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「腹膜癌の余命」はご存知ですか?症状・治療法・検査法も解説!【医師監修】

 公開日:2023/11/13
「腹膜癌の余命」はご存知ですか?症状・治療法・検査法も解説!【医師監修】

腹膜癌を発症したら余命はどのくらいなのでしょうか。この記事では、腹膜癌の症状・治療を解説するとともに、腹膜播種との違いについても紹介します。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

腹膜癌とは?

腹膜癌は、腹部を覆う腹膜や卵巣の表層組織から生じる悪性腫瘍を指します。現在では、卵巣の表層から発生する卵巣癌と酷似した性質から、腹膜癌は卵巣癌の類似疾患であるという見方もされています。また、治療方針も同様に、卵巣癌の治療アプローチに従うことが多いです。
近年では、卵巣癌・卵管癌・腹膜癌は臨床的および病理組織学的に似ていることから、治療方針に関するこれらの3つの分類の見直しが行われました。そのため、腹膜癌の診断を受ける患者数は近年増加傾向です。しかし、腹膜癌の単独治療に関するデータは未だに限られており、今後の基礎的研究は重要な位置づけとなっています。

腹膜癌の余命は?

腹膜癌は、初期段階では症状がほとんど現れません。従って、過半数が進行癌に進展した状態で診断に至ることが多いのが現状です。
近年の医療技術進歩が精力的に取り組まれる中、治療後の5年間生存率は、平均50%〜60%の範囲を推移しています。生存率改善の実現に向け、今後の研究に期待が寄せられています。

腹膜癌の症状

癌がある程度進行した場合、主に以下の症状が現れます。

腹水がたまる

腹部がもともと健康な状態でも、臓器の摩擦を軽減するため50cc程度の腹水(腹水貯留)が存在します。悪性腫瘍により腹水貯留を増悪させ、見た目にも変化がわかるほどに腹部が大きく膨らみます。多量の水が腹腔内を圧迫した状態に陥るため、呼吸困難・浮腫などの症状が現れ、食事・排泄にも影響を及ぼす点にも注意が必要です。
腹水を抜く治療では重要な成分が失われ、栄養失調のリスクがある他、癌細胞の増殖の可能性が指摘されています。これらの課題を解決する治療法・新薬の研究開発が進められています。

初期症状が現れない

腹膜癌は、早期の段階ではほとんど症状が現れず、検診方法も確立していない現状にあります。腹膜は広範囲にわたる組織であり、自覚可能な症状が現れた時には進行癌に至っている症例が大半です。
早期治療の可能性を高めるためには、定期的な検診を受け、気になる症状があれば躊躇せず医療機関を受診することが大切です。

腹部膨満感

腹水貯留を原因とした腹部膨満感の症状が見られます。他にも腹痛・胸焼け・食欲不振などの消化器症状を伴います。さらに、腹部が大きく膨れ上がることで、姿勢保持困難による不快感を訴えるケースも少なくありません。

腹膜癌の治療法は?

初期治療の段階で既に進行度が高いことが多い腹膜癌に対し、主に以下の治療を行います。

抗がん剤治療

進行癌で発見されることが大半である腹膜癌は、現在の医療において、抗がん剤投与のみで腹膜癌の治癒が得られることはほぼ不可能とされています。
腹膜癌の基本的な初回治療は、腫瘍の切除手術・抗がん剤投与治療の組み合わせです。まずは外科手術を行い、癌のステージ・病理組織学的診断を確立することから始めます。手術後は、癌細胞の抑制のため抗がん剤投与治療を開始します。
進行・腹膜播種・転移が伴うなど広範囲において重篤なリスクがある場合、手術前の抗がん剤投与も考慮されますが、これは稀なケースです。

腹腔内化学療法

腹腔内化学療法とは、抗がん剤をお腹の中に直接注入する治療法です。
腹膜癌は、腹腔内に癌組織が浸潤した進行期に治療を開始するケースが多い疾患です。高濃度の抗がん剤が腹腔内の広範囲に直接届く腹腔内化学療法は、治療効果の最大化が見込まれます。
副作用として、軽度の腹部膨満感が見られることがあります。

緩和治療

癌そのものから生じる痛みだけではなく、癌治療に伴う苦痛の緩和も重要です。従来、緩和治療やケアは、治療が不可能な段階で提供されることが一般的でした。しかし、現在は癌の診断および治療が開始される際に、さまざまな側面における緩和治療・ケアを同時に導入するべきという考え方が浸透しています。
また、癌の痛みを軽減するための医療麻薬としてモルヒネなどが存在しますが、「医療麻薬は末期の患者さんにしか使用されない」「医療麻薬は中毒性が高い」「精神的な影響がある」といった誤った認識を抱いている人も少なからずいるようです。
実際には適切に使用されると安全且つ効果的であり、痛みをコントロールし、治療を継続するために極めて重要な薬剤であることを理解すべきでしょう。

ステント留置術

癌の進行により、消化管を圧迫して閉塞することがあります。閉塞を起こすと、排便障害・腹痛・嘔吐・穿孔(腸に穴が開くこと)など、命に関わるような危険性が高まります。このような症例に対し、近年では従来の外科的バイパス手術・人工肛門形成手術に代わり、ステント留置術の適用も多くなりました。
ステントとは筒状の金網の形をしており、閉塞部を押し広げる器具のことです。ステントを体内に留置することで、管内の流れを回復させることが可能です。

腹膜癌の検査法は?

腹膜癌の検査方法は、主に以下の2つです。これらの臨床プロセスは、患者さんの負担を最小限に抑え、個々の病状や治療計画に応じて検討されます。

開腹し腹腔内の観察

開腹手術中に腹腔内を直接観察し、癌のステージ・病態の評価などを行います。しかし、進行した状態で受診することが多い腹膜癌は、開腹手術は癌の診断目的だけに留まりません。開腹時は、可能な限り病巣を摘出することを目指すのが原則です。従って、開腹検査は治療の一環としても実施されることを考慮する必要があります。

生検を行う

開腹手術中は腹腔内の観察と共に、腹部に存在する傍大動脈リンパ節を生検に送り、癌細胞の転移の有無など病理学的評価を行います。手術前診断で切除に大きなリスクが伴うと判断されれば、身体への負担が少ない経皮針生検が選択されます。

編集部まとめ

腹膜癌は、癌細胞が静かに浸潤していき、自覚症状が現れる頃には進行癌に進展していることが多いです。

癌の性質は卵巣癌に非常に似ているとして、治療方針はそれに準じている症例がほとんどです。しかし、卵巣癌と完全一致と同等の扱いとされている現状に、近年議論が交わされています。

現在、腹膜癌単独の治療データ・エビデンスは未だ乏しく、検診も確立しておらず難しい状況にあります。治療には副作用が伴い、予後は厳しい疾患とされていますが、適切な治療により根治したケースも少なくありません。

早期の発見・速やかな治療が重要なポイントです。日頃から定期的な検診を受け、気になる症状があれば迷わず医療機関を受診してください。

「腹膜癌の症状」と関連する病気

「腹膜癌」と関連する病気は9個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

消化器系の病気

  • 大腸癌
  • 胃癌
  • 膵臓癌

婦人科系の病気

  • 子宮体癌
  • 乳癌
  • 卵巣癌
  • 卵管癌

腹膜

  • 腹膜播種
  • 大網脂肪織炎
腹部の内臓を覆う腹膜は広範囲に及び、周辺組織に関連する疾患は多岐に渡ります。腹膜癌が進行すると、癌細胞が乱雑に拡散する腹膜播種という、比較的重症度の高い現象を引き起こすことがあります。

「腹膜癌の症状」と関連する症状

「腹膜癌」と関連している、似ている症状は7個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 腹水がたまる
  • 腹部膨満感
  • 食欲不振
  • 呼吸困難
  • 浮腫
  • 月経不順
消化器症状以外にも、腹膜癌は卵巣癌など婦人科系癌と性質が似ているため、女性生殖器特有の症状が現れることがあります。また、腹水により臓器が圧迫され、呼吸系・循環系に影響を及ぼすことも少なくありません。

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