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「胃がん・ステージ4」の症状・余命はご存知ですか?医師が徹底解説!

 公開日:2024/03/25
「胃がん・ステージ4」の症状・余命はご存知ですか?医師が徹底解説!

Medical DOC監修医が胃がんのステージ4の症状や余命・生存率・検査法・治療法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

齋藤 雄佑

監修医師
齋藤 雄佑(医師)

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日本大学医学部を卒業。消化器外科を専門とし、現在は一般外科、消化管内視鏡検査、生活習慣病を中心に診療を行っている。現在は岩切病院、高砂内科・消化器科クリニックに勤務。
日本外科学会外科専門医。日本医師会認定産業医。

「胃がん」とは?

胃がんとは、胃の内側の粘膜にがんが発生したものです。粘膜から発症し、徐々に外側、粘膜下層、固有筋層、漿膜へと進行していきます。がんが深く進行すると、近くにある大腸や膵臓、横隔膜などにも直接広がっていきます。胃がんは日本人で多く、特に男性に多いがんです。胃がんは、早期では自覚症状があまりなく、進行するまでわからないこともあります。

胃がんステージ4の症状

胃がんの進行の程度は「ステージ」として分類します。ステージは、がんの深さ、胃の近くのリンパ節への転移の有無、遠隔転移(胃から離れた臓器やリンパ節への転移)の有無により決まります。胃がんステージ4とは、胃がんの深さがかなり深く、胃の表面に出た上に、他の臓器にも広がっている状態、もしくはがんの深さにかかわらず遠隔転移が確認された状態です。

みぞおちの痛み

みぞおちのあたりに胃があります。がんが進行すると、みぞおちのあたりの痛みが出ることがあります。「キリキリ」「ズキズキ」「差し込むような痛み」など痛みの訴え方はさまざまです。また、これらの痛みは胃炎や胃潰瘍でも起こるため、区別がつきません。痛みがひどければ、早めに消化器内科を受診しましょう。

胃の不快感、違和感

胃がんの症状の一つとして、胃の不快感、違和感、吐き気などがあります。しかし、この症状も胃炎や胃潰瘍、逆流性食道炎などでも起こり、区別が困難です。これらの症状が続く場合には、放置せず一度消化器内科を受診しましょう。

食欲不振、体重減少

胃がんが進行すると、食欲がなくなって食事摂取量が減ったり、エネルギーが過剰に消費されたりすることで体重が減ります。とくに、半年〜1年で体重の5%以上の体重減少がある場合には注意が必要です。食事制限をしたわけでもないのに体重が減っている場合には、一度内科を受診することをお勧めします。

血便

胃がんができている胃粘膜から出血すると便に血が混ざることがあります。胃からの出血の場合、出血した直後の血液は赤いですが、その後胃酸によって酸化され黒っぽくなります。このため、海苔の佃煮のような真っ黒い便(黒色便)となることもあります。血便や黒色便が出た場合には、消化器内科をすぐに受診しましょう。

貧血

胃からの出血が持続すると、徐々に貧血が進みます。貧血の影響で、ふらつきが強くなり、日常生活で息切れや倦怠感を自覚することがあります。血液検査で急に貧血が進んだ、またはふらつきや息切れがあり貧血が疑われる場合にはまず内科を受診しましょう。

胃がんステージ4の余命・生存率

胃がんステージ4とは、がんが胃の表面まで進行して他の臓器に浸潤している、もしくは肝臓転移などの遠隔転移を伴ったものです。がんの余命を考える場合には余命の指標として、生存率を使用します。2014年~2015年に診断を受けた方の5年生存率の報告では、胃がんステージ4と診断された方のネット・サバイバル(がんのみが死因となる状況を仮定して計算された生存率)は1年で38.9%、2年で18.5%、3年で10.8%、4年で7.8%、5年で6.3%という結果でした。胃がん診断後1年以内で半数以上がなくなられています。ステージ3では5年生存率41.3%、ステージ2では67.2%、ステージ1では92.8%であるため、ステージ4となると急激に生存率が低下していることがわかります。なるべく早期での診断、治療が非常に大切です。胃の調子が悪い場合には、消化器内科を受診し、まず内視鏡などの検査を行いましょう。また、50歳以降で胃がんは増加し始めます。定期的に胃がん検診を行うことで早期に胃がんを発見することができます。がん検診を受診しましょう。

胃がんステージ4の検査法

胃がんが疑われた場合には、まずがんかどうかの確定診断と、がんの確定後に治療方針を決定するために進行度を調べるための検査をします。

内視鏡検査

がんかどうかの確定をするために内視鏡検査を行い、直接胃の粘膜を見ます。がんが疑われれば、病変の場所やその広がり、深さを調べます。また、がんの確定診断のために病変の一部をとり、病理検査をする生検が行われることもあります。がんと診断されれば、その深さや周囲の臓器への浸潤の有無を調べるために超音波内視鏡検査を行う場合もあります。

バリウム検査(上部消化管造影検査)

造影剤を飲んでレントゲンを撮影する検査です。本来は健診などで、胃がんを見つけるために行う検査です。とくに、胃の壁が厚く硬くなるスキルス胃がんの発見には有用な場合があります。がんの確定診断後には、内視鏡検査ではわかりにくい胃全体の形や病変の位置の確認、手術の術式の決定に用いられます。

腹部CT検査、MRI検査

胃の周囲の臓器への直接浸潤やリンパ節転移、遠隔転移の有無などを調べるために腹部CT検査や必要があればMRI検査を行います。
通常、造影剤とよばれる薬剤を点滴して、病変を見やすくして撮影します。

PET検査

PET検査とは、FDG(放射性フッ素を付加したブドウ糖)を静脈から注入して検査を行います。ブドウ糖ががん細胞に取り込まれる事を利用し、がんの遠隔転移の有無を調べます。この検査を行うことで、通常のCT検査でははっきりしないがんの分布を知ることができます。

審査腹腔鏡

胃がんが進行して腹膜に転移がある、腹膜播種が疑われる場合に行われます。全身麻酔をしておなかに小さな穴をあけ、腹腔鏡を挿入しておなかの中を直接調べます。転移が疑われる臓器の組織や腹水を採り、病理検査でがん細胞がないかを調べる検査です。胃がんステージ4が疑われ、胃の表面にがんが浸潤している可能性、周囲の臓器への浸潤の可能性が考えられる場合には、正確な病期を診断するために必要となる場合があります。
その他に、大腸内視鏡検査を行い、大腸に浸潤がないか、また大腸がんの合併がないかを調べます。

胃がんステージ4の治療法

胃がんの治療は、ステージ3までは外科手術が中心です。ステージ4は、遠隔転移もあり手術で十分に病巣をとり切れない、手術できないと考えられる病期です。このため、手術ではなく、薬物療法や放射線療法、対症療法が中心です。
薬物療法を行うかどうかについては、がんの進行具合を確認した上で患者さんの全身状態の確認が必要です。患者さんご本人にほかの病気や臓器障害(腎機能障害や肝機能障害など)の有無、全身状態が保たれているかが大変重要です。全身状態に関しては、患者さんの元気さをパフォーマンスステータス(PS)という指標により評価します。「歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッドの外で過ごす」~「まったく問題なく活動できる。発症前と同じ日常生活が制限なく行える」程度の全身状態であれば、薬物療法を選択する可能性があります。しかし、これ以上に全身状態が悪い場合には、薬物療法に耐えられないと考え、薬物療法を行わずに他の治療を選択する可能性が高いです。特に高齢者の胃がんの場合には全身状態の評価が重要です。
以下に進行胃がんの治療として行われる治療法を解説いたします。

薬物療法(化学療法)

胃がんの薬物療法で使用する薬には、細胞が増殖するのを抑える「細胞障害性抗がん剤」、がんの増殖にかかわるタンパク質を標的にしてがんを攻撃する「分子標的薬」、免疫ががん細胞を攻撃する力を保たせる「免疫チェックポイント阻害薬」があります。どの薬を使用するかについては、患者さんの状態、がんの進行状況など総合的に検討して決められます。また、点滴や入院の必要性、通院の頻度なども患者さんごとに異なりますので、わからない点があれば主治医に確認をしましょう。

副作用に対しての治療

細胞障害性抗がん剤は、がん細胞だけではなく正常な細胞にも影響を与えるため、口内炎や嘔気、脱毛、下痢、骨髄抑制による白血球の減少、肝機能障害や腎機能障害などが起こることがあります。これらの副作用にはなるべく苦痛なく生活が送れるよう薬剤の減量や変更が検討されます。特に嘔気の副作用に対しては多くの対策がされ、これまでの抗がん剤よりも、症状が出にくくなっています。

緩和ケア

がんによる身体的な痛みをとることはもちろんのこと、がんになることによって生じた仕事や将来、家族への不安など、精神的な痛みを軽減させるために行うものです。がんの治療とともに身体的・精神的な苦痛があるときは、主治医へ相談しましょう。

支持療法

がんそのものによる症状や治療に伴う副作用や合併症などを軽くするために行う治療です。例えば、胃がんの進行に伴い消化管が閉塞しそうな場合には狭窄部にステントと呼ばれるチューブを入れて、消化管を広げる治療があります。また、腹水が溜まってしまいおなかが張ってつらい時に、腹水を抜く治療をします。

リハビリテーション

リハビリをすることにより、体のダメージに対する回復力を高め、身体の残存機能の維持・向上を目的とします。治療中は体を動かすことが減ってしまい、思った以上に筋力が低下して、身体機能が下がります。体に無理がかからない範囲で、運動を続けることは非常に大切です。主治医に確認をしながらリハビリに取り組みましょう。

「胃がんステージ4」についてよくある質問

ここまで胃がんステージ4の症状や余命・生存率・検査法・治療法などを紹介しました。ここでは「胃がんステージ4」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

胃がんステージ4の平均余命はどれくらいですか?

齋藤 雄佑齋藤 雄佑 医師

胃がんステージ4の方での余命を考える場合には、余命の指標として、生存率を使います。2014年~2015年に診断を受けた方の5年生存率の報告では、胃がんステージ4と診断された方のネット・サバイバル(がんのみが死因となる状況を仮定して計算された生存率)は1年で38.9%、2年で18.5%、3年で10.8%、4年で7.8%、5年で6.3%という結果でした。胃がん診断後1年以内で半数以上がなくなられています。平均余命を考えた場合には、1年に満たない可能性が考えられます。

70代以上の高齢者が胃がんステージ4と診断された場合、余命はどれくらいですか?

齋藤 雄佑齋藤 雄佑 医師

70代の余命を考える場合には、上記と同様に生存率を参考に考えると良いでしょう。上でご紹介した報告では、胃がんステージ4の患者さんの平均年齢は70.3才です。このため、70代以上と限定しても大きく変化はないと考えられます。先ほどと同じく1年で38.9%と半数以上が亡くなられていることを考えると、余命としても1年の生存が非常に厳しい可能性があります。正確には、その方の全身状態により変わりますので、主治医に確認をし、自分に合った治療の選択をされることが良いでしょう。

まとめ 胃がんステージ4の治療は主治医とよく相談を!

胃がんは日本人に多いがんの一つです。早期の胃がんの生命予後は改善しています。しかし、ステージ4の進行がんでは、いまだに5年生存率は6.3%と低いのが現状です。まずは早期の段階で胃がんを見つけることが非常に大切です。胃がんは早期で症状が出にくいことも特徴です。また胃の調子が悪くとも胃炎などと区別がつかず放置されることも少なくありません。50歳以上では胃がん検診を利用して、定期的にチェックをしましょう。そして、胃がんステージ4と診断された場合には、主治医とよく話し合い自身の体調を考えた上で治療を選択しましょう。患者さんの状態は一人ひとり違います。自身の状態を一番よく知る主治医と相談をするのが一番です。医師より提示された標準治療は、その方の病状を考えたときに今までの報告の蓄積から考えた一番良いとされる治療法です。疑問があれば質問をしながら、納得のいく治療を受けることが大切です。
また、判断に迷い、他の専門医の意見を聞きたい場合には、「セカンドオピニオン」という方法を利用することもできます。

「胃がんステージ4」と関連する病気

「胃がんステージ4」と関連する病気は8個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

内分泌代謝科の病気

血液科の病気

  • 血液疾患(骨髄異形成症候群、白血病など)

胃がんステージ4に伴い胃の症状が出た場合でも胃炎、胃潰瘍、逆流性食道炎などの疾患となかなか区別がつきません。また、血便や便に血が混ざる場合には大腸からの出血の可能性もあります。さらに貧血や体重減少を来たすと血液疾患や甲状腺疾患の可能性もあります。これらはなかなか自分では区別がつきません。まず内科を受診しましょう。胃の症状や血便など見られた場合には消化器内科が専門です。

「胃がんステージ4」と関連する症状

「胃がんステージ4」と関連している、似ている症状は7個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

これらの症状は単独では他の病気と区別がつきません。症状が続く時には、まず内科を受診しましょう。便に血が混ざる場合には、早急に消化器内科の受診をしましょう。出血の原因は、胃がんではないかもしれませんが、早急に消化管出血の原因を調べる必要があります。

この記事の監修医師