「大腸がんの血便」はどんな色かご存知ですか?医師が徹底解説!


監修医師:
齋藤 雄佑(医師)
日本外科学会外科専門医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。
目次 -INDEX-
「大腸がん」とは?
大腸がんは、日本人に非常に多いがんの一つです。大腸とは、小腸の終わりから肛門まで続く長い消化管のことで、「結腸」と「直腸」に分かれます。大腸がんは、この大腸の粘膜にできる悪性腫瘍で、放置すると周囲の臓器やリンパ節、さらには肝臓や肺などへ転移する可能性もあります。男女ともに罹患率・死亡率が高く、特に40代後半から増加し、60代以降で急激に多くなるのが特徴です。早期の段階では自覚症状が少なく、検診や便潜血検査で偶然見つかることも多いです。進行すると、血便や下血、便秘と下痢を繰り返すなどの症状が現れます。「血便の色」は出血した場所(部位)によって決まるの?
血便とは、便に血が混ざる、あるいは血が付着して出てくる状態を指します。一口に「血便」といっても、その色や混ざり方はさまざまです。出血の原因がどこにあるかによって、血の色が変化するのが特徴です。たとえば、肛門に近い部分で出血した場合は、空気や消化液に触れる時間が短いため、鮮やかな赤い色(鮮血)となります。一方、胃や小腸など上部消化管で出血すると、血液が胃酸など消化酵素と反応し、黒っぽいタール状の便(黒色便)になる事が多いです。大腸がんの場合は、その出血部位によって血便の色が異なります。つまり、「どんな色の血便が出ているか」で、ある程度は出血している場所を推測できます。大腸がんによる血便の色とその特徴:出血部位ごとの違い
大腸がんができた場所によって、血便の色や特徴に以下のような傾向が見られることがあります。鮮血便
直腸がんや肛門がんでは、鮮血便(鮮やかな赤色の便)がでることが多いです。出血した血液がほとんど酸化されないため、鮮やかな赤い血が便やトイレットペーパーに付くことがあります。痔の出血と似て見えることもあり、「痔だろう」と思って放置してしまうケースも少なくありません。しかし、直腸がんの場合は出血だけでなく、「残便感」や「排便時の痛み」「便が出にくい」といった症状を伴うことがあります。鮮血だからといって痔と決めつけず、医療機関で検査を受けることが大切です。暗赤色便
出血の場所がS状結腸よりも奥にある左結腸の場合、便の色は「暗赤色便(あんせきしょくべん)」と呼ばれる赤黒い、レンガのような色になることがあります。肛門からある程度距離があるため、血液が排出されるまでに少し時間がかかり、変色が始まるためです。鮮血便とは異なり、血液が便と混じり合った状態で見つかることが多いのも特徴です。粘液(ドロッとした粘り気のある分泌物)が血液と混じって排出される「粘血便(ねんけつべん)」として見られる場合もあります。黒色便
右側の大腸がんでは、出血しても肛門までの距離が長く、血液が腸の中を通過する間に時間がかかります。そのため、血液が酸化・分解されて黒色便(黒っぽい便)になることが多いです。肉眼では血液が混ざっているか分かりづらく、便潜血検査で初めて異常が見つかるケースもあります。また、右側結腸がんでは出血よりも「貧血」や「倦怠感」といった症状で気づくことが多く、目立つ血便がなくても注意が必要です。血便で大腸がんと間違われやすい病気
痔(痔核・裂肛)
最もよくある原因が痔による出血です。排便時に鮮やかな赤い血が便やトイレットペーパーに付着するのが特徴としてみられます。痔の場合は、痛みやかゆみ、肛門の違和感を伴うことが多く、便に血が混ざるというよりは「便の外側に血が付く」パターンが多いです。 ただし、痔と大腸がんが同時に存在することもあります。長期間出血が続く場合や、以前と出血の様子が違うと感じる場合は、内視鏡検査を受けることをおすすめします。大腸ポリープ
大腸ポリープは、大腸の粘膜にできるイボのようなものです。多くは良性ですが、一部はがん化することが知られています。ポリープの表面が便でこすれて出血し、血便の原因となることがあります。大腸憩室出血
大腸憩室(だいちょうけいしつ)とは、大腸の壁の一部が外側に袋状に飛び出したものです。この憩室の血管が破れると「憩室出血」を起こし、時には大量の血便(鮮血が多い)が出ることがあります。時に命の危険があるほどの出血をきたすことがあるので、多くの鮮血が出た場合はすぐに救急外来を受診してください。炎症性腸疾患
潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん)やクローン病といった「炎症性腸疾患」でも、血便が見られます。これらは大腸の粘膜に炎症や潰瘍(ただれ)が起こる病気です。 特徴として、単なる血便だけでなく、血液と粘液、膿(うみ)が混じった「粘血便(ねんけつべん)」や、激しい下痢、持続する腹痛、発熱などを伴うことが多いです。こんな血便は要注意!すぐに病院へ行くべき受診の目安
血便は、大腸がん以外にもさまざまな病気が原因で起こります。特に以下のような病気は、大腸がんと症状が似ているため注意が必要です血便に気づいたら、消化器内科や肛門科へ
注意すべき症状は、 ・意識がもうろうとする ・めまいや立ちくらみがする ・冷や汗が出る(貧血やショック状態のサイン) ・便器の水が真っ赤に染まるほどの大量の出血 ・我慢できないほどの激しい腹痛や、お腹が硬く張る感じ ・血便とともに、高熱が出ている ・繰り返し血便が出る、または出血量がだんだん増えている などがあります。このような症状を伴う場合は、緊急性が高い可能性があります。すぐに医療機関を受診するか、状況によっては救急車を要請することも検討してください。「大腸がんの血便の色」についてよくある質問
ここまで大腸がんの血便の色について紹介しました。ここでは「大腸がんの血便の色」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
血便の色が真っ赤なら痔だと決めつけても良いですか?
齋藤 雄佑 医師
いいえ、決めつけによる安易な判断はとても危険です。血便の色が真っ赤(鮮血)である場合、最も多い原因は痔であることは事実です。しかし、肛門に非常に近い大腸がんである「直腸がん」でも、痔とまったく同じような鮮血の出血が起こることがあります。実際、「痔だと思っていたら進行した直腸がんだった」というケースは少なくありません。また、痔と大腸がんを同時に発症している可能性もゼロではありません。血便の色だけで自己判断することは非常に危険ですので、必ず専門医の診察を受けてください。
血便が出る前に、どのような症状がありますか?
齋藤 雄佑 医師
大腸がんは、早期の段階では血便を含め、自覚症状がほとんどないことが多いです。進行してがんが大きくなってくると、血便以外の症状として、「便通の変化(便秘と下痢を繰り返すようになった)」「便が細くなった」「残便感(便がすっきり出きらない感じ)」「腹痛」「お腹が張る感じ(腹部膨満感)」などが現れることがあります。また、がんから持続的に出血することで貧血が進行し、「だるさ」「息切れ」「めまい」などの症状で初めて気づかれることもあります。
肉眼では血便が見えなくても、大腸がんは隠れていますか?
齋藤 雄佑 医師
はい。実際には肉眼で分からないほどの微量な出血をしていることがあります。そのため、健康診断などで行われる「便潜血検査」が重要です。便潜血検査が陽性だった場合は、必ず大腸内視鏡検査で確認する必要があります。血が見えなくても、「便潜血陽性=何らかの出血がある」ということを意味しており、見過ごしてはいけません。
まとめ
血便は、多くの方が最初に気づくサインの一つです。しかし、その色や混ざり方、頻度によって原因はさまざまで、大腸がんのサインであることも少なくありません。鮮やかな赤い血だから痔、暗い血だから胃からの出血と決めつけず、どんな血便でも一度は医療機関を受診することをおすすめします。特に40歳以降や家族に大腸がんの既往がある場合は、定期的な大腸内視鏡検査が重要です。早期の大腸がんは自覚症状がほとんどなく、血便が唯一の手がかりになることもあります。自分の体からのサインを見逃さず、早めに受診することが、命を守る第一歩です。
「大腸がん」と関連する病気
「大腸がん」と関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
「大腸がん」と関連する症状
「大腸がん」と関連している、似ている症状は8個ほどあります。
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