FOLLOW US

目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. コラム(医科)
  4. おしりから「出血」 何科を受ければいい? どんな検査が必要?

おしりから「出血」 何科を受ければいい? どんな検査が必要?

 更新日:2023/03/27
おしりから「出血」 何科を受ければいい? どんな検査が必要?

突然、おしりから出血。そんなときは、一体何科で診てもらったら良いのでしょうか。また、そこから病気を見つけてもらうには、どんな検査を受ける必要があるのでしょうか。お茶の水駿河台クリニック院長の山田篤生先生に教えてもらいました。

山田 篤生医師

監修医師
山田 篤生(お茶の水駿河台クリニック 院長)

プロフィールをもっと見る

山口大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院勤務を経て2021年より現職。大学病院で得た最新の知識と技術を生かして、苦痛が少なく安全で正確な内視鏡検査を提供し、患者の不安を解消できるよう心がけて検査を行っている。日本消化器内視鏡学会 専門医・指導医、日本消化器病学会専門医・指導医。

おしりから出血! なぜ?

おしりから出血! なぜ?

編集部編集部

おしりから出血することがあるのですが。

山田 篤生医師山田先生

おしりからの出血には、さまざまなシチュエーションが考えられます。排便のあとトイレットペーパーに血液がつくという場合もあるでしょうし、便そのものに血液が混ざる場合もあるでしょう。または排便のとき、血液がポタポタとたれることもあるでしょうし、トイレで排便しようとしても血液しか出ない場合もあるでしょう。このように、さまざまな状況が考えられるので、どういったシチュエーションで出血したかを記録しておくと、のちほど、医師の診察を受けたときに役立ちます。

編集部編集部

そもそも、おしりから出血するのはどうしてですか?

山田 篤生医師山田先生

基本的に、おしりから血が出ている場合には、口から肛門に至るまでの消化管のどこかで出血が起きている可能性が考えられます。「おしりから出血」と一口にいっても、大きく分けて「下血」と「血便」があります。「下血」とは、胃や十二指腸などの上部消化管から出血すること。そして、十二指腸より下の、大腸や肛門といった下部消化管から出血することを「血便」といいます。

編集部編集部

下血と血便では、出血の場所が違うのですね。

山田 篤生医師山田先生

二つを見分ける簡単な方法は、血液の色です。下血の場合、出血してから体内に血液が止まる時間が長く、また、胃酸の影響を受けることも多いので、血液の色が暗黒色になります。一方、血便の場合は、出血してからそれほど時間が経過していないため、鮮赤色になることが多いですね。

何科を受診すべき?

何科を受診すべき?

編集部編集部

突然、おしりから出血した場合はどの科目を受診すれば良いのでしょうか?

山田 篤生医師山田先生

排便時に肛門からぽたぽたと出血したり、トイレットペーパーに血液がついたりする場合には、痔の可能性が高いので肛門科がスムーズでしょう。下血(暗黒色便)なら胃や十二指腸などの上部消化管が原因となっていますし、また、血便(鮮赤色便)なら十二指腸より下の大腸や肛門といった下部消化管が原因となっていますので、消化器内科を受診するとよいでしょう。

編集部編集部

どこから出血しているのかわからない場合はどうしたらいいですか?

山田 篤生医師山田先生

その場合は、できる限り早く消化器内科を受診しましょう。消化器内科であれば、食道・胃・十二指腸・大腸などをまんべんなく診察してもらえます。もし近隣に消化器内科がなければ、内科や胃腸科でも大丈夫です。

編集部編集部

できるだけ早く診察を受けた方が良いのですか?

山田 篤生医師山田先生

出血の量や頻度にもよりますが、排便しようとしても血液しか出てこないという場合、1日に3回以上出血があった場合、ふらつきなどの貧血症状がある場合は、消化器内科や救急外来などを急いで受診することをお勧めします。

編集部編集部

診察にあたり、おしりから出血した時の状態を説明する必要がありますよね。どういうことを話せばいいのですか?

山田 篤生医師山田先生

何回出血をしたのか。血液は便に混ざっていたのか、それとも紙についた程度なのか。血液の色は鮮やかな赤色か、それとも黒ずんでいるのか。また、お尻に痛みがあるのか、ないのか。血液に混ざって粘液も出たのかどうかなど、できるだけ細かく説明しましょう。医師にきちんと説明できるよう、おしりから出血した時の状況をメモに残しておくと良いでしょう。さらに、下痢をしているか、腹痛があるかなど、出血に付随する情報も記録しておきましょう。

編集部編集部

いろいろと記録しておかないといけないのですね。

山田 篤生医師山田先生

一番簡単なのは、出血したときに便器のなかを撮影しておくことです。そうすれば色や出血量などを、医師がリアルに観察することができますから、正しく診察をすることができます。

出血時の検査項目は?

出血時の検査項目は?

編集部編集部

おしりから血液が出た場合は、どのような検査を行うのですか?

山田 篤生医師山田先生

おしりからの出血でもっとも多いのは、痔です。痔が疑われる場合は、肛門付近から出血しているということなので、直腸診を行うのが一般的です。これは医師が肛門から指を入れ、視診、触診によって患部を診察します。肛門や直腸の状態を直接たしかめ、痔核や腫瘍がないかも確認します。また、肛門鏡という金属の筒を挿入して、より深く痔の状態を確認します。

編集部編集部

そのほかにはどんな検査が行われますか?

山田 篤生医師山田先生

黒色の便が排泄される下血の場合には、胃や十二指腸など上部消化管での出血が疑われるため、胃の内視鏡検査を行います。これにより、出血している部分を特定することができますし、粘膜を直接採取して生検に出すこともできます。また、その場で止血治療を行うこともできます。

編集部編集部

下部消化管からの出血が疑われる場合は?

山田 篤生医師山田先生

鮮血色の便が排泄される場合は、大腸など下部消化管での出血が疑われるため、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を行います。大腸カメラでは、肛門から内視鏡を挿入し、直腸から盲腸までの大腸全域の粘膜を直接観察します。この検査をすることで、出血している部分を特定することができますから、すぐに止血治療を行うこともできます。また、病変や炎症がないかどうか確認したり、組織を採取して生検を行ったりすることができます。

編集部編集部

受診したその日に検査を行うことができるのですか?

山田 篤生医師山田先生

大量に出血している場合など、医師が緊急で検査を行う必要があると判断したら、その場で検査を行うこともあります。ただし本来、大腸カメラを行うときは、事前に大量の下剤を飲み、腸の中をきれいにしておく必要があります。緊急の場合はすぐに下剤を飲んでもらい、検査を行いますが、もしお尻に血液がついた程度であれば、改めて検査日を予約していただくこともあります。

編集部編集部

上部消化管でも下部消化管でも、内視鏡検査を受ける必要があるのですね。

山田 篤生医師山田先生

おしりから出血した場合は、上部消化管でも下部消化管でも内視鏡検査を受ける必要があります。内視鏡検査を受けることで出血する原因を見つけることができるからです。また、痔や潰瘍などの良性の病変から出血することもありますが、胃がんや大腸がんなど悪性の病変から出血することもあるため出血する原因を見つけることはとても大切です。内視鏡は辛いというイメージがあるかもしれませんが、静脈麻酔を使ってウトウトとした状態で検査を行うなど、苦しくない方法もあります。検査が怖い人は、医師に相談してみると良いでしょう。

編集部編集部

最後にメッセージをお願いします。

山田 篤生医師山田先生

おしりから出血した場合、「きっと痔だろう」と油断しがちです。しかしあとで検査を行ってみると、胃がんや大腸がんが見つかるケースも少なくありません。しかも、がんである場合におしりから出血しているということは、かなりがんが進行している状態であることも多いのです。おしりから出血しているというのは緊急性の高い異常事態と捉え、早急に医師の診察を受けましょう。また痔がある場合でも、奥に大腸がんが見つかることもありますから、痔の有無にかかわらず、大腸カメラを受けることをお勧めします。

編集部まとめ

おしりから出血すると焦るのは当然のこと。しかし「出血は体からのサイン」ととらえ、なるべく早めに医師の診察を受けましょう。その際には出血したときの様子を記録しておくことも忘れないようにしましょう。

医院情報

お茶の水駿河台クリニック

お茶の水駿河台クリニック
所在地 〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台2丁目1-47 廣瀬お茶の水ビル2階
アクセス JR「御茶ノ水駅」御茶ノ水橋口から徒歩2分
地下鉄丸ノ内線「御茶ノ水駅」から徒歩4分
地下鉄千代田線「新御茶ノ水駅」B1出口から徒歩4分
診療科目 放射線科、一般内科、消化器科

この記事の監修医師