目次 -INDEX-

  1. Medical DOC TOP
  2. 医科TOP
  3. 三大疾病
  4. 脳疾患
  5. 「脳出血の手術」で起こる”5つのリスク”はご存じですか?他の治療法や再発率も医師が解説!

「脳出血の手術」で起こる”5つのリスク”はご存じですか?他の治療法や再発率も医師が解説!

 公開日:2026/05/15
「脳出血の手術」で起こる”5つのリスク”はご存じですか?他の治療法や再発率も医師が解説!

脳出血は、脳内の細い血管が何らかの原因で破綻し、脳のなかで出血が起こる病気です。出血が生じた部位や血腫の量によっては、麻痺や意識障害などの重篤な症状が現れます。

脳出血の治療では、全身状態によって手術で頭蓋骨のなかに溜まった血腫を取り除きます。

本記事では、脳出血で選択される手術方法・リスク・手術以外の治療法・生存率を専門的な視点で解説しますので、参考にしてください。

伊藤 規絵

監修医師
伊藤 規絵(医師)

プロフィールをもっと見る
旭川医科大学医学部卒業。その後、札幌医科大学附属病院、市立室蘭総合病院、市立釧路総合病院、市立芦別病院などで研鑽を積む。2007年札幌医科大学大学院医学研究科卒業。現在は札幌西円山病院神経内科総合医療センターに勤務。2023年Medica出版社から「ねころんで読める歩行障害」を上梓。2024年4月から、FMラジオ番組で「ドクター伊藤の健康百彩」のパーソナリティーを務める。またYou tube番組でも脳神経内科や医療・介護に関してわかりやすい発信を行っている。診療科目は神経内科(脳神経内科)、老年内科、皮膚科、一般内科。医学博士。日本神経学会認定専門医・指導医、日本内科学会認定内科医・総合内科専門医・指導医、日本老年医学会専門医・指導医・評議員、国際頭痛学会(Headache master)、A型ボツリヌス毒素製剤ユーザ、北海道難病指定医、身体障害者福祉法指定医。

脳出血とは

脳出血とは、脳内の血管が破綻して血液が血管の外へとあふれ出す状態を指す病気です。脳出血を引き起こす主な原因は、日々の生活習慣病に関連しているものが大半を占めます。加えて、先天的な脳動脈奇形などの血管異常が直接的な原因となって発症する場合もあります。
特に生活習慣病に起因する脳出血は、長年の高血圧症や動脈硬化が進行することで引き起こされます。高血圧性脳出血の好発年齢は、50〜60歳代です。血管が破綻し、出血した場所によって、起こる症状は異なります。医師は、出血量や脳の損傷の具合を評価して、手術方法を決定します。
出血量が極めて多量で、術前に重篤な脳損傷が確認された場合は、手術適応に含まれません。手術の主目的は救命であるため、術後も麻痺などの後遺症が残る可能性を考慮しなければなりません。

脳出血の手術方法

脳出血の治療では、出血した部位や全身状態を考慮して適切な手術方法が選択されます。ここでは、脳出血に対して行われる3つの手術方法を紹介します。

開頭血腫除去術

開頭血腫除去術は脳出血で選択される外科的治療の一つです。出血が生じると、頭蓋内に収まっている脳や脳脊髄液のスペースが血腫によって圧迫されます。容積が限られた頭蓋内でスペースが狭まると、脳の圧力が上がり「頭蓋内圧亢進」を招きます。圧力の上昇は脳組織に深刻な損傷をもたらし、生命に危険が及ぶ状況を招きかねません。
こうした致命的な脳ヘルニアを避けるため、救命目的で開頭血腫除去術が検討されることがあります。本手術の目的は、頭蓋内に溜まった血腫を除去し、脳への圧迫を速やかに解消することにあります。

内視鏡下血腫除去術

脳出血に対して、開頭血腫除去術よりも低侵襲な手術として選択されるのが内視鏡下血腫除去術です。術式を選択する際は、たまった血腫の量や意識障害の程度を専門医が総合的に評価し、慎重に判断されます。
このほかに出血点の部位や形状などによっては、内視鏡でのアプローチが難しいとされています。

穿頭脳室ドレナージ術

穿頭脳室ドレナージ術は、出血に伴い発症する急性水頭症に対する一時的な緊急手術として実施されます。水頭症とは、脳と脊髄を循環している脳脊髄液が頭蓋内に停滞して蓄積し、多彩な神経症状を引き起こす状態です。水頭症の原因には、脳出血やくも膜下出血、脳腫瘍などがあります。
どの原因であっても、循環が妨げられている脳脊髄液を排出して頭蓋内圧を適切に管理しなければなりません。視床や脳幹などの出血で髄液循環が阻害された際は、急性水頭症の悪化を防ぐために本術式が選択されます。

脳出血の手術によるリスク

脳出血の手術には、一定のリスクを伴います。ここでは脳出血の手術による5つのリスクを解説します。

再出血

脳出血の手術後には、血腫を取り除いた部位やその周囲から再び出血する可能性があります。再度出血し、意識状態の悪化がみられた場合には再手術が検討されることもあります。

脳梗塞

脳出血の手術中や手術後には、手術操作が血管への刺激となって脳の血管が詰まってしまうことがあります。高血圧は出血のリスクを伴いますが、逆に血圧が下がると脳への血流が不足します。
そのため、脳出血時には適切な血圧・全身管理が重要です。

髄液漏や髄膜炎

頭蓋内には、脳や脊髄を守るための髄液があります。髄液は本来、硬膜という膜の内側に存在していますが、脳出血のときにはこの硬膜を開いて血腫を取り除きます。その後、硬膜は縫合されますが、この隙間から髄液が漏れた状態が髄液漏です。
また、創部や留置されたドレーンから細菌が侵入した場合は、髄膜炎を起こす可能性があります。

脳組織の損傷

出血した血腫を物理的に取り除く手術操作の過程で、隣接する正常な脳組織を微細に損傷するリスクが伴います。たとえ救命が目的であっても、正常組織が損傷を受けると麻痺や言語障害といった後遺症が残る恐れを否定できません。

創部の癒合不全

糖尿病や栄養状態不良の方、感染状態や血流の乏しい組織の場合には、術後の傷口が塞がらない癒合不全を招きやすくなります。癒合不全は深刻な二次感染や再手術の要因となるため、術後は専門的な栄養管理や徹底した感染予防対策が欠かせません。

脳出血の手術以外の治療法

脳出血のときには、手術以外の治療が行われることもあります。ここでは、脳出血のときに行われる手術以外の2つの治療法を解説します。

投薬による保存療法

脳出血は、出血量や重症度によって手術の適応かどうかを判断します。出血量が少ない場合や、手術のリスクが高い場合などに保存療法が選択されます。手術適応外の際に行われる主要な治療は、出血の拡大を抑えるための降圧薬を用いた厳密な血圧管理です。
また、出血が起こるとその周囲の脳にはむくみが起こりやすくなります。そのため、脳圧を下げる薬を点滴投与することで脳の腫れを抑制し、二次的な脳損傷を極力留めます。

リハビリテーション

脳出血を発症すると、手足の麻痺や言語障害といった日常生活に不可欠な身体機能が失われる恐れがあります。発症後は、症状に応じたリハビリテーションの早期開始が大切です。リハビリテーションの内容は多岐にわたり、理学療法や作業療法、言語療法などによって失われた機能の回復を図ります。

脳出血の手術についてよくある質問

ここまで脳出血の手術方法やリスクなどを紹介しました。ここでは「脳出血の手術」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

脳出血の手術後に再発するリスクはありますか?

脳出血は再発のリスクがある病気です。過去の臨床研究によると脳出血の発症後の再発率は1年で12.8%、5年で35.3%、10年で51.3%というデータがあります。この研究を含め、過去のデータは脳出血そのものの再発リスクが調査されているものがほとんどです。手術を受けた患者さんのみを対象とした再発率の研究は、現時点では世界的に見ても限定的であるのが実状です。
しかし、脳出血が発症後10年以内に2人に1人程度は再発する可能性のある病気であることは明らかです。再発時は、初回発症時と比べて重い後遺症が発生する場合もあります。再発リスクに備えるためには、生活習慣病の予防や治療が欠かせません。

脳出血の手術後の生存率はどのくらいですか?

脳出血の手術後における生存率は、発症時の重症度や選択された術式、さらには合併症の有無に大きく左右されます。具体的な予後を決定する要因には、脳内の出血量や部位に加えて、手術前の意識状態が深く関与するといえるでしょう。過去の研究では、脳出血で血腫除去術を受けた患者さんのうち、約9割が急性期を乗り越え、退院まで生存するとわかっています。
ただし、多少の出血や重篤な意識障害を伴う症例では、軽症例と比較して生存率が著しく低下する傾向にあります。

編集部まとめ

今回は、脳出血の手術をテーマに、具体的な術式の種類や伴うリスク、生存率について詳しく紹介しました。脳出血を発症すると、出血部位によってさまざまな症状を起こします。

手術の方法は、出血量や意識障害の程度、出血した部位といった病態を総合的に判断して選択されます。選択される術式は、開頭血腫除去術や内視鏡下血腫除去術、穿頭脳室ドレナージ術です。

程度の違いはあれどいずれの術式においても、術後には再出血や脳梗塞、髄液漏といった合併症のリスクが一定確率で伴います。

また、手術以外の選択肢には降圧薬などを用いる保存療法があり、早期からのリハビリテーションも極めて重要です。

術後の再発を未然に防ぐためには、原因となる生活習慣病の適切な治療と、日々の習慣の見直しが何より欠かせません。

脳出血と関連する病気

「脳出血」と関連する病気は6個程あります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

関連する病気

脳出血や脳梗塞などの脳卒中は、高血圧をはじめとする生活習慣病が罹患リスク因子とされています。さらに、これらの疾患は術後にてんかんやうつ病といった共通の合併症を引き起こす可能性があるため注意が必要です。

脳出血と関連する症状

「脳出血」と関連している、似ている症状は6個程あります。各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 気分不良
  • 嘔気
  • 半身麻痺
  • 感覚障害
  • 言語障害
  • 意識障害

脳内で出血が生じた具体的な部位によって、身体に現れる神経症状の種類や程度は大きく異なります。例えば運動中枢の損傷であれば麻痺が起こり、言語中枢であれば言語障害などの局在症状が確認されます。これらの症状は単独で出るとは限らず、複数の症状が同時に現れることも少なくありません。

この記事の監修医師