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「急性心筋梗塞の助かる確率」はどれくらい?前兆となる初期症状も医師が解説!

 更新日:2024/08/07
「急性心筋梗塞の助かる確率」はどれくらい?前兆となる初期症状も医師が解説!

急性心筋梗塞を発症して助かる確率はどれくらい?Medical DOC監修医が急性心筋梗塞で助かる確率・初期症状・原因・手術内容などを解説します。

佐藤 浩樹

監修医師
佐藤 浩樹(医師)

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北海道大学医学部卒業。北海道大学大学院医学研究科(循環病態内科学)卒業。循環器専門医・総合内科専門医として各地の総合病院にて臨床経験を積み、現在は大学で臨床医学を教えている。大学では保健センター長を兼務。医学博士。日本内科学会総合専門医、日本循環器学会専門医、産業医、労働衛生コンサルタントの資格を有する。

「急性心筋梗塞」とは?

急性心筋梗塞とは、心臓の筋肉(心筋)に酸素を送る冠動脈が閉塞し、心筋に血液が行かなくなる疾患です。そのため、心筋が壊死してさまざまな合併症を起こします。主な症状は、突然起こる胸の中央部や左側の痛みや圧迫感です。この症状は、腕、首、顎、背中などの他の部位に広がることもあります。時間とともに心筋が壊死する範囲が広がると、更に合併症が起こりやすくなります。従って、できるだけ早く医療機関を受診して、迅速な治療が必要となる疾患です。

急性心筋梗塞を発症して助かる確率

以前は、死亡する確率が高い疾患でした。でも、救急体制の整備、早期診断や治療の進歩により、助かる確率は向上しています。2020年度の心筋梗塞による死亡率は10万人あたり、男性29.9人、女性19.9人でした。経年的な変化では、平成 22 年(2010)と令和2年(2020)の死亡率を比較すると、男性は 45 都道府県で、女性は全都道府県で低下している現状です。発症から治療開始までの経過時間が早ければ早いほど生存率が高くなる疾患なので、急性心筋梗塞が疑われる症状が出ましたら、早期の医療機関の受診をお勧めします。

急性心筋梗塞の前兆となる初期症状

急性心筋梗塞は一刻を争う緊急を要する疾患であり迅速な対応が必要です。そのため、前兆となる初期症状は重要です。以下に記載する3つが見られましたら早期に医療機関を受診して下さい。

胸痛や胸部圧迫感

胸の中央部や左側に締め付けられるような痛みや圧迫感が起こります。この痛みは、数十分継続し、安静にしても改善しないことが特徴です。痛みは胸部が中心ですが、腕、首、顎、背中に広がることもあります。この痛みを放散痛と言います。これらの症状が起きた場合は、すぐに安静にさせることが大切です。心臓の負荷を軽減するためです。もし、ニトログリセリンが手元にある場合は舌下(ぜっか)、つまり舌の下にいれてそのまま溶かして飲み込むことも勧められます。これらの処置を行いつつ早急に救急車を呼び、循環器科や救急科を受診してください。

息切れ

軽い運動や日常活動において息切れが起こります。心臓が十分な酸素を供給できなくなったためです。息切れは、胸の痛みや圧迫感とともに現れることが多いですが、単独でも起こります。息切れが起こったら、すぐに活動を停止して安静にさせることが重要です。心臓の負荷を軽減するためです。深呼吸をして、リラックスすることを勧めましょう。息切れが継続する場合は、早急に救急車を呼び、循環器科、呼吸器科、救急科を受診して下さい。

冷や汗

突然の冷や汗が起こります。誘因も無く冷や汗が出る場合や、他の症状と合併する場合は要注意です。交感神経の活性化や痛みに対する反応が原因です。冷や汗が起こりましたら、すぐに活動を中止して安静にさせてください。心臓の負荷を軽減するためです。冷や汗とともに他の症状がある場合は、早急に救急車を呼び、循環器科や救急科を受診して下さい。特に、冷や汗とともに異常な発汗が認められる場合は、急性心筋梗塞の前兆である可能性が極めて高いので要注意です。

急性心筋梗塞の主な原因

主な原因は、心臓を栄養する冠動脈の動脈硬化による血流の遮断です。以下の3つが重要です。

高血圧

高血圧は、心臓を栄養する血管である冠動脈の壁に長期間に渡り過剰な圧力をかけることで血管に損傷を与えます。この損傷により血管内にプラークとよばれる塊が形成されやすくなります。また、高血圧は血を固める血小板の機能を高めるため、血栓ができやすくなります。この2つの作用により急性心筋梗塞が起こりやすくなります。また、高血圧は冠動脈ばかりではなく、全身の血管に影響を与えて動脈硬化を進行させるので要注意です。
高血圧は、一般的に自覚症状がほとんどありません。そのため、高血圧があることをわかっていても放置している方が多いです。しかし、長期間にわたり放置することは非常に危険で、重大な血管病を起こし命にかかわることもしばしばです。高血圧がサイレントキラーと呼ばれる由縁です。健康診断などを利用して自分の血圧値を評価することが大切であり、もしも高い場合は、内科や循環器科を受診して適切な指示を受けましょう。

脂質異常症

血中の過剰なLDLコレステロール(悪玉コレステロール)は、動脈の内側の壁に蓄積してプラークという塊を形成し動脈硬化を促進します。この影響が冠動脈に及ぶと、心筋梗塞のリスクが増大します。また、脂質異常の中でも、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が減少すると動脈硬化は進展します。脂質異常症に伴う自覚症状はほとんどありません。健康診断などを利用して自分の脂質の状態を評価することが大切です。高い場合は、内科や循環器科を受診して適切な指示を受けましょう。

喫煙

喫煙は血管を収縮させる作用があるため血圧を上昇させます。また、タバコに含まれている有害物質が血管の壁を傷つけ動脈硬化を進展させます。これらの影響が心筋梗塞のリスクを高めます。喫煙者が排出するタバコの煙を吸う受動喫煙も同様な悪影響をもたらしますので要注意です。喫煙者は禁煙に心がけ、非喫煙者はタバコの煙を避けることが大切です。禁煙を自分自身の努力で達成することはなかなか難しく、医療機関を受診して禁煙外来を利用することも効果的です。

急性心筋梗塞の手術内容

手術内容として、内科的治療である経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と外科的治療である冠動脈バイパス術(CABG)に大別されます。

ステント留置術

この治療は経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の1つです。内科的処置であり低侵襲治療法に属します。具体的には、カテーテルを冠動脈の病変部位に挿入し、バルーンを膨らませ内腔を拡張させます。その後に、金属製のメッシュチューブ(ステント)を挿入し補強する治療です。使用するステントは、薬剤をコーティングした薬剤溶出ステント(DES)が使われることが多いです。これにより再狭窄のリスクを低減します。この治療はカテーテル検査室で局所麻酔を用いて行われます。そのため、合併症が起こらなければ、翌日には普段通りの行動ができます。退院後は、ステントの再狭窄を防ぐための内服薬を使用するため外来通院が必要です。
日常生活の注意点としては、高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病にならない、またはコントール良好の状態を継続するために、食事や運動に留意することが必要です。

ロータブレーター

この治療は経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の1つです。内科的処置であり低侵襲治療法に属します。具体的には、カテーテルの先に装着されたダイヤモンドチップを高速回転させることで病変部位を削り取り拡張する治療です。狭窄(きょうさく;血管が狭くなっている)部位が石灰化などで硬い病変の際に使われることが多いです。この治療もカテーテル検査室で局所麻酔を用いて行われます。そのため、合併症が起こらなければ、翌日には普段通りの行動ができます。
退院後は、再狭窄を防ぐための薬物療法のため外来通院が必要です。退院後は高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病にならない、またはコントール良好の状態を継続するために、食事や運動に留意することが必要です。

冠動脈バイパス(CABG)

この治療は外科的処置に属しますので侵襲が大きいです。心臓血管外科が担当します。複数の冠動脈が閉塞している場合や、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)が難しい症例が適応となります。この手術では、新たな血流経路を作成しなければならないため、自分の足や胸部から血管を採取します。内科的処置と比較して入院日数はかかります。退院後は、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の退院後治療と同様に、高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病にならない、またはコントール良好の状態を継続するために、食事や運動に留意することが必要です。

「急性心筋梗塞で助かる確率」についてよくある質問

ここまで急性心筋梗塞で助かる確率について紹介しました。ここでは「急性心筋梗塞で助かる確率」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

急性心筋梗塞を発症してから、どれくらいの時間で亡くなってしまうことが多いのでしょうか?

佐藤 浩樹佐藤 浩樹 医師

急性心筋梗塞による胸痛後に心停止を起こすことが多々あります。具体的には、胸痛から心停止までの時間は、1時間以内が約86%(うち瞬間死25%)です。従って、心筋梗塞を発症してから1時間以内に専門医療機関に搬送し、適切な治療を受けることが重要です。

編集部まとめ

急性心筋梗塞は、冠動脈が突然閉塞することで心筋の壊死を来す緊急性が高い心臓疾患です。同時に、重大な合併症が起こり、命を落とす可能性が高い疾患でもあります。発症から可能な限り時間をかけずに医療機関を受診して、早期の治療に結びつくかどうかが鍵になります。健康的な食事、定期的な運動、禁煙、ストレス管理に努めて、急性心筋梗塞を起こさないような日常生活を送ることも重要です。

「急性心筋梗塞で助かる確率」と関連する病気

「急性心筋梗塞で助かる確率」と関連する病気は8個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

循環器科の病気

  • 解離性大動脈瘤
  • 急性心外膜炎
  • 急性心筋炎

呼吸器科の病気

消化器科の病気

胸痛を伴う疾患はさまざまありますが、命に関わる場合も多々あります。早期に医療機関を受診して適切な治療を受けることが重要です。

「急性心筋梗塞で助かる確率」と関連する症状

「急性心筋梗塞で助かる確率」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 胸痛
  • 胸部圧迫感
  • 息切れ
  • 冷や汗
  • 異常な発汗

心筋梗塞は命を奪う代表的な疾患です。心筋梗塞を疑う症状が出現しましたら、救急車の要請も含め、できるだけ早く医療機関を受診してください。

この記事の監修医師