「外傷性くも膜下出血の生存率」は”約3分の何”かご存じですか?症状も医師が解説!

自分自身や家族の方が、転倒や転落、交通事故などにより外傷性くも膜下出血を生じる可能性があります。
生存率やどのような症状が出るのか、治療法などさまざまなことが気になる方も少なくないのではないでしょうか。
また後遺症はどの程度残るのか、社会復帰にはどの程度要するのか気になる方もいます。この記事では外傷性くも膜下出血の生存率や治療法などについて詳しく解説します。
この記事が外傷性くも膜下出血について知りたい方の参考になれば幸いです。

監修医師:
伊藤 規絵(医師)
目次 -INDEX-
外傷性くも膜下出血とは
外傷性くも膜下出血とは、交通事故や転倒、転落などの外傷が原因で生じるくも膜下出血です。くも膜下出血は脳を包む3つの膜(硬膜、くも膜、軟膜)のうち、くも膜と軟膜の間(くも膜下腔)出血が生じる病気です。
診断は、頭部CT検査やMRI検査、受傷した場所や理由から行います。脳動脈瘤の破裂やそのほか出血性の脳血管障害ではないことを確認することも必要です。稀に脳動脈損傷や脳梗塞を合併することがあるため、画像検査は重要です。
外傷性くも膜下出血の生存率
外傷性くも膜下出血は、しばしば他の外傷(急性硬膜下血腫、脳挫傷、多発外傷など)と併存しており、「外傷性くも膜下出血そのもの」による死亡と、全身外傷や他の頭蓋内病変を含めた死亡とを統計上分けにくいことが少なくないです。そのため、外傷性のみではなく、くも膜下出血全体の生存率は発症した方のうち約2/3という報告があります。
また予後は、脳損傷の程度でも決まるので出血量がどの程度なのか画像を見て評価が必要です。ここではくも膜下出血全体の初回発症時の生存率と長期的な生存率について詳しく紹介していきます。
初回発症時の生存率
初回発症時の生存率は発症した方のうち約2/3とされています。くも膜下出血全体の生存率は動脈瘤の再破裂や遅発性の脳血管攣縮で変わります。再破裂は14日以内に20%程度、6ヵ月以内に50%程度の割合で生じるという報告があるので注意が必要です。遅発性脳血管攣縮は発症後1週間頃から生じます。
くも膜下出血を発症した患者さんのうち約20%は専門病院での治療を受けるに至っていないので、医療体制の改善が望まれています。
長期的な生存率
軽症の患者さんと重症の患者さんでは大きく予後は異なりますが(予後は合併損傷の程度に左右されます)、長期的な生存率は最善の治療をしたとしてもクモ膜下出血の3分の1の方は残念ながら死亡します。一方、3分の1の方は社会復帰することができ、残り3分の1の方は生存できるものの後遺症をもった状態になります。
外傷性くも膜下出血の症状
外傷性くも膜下出血の症状は、大きく5つに分けられます。激しい頭痛や嘔吐、手足のしびれや言語障害、意識障害を伴います。発症初期から生じる症状やあまり生じにくい症状までさまざまです。
また見逃しやすい症状もあるので注意が必要です。ここではそれぞれの症状について詳しく解説します。
激しい頭痛
1つ目の症状は激しい頭痛です。くも膜下出血は突然襲ってくる激しい頭痛が特徴です。頭が割れるような頭痛、ハンマーで殴られたような頭痛などと表現する方が少なくないです。
頭痛の部位は全体的で、特に後頭部から首筋にかけての痛みです。痛みのピークは数秒から数分ですが、少なくない方がこの痛みをしっかり覚えているので、とても強い痛みです。
嘔吐
2つ目の症状は嘔吐です。激しい頭痛の後に、吐き気を伴い嘔吐します。しかし、嘔吐は必ず出現するのではなく、ない場合もあります。
発症前の警告サインの、突然の頭痛と吐き気は、見逃されることがあるので注意が必要です。
手足のしびれ
3つ目の症状は手足のしびれです。片側の手足にしびれや感覚障害が生じる場合があります。外傷性くも膜下出血のみでは生じることは少ないですが、脳挫傷や急性硬膜下血腫など脳を損傷するケースもあり、そのときはしびれが生じることがあります。
言語障害
4つ目の症状は言語障害です。損傷部位や損傷範囲によっては言語障害が生じる場合があります。言語障害はろれつが回っていない様子や、言おうとしていることがわからない、会話がかみ合わないなどの症状があげられます。
意識障害
5つ目の症状は意識障害です。軽度の場合は質問に対する反応が遅かったり、的確な反応がなかったりなどの症状がみられます。また眠気を生じることもあります。重度の場合は完全に意識を消失し、刺激に対する反応がありません。
外傷性くも膜下出血の治療法
外傷性くも膜下出血の治療法は、内科的治療や外科的治療、再生医療(現時点では公的医療保険が適用されない自由診療です)などがあります。治療法は病巣の範囲や程度によって決まります。
軽症の場合は内科的治療や経過観察で済みますが、重症の場合は外科的治療が必要です。ここからはそれぞれの治療法について詳しく説明します。
内科的治療
外傷性くも膜下出血のみでは多くの場合、自然に止血されて吸収されるので外科的治療を行いません。
脳挫傷(脳実質の損傷)で痙攣を起こしてしまう場合は抗けいれん薬を使用した内科的治療が行われることがあります。
外科的治療
病巣範囲が広範囲だったり、重症な脳挫傷や急性硬膜下血腫などの合併を認めた場合は外科的医療が選択されます。
急性硬膜下血腫の治療は硬膜下に溜まった血腫を取り除くことです。さらに脳損傷による脳の腫れ(脳浮腫)で頭蓋内圧が高くなって脳ヘルニアを生じている場合は、開頭し頭蓋骨を一部切り取る減圧開頭術を施行します。
再生医療
脳梗塞や脳出血に加えてくも膜下出血などの脳血管障害での再生医療(幹細胞治療は現段階では、公的医療保険が適用されていません)は、臨床研究・治験の段階にある技術であり、急性期の標準治療として確立したものではなく、先進的・補完的な選択肢として位置づけられます。
外傷性くも膜下出血の生存率についてよくある質問
ここまで外傷性くも膜下出血の生存率や症状、治療法などについて紹介しました。ここでは「外傷性くも膜下出血と注意すべきこと」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
外傷性くも膜下出血の後遺症を教えてください。
外傷性くも膜下出血のみの場合は、後遺症が残らず回復する可能性があります。しかし急性硬膜下血腫や脳挫傷を合併した場合は、損傷部位や範囲に応じた運動麻痺や言語障害、感覚障害や視野障害などを生じる可能性があります。またびまん性軸索損傷を生じた場合は、記憶力や集中力の低下をきたす高次脳機能障害が出現する可能性もあります。
外傷性くも膜下出血になったらどのくらいで社会復帰できますか?
外傷性くも膜下出血になってから社会復帰までの期間は出血の範囲や重症度によって変わるため、この期間で社会復帰可能と一概にはいえません。軽症だった場合は出血が自然に止血し、吸収されるので数週間で社会復帰できる場合もあります。しかし広範囲の出血や脳挫傷、急性硬膜下血腫などを併発した場合は、長期間のリハビリが必要です。
編集部まとめ
外傷性くも膜下出血単独の場合、軽症で経過することもあり、内科的治療が選択されることがあります。
一方で病巣が広範囲だったり、脳挫傷や急性硬膜下血腫を合併していたりする場合は重症化する可能性があるため、外科的治療が検討されることもあります。
外傷性くも膜下出血に、再破裂や脳血管攣縮が生じると生存率が下がります。
重症度に応じて社会復帰までに必要とする時間が変わります。外傷性くも膜下出血は、画像や標準化された指標で重症度を適切に評価することが大切です。
外傷性くも膜下出血と関連する病気
「外傷性くも膜下出血」と関連する病気は3個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
これらは、外傷性くも膜下出血を発症した際に併発しやすい病気です。同時に発症すると重症化しやすいため、注意が必要です。
外傷性くも膜下出血と関連する症状
「外傷性くも膜下出血」と関連している、似ている症状は3個程度あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
このような症状がなかなか治まらずに続く際は、できるだけ早く脳神経外科を受診してください。

