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「甲状腺がんを放置する」とどうなるかご存知ですか?症状や治療法も解説!

 公開日:2023/10/20
「甲状腺がんを放置する」とどうなるかご存知ですか?症状や治療法も解説!

甲状腺がんは、がんの中でも進行が遅く、種類が多いがんです。そのため、がんを放置していても大丈夫なのか気になる方もいるでしょう。

結論からいえば、腫瘍が大きくなったり別の臓器などに転移したりする可能性があるため、早めに治療したほうが良いでしょう。

本記事では、甲状腺がんを放置するとどうなるかをご紹介します。また、甲状腺がんの分類・症状・治療方法なども解説します。

竹内 想

監修医師
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)

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名古屋大学医学部附属病院にて勤務。国立大学医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。専門領域は専門は皮膚・美容皮膚、一般内科・形成外科・美容外科にも知見。

甲状腺がんとは?

甲状腺がんとは、甲状腺の一部にできた腫瘍のうちで悪性のものです。甲状腺は、喉仏(のどぼとけ)の下あたりにあり、甲状腺ホルモンと呼ばれるホルモンを分泌する働きがあります。
原因は不明ですが、一部には遺伝性のものもあります。基本的には進行が遅くて治る可能性は高いですが、未分化がんと呼ばれる一部の種類は進行が速く、転移しやすいです。
自覚症状はあまりみられませんが、喉仏(のどぼとけ)の下にしこりができて診察した結果、見つかる場合が多いでしょう。

甲状腺がんを放置するとどうなる?

甲状腺がんは進行が穏やかなケースが多いため、放置していても、つらい症状が出ない場合があります。ただし、放置すると腫瘍が広がり、周辺の器官や他の臓器に転移する可能性があります。
とくに、進行が速い未分化がんの場合、放置することは危険です。がんであることが分かった場合は適切な治療を行う必要があります。
リスクが低い小さながんの場合、特に何もしないケースもありますが、経過観察は必要になります。病院で定期的に検査を受けましょう。

甲状腺がんの分類

甲状腺がんは細胞の形や増殖の仕方により、主に4つに分類されます。具体的には次のようなものがあります。

  • 甲状腺分化がん
  • 髄様がん
  • 未分化がん
  • 悪性リンパ腫

それぞれについて詳しく解説します。

甲状腺分化がん

甲状腺分化がんは、甲状腺がんの中でも性質が穏やかで予後が良いことが特徴です。甲状腺分化がんは、さらに次の3タイプに分けられます。

  • 乳頭がん
  • 濾胞(ろほう)がん
  • 低分化がん

乳頭がんはもっとも多くみられるタイプで、全体の約90%を占めます。進行が非常に遅く、予後も良いでしょう。濾胞(ろほう)がんは2番目によくみられるタイプで、約5%を占めます。
リンパ節への転移は少ないものの、がん細胞が血液中を流れ、肺や骨など遠くの臓器に転移しやすいです。低分化がんは1%未満のまれなもので、遠くの臓器に転移しやすい特徴があります。

髄様がん

髄様がんは約1~2%を占めるがんで、乳頭がんや濾胞(ろほう)がんより進行が速く、リンパ節・肺・肝臓などへ転移しやすい特徴があります。また、遺伝性のものがあることも特徴です。

未分化がん

未分化がんは全体の約1~2%を占めるがんで、進行が非常に速いほか、悪性度も高いことが特徴です。
反回神経・気管・食道など甲状腺近くの臓器に広がりやすいことに加え、肺や骨など遠くの臓器にも転移しやすい傾向があります。

悪性リンパ腫

悪性リンパ腫は血液のがんで、全体の約1~5%を占めます。慢性甲状腺炎(橋本病)のある人に多く発症する傾向があります。
甲状腺全体が急速に腫れたり、嗄声・呼吸困難などが起こったりする場合があるのも特徴です。

甲状腺がんの主な症状

甲状腺がんになると、どのような症状が現れるのでしょうか。実は、自覚症状はあまり見られない場合が多いことが特徴です。
具体的には次のような症状が見られることがあるでしょう。

  • しこり
  • 飲み込みにくさ
  • 声のかすれ
  • 呼吸困難感

甲状腺がんで見られる症状についてご紹介します。

自覚症状はあまり見られないことが多い

甲状腺がんの場合、自覚症状はあまり見られないケースが多いです。とくに大部分を占める分化がんの場合、自覚症状はほとんどありません
次に挙げる、喉仏(のどぼとけ)の下にできるしこりがもっとも自覚しやすい症状です。ただし、未分化がんの場合や、がんが大きくなってくると次に挙げるような症状が現れる場合があります。

しこり

しこりは、甲状腺がんでもっとも多い自覚症状です。喉仏の下にしこりが触れる場合が多いですが、がんが進行して首のリンパ節に転移すると、首の横にもしこりが触れる場合があるでしょう。
ただし、しこりができている場合があったとしても腫瘍ではなく正常な細胞が部分的に多くなったり、水分がたまったりしてできる場合もあります。

飲み込みにくさ

別の症状としては、飲食をしている際に飲み込みにくさを感じる場合があるでしょう。腫瘍が大きくなると気管や喉頭を圧迫するようになるため、物が飲み込みにくくなります。
喉の痛みがないのに違和感が続く場合は、甲状腺の疾患を疑ってみる必要があるでしょう。

声のかすれ

他の症状として、声のかすれが現れる場合もあります。甲状腺の近くには声帯を動かす神経である反回神経が通っています。
がんが大きくなって反回神経に触れるようになると、神経の麻痺が起こるため、声がかすれる場合があるでしょう。声のかすれを嗄声(させい)ともいいます。

呼吸困難感

さらに、呼吸困難感の症状が現れるケースもあります。他の症状と同じく、腫瘍が大きくなり、気管や喉頭を圧迫するようになることが原因です。
また、気管にがんが浸潤し、気管が狭くなるために息苦しさを感じるケースもあるでしょう。ひどい場合には、気管内挿管や気管切開による気道確保が必要なケースもあります。

甲状腺がんの治療方法

甲状腺がんでは、がんの種類やステージなどに応じて治療法が決められます。危険リスクの少ない、一部の小さながんの場合は経過観察になるケースもあります。
治療を行う場合は、次のような方法が検討されるでしょう。

  • 外科治療
  • 放射線治療
  • 薬物療法

それぞれの治療方法をご紹介します。

外科治療

外科治療は、甲状腺がんでもっとも多くの場合に用いられる治療方法です。手術の場合、検査結果により甲状腺をすべて摘出することもあれば、一部を残して摘出するケースもあります。
また、両側にある甲状腺の片側だけを摘出する場合もあります。

放射線治療

放射線治療は、X線やその他の放射線を用いてがん細胞の増殖を抑え、縮小させる治療方法です。
体の内側から放射線を照射する内照射と呼ばれる方法に加え、体の外側から照射する外照射と呼ばれる方法の2種類があります。内照射の場合は、放射性ヨードのカプセルを飲み込んで治療を行います。

薬物療法

薬物療法には、内分泌療法や分子標的療法があります。
内分泌療法は乳頭がんや濾胞がんで手術後の再発・転移の可能性がある場合に、甲状腺刺激ホルモンの分泌を抑えるための甲状腺ホルモン薬を飲む治療方法です。

編集部まとめ

甲状腺がんは進行が遅いものが多いとはいえ、放置することは危険です。腫瘍が大きくなったり、転移したりする可能性があるため、治療したほうが良いでしょう。

自覚症状の少ないがんですが、しこり・飲み込みにくさ・声のかすれ・呼吸困難感などの症状が出る場合があります。

症状が気になる場合は、そのまま放置するのではなく、早めに病院を受診しましょう。

甲状腺がんと関連する病気

「甲状腺がんの症状」と関連する病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

甲状腺の病気

  • 慢性甲状腺炎(橋本病)
  • 無痛性甲状腺炎
  • 亜急性甲状腺炎

バセドウ病は甲状腺ホルモンが過剰に産生される疾患です。ホルモンが過剰になると、汗をかきやすい・動悸がする・眼球が飛び出すといった症状が現れます。
反対に徐々にホルモンが減少する疾患もあり、具体的には慢性甲状腺炎(橋本病)が挙げられます。

甲状腺がんと関連する症状

「甲状腺がん」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • しこり
  • 嗄声(声のかすれ)
  • のみ込みにくさ
  • 誤嚥(ごえん)
  • 圧迫感
  • 血痰

甲状腺がんは自覚症状が少ない病気です。上記のような症状が出ており、少しでも気になる場合は、できるだけ早めに耳鼻咽喉科や内分泌外科で診察を受けましょう。
多くのケースでは悪性度が低いため、根治が期待できます。ただし、一部は悪性化する可能性もあることに注意しましょう。

この記事の監修医師