「食道がんになりやすい人」の特徴はご存知ですか?代表的な症状も医師が解説!
食道がんになりやすい人の特徴とは?Medical DOC監修医が食道がんになりやすい人の特徴・症状や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
武田 美貴(医師)
目次 -INDEX-
「食道がん」とは?
食道は、のどと胃をつなぐ管状の消化管です。口から食べた食物を、胃に送る働きをしています。この食道にがんができると、食べ物が通りにくくなるなど、生活に支障がでる症状がでてきます。がんが大きくなると粘膜を越えて、外側の粘膜下層、固有筋層という筋肉の層へと入りこんでいきます。食道の壁はとても薄いため、この筋層の外側へ浸潤していくこともあります。食道が通る縦隔には重要な臓器があるため、進行すると消化器症状以外のさまざまな症状が出てくることがあります。
また、食道は口側から頸部食道、胸部上部食道、胸部中部食道、胸部下部食道、腹部食道に分かれていますが、発生は胸部中部食道が最も多く(約50%)、次いで胸部下部食道(約25%)、胸部上部食道(約12%)、腹部食道(約6%)、頸部食道(約5%)となっています。食道がんが見つかると、同時または1年以内に他のがんが見つかる可能性が高く(約23%)、胃がん、喉頭がん、大腸がん、肺がんなどを合併します。
食道がんになりやすい人の特徴
食道がんは、飲酒やタバコなどが危険因子となることが分かっています。熱いお茶を飲む習慣がある地域には食道がんの発生が多いことから、熱い飲食物も危険因子と考えられています。
性差(男性に多い)
食道がんは、男性で増加傾向にあり、女性では横ばいです。男女比は約6:1で、年齢は60代、70代に多いがんです。人口10万人当たりの死亡患者数は、男性で15.8人で、肺、胃、大腸、肝臓、すい臓、前立腺に続いて多いです。女性は3.1人でその数はあまり多くありません。
喫煙と飲酒、食生活
食道がんの組織型は、扁平上皮癌が90%と圧倒的に多く、腺がんは欧米で増加しています。食道扁平上皮癌は、喫煙および飲酒が危険因子として知られており、両者の併用により危険性が増加することが知られています。また食生活において果物や野菜を食べないことによるビタミンの欠乏も危険因子とされています。食道がんは熱いお茶を飲む習慣がある地域での発生が多いことから、熱い飲食物も発生因子と考えられています。
逆流性食道炎との関係
腺がんは、逆流性食道炎による下部食道の持続的な炎症によって出現するバレット上皮が原因となることが、欧米の調査で分かってきています。逆流性食道炎や胃食道逆流症は、肥満の人に多いことから、肥満が食道腺がんの発生に関係があるといわれています。しかし、日本では食道腺がんの発生はほとんど見られていません。
食道がんの代表的な症状
声がかれる
声がかれる症状は、頸部食道がんでよくみられる症状です。頸部食道の近くには声門(喉頭)があるため、頸部食道がんが進行すると、声を出す声門に浸潤することがあり、声がかれるという症状が現れます。声門や頸部食道は、内視鏡で直接観察することができますので、大声を出したわけでもないのに声がかれて治らないときには、できるだけ早く耳鼻咽喉科を受診しましょう。
また胸部食道がんが進行すると、食道を越えて食道が通っている縦隔にある組織に浸潤して、その結果声門の動きをつかさどる反回神経という神経に浸潤することもあります。この場合も声がかれるという症状が出ますので、声がかれるという症状が長引く場合は、できるだけ早く内科や耳鼻咽喉科を受診することを検討してください。
首のリンパ節が腫れる
首のリンパ節が腫れるという症状は、頸部食道がん、胸部上部食道がんでよくみられる症状です。首のリンパ節はのどの炎症などでも腫れますが、炎症で腫れている場合は数日で小さくなる、触るとよく動くなどの特徴があります。しかし、がんなどの悪性腫瘍が転移してリンパ節が腫れている場合、周りの組織と癒着しているために触っても動かない、触った感じがごつごつと硬い、といった特徴があります。首のリンパ節がなかなか小さくならない、どんどん大きくなるなどの症状がある場合は、内科や耳鼻咽喉科を受診してみましょう。
食べ物が飲み込みにくい
食べ物が飲み込みにくくなるという症状は、食べ物が通過する管である食道が、がんにより狭くなった時に自覚する症状です。最初は違和感がある程度ですが、進行するといくら噛んでも食べ物が通過しにくくなり、だんだん固形物を食べたくなくなっていきます。そうすると、や瘦せてしまったり、みそ汁など固形物の少ない食べ物を好むようになったりします。食べ物が飲み込みにくくなってきたら、内科で胃カメラなどの検査が必要か相談してみるとよいでしょう。
胸や背中が痛い
食道がんは、進行すると周囲の組織に浸潤することがあります。食道が通る縦隔には、心臓や大血管、神経や肺があり、これらの組織に浸潤すると、命に関わる症状をきたすことがあります。特に大血管(胸部大動脈)への浸潤が疑われると、発見されても手術が難しくなったり、放置しているとがんが大血管の壁を突き破ってしまい、大量出血の原因になることもあります。また背骨に近いこともあり、骨に転移すると背中が痛くなるといった症状がでることもあります。
胸や背中がつらいほど痛くなった時は、食道がんのこともありますので、内科受診を検討してください。
「食道がんになりやすい人」についてよくある質問
ここまで食道がんになりやすい人の特徴を紹介しました。ここでは「食道がんになりやすい人」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
食道がんになりやすい人は体質に原因があるのでしょうか?
武田 美貴(医師)
太っている人は、逆流性食道炎になりやすいため、下部食道腺がんになりやすい、と欧米では言われています。日本では食道腺がんの罹患率が低いため、そのように言われることが少ないですが、注意が必要です。また、喫煙や飲酒も危険因子となることがわかっていますので注意が必要です。
食道がんになりやすい人の年齢層を教えて下さい。
武田 美貴(医師)
60代、70代に多く、男性に多いのが特徴です。死亡率も男性で高く、がんによる死亡の原因である臓器では、肺、胃、大腸、肝臓、すい臓、前立腺についで7番目に多くなっています。女性の死亡率はあまり高くなく、がん死の原因となる臓器としては、10番目以下となっています。
食道がんになりやすい人はお酒を飲むと顔が赤くなる人でしょうか?
武田 美貴(医師)
発がん物質の一つにアセトアルデヒドがあります。お酒を飲むと、有害物質であるアセトアルデヒドが生成されますが、アセトアルデヒドを分解する酵素の力が体質的に弱い人がいます。お酒を飲むと顔が赤くなる人は、アルデヒドの分解が苦手な体質の人で、分解酵素の力が弱いためにアセトアルデヒドが体内に長く停留してしまい、発がんリスクが上昇します。逆にお酒を飲めない人は、飲酒の機会を避けるため発がんリスクは低下します。
編集部まとめ
食道がんは、がんの中でも危険因子やなりやすい人の特徴が分かっているがんです。飲酒や喫煙などの習慣がある方は、特に注意が必要です。食道は内視鏡で直接見ることができる臓器ですので、飲み込みにくい、声がかれるなどの症状が気になる方は、内科や耳鼻咽喉科を受診して相談してください。
「食道がんになりやすい人」と関連する病気
「食道がんになりやすい人」と関連する病気は11個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
消化器科の病気
- 胃食道逆流症(GERD)
- バレット食道
- 膵臓がん
- アルコール性肝硬変
呼吸器科の病気
- 肺がん
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
循環器科の病気
逆流性食道炎は食道が胃酸にさらされることで食道がんを引き起こします。アルコール多飲や喫煙は食道がんの危険因子であり、これらの生活習慣に伴うその他の病気も食道がんに合併する可能性があります。
「食道がんになりやすい人」と関連する症状
「食道がんになりやすい人」と関連している、似ている症状は7個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 食べ物が飲み込みにくい
- 急に痩せてきた
- 声がかすれる
- 酸っぱい液体が上がってくる
- 喉に食べ物が引っかかった 違和感
- 喉が詰まる感じ
- 喉が焼けるように痛い
これらの症状がある場合でも、食道がんの疾患の可能性が考えられます。がんは自覚症状が出にくい病気なので、症状を自覚した時には、早めに医療機関へ受診しましょう。