「男性乳がんの症状」はご存知ですか?原因・検査・治療法も解説!【医師監修】
「乳がん」と聞くと女性特有の疾患だと思われがちですが、男性にも発症することがあります。男性乳がんは乳がんの全体件数の約1%を占める極めて稀な疾患です。
アメリカでの研究データによると、女性が8人に1人診断されるのに対し、男性は1000人に1人が診断されることが分かっています。
この記事では、男性乳がんの症状・原因・検査法・治療法などについて解説していきます。これを機会に理解が高まり、早期発見に繋がれば幸いです。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
男性乳がんとは?
男性乳がんとは男性の乳房にがんが発生することをいいます。発症年齢は60〜70歳代が増加している傾向です。
男性乳がんの症状
女性の乳がんと比較し男性の場合、診断時には進行していることが多いとされています。しかし、同じ進行スピードであれば女性と男性で治療結果に大きな違いはありません。
男性もセルフチェックなどを行い早期発見に努めていきましょう。
痛みのないしこり
男性乳がんは乳頭・乳輪の下にしこりが発生し、痛みを伴わないことが多いのが特徴です。
男性の乳がんは触って分かるぐらいのしこりができるのが通常とされている為、セルフチェックを行っていくことが重要になってきます。チェック内容として下記が挙げられますので、ぜひ参考にしてください。
- 乳房・乳輪・脇の下に皮膚が厚くなったような場所がある
- 乳房の大きさ・形が違う
- 乳房の皮膚にくぼみがある
- 乳頭が乳房の中へ陥没している
- 乳頭から血が混じった分泌物が出る
乳頭からの出血
乳頭からの分泌は乳がん早期発見のきっかけとなる症状です。乳頭の分泌物として透明なものもありますが、特に血液が混じった分泌物がある場合には必ず乳腺科の診察を受診しましょう。
男性乳がんの原因
原因・要因として以下が挙げられます。
- 性別を問わず、近親者で乳がんになった人がいる
- 胸部や乳房に放射線療法を受けたことがある
- 女性ホルモン増加に関連する疾患をもっている
- 加齢
- 肥満
男性乳がんも遺伝性によって受け継がれることがあり、それが当てはまる男性と当てはまらない男性とでは乳がんを発症する危険性は約2倍になるといわれています。
上記以外にも飲酒・喫煙などが遺伝子の突然変異の要因にもなってくるので注意しましょう。
男性乳がんの検査法
検査をきちんと行うことでがんの有無・進行度が分かり、今後の治療方針などが決められることで早期発見に繋がります。検査法には以下のようなものが挙げられます。
触診
第一段階として医師が乳房の大きさの違い・くぼみ・しこりがないかを手で触れながら入念に確認していきます。触診でしこりを見つけられることで、がんの早期発見に繋がる・薬を使用しない点から身体に負担がないところがメリットです。
反対にデメリットとしては、しこり全てが男性乳がんという判断ではない為、触診だけでは決めつけにくいところが挙げられます。
超音波検査
超音波検査とはエコー検査とも呼ばれており、超音波を体の表面にあて、体内から返ってくる超音波を画像として映し出す検査法です。
痛みなどもなく、体への負担が少ない為、高齢の方でも検査を受けられるのが特徴です。
マンモグラフィー検査
マンモグラフィー検査とは乳腺X線撮影とも呼ばれ、乳房専用のX線検査法になります。
この検査は乳房を板で圧迫し、その状態で撮影を行います。「乳房が小さい男性でも検査できるの?」と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。ですが、結論できるようになっており、乳房が小さいからといって撮影できないことはありません。
CT・MRI
CTとはX線を使って体内の断面を画像にする検査法です。治療前にがんの広がりなどを確認する際に用いられ、細かいものまで見えるのが特徴です。
検査時間は10〜15分程度で終わります。MRIとは磁気共鳴画像とも呼ばれており、磁気・電波を使って、体内の断面を画像にする検査法です。問題がある部分と正常な部分の差が分かりやすく抽出されるのが特徴です。
検査時間はCTと違い15〜45分と長くかかることもあります。
生検
生検とは病気によって変化してしまっている組織の一部をメスや針などで切り取って調べる検査法です。悪性の疑いがあるかを病理医が入念に調べていきます。
乳がんの生検には以下の4つの種類があります。
- 摘出生検
- 切除生検
- コア生検
- 穿刺吸引生検
前提として生検は局所麻酔をする為、生検中の痛みはありません。ただし、生検後の痛みはしばらく感じるかもしれませんが、数週間で気にならなくなります。
摘出生検とはしこり全体を手術で切除し調べる検査に対し、切除生検はしこりの一部を切除する検査です。直接、組織を切除することで確実な診断ができます。コア生検・穿刺吸引生検はどちらも針を用いて、組織を採取する検査です。
男性乳がんの治療方法
男性乳がんに対する治療の考え方は基本的に女性乳がんと同じで、乳がんの進行度に従って治療方法を選択していきます。
外科手術
完全切除が可能な状態であれば、外科手術を行うことが優先されます。外科手術でも種類があり下記のようなものが挙げられます。
- 非定型的根治的乳房切除術
- 乳房温存手術
非定型的根治的乳房切除術とは、乳房を全て切除する手術です。乳がんと診断された男性に対する一般的な外科手術とされています。大胸筋は残せる為、腕も普通に動かせるのが特徴です。
乳房温存手術とは、乳房からがん組織とそれを囲む正常組織を少し切除し、乳房そのものは切除しないという手術です。
放射線治療
放射線治療とは、高度なエネルギーのX線を通してがん細胞の死滅や増殖を防ぐ治療法です。
残した乳房からの再発を防いだり、手術で取りきれなかったがんを死滅させたりすることを目的として術後に行われます。
抗がん剤治療
抗がん剤治療とは、薬を用いてがん細胞の進行を遅らせたりがんの増殖を防いだりする治療法です。
抗がん剤は血液・リンパ節を介しての広い範囲の転移を予防するために治療を行います。
ホルモン療法
ホルモン療法とは、エストロゲンという女性ホルモンを体内から取り除くことによって、がん細胞の増殖を防ぐ治療法です。これらの治療を行うことで、エストロゲンを抑え、エストロゲンが受容体と結合するのを防いでくれます。
その結果、がん細胞が増えるのを抑制することに繋がります。
男性乳がんの生存率はどれぐらいですか?
ここまで男性乳がんについて紹介してきました。ここでは「男性乳がん」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
男性乳がんの生存率はどれぐらいですか?
甲斐沼 孟(医師)
診断時の疾患の進行度が同じであれば、男性乳がんの生存率は女性とほぼ同等といわれています。しかし、男性乳がんでは診断時にはすでに進行していることが多い傾向があり、診断時の時点で進行しているほど治癒の可能性は低くなってきます。
男性乳がんの症状が出る前に気づく方法はありますか?
甲斐沼 孟(医師)
男性は女性と比較し、乳がんになる可能性が極めて低い為、一般的に乳がん検診は行われていません。近親者で乳がんの人がいる方・女性ホルモン増加に関連する疾患をもっている方・飲酒・喫煙などに当てはまる方は特に気をつけてセルフチェックしていくことを推奨します。
編集部まとめ
男性の乳がんについて解説しましたがいかがでしたか?乳がんの要因はさまざまあり、男性にも関わりがあることが認識できたのではないでしょうか。
男性でいきなり乳腺科に行きにくいという方もいるかもしれません。気になることがあれば、まずはかかりつけ医に相談してみてください。
「男性乳がん」と関連する病気
「男性乳がん」と関連する病気は3個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
内分泌系
- クラインフェルター症候群
- 前立腺肥大
クラインフェルター症候群とは、男性にみられる性染色体の数の異常によって引き起こされる疾患です。症状として男性ホルモンが少なく、女性のような胸の膨らみ(女性化乳房)がでる症状があります。同じく前立腺肥大なども男性ホルモンの分泌が少なくなり、反対に女性ホルモンの分泌量が増加することから男性乳がんと関係するといわれています。
消化器系
- 肝疾患
男性の体内でも女性ホルモンが生成されており、その際の女性ホルモンは肝臓で分解する仕組みになっています。しかし、肝機能が低下し女性ホルモンを分解できなくなることで、乳腺が発達し、女性化乳房になってしまいます。
「男性乳がんの症状」と関連する症状
「男性乳がんの症状」と関連している、似ている症状は4個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 乳房の張り
- 乳房の痛み
- 乳頭からの分泌液
- しこり
さまざまな症状がありますが、専門の医師による診察・受診をしなければ、良性か悪性かの判断はできかねます。違和感を覚えた際は早急の受診をおすすめします。