「腎臓がんのステージ」はご存知ですか?ステージ別の治療法も解説!【医師監修】
尿を作る機能を担っている腎臓に発生する腫瘍として知られる腎臓がんは、50〜70代の中高年の方に起きやすい病気の一つです。
腎臓がんは血尿やお腹の違和感で気づくことが多いですが、症状が出にくく気づけばステージが進んでいたということもあります。腎臓がんのステージによって症状や治療法が変わっていくのです。
今回は腎臓がんについてステージ別の治療法を解説していきます。
監修医師:
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)
目次 -INDEX-
腎臓がんとは?
腎臓がんとは腎臓にできるがんの中で、腎臓の細胞ががん化して悪性腫瘍になったものを表します。初期症状は気付きにくく、他の病気での検査によって発見されるものがほとんどです。肺や脳に腫瘍が転移してしまい、その箇所の調子が悪く検査してみると腎臓がんだったということもあります。
腎臓がんを発見するための検査は、造影剤を使うCT検査が使用されます。CT検査で腫瘍が発見された場合は、腫瘍の性質を詳しく調べるためにMRI検査なども行うのです。
血液検査では特定の腫瘍マーカーがないため、CRPやLDHの指数が高くないか異常確認を行っていくのです。発見されてから腎臓がんの腫瘍の悪性度を確認します。画像検査で診断がはっきりしない場合には、腫瘍に細い針を刺して組織の一部を採取し検査を行う場合もあります。
腎臓がんの治療は悪性度やステージによって異なるのです。さらに、患者さんのご希望や体の状況、年齢なども踏まえながら担当医と相談しながら決めて治療を進めていくのです。
腎臓がんのステージ分類
腎臓がんは早く発見すればするほど治癒率が高いです。腎臓がんが腎臓内部までにとどまらず、他の臓器に転移してしまうとステージが上がってしまう可能性があります。腫瘍が小さいうちは症状が少なく気付きにくいがんの一つである腎臓がんは、腫瘍が大きくなるにつれて、尿に血が混じった血尿がでます。
さらに、腹部が腫れたり背中が痛んだりすることがあるのです。ステージの分類には国際基準のTNM分類が用いられます。
- T
- N
- M
Tとは、原発腫瘍の大きさと浸潤度のことを指します。腎臓で発生した腫瘍がどれくらいの大きさになっているか、どのくらい広がっているかがステージに影響します。
T1・2は腎臓内部に止まっている状態です。T3は腎臓周辺組織に到達していますが筋膜は超えていない状態になります。T4は同じ副腎や筋膜を超えていて腫瘍が大部分に広がっている状態です。
Nとは、所属リンパ節への転移有無のことを指します。がんの大きさがリンパ節にどのくらい転移しているか表すのです。
N0は転移していない状態、N1は1個転移が見られる状態、N2は2個以上の転移が見られる状態です。
Mとは、遠隔転移の有無を指します。腎臓とは別の臓器に転移しているかどうか表すものです。M0は、遠隔転移がなし、M1は遠隔転移がありです。
ステージ1
腫瘍が腎臓内部にとどまり大きさが7cm以下です。
ステージ2
腫瘍が腎臓内部にとどまり大きさが7cmより大きいです。
ステージ3
腫瘍が腎臓外部に広がっていますが、周囲の脂肪には到達していません。腫瘍が血液内に入り込みます。血尿が出てきた時は泌尿器科や内科に診てもらうのが良いです。
ステージ4
腫瘍が他の臓器に転移しており、周囲の脂肪に到達、近くの肝臓や膵臓などにも腫瘍が広がっている状況です。
腎臓がんのステージ別の治療
腎臓がんのステージによって治療方法が異なります。腎臓がんのステージは前述でも述べたように1〜4まであります。数字が大きければ大きいほど症状は悪化していくのです。そのため、悪化した症状を軽減・治癒するための治療法はさらに強いものになっていきます。
ステージ1-2では手術療法が中心となり、ステージ3-4では分子標的治療薬が中心です。また、腎臓がんは早期発見することで治療法も身体に害のない軽度のものを行います。それでは、詳しくみていきましょう。
ステージ1の治療
腎臓は左右に一つずつあり、血液を尿にして排出するのに必要な臓器の一つです。そのため、できるだけ機能を残すための治療が必要です。特に患者さんが高齢で、ステージ1の場合は手術せずに経過観察をするという選択肢もあります。年齢が若く、がんの進行スピードが早い場合は早めに摘出した方が良いです。
ステージ1でも小さな腫瘍の場合には、腎臓の部分切除が行われることも多くあります。また手術の方法も最近では、腹腔鏡手術やロボット手術で行われ、手術の傷跡も少なく済みます。
ステージ2の治療
7㎝以上のステージ2の腎臓がんでは、部分切除ではなく、片方の腎臓をすべてとる腎摘除術が行われることが一般的です。そのため、ステージ1で行う腹腔鏡手術やロボット手術以外にも開腹手術という手段が取られることもあります。また、再発予防のために腎臓周辺の脂肪も現在は一緒に取り除きます。
副腎も摘出するのか疑問に思う方もいるでしょう。副腎は腎臓がんの転移が疑われたり、腎臓がんの位置が非常に近かったりすると摘出することもあります。
ステージ3の治療
ステージ3の腎臓がんになると、可能であればすぐに腎摘除を行いますが、場合によっては、手術前に薬物療法で腫瘍を小さくしてから腎摘除術を行うこともあります。また、手術の後にも薬物療法を継続して行う必要もでてきます。
さらに、腎静脈・下大静脈までがんに侵されていると、下大静脈を切開したり切除したりしなければなりません。そのため、腎摘除だけでなく血管の手術も行うことで、体に負担をさらにかける場合があることを覚えておきましょう。
ステージ4の治療
他の臓器に転移がある場合のステージ4の腎臓がんでも、まずは可能であれば腎摘除を行います。手術でとった腫瘍の種類を確認して、残りの転移部のがんに対しては薬物療法を行うことが必要です。また、脳に転移がある場合には放射線療法を行います。
ステージ4になると根治的腎摘除だけでは不完全なことが多く、薬物療法や放射線療法などを併用する集学的治療を行うケースが多いでしょう。
腎臓がんの再発転移
腎臓がんで腎臓を摘出しても、血液により他の臓器に悪性腫瘍が転移することがあります。腎臓がんは肺・リンパ節・肝臓・脳に転移しやすいです。肺に転移した場合は、痰に血液が混じった血痰が出ることがあります。他にも咳が止まらず、息苦しい症状も見られます。
骨に転移した場合は、痛みや痺れが起きることがあるのです。臓器や骨の痛みだけではなく、腎臓がんが体内で転移を繰り返している時は食欲不振になったり、急激な体重の減少などが見られたりします。過去に腎臓がんの治療にかかった人で、体の不調がある人は医師に診てもらうのが良いでしょう。
編集部まとめ
腎臓がんは腫瘍の大きさによって症状が気付きにくいことがあります。早期発見できれば治癒する可能性は上がります。
発見のためにも健康診断を定期的に受けるなど自身の身体に気をつけていく必要があるのです。
腎臓がんと関連する病気
腎臓がんと関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
腎嚢胞・腎血管筋脂肪腫は良性の腫瘍なのでほとんどが経過観察になります。しかし、腎盂尿管がん・膀胱がん・前立腺がん・精巣がんは経過観察ではありません。
手術・放射線治療・薬物療法・内分泌療法などを症例に合わせて行います。
腎臓がんと関連する症状
腎臓がんと関連する症状を持つ病気は8個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
これらは、腫瘍が大きくなるにつれて顕著に現れます。しかし、腫瘍が小さい場合は無症状のことが多いので、定期的に健康診断を受けるようにしましょう。
近年、健康診断で行う超音波検査やCT検査で発見されることが増えてきています。