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「直腸がんのステージ別・生存率」はご存知ですか?症状や大腸がんとの違いも解説!

 公開日:2023/11/26
「直腸がんのステージ別・生存率」はご存知ですか?症状や大腸がんとの違いも解説!

直腸がんとは肛門からすぐ近くにある直腸という箇所に発生するがんです。

直腸がんで自覚しやすい症状として出血があります。便が直腸を通る際にがんの表面がこすれて便に血が付きます。鮮血に近い赤い色をしているのですぐに気づくことができるでしょう。

しかし、直腸がんが発生する粘膜には痛覚がないため、出血しても痛みがなく、痔などと思い込みそのまま放置してしまうことも少なくありません。

直腸がんは早期に発見できれば大腸内視鏡で切除できる可能性があり、患者さんの身体的負担が非常に少なくなります。

今回は直腸がんと結腸がんの違い・直腸がんの病気の進行度とステージ・ステージごとの生存率などについて解説します。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

直腸がんとは?

直腸がんとは肛門の近くにある直腸という臓器に発生するがんです。
直腸は肛門の直前にある臓器で、肛門に対してほぼまっすぐに位置しており、便を溜める役割があります。長さとしては15〜20cm程度の臓器です。この直腸の内壁に発生するがんを直腸がんといいます。

直腸がんと大腸がん・結腸がんとの違い

直腸がんと大腸がん・結腸がんとの違いは、がんが発生する箇所の違いです。詳しく説明する前に、大腸の区分について解説します。
大腸は両端が小腸・肛門と繋がる長さ1.5〜2m程の消化器官です。胃から順番に消化吸収され送られてきた食べ物から、水分やナトリウムを吸収して便にする役割がある臓器です。大腸は結腸と直腸の2つに区分されます。
結腸はさらに、小腸の回盲部から順に上行結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸の4つに区分されます。結腸の一つであるS状結腸と続いているのが直腸です。直腸はさらに直腸S状部・直腸上部・直腸下部の3つに区分されます。以上が大腸の構造です。
結腸と直腸をひとまとめにしたものを大腸といいます。大腸の区分について分かったところで、直腸がんと大腸がん・結腸がんの違いについて説明します。
すでに区分からもわかる通り、直腸がんと大腸がん・結腸がんの違いは、がんが発生した箇所による名称の違いです。直腸に発生したがんは直腸がん、結腸に発生したがんは結腸がんと呼び、これら大腸に発生したがんをひとまとめに大腸がんと呼びます。名称は異なりますが、がんの発生や進み方は同じです。

直腸がんの症状

直腸は大腸の中で最も肛門に近い箇所です。そのため他の大腸がんよりも出血の症状で発見される場合が多いです。他の大腸がんからも出血は見られます。
しかし、肛門から遠い箇所からの出血ほど排便までに時間がかかるため気付きにくくなります。直腸は肛門に最も近い箇所なので、直腸がんから出血すると鮮血に近い状態で血が便に付着するため、出血の症状に気づきやすいのです。
出血以外の直腸がんの症状としては、繰り返す便秘・下痢・便が細くなる・残便感・お腹の張り・お腹の不快感などがあります。

直腸がんのステージは病気の進行度

直腸がんは病気の進行度によってステージ分けされています。ステージは0から4までの5段階あり、進行度が増すごとに数字が大きくなります。がんの進行度を判断するために用いられるのがTNM分類です。

  • T因子:がんの壁到達度(がんの大きさ)
  • N因子:周囲リンパ節への転移の有無
  • M因子:他臓器への転移の有無

この3つの因子からステージが判断されます。以下で直腸がんのステージごとの病気進行度について説明します。

ステージ0:がんが大腸粘膜に留まる

ステージ0は直腸に発生したがんが大腸粘膜に留まっている状態で、最も早期に発見された場合のステージです。直腸は他の結腸と同じく内壁に粘膜を有する構造をしています。大腸に発生するがんはこの粘膜から発生するのです。
直腸がんの発生機序は主に2つあります。直腸内壁の粘膜に発生する腺腫と呼ばれる良性のポリープががん化する場合と、粘膜に直接がんが発生する場合です。これらの原因で発生したがんが、粘膜および粘膜下層までに留まっている状態がステージ0です。

ステージ1:がんが固有筋層まで留まる

ステージ1は直腸に発生したがんが粘膜層を抜け固有筋層まで達し留まっている状態で、かつリンパ節転移がない状態です。直腸や結腸などの大腸の内壁は6層構造をしており、内側から粘膜・粘膜筋板・粘膜下層・固有筋層・漿膜下層・漿膜となっています。なお、上行結腸・下行結腸・上部直腸では漿膜に覆われておらず固有筋層までしかない箇所があります。
直腸がんのステージ1は、がんが4層目の固有筋層までに留まっている状態です。直腸や結腸などの大腸に発生するがんは、粘膜下層までに留まるがんを「早期がん」、固有筋層以降の深さに達しているがんは「進行がん」と定義されます。

ステージ2:がんが固有筋層を超えて浸潤する

直腸がんが固有筋層を超えて浸潤している状態で、かつリンパ節転移や他臓器への転移を認めないものがステージ2です。浸潤とはがんが大きくなりながら壁の中に食い込んでいく状態を表します。
固有筋層を超えて浸潤している状態なのでステージ2は進行がんです。直腸がんのステージ2はがんの深達度によって3つに分類されます。

  • II a:がんが固有筋層を超えている
  • II b:がんが漿膜表面に接しているか、もしくは漿膜を破って腹腔内に露出している
  • II c:がんが直接他の臓器へ浸潤している

がんが固有筋層を超えているものと直接他の臓器に浸潤しているものとでは全く別の進行度に感じますが、リンパ節転移や他臓器への転移がなければこれらは全てステージ2に分類されます。

ステージ3:がんがリンパ節へ転移する

がんの大きさや深達度にかかわらず、リンパ節への転移が認められる場合はステージ3に分類されます。ステージ3では他臓器への転移は認めません。
直腸がんの大きさが大きくなるほど・深達度が深くなるほどリンパ節転移しやすくなります。なお、粘膜下層まで浸潤している病態の10%程度に転移がみられるとされています。つまり、ステージ1程度の深達度であってもリンパ節に転移するケースがあるのです。
直腸がんなどの大腸がんの場合、がんがまず初めに転移するリンパ節は腸の壁のすぐ近くにある「腸管傍リンパ節」です。次に少し離れた「中間リンパ節」に転移し、さらに広がると腸管へ血液を送る血管の根元にある「主リンパ節」にまで転移します。

ステージ4:がんが他臓器に転移する

がんの大きさ・深達度・リンパ節転移などに関係なく、がんが他の臓器に転移している場合にはステージ4に分類されます。直腸がんが転移しやすい臓器は、肝臓・肺・腹膜・脳・骨などです。この中で最も転移が多い臓器が肝臓です。
直腸の栄養血管は下腸間膜動脈から分岐した上直腸動脈、内腸骨動脈から分岐した中直腸動脈・下直腸動脈の3つからなります。直腸に流れた動脈血は静脈へと流れ戻っていくのですが、直腸などの消化器官の静脈は肝臓に流入する門脈へと集まります。そのため、直腸がんの他臓器転移では血液を介した肝臓への転移が最も多いのです。
次いで多いのが肺への転移です。直腸のがん細胞が血液に乗ってさらに広がることで、腹膜・脳・骨といった直腸から離れた箇所へと広がっていきます。このように他臓器への転移が認められる場合には、たとえ直腸のがんが小さくリンパ節転移を起こしていなくともステージ4と判断されます。

直腸がんのステージ別生存率

ここまで直腸がんの進行度とステージについて説明しました。では、ステージ別の生存率はどのくらいなのでしょうか。
がんの生存率は「5年生存率」で表します。5年生存率とは、がんの治療を受けることでどのくらいの割合の命が救えるのかを表した指標です。
100%に近いほど救える確率が高く、0%に近づくほど治療が困難ながんとされます。直腸がんのステージ別の5年生存率は以下の通りです。

  • ステージ0:97.6%
  • ステージ1:90.6%
  • ステージ2:83.1%
  • ステージ3:73%(転移度によって53.5%)
  • ステージ4:14.8%

数値から分かる通り、ステージが進むほど治療が困難となります。直腸がんに限らずがんは早期に発見・治療するほど治療しやすく助かる確率が上がりますが、早期の直腸がんに自身で気づくことは困難です。
なぜなら、直腸などの大腸の粘膜には痛覚がないため、早期がんが発生しても自覚症状が現れないからです。症状が現われたときにはすでに進行しているケースも少なくありません。
直腸がんを早期に発見するためにも、がん検診などの健康診断を定期的に受けてチェックすることが非常に重要です。

直腸がんの診断方法

直腸がんの診断方法には直腸指診・注腸造影・大腸内視鏡の3つがあります。直腸がんは早期に発見するほど治療しやすく助かる確率が高くなります。
しかし、直腸の粘膜には痛覚がないため、ステージ0やステージ1のような早期がんに自身で気づくのは難しいです。直腸がんを早期に発見するには、医療機関にて検査を受けることが非常に重要です。
ここでは直腸がんの検査・診断方法について解説します。

直腸指診

直腸指診とは医師が肛門から指を入れて直接直腸を触診する検査方法です。直腸がんを発見する目的だけではなく、痔などの肛門疾患を疑う際にも行われます。直腸指診を行う際は医師が薄手の手袋をはめ、指に表面麻酔のキシロカインゼリーを塗ってから肛門に指を入れて直腸を触診します。
直腸指診で検査できるのは肛門から指の届く約10cmの範囲です。大腸全体のがん検査としては範囲が不十分です。しかし、直腸下部の進行がんでは直腸指診だけで判断がつくとされています。直腸指診は検査が容易で低侵襲な上に正診率が高いため、直腸がんの診察において非常に重要な検査です。

注腸造影

注腸造影とは、肛門からバリウムと空気を入れて行うレントゲン検査です。胃バリウム検査の大腸版だとイメージしていただければ分かりやすいかと思います。
注腸造影検査ではまず初めに、糞便などの大腸の内容物を綺麗に洗い流すために下剤を使用します。内容物が残っていると偽陽性の原因となるためです。大腸内が綺麗になったらレントゲン室の透視台の上に横になり、肛門からバリウムと空気を入れながら観察していきます。
注腸造影ではたとえポリープなどが発見できたとしても処置はできません。そのため、ポリープの切除を希望する場合には初めから大腸内視鏡検査をする場合が多いです。しかし、癒着などが原因で大腸内視鏡では虫垂や回盲部まで到達できないという場合や、大腸がんの大きさを観察する場合には注腸造影が用いられます。

大腸内視鏡

大腸内視鏡は肛門から大腸専用のカメラ(スコープ)を挿入して大腸内壁を直接観察する検査です。胃カメラの大腸版で、胃カメラよりも太く長いカメラが使われます。
注腸造影同様、前日の夜から絶食にて下剤を使用し、大腸内の糞便を綺麗に洗い流してから検査を行います。大腸内視鏡では大腸内壁を直接見ることができるため、ポリープやがんの形状を観察しやすいというのがメリットです。また、ポリープや早期がんなど、大腸内視鏡下で切除可能な病変はその場で切除・治療が可能です。

直腸がんの治療方法

直腸がんの治療方法には大腸内視鏡による切除・手術・抗がん剤治療・放射線治療などがあり、ステージや病状によって治療方法が決められます。粘膜に留まる早期がんは大腸内視鏡検査によるポリペクトミーにて切除可能です。
粘膜下層まで浸潤している場合にはEMRやESDといった手法が用いられます。これらの手法も大腸内視鏡下で行われます。粘膜下層まで浸潤している場合、10%程度の確率でリンパ節に転移している場合があるため、生検の結果によっては直腸切除手術が必要となるでしょう。
固有筋層以降にまでがんが浸潤している場合には手術が適用されます。直腸は骨盤腔内の狭い空間にあり、周りに生殖器官や膀胱といった臓器のほか、重要な動静脈や尿管などが存在するため他の大腸がん手術に比べて難易度は高くなります。直腸がんができた位置によってはがん切除後の直腸と肛門を吻合するのが難しいため、永久人工肛門となる可能性があるでしょう。
原発巣や他臓器への転移巣が手術で取り切れない場合には抗がん剤治療や放射線治療が適用されます。

直腸がんのステージについてよくある質問

ここまで直腸がんの病気の進行度・ステージ別生存率・診断方法などを紹介しました。ここでは「直腸がんのステージ」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

直腸がんの早期発見のメリットは?

直腸がんの早期発見のメリットは、高い確率で治る見込みがあることです。その確率は80%以上に及びます。自覚症状が現れてから検査を行い直腸がんと判明した場合では、直腸がんが進行している可能性があるため、早期発見が何より重要です。

定期検診の頻度は?

直腸がんの初期は自覚症状がほとんどないため、毎年定期検診を受けることが望ましいです。50歳代から年齢を重ねるごとに発症する傾向が高いため、早期発見のためにも40代になったら毎年定期検診を受けましょう。

編集部まとめ

直腸がんは肛門のすぐそばにある直腸に発生するがんです。肛門に近いため、直腸がんでは便に鮮血に近い血液が付くといった症状などが見られます。

直腸がんは結腸がんなどの他の大腸がんに比べ、便についた血液を見つけやすい傾向にありますが、痔の出血と思い込み放置してしまう場合があります。

早期に発見するほど治療・完治しやすくなるので、直腸がんを疑う症状が見られたらすぐに医療機関を受診しましょう。

また、便潜血検査や大腸内視鏡検査などを定期的に受けるのもおすすめです。

特に、大腸がん検診の対象となる40歳以上の方は欠かさずに検診を受け、異常が見られたら早めに医療機関を受診しましょう。

直腸がんと関連する病気

「直腸がんの症状」と関連する病気は9個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

肛門科の病気

消化器科の病気

直腸がんの症状と関連している、もしくは似ている症状が現れる疾患には上記のようなものがあります。直腸がんにはそれ特有の症状というものがないため、疑いのある症状が現れたら必ず医療機関で検査を受けましょう。

直腸がんの症状と関連する症状

「直腸がんの症状」と関連している、似ている症状は12個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 便に血が付く
  • 便が細くなる
  • 便が出づらい
  • 排便したのに便が残っている感じがする
  • 便秘や下痢を繰り返す
  • 食欲が出ない
  • 食べても吐いてしまう
  • 右上腹部が痛い
  • 胸が苦しい

直腸がんによって引き起こされる症状には排便などのお腹に関する症状が多いです。直腸がんが肝臓・肺・腹膜・脳・骨などに転移すると、上腹部や胸の痛みなど転移した箇所に関係する症状が見られるようになります。

この記事の監修医師