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「慢性硬膜外血腫」の原因や症状などを解説!頭部を打撲してから数週間は要注意!

 公開日:2023/09/11
「慢性硬膜外血腫」の原因や症状などを解説!頭部を打撲してから数週間は要注意!

頭痛などの症状を引き起こす病気に「慢性硬膜外血腫」というものがあります。

慢性硬膜外血腫は、頭の中の血管が損傷・出血することで起こる病気です。

発症原因のほとんどが外傷によるものですが、受傷して数日から数週間経って症状が現れるため発症原因に気づかないケースが少なくありません。

慢性硬膜外血腫は頭の中に血の塊(血腫)ができてしまうため、時には手術が必要になる病気です。

今回は慢性硬膜外血腫の原因や症状、治療方法や再発のリスクなどについて説明します。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

プロフィールをもっと見る
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

慢性硬膜外血腫の原因や症状

ポイント

慢性硬膜外血腫とはどのような病気ですか?

慢性硬膜外血腫とは脳を包む硬膜と頭蓋骨の間に血液が溜まり、血腫という血の塊ができてしまう病気です。脳は髄膜という膜で包まれており、外側から順に硬膜・くも膜・軟膜という3層構造をしています。
一番外側の硬膜は3層のうち一番丈夫な膜で頭蓋骨の内側に張り付いています。この硬膜と頭蓋骨の間に何らかの原因によって血液が溜まり血腫が形成されてしまう病気が硬膜外血腫です。
硬膜外血腫には「急性」と「慢性」があります。急性硬膜外血腫は血腫が数時間で形成され急激に症状が現れます。通常の硬膜外血腫は急性であるケースが多く緊急手術が必要な状態です。一方の慢性硬膜外血腫では血腫形成が緩やかに行われるため症状が現れるまで時間がかかります。そのため慢性硬膜外血腫は発症後数日から数週間経過した頃に発見されるケースが多いです。
慢性硬膜外血種の症状は軽度なケースが多いですが血種の大きさは必ずしも小さいわけではありません。比較的大きな血腫でも慢性化することがあり手術が必要となる症例もあります。

慢性硬膜外血腫の原因は?

硬膜外血腫を発症する原因のほとんどが外傷によるものです。交通事故・転落・転倒などにより頭部を打撲することで硬膜外血腫を発症します。
急性硬膜外血腫では受傷後すぐに血腫が急速に形成されるため、受傷から数時間程度で症状が現れ始めます。一方の慢性硬膜外血腫では血腫形成が緩やかです。
慢性硬膜外血腫では板間静脈などの出血量が比較的少ない血管が損傷して出血するため、硬膜と頭蓋骨の間に血液が溜まるまで時間がかかるからです。そのため慢性硬膜外血腫は症状が現れるまでに数日から数週間程度かかります。

症状について教えてください。

慢性硬膜外血腫を発症すると半数以上で頭痛・吐き気・嘔吐といった慢性頭蓋内圧亢進症状が現れます。しかし無症状のケースも少なくありません。
通常の急性硬膜外血腫では数時間以内に激しい頭痛・嘔吐・意識障害などが見られますが、慢性硬膜外血腫ではそのような激しい症状は見られません。数日から数週間ほど経ってから頭痛などの比較的軽度な頭蓋内圧亢進症状が現れます。
慢性硬膜外血腫の症状は軽度ですが手術が必要となるケースもあります。頭部打撲後に頭痛などの違和感を覚えたらそのまま放置せずに医療機関で検査を受けるようにしてください。

慢性硬膜外血腫の検査や治療方法

MRI

慢性硬膜外血腫の検査方法を教えてください。

慢性硬膜外血腫の検査はCT(コンピューター断層撮影)装置で行われます。脳内を撮影できる装置にはCTとMRI(磁気共鳴画像)がありますが、硬膜外血腫を始めとした頭蓋内出血を疑う場合にはCT検査を行うのが一般的です。
CT検査はMRI検査に比べて検査時間が短く出血の描出も得意なので、頭蓋内出血の有無はCT装置を用いて調べます。

どのように診断されるのですか?

硬膜外血腫はCT画像において血腫部分が凸レンズ型に描出されるのが特徴です。出血したばかりの急性硬膜外血腫であれば凸レンズ型の血腫内は真っ白な高吸収域(ハイデンシティ)となります。これは赤血球や血小板などが凝集してX線を吸収するためです。
一方の慢性硬膜外血腫では時間の経過とともに高吸収域が減ります。時間が経った血腫は脳白質と同程度の吸収域(等吸収域:アイソデンシティ)になるため、血腫の濃度の違いにより急性・慢性の判断が可能です。このようなCT画像の所見によって慢性硬膜外血腫かどうか診断します。

慢性硬膜外血腫の治療方法を教えてください。

慢性硬膜外血腫の治療方法には「経過観察」と「手術」の2通りあります。頭部打撲などの外傷を受けた後、一定期間無症状である場合や症状が軽度な場合には経過観察にて血腫が自然に吸収されるのを待ちます。
慢性硬膜外血腫では症状が急激に悪くなる可能性が低いため、適切な経過観察を行えば自然に血腫が吸収され治癒するケースがあるからです。経過観察だけでは治癒が難しい場合は手術が適用されます。

手術が必要になるのはどのようなケースですか?

以下のようなケースの慢性硬膜外血腫では手術が必要です。

  • 血腫が大きい
  • 血腫が吸収されない

症状が乏しくとも血腫がある程度の大きさの場合には手術によって除去します。経過観察において血腫が吸収されず症状などに変化が見られないケースも手術が必要です。
大きく吸収されない血腫をそのまま放置しておくと脳は圧迫されたままとなり、頭痛などの症状が改善しません。そのような場合には速やかに手術を行い原因となっている血腫を取り除くことで症状改善が期待できます。

慢性硬膜外血腫の再発やリスク

レントゲンを確認

慢性硬膜外血腫は再発することはありますか?

硬膜外血腫を発症する原因の多くが外傷によるものです。そのため再度頭をぶつけるなどした場合には再発する恐れがあります。しかし、頭部に衝撃を受けなければ再発する可能性は低いため再発リスクを回避しやすい病気だともいえます。

リスクが高いのはどのような人ですか?

慢性硬膜外血腫を発症するリスクが高い人として以下が挙げられます。

  • 転びやすい人
  • 血液をサラサラにする薬を飲んでいる人
  • 高血圧の人

転んで頭をぶつけやすい人は注意が必要です。転ぶ以外にもラグビーや格闘技のような頭を激しくぶつける可能性のあるスポーツをしている人も、慢性硬膜外血腫を発症するリスクが高いです。
抗血栓薬などの血液をサラサラにする薬を飲んでいる人も慢性硬膜外血腫を発症するリスクが高いので注意しましょう。血液をサラサラにする薬を飲んでいる人は出血した時に血が止まりにくいです。ちょっとした頭部打撲でも頭蓋内部の血管が損傷して血が止まらなくなり、慢性硬膜外血腫を発症する可能性があります。
高血圧の人は血管が柔軟性を失い硬くなっているため、打撲などの刺激により血管が損傷しやすい状態です。それほど強く頭をぶつけていなくても血管が傷つく恐れがあるため、慢性硬膜外血腫などの脳内出血を発症するリスクが高いです。
血液をサラサラにする薬を飲んでいる人や高血圧の人は健常者よりも慢性硬膜外血腫を発症するリスクが高いので転倒などに十分注意しましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

慢性硬膜外血腫は主に外傷が原因で発症する病気です。そのため乳幼児から高齢者まで誰でも発症する可能性があります
慢性硬膜外血腫は頭部打撲などによる受傷後数日から数週間経ってから症状が現れます。頭をぶつけてから時間が経っているため発症原因に気づきにくく、ただの頭痛や吐き気と判断してしまうことも少なくありません。慢性硬膜外血種を発症しても無症状や軽度な症状の場合には経過観察で治るケースも確かにあります。
しかし血腫が大きかったり吸収されたりしない場合には、手術で血腫を取り除かなければ症状が改善しません。頭をぶつけて数日から数週間経った頃に頭痛・吐き気・嘔吐などの症状が現れたら、必ず医療機関を受診して検査を受けるようにしてください。

編集部まとめ

医療従事者
受傷後すぐに血腫が形成される急性硬膜外血腫は急激に症状が現れるため緊急性が高くすぐに手術が必要です。

一方の慢性硬膜外血腫では血腫の形成がゆっくりと進むため症状が現れにくく無症状であるケースも少なくありません

自覚する症状も軽度なものが多く見過ごしてしまうケースがあります。

慢性硬膜外血腫は時間の経過とともに自然と吸収されて治癒することもありますが、血腫がある程度の大きさのまま吸収されない場合は手術が必要です

頭をぶつけた後に頭痛などの違和感が続くという場合には、そのまま放置せずに一度CT検査を受けて調べるようにしましょう。

この記事の監修医師