「大腸がん検診」は何歳から受けるべき? 検査の頻度や費用目安を医師に聞く

「便潜血検査って何を見ているの?」「大腸カメラは本当につらい?」と疑問を抱きながら、大腸がん検診を受けるかどうか悩んでいる方は多いのではないでしょうか。大腸がんは初期症状が出にくく、進行すると命に関わりますが、検診を受けることにより早期発見・早期治療につながります。今回は、大腸がん検診の流れや費用、便潜血検査と大腸カメラの違い、検査のタイミングや頻度について、センター南消化器内科・内視鏡クリニック院長の中村大樹先生に詳しく解説していただきました。

監修医師:
中村 大樹(センター南消化器内科・内視鏡クリニック)
大腸がん検診の方法とメリット・デメリット

編集部
大腸がんの検査はどのような方法でおこなわれますか?
中村先生
一般的に大腸がん検診では、最初に「便潜血検査」がおこなわれます。これは便の中に微量な出血が含まれているかどうかを調べる検査で、自宅で採便し提出するだけで済む検査です。便潜血検査が陽性だった場合には、精密検査として「大腸内視鏡検査(大腸カメラ)」が推奨されます。大腸カメラでは、医師が大腸の内部を直接診て、病変があるかどうかを確認し、小さなポリープなどが見つかった場合にはその場で切除することも可能です。
編集部
大腸がん検診を受けるメリットを教えてください。
中村先生
大腸がんは早期に発見すれば、ほとんどが完治可能とされるがんです。便潜血検査で陽性となり、大腸カメラをおこなうことで、がんやその前段階であるポリープを早期に見つけることができます。小さなポリープであれば、その場で切除することで将来的な大腸がんのリスクを確実に下げることが可能です。また、症状が出る前に異常を発見できるため、検診を通じて「治療と予防」が同時にできる点も大きなメリットです。
編集部
大腸がん検診を受けない場合、どのようなリスクが考えられますか?
中村先生
検診を受けない場合、がんが進行するまで見つからず、発見時には治療が難しい「進行がん」となっている可能性があります。実際、症状が出てから検査を受けた方の約6割が進行がんと診断されています。一方、検診で異常が見つかれば、多くの場合は早期がんや良性ポリープの段階で、病状が進行する前に対応できるため、がんの進行を防ぐことが可能です。便潜血検査は簡便かつ無害な検査であるため、ぜひ積極的に活用していただきたいです。
大腸がん検診を受けるべき人や頻度は?

編集部
大腸がん検診は何歳から受けるべき検査ですか?
中村先生
日本における便潜血検査による大腸がん検診の対象は、原則40歳以上とされています。しかし、近年では若年層にも大腸がんが増えている傾向があり、特に血便や腹痛、便通異常などの症状が新たに現れた場合には、年齢に関係なく内視鏡検査を受けることが望ましいですね。将来的なリスクを考慮すると、40歳を迎えたタイミングで一度大腸カメラを受けておくことをお勧めしています。
編集部
大腸がん検診は毎年おこなう必要がありますか?
中村先生
便潜血検査は毎年受けることが推奨されていますが、大腸カメラ(内視鏡検査)は検査結果に応じて間隔が変わります。初回の検査で異常がなければ、3年後、その後も問題がなければ5年ごとの検査が一般的です。一方で、ポリープが複数見つかったり、細胞に悪性所見があったりする場合には、1年後の再検査が推奨されます。自身の検査結果や家族歴に応じて、医師と相談しながら適切な間隔で受診してください。
編集部
便潜血検査は陰性だった場合、内視鏡検査を受ける必要はあるのでしょうか?
中村先生
便潜血検査が陰性でも、内視鏡検査でポリープや早期のがんが見つかることがあります。実際、便潜血検査では反応しないような小さな病変は見逃されることもあるため、ガイドラインでも「人生のどこかで一度は大腸内視鏡検査を受ける」ことが推奨されています。アメリカでは50歳で全員が一度内視鏡検査を受ける制度があり、これにより大腸がんの死亡率が下がったという報告もあります。
大腸がん検診はつらい? 検査の流れや費用について

編集部
大腸カメラはつらいイメージがありますが、実際につらいのでしょうか?
中村先生
かつては「お産よりもつらい」とも言われた大腸カメラですが、近年は医療技術の進歩により大幅に改善されました。内視鏡の性能向上と挿入技術の進化に加えて、鎮静剤や鎮痛剤の適切な使用によって、苦痛の少ない検査が可能となっています。内視鏡専門医が実施した調査では、8割以上の人が「楽だった」「次も受けたい」と回答しており、胃カメラより楽だと感じる方もいるほどです。ただし、高齢者や女性、過去に腹部手術歴のある方、やせ型の人などでは痛みを感じやすい傾向があるため、事前に医師に相談することが大切です。
編集部
大腸がん検診を受ける前に受診は必要ですか?
中村先生
大腸カメラを受ける前には、基本的に事前の受診が必要です。検査当日は約2リットルの下剤を服用して腸内をきれいにする必要があるため、その下剤の処方と説明を受けるために、事前に医師の診察を受けていただきます。また、腹痛や腸閉塞が疑われる症状がある場合には、下剤の服用が危険なケースもあるため、リスクの有無を判断する目的でも受診は必須です。検査前に安全性を確認するためにも、必ず受診してから検査を受けることが勧められます。
編集部
大腸がん検診は保険適用で受けられますか? 自費の場合、どのくらいかかるのか気になります。
中村先生
便潜血検査については、市町村によってがん検診の対象であれば無料で受けることができる場合もあります。一方、大腸カメラは、便潜血検査で陽性が出た場合や腹部症状がある場合には、保険適用となります。ポリープの切除を伴わない場合、3割負担で約6000円、ポリープ切除がおこなわれた場合は約2万5000円が目安となります。なお、ポリープ切除は「手術」に該当するため、手術保険などに加入している場合は保険金の対象になるケースもあります。
編集部まとめ
大腸がんは、定期的な検診で早期に発見すれば高い確率で治癒が見込めるがんです。便潜血検査は無害で負担も少なく、まず第一歩として受けるべき検査だと学びました。また、症状がなくても一度は大腸カメラを受けることで、がんやポリープの予防にもつながります。検査に対する不安や、面倒くさいといった気持ちは誰しもあるかもしれませんが、自分自身の健康を守るための大切な一歩として、本稿が大腸がん検診を考えるきっかけとなりましたら幸いです。
医院情報
所在地 | 〒224-0032 神奈川県横浜市都筑区茅ケ崎中央24-3 太光クリニックビル3F、2F |
アクセス | 市営地下鉄「センター南駅」 徒歩4分 |
診療科目 | 内科、消化器内科 |