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「認知症が一気に進む原因」はご存知ですか?進行すると現れる症状も医師が解説!

 更新日:2024/03/26
「認知症が一気に進む原因」はご存知ですか?進行すると現れる症状も医師が解説!

認知症が一気に進む原因とは?Medical DOC監修医が認知症が一気に進む原因・タイプ別の進行速度・進行すると現れる症状・進行を遅らせる方法・対策などを解説します。

村上 友太

監修医師
村上 友太(東京予防クリニック)

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医師、医学博士。福島県立医科大学医学部卒業。福島県立医科大学脳神経外科学講座助教として基礎・臨床研究、教育、臨床業務に従事した経験がある。現在、東京予防クリニック院長として内科疾患や脳神経疾患、予防医療を中心に診療している。
脳神経外科専門医、脳卒中専門医、抗加齢医学専門医。日本認知症学会、日本内科学会などの各会員。

「認知症」とは?

認知症とは記憶力や判断力、思考能力、情報処理能力などが低下して、日常生活に支障が出ている状態を指す病名です。記憶力の低下が主体となるアルツハイマー型認知症がよく知られていますが、その他にも幻視がみられ、認知機能の変動が目立つレビー小体型認知症や性格が変わり、非常識な行動をとりやすくなる前頭側頭型認知症、脳梗塞を原因で発症する血管性認知症など、様々な種類の認知症があります。認知症はその種類によって認知機能低下の進行速度が異なりますが、生活環境によっても認知症の進み方には大きな個人差があります。認知症の方ではどのようなことに注意する必要があるのかについてご紹介いたします。

認知症が一気に進む原因

アルツハイマー型認知症などの神経変性による認知症では一般に数年~十数年の単位で緩徐に進行します。しかし、精神的なストレスを受けた方や生活環境が変化した方、頭を使う機会を失った方では、より急速に認知機能が低下することがあります。どのような場合に認知症が一気に進みやすいのかをご紹介します。

生活環境の変化

施設へ入所する、病院に入院するなど生活環境に大きな変化があると、急に物忘れがひどくなったり、無気力になったり、怒りっぽくなったりと認知症が一気に進んでしまうことがあります。要因は様々ですが、生活環境の変化により、行動が制限される、以前はできていたことができなくなり自信を喪失する、他人に依存することで行動する機会が減る、新しい環境に順応できず落ち込むなどが要因となると考えられます。

行動する機会の減少・楽しみの喪失

退職や歩行機能の低下による外出機会の減少、友人や家族の喪失などでやりたいこと、やるべきことを喪失すると、認知症が一気に進んでしまうことがあります。新しい刺激がなくなることや自身の役割・楽しみを喪失することで活動意欲がわかなくなること、周囲への気配りや日時などを考える機会が減少することが要因になると考えられます。

考える機会の喪失

人と交流する機会が減少したり、介助者が先回りをしてすべてをこなしてしまったりなど、自分で考える機会を喪失すると、認知症が一気に進んでしまうことがあります。筋肉と同じく、認知機能も普段から使用することで、機能の維持や向上できるものであるため、何かを失敗してしまったとしても意欲的に考える機会を作ることが重要です。

薬剤による影響

認知機能が低下すると怒りっぽくなったり、不安が強くなったり、夜に眠れなくなったりすることがあります。そのような症状に対して抗精神病薬や睡眠導入剤を使用することがありますが、これらの薬剤では副作用で反応が鈍くなったり、認知機能が低下したりすることがあります。また、認知症の治療薬(ドネペジルやメマンチンなど)を使用している場合には薬の中止により、認知症が一気に進んでしまうことがあります。

不眠症/日中の眠気

疲れが溜まっていたり、夜に寝付けなかったりした場合には、日中の強い眠気により、反応が鈍くなったり、認知機能が低下したりすることがあります。ぼーっと過ごしてしまうと、頭を使う機会が減少するため、それにより認知症が一気に進んでしまうことがあります。

h2>認知症のタイプ別・進行速度

認知症はそのタイプごとに認知機能の変化の仕方や進行速度が異なります。ここでは、認知症として代表的なアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、血管性認知症、前頭側頭型認知症についてご紹介いたします。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は比較的進行の遅い認知症で、数年~十数年かけてゆっくりと進行します。直近の記憶力の低下が目立つ認知症で、進行すると予定を忘れる、貴重品をよくなくすなどの症状が出現します。情報の処理能力は比較的保たれるため、礼節が保たれ、会話中の失言などに対しての取り繕いなどがみられます。症状の自覚が不十分なことが多く、自分の行動自体を完全に忘れてしまうため、貴重品をなくした時など問題があった時に周囲の人を攻めてしまうことがあります(ものとられ妄想)。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症はアルツハイマー型認知症よりは進行の早い認知症で、診断から約5年で重度の認知症となります。また特徴としては認知症が比較的軽い間から認知機能の変動があり、突然これまでできていたことができなくなる、ぼーっとする、おかしな行動をとなるなどの認知機能の低下が数分~数日間続くことがあります。また、実際にはないもの(多くの場合には子供などの人物)が見えることも特徴で、認知機能がある程度保たれている間は本人がそれは幻覚であると自覚している場合もあります。進行するとパーキンソン病のような動きにくさが出たり、日中に過度の眠気がでたり、突然気を失ったりします。

血管性認知症

血管性認知症は脳梗塞や脳出血などの脳血管障害を原因として発症する認知症です。脳血管障害を繰り返すことで階段状に症状が進行するため、動脈硬化の程度や十分な治療を受けているかどうかで症状の進行速度はことなります。症状は脳の障害を受けた場所ごとで違いがあり、情報処理能力が大きく低下する、料理などの順序だてて行う動作が難しくなる、計算ができなくなるなど、日常生活に支障の大きい症状が出ることも少なくありません。

前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症は欲望に忠実な行動や常識はずれな行動をしてしまうタイプとうまく言葉が離せなくなるタイプに分かれますが、おかしな行動をしてしまうタイプでは数年、うまく言葉が離せなくなるタイプでは8~10年ほどで重度の認知症となります。症状が進行すると、おかしな行動をするタイプでは、意味もなく同じ動作を繰り返す、欲しいと思ったものを盗ってしまう、尿意を感じたら公共の場でも放尿するなど常識はずれな行為、時に犯罪となる行為も行ってしまいます。うまく話せなくなるタイプでは、思ったことを伝えることができなくなり、コミュニケーションが取れなくなります。

認知症が進むと現れる主な症状

認知症ごとに進行した時に現れる症状は異なりますが、末期の認知症では複数の認知症で類似の症状となります。認知機能が進行すると出現する症状について説明します。

意欲低下・無関心

以前に好きだったものなどへの関心が乏しくなり、すべての物事に受動的になります。日中の活動性が落ちることで不眠になったり、食事などにも関心を示さず食事量が減ったりしてしまいます。デイサービスなどを利用して周囲とのかかわりを増やす、積極的に声をかける、本人が行おうとしたことは静止せずに見守るなどで対応し、できるだけ意欲を保つことが大切です。

嚥下障害

認知症が高度に進行すると食事を食事と認識できず、食事が食べられなくなります。また飲み込む動作がしっかりとできなくなり、誤嚥をしやすくなります。嚥下機能は本人の食事への意欲も関与するため、食事が食べられなくなってきたときには、飲み込みやすい食形態で本人の好きなものを食べさせるとよいでしょう。

不眠、昼夜逆転、せん妄

日中の活動性の低下や昼寝、加齢による必要な睡眠時間の減少などから、認知症の進行期には不眠や昼夜逆転がよく見られます。また日中の眠気による不機嫌や夜間に眠れないことによる不安の増強などで精神状態が不安定となり、せん妄につながることもあります。日中はできるだけ車いすに座らせる。デイサービスなどを利用し、日中の活動量を増やすなどの対応を行い、それでも不眠や昼夜逆転、精神症状で困る場合には脳神経内科や心療内科、精神科を受診しましょう。

認知症の進行を遅らせる方法・対策

認知症の進行を遅らせるには、「考える」「行動する」ことを日常的に行うことが重要です。また、体調不良や精神的な不調などがあると認知症の進行が早まるため、食事や運動、感染対策などをしっかりと行うことも重要です。

老人会やデイサービスなど新たなコミュニティに参加する

人との交流は認知症の予防に非常に有効です。日常会話だけでも日時や最近の出来事などを思い出したり、聞き手が楽しめる話題を探したりと思考する機会になり、また生活の中の活動意欲につながります。人との交流を増やす手段としては、地域の活動に参加する、自分に合った既存のコミュニティ(スポーツクラブやデイサービス、老人会など)に所属することなどが有用です。

クロスワードや数独などの知的活動を行う

「考える」機会を増やす手段としては、クロスワードや数独などの知的活動を行うことも有用です。知的活動はその人ごとに合ったレベルのものが望ましく、成功体験を積み上げることで継続する意欲や自身につながります。

適度な運動をする

ウォーキングなどの適度な運動は認知症の進行を抑えるだけでなく、肥満の予防や食欲の維持など一般的な健康を維持するためにも重要です。また気分転換にもなるため、気分の落ち込みなどの精神症状にも有効です。

「認知症が一気に進む原因」についてよくある質問

ここまで認知症が一気に進む原因などを紹介しました。ここでは「認知症が一気に進む原因」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

認知症を悪化させる原因はどんなことが考えられますか?

村上 友太(むらかみ ゆうた)医師村上 友太(むらかみ ゆうた)医師

気分の落ち込みや活動制限などによる活動性の低下や考える機会の減少が認知症の進行を促進します。また、栄養不足や不眠症、抗精神病薬や睡眠導入剤の使用などでも認知機能が低下します。

認知症の方に言ってはいけないこと、やってはいけないことはありますか?

村上 友太(むらかみ ゆうた)医師村上 友太(むらかみ ゆうた)医師

認知症の方は行うべきことを忘れてしまう、何かを行ったとしてもうまくできない、手際が悪いなどで周囲の人に迷惑をかけることもあると思いますが、強く叱ったり、行うべきことを取り上げてしまったりすることは避けましょう。強く叱ると、自信を喪失して鬱傾向となる、叱られることを怖がって自分からは何もできなくなる可能性があります。本人の行っていることを代わりに行ってしまうと、自分で何かを行う機会を失い、依存的になってしまう可能性があります。可能であればできるだけ本人に任せ、困ってしまう部分のみ手伝うようにしましょう。自分の力でやり遂げることで活動意欲や自己評価を高める効果につながります。

認知症の方が入院すると一気に進む原因について教えてください。

村上 友太(むらかみ ゆうた)医師村上 友太(むらかみ ゆうた)医師

入院した場合はそもそも入院するような体調不良がある、外出ができず、基本的に自室内で過ごさなければならない、家族とすごす時間が減る、自宅では自分で行っていたこと(家事や趣味)ができなくなるなど、大きな環境変化とともに考える機会、行動する機会が大きく制限されるため、認知症が一気に進行しやすいです。新型コロナウイルス蔓延後は家族の面会も制限があり、対策は困難ですが、通信機器などを利用して家族が積極的に連絡をしたり、自室で行える知的活動を本人に渡したりなどで対応するとよいでしょう。

編集部まとめ

認知症が進行すると、人が変わったようになってしまったり、できないことが増えてしまって介護が大変となったりしてしまうため、できるだけ進行を抑えたいですよね。近年は日本でも進行を抑制できるかもしれない新たなアルツハイマー型認知症の治療薬が保険適応になるなど、認知症の治療も少しずつ進んではいますが、まだまだ根本的な治療が難しいのが現状です。
認知症の進行を抑えるには、普段の生活の中で考える機会を増やしたり、食事や運動に気を付けたり、生活リズムを整えたりすることも非常に重要です。これまでお話ししたような認知症が進む原因に注意しつつ生活を送っていただければ幸いです。

「認知症が一気に進む原因」と関連する病気

「認知症が一気に進む原因」と関連する病気は12個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

内科の病気

内分泌内科の病気

脳神経内科・脳神経外科の病気

全身的な病気や外科的な病気の場合には、治療によって認知症症状は改善する可能性があります。

「認知症が一気に進む原因」と関連する症状

「認知症が一気に進む原因」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 口数が少なくなった
  • 食欲が落ちた
  • 横になって過ごすことが増えた
  • 怒りっぽくなった
  • 朝に起きれず、日中も眠そうにしている

短期間に認知機能が低下する場合には病的な状態にあることが考えられます。原因を探る上でも早めに医療機関への受診をお勧めします。

この記事の監修医師