけてください。
大腸がんの自覚症状は?
大腸がんは初期の自覚症状がほとんどありませんが、進行するにつれて、以下の症状が起きるようになります。
- 血便
- 便秘・下痢
- 便が細くなる
- 残尿感
- 腹痛
- 貧血
- 嘔吐
以上の症状がある場合は、大腸がんが進行している可能性があります。ここからは各症状を説明するので、思い当たる点があれば医療機関への相談を検討してください。
血便
血便は大腸がんの症状では特に頻度が高いとされています。
大腸に生じたがんはいずれ潰瘍となり、その箇所から出血が生じるからです。血便は痔と勘違いされやすく、大腸がんの発見が遅れる原因ともなります。
大腸がんによる血便は「肛門に痛みが生じない」「痔の血便よりも色が濃い」などの特徴があるので、判断の目安としましょう。
なお、痔の血便よりも色が濃くなっている場合、大腸がんの発生部位が盲腸部に近いことが考えられます。盲腸部に近づく程、血便の色は暗赤色(赤黒い便)になります。
便秘・下痢
便秘と下痢を繰り返す場合は「便通異常」と呼ばれ、大腸がんの症状として起こるケースが多いです。
大腸は便の通り道ですが、大腸がんが進行すると大腸が狭くなり、それによって便通異常が引き起こされるのです。
食生活によっても便秘と下痢は引き起こりますが、何度も繰り返すようであれば大腸がんの疑いがあるかもしれません。
便が細くなる
大腸がんの進行により大腸が狭くなると、便自体が細くなることがあります。
大腸がんは位置によって症状が異なり、直腸にがんが生じた場合に細い便が出るとされています。
「便は健康のバロメーター」ともいわれるので、普段から自身の便の状態をチェックするようにしましょう。
残尿感
残尿感は大腸がんだけに限らず、子宮がん・前立腺がん・膀胱がんの症状としても見られます。これは、がん化した箇所が尿道を圧迫するからです。
その他、前立腺肥大や膀胱炎などでも残尿感が生じることがあります。排尿後も尿が残っているように感じる場合には、なんらかの病気の可能性があるので、一度医療機関で検査を受けてみましょう。
腹痛
腹痛もまた、大腸がんの代表的な症状です。
大腸がんは盲腸・上行結腸・横行結腸に生じる「右側大腸がん」、下行結腸・S状結腸・直腸に生じる「左側大腸がん」に分けられ、腹痛は左側大腸がんの際に引き起こります。
持続するような痛みではなく、波のある痛み(間欠痛)であることが多いです。
貧血
貧血は、盲腸・上行結腸・横行結腸に生じる「右側大腸がん」で自覚しやすい症状です。
右側大腸がんは進行後も症状が目立ちにくいですが、貧血から大腸がんの発見につながったケースもあります。
生理や鉄分不足で貧血を起こすこともあるかもしれませんが、貧血が続く時には大腸がんの可能性も考慮しましょう。
嘔吐
大腸がんは進行するにつれて、腸を狭めていきます。
やがては腸閉塞を引き起こし、嘔吐を繰り返すようになるのです。ほかの症状にもいえることですが、1つひとつは重大な不調だとは思わないかもしれません。
しかし嘔吐・貧血・便の異常など、複数の症状が重なった時は医師に相談するように心がけましょう。
大腸がんの内視鏡検査について
内視鏡検査とは、カメラを内蔵したチューブを体内に挿入する検査方法です。
大腸がんの疑いがある場合には多くの医療機関で行われますが、具体的にはどういった手順を踏むかご存知でしょうか?ここからは大腸がんの内視鏡検査について、詳しく確認していきましょう。
事前に下剤を服用する
腸内に便が残っていると十分に観察できないため、内視鏡検査では事前に下剤を服用することになります。
服用するタイミングは検査日前日の睡眠前です。前日20時以降は固形物の摂取は避け、水分のみの摂取が望ましいとされています。
肛門から内視鏡を挿入して観察
検査当日は、午前中に腸管洗浄液と水分を約2リットル摂取します。
十分に腸内を洗浄した後、午後から検査が始まります。肛門から内視鏡を挿入し、直腸から盲腸まで観察します。
基本的に痛みは少ないですが、内視鏡によって腸がねじれる時など、人によっては痛みが出ることがあるでしょう。そのため、鎮痛剤を投与する場合もあります。
病変が見つかった場合は切除を行うことも
大腸内で病変部位が確認された場合、その場で内視鏡治療を行うこともあります。
これは、内視鏡を使用して病変部位を切除する治療です。ただし病変の部位が大きい場合は当日ではなく、入院をしてから後日に内視鏡治療を行います。
また、病変が早期がんの場合にも、内視鏡下で切除可能な時はすぐに切除を行うことがあります。
検査後はしばらく安静に過ごす
内視鏡検査後は、ほとんど苦痛が生じません。
しかし、鎮静剤の影響などを考慮してしばらくは安静に過ごす必要があります。特に内視鏡治療を行った場合、7日〜10日間は旅行・飲酒・運動を控えなければいけません。
大腸がん・お腹がゴロゴロ鳴る症状についてよくある質問
ここまでは大腸がんの症状や検査方法を紹介しました。ここではお腹がゴロゴロ鳴る症状について、Medical DOC監修医が解説します。
お腹がゴロゴロ鳴る症状で病院を受診する目安を教えてください。
中路 幸之助(医師)
腸内に溜まったガスがお腹をゴロゴロと鳴らしているので、それだけでがんなどの病気を心配する必要はないでしょう。しかし下痢・便秘・腹痛・嘔吐をともなう場合には、医療機関を受診するようにしましょう。
お腹がゴロゴロ鳴る症状で大腸がん以外に考えられる病気は?
中路 幸之助(医師)
お腹がゴロゴロ鳴る症状で考えられる病気は、大腸がん以外だと過敏性腸症候群が挙げられます。過敏性腸症候群は過度なストレスが原因で発症する場合があるため、注意しましょう。お腹がゴロゴロ鳴る症状以外に嘔吐が続く場合は、細菌感染の恐れもあります。脱水症状を引き起こす前に、医師へ相談しましょう。
編集部まとめ
いかがでしたか。
お腹がゴロゴロ鳴る現象は、必ずしも大腸がんの症状だとは限りません。
しかし大腸がんの進行によって腸内が狭まり、溜まったガスがお腹をゴロゴロ鳴らす可能性も決してゼロではないのです。
お腹がゴロゴロ鳴った場合は、同時に腹痛・便秘・嘔吐・血便などの症状がないかセルフチェックを行いましょう。
思い当たる症状があれば医師へ相談し、早期発見につなげていただければ幸いです。
大腸がんと関連する病気
「大腸がん」と関連する病気は4個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
家族性大腸腺腫症とリンチ症候群は遺伝性の病気であり、潰瘍性大腸炎とクローン病は大腸の粘膜に炎症・潰瘍が生じる病気です。どれも大腸がんになりやすい傾向にあるので、早期の治療を心がけましょう。
大腸がんと関連する症状
「大腸がん」と関連している、似ている症状は7個程あります。
各症状・原因・治療法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
大腸がんは早期の自覚症状がほとんどなく、病期が進行すると上記の症状が出るようになります。1つひとつは単なる体調不良だと感じるかもしれませんが、複数の症状が出るようであれば、なるべく早期に医療機関を受診してください。