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躁うつ病(双極性障害)の症状・原因・治療方法について

 更新日:2023/03/27

躁うつ病(双極性障害)(読み方:そううつびょう、別名:そうきょくせいしょうがい)とはどんな病気なのでしょうか?その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。

この記事の監修ドクター:
深水 弘輔 医師(深水メンタルクリニック 院長)

躁うつ病(双極性障害)とは

双極性障害は、精神疾患の中でも気分障害と分類されている疾患のひとつです。うつ状態だけが起こる病気を「うつ病」といいますが、このうつ病とほとんど同じうつ状態に加え、うつ状態とは対極の躁状態も現れ、これらをくりかえす、慢性の病気です。

昔は「躁うつ病」と呼ばれていましたが、現在では両極端な病状が起こるという意味の「双極性障害」と呼んでいます。なお、躁状態だけの場合もないわけではありませんが、経過の中でうつ状態が出てくる場合も多く、躁状態とうつ状態の両方がある場合とはとくに区別せず、やはり双極性障害と呼びます。

引用:厚生労働省「知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス」
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_bipolar.html

深水弘輔医師 深水メンタルクリニック院長ドクターの解説
躁うつ病とは、基本障害が抗うつあるいは高揚の気分変化で、一般的な活動性の変化を伴う疾患です。

ICD-10(1992年〜)分類で、躁うつ病とうつ病は気分障害として同じグループに分類されていましたが、DSM-5(2003年〜)分類においては、躁うつ病とうつ病は別のグループに分けられ、躁うつ病は、総合失調症とうつ病の中間と位置づけられました。

現在の精神科治療は、DSM-5の立場から行われています。

生涯有病率は1.2%です。再発する傾向があるため、急性期の治療だけでなく再発予防治療が重要視されています。

躁うつ病(双極性障害)の症状

双極性障害は、以前、躁うつ病と呼ばれていた通り、躁状態とうつ状態という二つの状態が現れます。躁状態は、気分が高ぶり、自分が偉くなった気がして、眠らなくても平気で、次々とアイデアが湧く一方、何事にも集中できなくなり、お金を使いすぎたり性的逸脱行動に走ったりして、人生に大きな打撃を与える結果となります。同じような状態でも、入院を要する程ではない場合は、軽躁状態と呼ばれます。4日程度気分が高ぶるというだけであれば、誰でもありそうに思えますが、双極性障害の軽躁状態というのは、いつものその人とは全く違う状態になってしまっている、まるで人が変わってしまったようだ、というのがポイントでしょう。躁状態を伴う場合を双極Ⅰ型障害、うつ状態と軽躁状態しかない場合を、双極Ⅱ型障害と言います。以前、躁うつ病と呼ばれた病気は、ほぼ双極Ⅰ型障害に相当すると考えて良いでしょう。双極Ⅱ型障害は、ほとんど躁うつ病に近い場合もありますが、うつ病やパーソナリティーの問題に近い場合もあり、現状では、少々輪郭のはっきりしない病名です。
うつ状態のほうは、症状の上ではうつ病と大きな差はありません。気分がうっとうしくなり、何事にも興味が持てず、何も楽しいと思えず、身体の調子が悪くて疲れやすく、頭も働かず、自分を責め、死にたい気持ちになります。身体の症状は、眠れない/寝すぎてしまう、食欲がない/食べすぎてしまう、身体の動きがゆっくりになってしまう/じっとしていられなくなる、という風に、両極端な症状のうち、どちらも現れる場合があります。そして、これらのエピソードが治ったときには、何も症状がないのがこの病気の特徴です。

引用:日本精神神経学会
https://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=27

深水弘輔医師 深水メンタルクリニック院長ドクターの解説
躁状態においては、高揚した気分・誇大な気分、怒り易さ、自己抑制のなさ、多動、多弁、疲労感のなさ、などの症状がみられます。

うつ状態においては、対象的に、抗うつ気分、意欲低下、自己の無価値感、自責感、口数の少なさ、疲れやすさ、食欲減退、睡眠障害の他、自殺傾向が診られることに注意を要します。

「躁うつ病のうつ状態」「それ以外のうつ状態」の鑑別のために、躁状態のエピソードの有無が治療方法の選択上、重要視されます。

躁うつ病(双極性障害)の原因

双極性障害患者さんの脳の中では、脳のはたらきを調節しているホルモンのようなもの(神経伝達物質)が、異常に増えたり、減ったり、バランスが崩れています。
双極性障害の原因は現時点で、まだはっきりしてはいませんが、遺伝子、環境、性格などの要素が関係していると考えられています。

引用:日本うつ病学会 双極性障害委員会「双極性障害(躁うつ病)とつきあうために」
http://www.secretariat.ne.jp/jsmd/sokyoku/pdf/bd_kaisetsu_chapter7.pdf

深水弘輔医師 深水メンタルクリニック院長ドクターの解説
原因は不明ですが、誘因と素因が絡み合って発症すると考えられています。現在素因として、病前性格や遺伝、養育環境が生み出す脳の脆弱性が、医学的には特に注目されています。

躁うつ病(双極性障害)の検査法

双極性障害を他の病気と鑑別することが重要です。例えば、双極性障害(躁状態の場合)とADHDはどちらも小児を非常に活動的にしますが、ADHDのほとんどの小児では、双極性障害の小児と違って激しい気分変動はみられないため、医師は通常この2つの病気を見分けることができます。

医師は、症状の一因とりなりうる何らかの薬剤を小児が服用しているか確かめます。また、症状の一因となりうる、あるいは症状を引き起こす他の病気の徴候も調べます。例えば、甲状腺機能亢進症の有無を調べる血液検査を行います。

引用:MSDマニュアル家庭版
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/23-小児の健康上の問題/小児と青年における精神障害/小児と青年の双極性障害-(躁うつ病)

深水弘輔医師 深水メンタルクリニック院長ドクターの解説
双極性障害(躁うつ病)と判断するためには、双極性障害(躁うつ病)の症状と類似した身体疾患他との鑑別のために、血液検査や神経学的検査、MRI、脳波などの検査がされています。

また、統合失調症・双極性障害(躁うつ病)・うつ病の鑑別のために光トポグラフィーが行われることがあります。

躁うつ病(双極性障害)の治療方法

躁状態には、有効な薬物療法がたくさんありますので、治療しさえすればたいてい良くなります。問題は、特に初めての躁状態の場合、ご本人は病気と思っていないため、治療する気が全くない場合が多いということです。そのため、心配して治療を勧める周りの人たちを邪魔者だと思って、激しく怒ったりすることもあるので、周囲の人たちも困ってしまいます。しかし、放置すると、その人が長年培った信頼や社会的な地位を失い、人生に大きなダメージを与えることになりますので、早めに治療することが必要です。まずは、「問題行動」を指摘するのでなく、寝ていない、このままでは身体が参ってしまう、といったように、身体の問題として説得して治療を勧めるのが良いと思います。それでも難しい場合には、ケースワーカー(精神保健福祉士)がいる精神科の専門病院や自治体の精神保健福祉センターなどに相談して、どうすれば治療の軌道に乗せることができるか、相談してみるのが良いと思います。
双極性障害、特に双極I型障害の場合は、早い段階から、予防ということを考えなければなりません。双極性障害には、リチウムを初めとして、ラモトリギンなど、予防に有効な薬がありますので、これらの薬を使い、心理・社会的な治療を受けることによって、多くの場合、かなりコントロールできます。
双極Ⅱ型障害の場合は、ほとんど双極I型障害と同じ治療で良い場合から、薬物療法だけでは不十分で、精神療法が重要になるようなケースまで、色々なタイプの方が含まれていますので、治療についても、一概には言えない部分があります。

引用:日本精神神経学会
https://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=27

深水弘輔医師 深水メンタルクリニック院長ドクターの解説
治療は、躁状態あるいはうつ状態における急性期治療と衰退期における維持療法に分けられます。

躁状態の薬物療法では、気分安定薬(リーマス・デパケン他)定型抗精神病薬(セレネース他)非定型抗精神病薬(セロクエル・エビリファイ他)が処方されます。

「躁うつ病のうつ状態」の薬物療法では、気分安定薬(リーマス)、非定型抗精神病薬などが処方されます。

「うつ病などの他のうつ状態」と同様に、SSRI(ジェイゾロフト、レクサプロ他)、SNRI(サインバルタ、イフェクサー他)、NaSSA(レメロン、リフレックス)が処方されることもありますが、無効ないし、躁状態に急変する危険性もあり、注意を要します。

再発することの多い躁うつ病は、維持療法が重要視されています。精神療法を通じて、躁うつ病の性質の理解、初期徴候の習得、ストレス回避のための生活習慣のアイゼンが行われます。

これと並行して、薬物療法(気分安定剤・非定型抗精神病薬など)が行われます。

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