「腎臓がんが転移すると現れる症状」はご存知ですか?主な転移部位も解説!
腎臓がんとは、腎臓の細胞ががん化した病気です。がんができる場所によって腎細胞がん・腎盂がんと呼ばれますが、腎臓がんのほとんどは腎細胞がんとされます。
腎臓がんは、肺・肝臓などの別の臓器に転移する可能性があります。そのため、腎臓にがんが見つかると別の臓器でもがんが発生している場合があるため、注意が必要です。
今回の記事では腎臓がんの転移について詳しく解説します。また、転移した場合の治療方法についても紹介しますので、少しでも気になる方は参考にしてください。
監修医師:
澤田 樹佳(富山県のさわだクリニック)
20022金沢大学卒 / 2014年金沢大学大学院卒 / 現在は、富山県のさわだクリニック院長 / 専門は泌尿器科、在宅、緩和医療、東洋医学
保有免許・資格
泌尿器科専門医、指導医
医師へのコミュニケーションスキルトレーナー
目次 -INDEX-
腎臓がんとは?
腎臓がんという病名は知っているものの、具体的にどのような病気なのか詳しくわからない方が多いかもしれません。腎臓がんとは腎臓に腫瘍ができる病気で、腎臓がんのうちほとんどが腎実質に腫瘍ができる腎細胞がんとされます。
ここからは腎臓がんの症状・発症しやすい年齢・原因・診断方法について解説します。
症状
腎臓がんでは初期に現れる症状がほとんどありません。そのため、初期の段階で発見されるのは、健康診断・別の病気の検査などでたまたま見つかるケースが多いようです。
また、腎臓がんが進行すると、血尿(尿に血が混じる)・腰痛・食欲不振・吐き気などさまざまな症状が現れます。
患者数と好発年齢
全国がん罹患データによると、2019年の日本で腎臓がんと診断された人数は男性で20,678人、女性で9,780人です。腎臓がんの患者数は増加傾向にあり、一般的に男性の方が女性よりも約2倍、罹患しやすいといわれています。
また、腎臓がんに罹りやすい年齢は50〜70歳です。そのため、腎臓がんは中高年の男性に発症しやすいがんといえます。
発生原因
腎臓がんの発生原因ははっきりわかっていませんが、がんが発生する危険因子として、肥満・喫煙・高血圧などが挙げられます。また、長期にわたり透析治療を行っている場合も腎臓がんになりやすいといわれています。
なお、透析治療とは、腎臓の機能が落ちた際に腎臓の代わりに血液中の余分な水分・老廃物を取り除き血液を浄化する治療法です。
診断方法
腎臓がんは、超音波検査・CT検査などで診断されます。超音波検査とは、ヒトの耳では聞こえない高い周波数の音である超音波を利用して行う検査で、がんのある場所・がんの大きさなどを確認します。
一方で、CT検査とはX線を使って体の断面を撮影することで、がんの有無・別の臓器への転移などを調べる検査です。また、超音波検査・CT検査で診断できなかった場合もしくはCT検査を受けられない場合は、強い磁石・電磁波を利用して体の断面を撮影するMRI検査で診断することもあります。
腎臓がんの転移について
がんは最初に発生した場所から血液・リンパの流れに乗って、別の臓器に移動しそこで増殖する転移が起こることがあります。
腎臓がんは転移が起こりやすい病気です。ここからは、腎臓がんの転移について詳しく解説します。
転移がみられるのはステージ3以降
腎臓がんの転移がみられるのはステージ3以降とされます。がんは病気の進行度を示すのにステージ(病期)で分類しています。
腎臓がんでは1〜4期に分けられており、数字が大きくなると進行していることを示しているのです。ステージ2まではがんが腎臓の中にとどまっていますが、ステージ3になると腎臓の外に広がりリンパ節に転移しています。
ステージ4になると、リンパ節だけではなく別の臓器に転移している場合があります。
主な転移部位
腎臓がんの主な転移部位は、肺・肝臓・骨・副腎・脳などです。腎臓は多くの血管があるため、血液・リンパで流れて別の臓器へ転移しやすいといわれています。特に転移が多いとされる部位は肺です。
転移にともなう症状
腎臓がんの転移にともなって現れる症状は、転移する部位によって異なります。肺に転移した場合は咳・血痰(血が混ざった痰)・胸の痛みなど、骨に転移した場合は骨の痛み・骨折など、脳に転移した場合は頭痛・運動障害などです。
なお、肝臓に転移した場合は腫瘍が大きくなるまではほとんど症状がなく、進行すると体が黄色くなる黄疸・腹痛などの症状が現れます。
転移した腎臓がんの治療方法
腎臓がんが転移してしまった場合は、どのような治療を行うのでしょうか。転移した腎臓がんでは、外科手術・薬物療法・放射線治療を適切に組み合わせた治療を行います。
ここからは、転移したがんの治療方法について詳しく見ていきます。
外科手術
まず、全身状態が良好で手術が可能である場合は、がんが発生している側の腎臓を全て取り除く「腎摘除術」を行います。なお、腎臓が1つしかない患者さんは、腎臓の一部を取り除く「腎部分切除術」を行うケースもあるようです。
また、転移している部位に対しては転移している臓器が少ない・全身状態が良好である・完全に切除できる場合、外科手術で腫瘍を取り除きます。ただし、転移している臓器が肝臓・脳・骨である場合は、完全切除が難しいケースが多いようです。
また、全身状態が良くない・転移している臓器が多いといったように完全切除が難しい場合は外科手術を行いません。
分子標的薬
転移した腎臓がんの治療は分子標的薬・免疫チェックポイント阻害剤を使用した薬物療法がメインとなります。分子標的薬は、がん細胞の増殖に関わるたんぱく質・がんを攻撃する免疫に関わるたんぱく質などに直接作用することで、腫瘍の増殖を抑える薬です。
一部の薬剤は次に紹介する免疫チェックポイント阻害剤と併用することがあります。分子標的薬は高血圧・下痢などの副作用が現れる可能性があるため、注意が必要です。
免疫チェックポイント阻害剤
免疫チェックポイント阻害剤とは、免疫のがんを攻撃する作用を高めて、がんの進行を抑えるための薬です。全身の免疫機能を活性化させる作用があるため、正常な細胞に対して免疫反応が過剰となり発熱・倦怠感などの副作用が生じる可能性があります。
さらに、この副作用は症状が重くなる可能性があるため注意が必要です。そのため、免疫チェックポイント阻害剤を使用する場合は、医師・薬剤師からの説明をよく聞いたうえで使用することが重要とされます。
放射線治療
放射線治療とは、体に放射線をあてることで、がん細胞を死滅させて治療する方法です。
通常、放射線治療は腎臓がんの治療目的ではなく、腎臓から別の臓器に転移した際に行われます。特に脳・骨に転移がある場合に行われるケースが多いようです。
腎臓以外のがんが腎臓に転移するケースも
ここまでは腎臓がんが別の臓器へ転移することについて解説しました。しかし、別の臓器で発生したがんが腎臓に転移するケースもあるといわれています。
腎臓へ転移する可能性のあるがんは、肺がん・乳がん・肝臓がんなどです。ただし、これらのがんは骨・脳・副腎・リンパ節に転移するケースが多く、腎臓へ転移するケースはまれとされます。
腎臓がんの転移についてよくある質問
ここまで腎臓がんが転移した際の症状・治療法などについて紹介しました。ここからは「腎臓がんの転移」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
腎臓がんの転移はどのようにして発見されますか?
澤田 樹佳 医師
腎臓がんの検査・治療後の経過観察で行われる検査で発見される場合が多いとされます。また、先に転移した臓器でがんが見つかり、詳しく検査していくうちに原発である腎臓がんが発見されるケースもあります。
腎臓がんが完治した後に再発・転移する可能性はありますか?
澤田 樹佳 医師
腎臓がんが完治した後に再発・転移する可能性はあります。腎臓がんの再発は8年以内に起こることが多いようです。また、手術後10年を過ぎた後に転移も見られることがあります。特に腫瘍の大きいほど再発率が高くなるため、注意が必要です。なお、ステージ1の時点で発見し治療を行った場合は、5年間で再発しない確率は約9割といわれています。
編集部まとめ
腎臓がんは中高年の男性に多いがんです。自覚症状がほとんどなく、健康診断などで発見されるケースが多いようです。
また、腎臓は血管が多くあるため、がんになると肺・骨などさまざまな臓器に転移しやすいとされます。
転移した腎臓がんの治療方法は、外科手術・薬物療法・放射線治療を組み合わせて行います。腎臓がんの転移は腎臓がんが完治した後に発生する場合もあるため、注意が必要です。
転移した腎臓がんは完治が難しくなるため、早期発見・早期治療が重要です。
定期的に健康診断を受けたり、少しでも気になる症状がある場合は病院を受診したりすることを心掛けましょう。
腎臓がんと関連する病気
「腎臓がん」と関連する病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
腎盂尿管がん・膀胱がん・前立性肥大症などは腎臓がんと同様に血尿が見られることがあります。また、膀胱がんは腎臓がんと同様に女性よりも男性に多い病気です。
腎臓がんと関連する症状
「腎臓がん」と関連している、似ている症状は7個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
早期の腎臓がんではあまり症状が見られません。上記の症状は進行すると見られることがあります。ただし、いずれの症状も腎臓がんの特有の症状とはいえないため、定期的に検査を受けて早期発見することが重要です。