「甲状腺がんの検査法」はご存知ですか?原因や症状についても解説!【医師監修】
甲状腺がんは、甲状腺の一部に悪性の腫瘍ができる病です。原発性と転移性があり、多くみられるのは原発性でしょう。
男女比では女性のほうが発症率は高めですが、男性に発症しないわけではありません。女性ほどではありませんが、男性も発症するので注意してください。
ここでは、甲状腺がんについて解説します。原因・症状・種類などについても紹介するので、参考にしてください。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
甲状腺がんとは?
甲状腺がんとは、甲状腺に悪性腫瘍ができるがん疾患のことです。大きく分けて原発性と転移性の2種類がありますが、発症率・死亡率ともに高いのは原発性のほうでしょう。
また、男女比では女性のほうが発症率は高めです。しかし、男性が発症しないわけではありません。女性ほどではありませんが、男性も発症する可能性があるので注意してください。また、年齢はあまり関係ありません。10〜80代まで幅広い年齢層で発症しています。
甲状腺がんの検査の流れ
検査の主な流れは下記のとおりです。
- 視診・触診
- 血液検査
- 超音波検査
- 細胞診検査
- CT検査
これらを順番に行い、特定していきます。それぞれについて解説するので、参考にしてください。
視診、触診
最初に行うのは視診・触診です。具体的には甲状腺の大きさ・硬さ・広がりなどを調べて、がんの可能性・有無を判断します。また、並行して病歴・家族歴・放射線被ばくなどの問診も行われます。これらの情報も、確定に必要なデータになるからです。
血液検査
甲状腺がんには、発症を特定する腫瘍マーカーはありません。ただし、がんの状態・症状などを把握するために行います。またがんの治療を行うにあたって、薬剤に対する反応を把握する目的もあるでしょう。
治療薬は複数ありますが、なかには副作用・逆効果になるものもあります。体にできるだけ負担をかけない治療をするためにも、血液検査のデータは重要な役目を担っているのです。
超音波検査
超音波検査は、周波数の高い音をあてて画像化する方法です。
甲状腺の大きさ・状態、しこりがある場合はしこりの大きさ・性質などを観察します。甲状腺がんの中には超音波で特徴的な所見を示すことが多いものがあるため、多くの病院・医院では用いられる方法です。また、同時に周囲への転移なども確認することもあるでしょう。
細胞診検査
しこりがある場合は、細胞診検査を行います。細胞診とは、しこり部分に穿刺を行い、細胞を吸い出して診断する方法です。多くの場合、超音波と並行して行なわれることが多いでしょう。
超音波でしこりの場所を確認しながら穿刺を行います。甲状腺がんの中には細胞診に適しているものもあるため、超音波同様に行われることが多いといえるでしょう。
CT検査
甲状腺がんがある程度大きい場合は、CT検査を行うことがあります。がんの診断をするためではなく、気管・食道への浸潤・肺への転移などの有無を調べるためです。
甲状腺がんの原因
原因と考えられているのは、主に下記の3つです。
- ヨウ素
- 放射線
- 遺伝
日本人は、みそ汁などの影響から海藻を食べる文化が根付いています。海藻にはヨウ素が多く含まれており、甲状腺ホルモンを構成する成分の一つです。ヨウ素は海藻からの摂取経由が8割といわれていますが、日本人は海藻を食べる文化があるので不足することはほぼないでしょう。
しかし、とりすぎると発症原因になるとの報告があります。また、放射線も発症率を高める原因の一つです。甲状腺が放射線に対して感受性が高いからといわれています。放射線が原因の場合は、年齢が若いほど発症のリスクが高まると報告されているので注意してください。
なお、血縁内で甲状腺がんに罹患した人がいる場合も発症率が高くなると示唆されています。
甲状腺がんの症状
主な症状は下記のとおりです。
- しこり
- 圧迫感
- 呼吸困難
- 声のかすれ
- 飲み込みにくさ
- 誤嚥
- 血痰
初期では、しこり以外の症状はほとんどありません。そのため、気がつかない間に進行してしまっているケースもあるでしょう。しこり以外では、声のかすれ・飲み込みにくさにも注意してください。この2つも特徴的な症状とされているからです。それ以外は、まれにみられる症状といえるでしょう。
しこりを中心に気になる症状がある場合は、内科・耳鼻咽喉科を受診してください。
甲状腺がんの種類
複数の種類があり、症状も異なります。主な種類は下記の5つです。
- 乳頭がん
- 濾胞(ろほう)がん
- 髄様(ずいよう)がん
- 未分化がん
- 悪性リンパ腫
それぞれの種類について解説するので、参考にしてください。
乳頭がん
乳頭がんは、発症率・死亡率がともに高いがんではありますが、生存率は98%以上とされているので生命にかかわることは少ないかもしれません。
診断は触診・超音波・細胞診を主体に行います。場合によっては、頸部CT・内視鏡なども行われるかもしれません。治療後の経過は良いとされていますが、ごく一部では再発を繰り返すことがあるので注意が必要です。また、発症年齢が高いほど悪性度が高くなりやすいともいわれています。
濾胞がん
濾胞(ろほう)がんは、乳頭がんに次いで2番目に多いとされています。超音波・細胞診・血液検査を主体にして診断を行いますが、良性・悪性の判別が難しいがんです。最終的には手術を行い、摘出した腫瘍を顕微鏡で詳しく調べることで判断されるでしょう。
リンパ節への転移はあまり多くないとされていますが、血液に乗って肺・骨などの遠い場所に転移しやすい特徴があります。
髄様がん
髄様(ずいよう)がんは、カルシトニンというカルシウムを調節するホルモンを分泌する細胞が悪性化するがんです。超音波・細胞診・血液検査で診断が行われます。とくにカルシトニンの数値が上昇していると、罹患していると判断されるケースが多いでしょう。
発症原因として遺伝の場合もあるため、家族も検査が行われるかもしれません。進行が速く、肝臓・肺・リンパ節に転移することが多くあります。
未分化がん
未分化がんは、首のしこりが急激に大きくなるので気づきやすいでしょう。声のかすれ・嚥下困難など自覚症状もあるため、わかりやすいがんです。進行すると発熱・疲労感などの症状もみられるようになります。細胞診・画像診断(CT・MRI)などで特徴的な所見がみられることが多いでしょう。
しかし悪性リンパ腫・分化がんと所見・症状が似ているため、生検も行なうことがあるかもしれません。進行は速く、離れた臓器へ転移しやすい特徴があります。
悪性リンパ腫
悪性リンパ腫は、橋本病が原因で発症することが多いとされているがんです。首・腋の下などのリンパ節が多い場所に、腫れ・しこりがみられます。
診断は生検を行うことがほとんどでしょう。しこりの組織を採取し、有無を判断します。また、転移しやすいので生検ではほかの部分にも広がりがないかどうかも調べることが一般的です。
甲状腺がんについてよくある質問
ここまで甲状腺がんについて紹介しました。ここでは「甲状腺がん」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします
甲状腺がんの初期症状はどのようなものですか?
甲斐沼 孟(医師)
多くのケースではしこりがみられるでしょう。圧迫感・呼吸困難などの症状がみられることもありますが、これらの症状が必ず出るわけではありせん。
甲状腺がんの検査はどこで受けられますか?
甲斐沼 孟(医師)
まずは内科の受診をおすすめします。病院によって担当する診療科は異なるので、一概にはいえません。必要に応じて受診すべき診療科を教えてくれるでしょう。
編集部まとめ
甲状腺がんについて解説しました。
初期症状はしこりのみのケースが多いため、わかりにくいといえるでしょう。多くの場合は、健康診断・PET検査などで判明します。
女性のほうが発症率は高めですが、男性でも罹患するので油断は禁物です。頸部にしこりを感じたら、内科・耳鼻咽喉科で診察を受けてください。
発症原因として、ヨウ素の過剰摂取が報告されています。海藻の食べ過ぎに注意するなど、日常生活の改善・注意もしたほうがよいでしょう。
甲状腺がんと関連する病気
「甲状腺がん」と関連する病気は4つあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
甲状腺関連
- バセドウ病
- 甲状腺腫
- 橋本病(慢性甲状腺炎)
甲状腺以外
C型肝炎は橋本病を引き起こす要因とされています。橋本病は悪性リンパ腫に多い原因であるため、C型肝炎は結果的に関連しているといえるでしょう。
甲状腺がんと関連する症状
「甲状腺がん」と関連している、似ている症状はいくつかあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- しこり
- 圧迫感
- 声のかすれ
多くは自覚症状が少ないため、目立つ症状はほぼないと考えたほうがよいでしょう。定期健診・PET検査などで見つかることがほとんどです。