目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 三大疾病
  4. 脳疾患
  5. 「くも膜下出血」を発症すると「頭のどこに痛み」を感じる?医師が徹底解説!

「くも膜下出血」を発症すると「頭のどこに痛み」を感じる?医師が徹底解説!

 公開日:2025/02/27
「くも膜下出血」を発症すると「頭のどこに痛み」を感じる?医師が徹底解説!

くも膜下出血を発症すると頭のどこに痛みを感じる?Medical DOC監修医がくも膜下出血を発症すると頭が痛くなる原因・初期症状・予防法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

佐々木 弘光

監修医師
佐々木 弘光(医師)

プロフィールをもっと見る
医師、医学博士。香川大学医学部卒業。奈良県立医科大学脳神経外科に所属し、臨床と研究業務に従事している。現在、市立東大阪医療センターに勤務。脳神経外科学会専門医、日本脳神経血管内治療学会専門医、脳卒中学会専門医、の資格を有する。

「くも膜下出血」とは?

くも膜下出血とは脳内の「くも膜下腔」と呼ばれる空間に出血が生じ、脳の圧力が高まった結果、強烈な頭痛を中心として、嘔吐や失神・意識障害などの様々な症状を呈する病気です。くも膜下出血は、現代でも致死率・後遺症率ともに高い重篤な疾患です。そしてその原因も様々ですが、多くは脳の血管にできた「こぶ」である「脳動脈瘤」が破裂することで生じます。そしてこの脳動脈瘤は破裂するまで症状を出しにくく、見つかりにくいという点も厄介です。また頻度は下がりますが、脳動脈瘤以外が原因となるくも膜下出血もあり、頭痛の性質や治療法なども異なってくる場合もあります。尚、頭部外傷に伴って生じるくも膜下出血は性質が異なるため、本記事では内因性のくも膜下出血、すなわち頭の中に何らかの原因があって生じるくも膜下出血による頭痛について、詳しく解説していきます。

くも膜下出血を発症すると頭のどこに痛みを感じる?

痛みを感じる場所

・くも膜下出血では、突然の強烈な頭痛を生じます。よく「突然、後ろからバットで誰かに殴られたような」とか、「突然、雷が落ちてきたような(雷鳴様頭痛)」とか、「今までの人生で一度も経験したことのないような」と例えられるような、急激かつとても強い頭痛です。そして吐き気や嘔吐などの症状を伴うことも多く、より重篤な場合は約半数で意識を失うこともあるとされます。また突然起こるため、患者さんは頭痛が起きた瞬間のことを明確に覚えていることが多いです。くも膜下出血による頭痛の場所については、一般的には首の後ろを中心とした後頚部、とされますが、くも膜下出血の原因によっても異なります。さらに、くも膜下出血の原因の多くは脳動脈瘤の破裂ですが、破裂した脳動脈瘤のある位置によっても、頭痛が片側になるのか両側になるのか、微妙に異なる場合があります。例えば前交通動脈瘤と呼ばれる瘤の破裂では両側の頭痛が90%とされますが、中大脳動脈瘤や内頚動脈瘤と呼ばれるものでは約25%が片側性の頭痛を認めるという報告もあります。
・その他の原因として、例えば、もやもや病や脳動静脈奇形といって脳内の血管が異常な発達をして脆くなった結果、破れてくも膜下出血を生じる場合もあります。また椎骨動脈解離といって、首の骨である頸椎の横を通って、首の後ろ側から頭の中に入っていく椎骨動脈という血管がありますが、この血管が解離(突然裂けること)して、くも膜下出血となる場合もあります。前者のもやもや病や脳動静脈奇形が原因の場合、病変が存在する位置によって片側性の頭痛が生じます。後者の椎骨動脈解離でも、主に片側の後頚部、つまり片側の首の後ろを中心とした突然の頭痛が生じるとされます。
・一方、破裂がごくわずかで、出血の量が少なかった場合は頭痛が弱く、目立ちにくい場合もあります。しかし特徴として、突然起きるという点では共通していますので、前述のように患者さんは頭痛が起きた瞬間がわかることも多いです。

くも膜下出血を発症すると頭が痛くなる原因

考えられる原因

くも膜下出血では、脳を覆っている硬膜、くも膜、軟膜といった3層の膜構造のうち、くも膜下腔と呼ばれるスペースに大量の出血が一気に広がります。このくも膜下腔は限られた空間であり、中には脳血管などが多数存在しています。そして出血で血液が広がると脳の圧力が急激に高まり、くも膜下腔内にある血管が直接圧迫・刺激されたり、さらに一番外側で脳を覆う硬膜という膜にまで強い圧力がかかったりすると、広範な頭痛が生じるとされています。くも膜下出血はその性質から、非常に緊急性の高い疾患といえます。なぜなら例えば脳動脈瘤が破裂した場合、一旦は動脈瘤からの出血が止まって止血されていたとしても、一度破裂した脳動脈瘤の壁は非常に薄くなっているため、再出血してしまう危険性が高いといえます。そして再出血をきたすと致死率が劇的に跳ね上がってしまうため、緊急手術(開頭脳動脈瘤頸部クリッピング術や脳動脈瘤コイル塞栓術)で止血処置を行う必要があります。この緊急手術を行うことができる診療科が、脳神経外科です。また脳動脈瘤以外の原因によるくも膜下出血でも、緊急での開頭手術や待機的に手術を行う場合もあり、入院の上で安静・保存的加療を要します。従って、突然の、今まで経験したことのないような強い頭痛を自覚した場合は、直ちに脳神経外科を受診するようにしましょう。

くも膜下出血の前兆となる初期症状

前兆となる初期症状

くも膜下出血は突然起こる、いままで経験したことのないような強い頭痛のため、基本的に前兆症状はありません。しかし時々、動脈瘤が破裂しかかっている状態、またはほんの少しだけ出血して瘤が急激に大きくなってきた状態、といった場合は前兆症状(切迫破裂や警告頭痛といいます)がみられることがあります。具体的には、本格的な破裂が起きる数日前からの突然の軽〜中等度の首後ろの頭痛や肩凝りといった症状、吐き気やめまいを伴うなどもあり得ます。また破裂の直前に動脈瘤が急激に大きくなることで、周辺の神経が圧迫されて、片方の瞼が下がってきたり、視力が低下したり、物が二重に見えて目の動きがおかしくなったり、といった症状を認める場合もあります。これらの症状は動脈瘤が切迫破裂の状態にあるときに見られます。そして前兆症状が見られた場合、数日~数週以内に動脈瘤の大きな破裂が生じてしまう可能性があるため、躊躇せず早期に脳神経外科を受診するようにしましょう。また脳動脈瘤がわずかに破裂して見過ごされて数日経過した場合、また破裂した時に脳細胞自体が破壊される「脳内出血」を伴ってしまった場合などには、頭痛以外に手足の麻痺や呂律困難などの脳神経症状を伴うこともあります。
・その他、もやもや病や脳動静脈奇形が原因となる場合、そもそも異常な血管自体が脳細胞の内部に存在し、直接的に脳の細胞が破壊される脳内出血を伴うこともあるため、手足の麻痺や呂律困難、意識障害といった他の脳神経症状を伴うこともあります。また椎骨動脈解離でも、解離によって血管が閉塞することで脳梗塞を生じ、脳神経症状が出現する場合があります。
・いずれにせよこれらの状態は極めて危険なので、血圧を激しく上下させてしまうようなストレスや飲酒・喫煙などの血管に影響を与えてしまうようなことは極力避け、速やかに救急病院や脳神経外科のある病院を受診しましょう。

すぐに病院へ行くべき「くも膜下出血の前兆」

ここまではくも膜下出血の前兆となる症状を紹介してきました。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。

今まで経験したことのない突然の頭痛症状の場合は、脳神経外科へ

今まで経験したことのないような突然の強い頭痛(例えるなら、後ろからバットで殴られたような)や、雷が落ちてきたような頭痛)は、くも膜下出血の可能性があります。また物が二重に見えるや瞼が下がるといった特徴的な症状を伴う頭痛も危険なサインかもしれません。運動麻痺や呂律困難など、神経症状を伴う場合も救急搬送や脳神経外科への速やかな受診をしましょう。

受診・予防の目安となる「くも膜下出血の前兆」のセルフチェック法

突然の頭痛症状がある場合
首後ろを中心とした頭痛や肩凝りといった症状が出現し、強弱の波が少なく、寝ても覚めても強い頭痛が続く、時に吐き気やめまいを伴うような強い症状の場合、警告頭痛の可能性があります。動脈瘤が破裂する前兆の可能性もあるため、脳神経外科を早期に受診しましょう。またもともと頭痛を持っている人でも、少しでもいつもと違う突然の頭痛、と感じる場合には注意が必要です。

・物が二重に見える、瞼が下がる症状がある場合
破裂の直前に脳動脈瘤が周辺の神経を圧迫することで、急に片方の瞼が下がってきたり、視力が低下したり、物が二重に見えてきたりといった症状を認める場合もあります。これらも頭痛と合わせて破裂する前の症状のことがありますので注意が必要です。

・呂律困難や顔面や手足の運動麻痺などの症状がある場合
動脈瘤の位置やその他のくも膜下出血の原因によっては、脳細胞自体が脳出血や脳梗塞で破壊される場合もあります。その場合は、呂律困難や運動麻痺などの脳神経症状を伴う場合もあります。従って、頭痛に加えてこれらの症状を認める場合は直ちに脳神経外科を受診しましょう。

くも膜下出血を予防する方法

脳ドックの受診

くも膜下出血の原因の多くは脳動脈瘤ですが、一般的に脳動脈瘤は小さく、症状を起こすことは稀であるため、気づかれずに破裂することが問題となります。従って、破裂する前に見つけておくことが最大の予防法といえます。またもやもや病や脳動静脈奇形といった、異常な血管が発達する病気の診断についても同様で、症状がなくても「事前に見つけておくこと」が非常に重要です。そしてそのためには、脳の血管が確認できる頭部MRI・Aや造影CTといった画像検査が必要となります。従って、心配な方は一度、健康診断として脳ドックなどを受診し、画像精査することをお勧めします。特に脳動脈瘤に関しては、女性や家族歴(血縁者に脳動脈瘤と言われている人や、くも膜下出血を起こした人がいる)のある人は、自分も脳動脈瘤を持っている可能性がある、と言われています。またもやもや病や脳動静脈奇形についても、家族性があるとされます。従って、特に近親者に同じ病気の人がいる場合、脳ドックの受診をお勧めします。そしてもし脳動脈瘤やその他の血管異常を認めた場合は専門である脳神経外科を受診し、破裂を予防するための治療を行うべきかを判断されます。例えば脳動脈瘤の場合、サイズが小さい場合は定期的な画像検査で経過観察をすることもありますが、大きい場合は、開頭による動脈瘤のクリッピング術やカテーテルによる脳動脈瘤コイル塞栓術といった外科治療で破裂を予防します。もやもや病や脳動静脈奇形についても専門家の判断によって経過観察や更なる精査などが検討される場合もあります。

生活習慣による影響

・仮に脳動脈瘤が見つかった場合、動脈瘤が破裂しやすくなるリスクについて、いくつか報告がありますので注意するようにしましょう。報告によって異なる結果もありますが、日本のガイドラインでは喫煙、高血圧、過度の飲酒(1週間に150g以上の飲酒)が破裂の危険因子と言われています。従って、普段から高塩分な食事を好んだり、喫煙や過剰飲酒をしたりする人は生活習慣を見直すように心がけましょう。また肥満については、くも膜下出血の発症と逆相関するとのデータもありますが、BMIが30以上の肥満では出血リスクが高いとする報告もあります。特に男性の場合はコレステロール値の上昇がくも膜下出血のリスクを増大させるという報告もありますので、脂っこい食べ物は避けるなどの意識も必要です。また脳動脈瘤以外の原因として、椎骨動脈解離では高血圧や頸部への強い衝撃などが原因となって生じることがありますので注意が必要です。

「くも膜下出血の頭痛と場所」についてよくある質問

ここまでくも膜下出血の頭痛と場所などを紹介しました。ここでは「くも膜下出血の頭痛と場所」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

くも膜下出血の中でも特に危険な頭痛の特徴について教えてください。

佐々木 弘光医師佐々木 弘光医師

危険な頭痛の特徴としていえるのは、特に「突然の発症」、「今まで経験したことがないくらい強い痛み」、「吐き気があったり、嘔吐したり、意識を失ったりすることがある」の3点につきます。これらの中で1つでも当てはまる場合は、危険な頭痛として脳神経外科を受診することをお勧めします。またもともと片頭痛などで慢性的な頭痛に悩まされている方でも、少しでも「いつもと違う頭痛だな」と感じたら、受診することをお勧めします。

くも膜下出血を発症する一歩手前の症状について教えてください。

佐々木 弘光医師佐々木 弘光医師

症状が軽微な場合、首の後ろや肩凝りなどと似た頭痛として、破裂の数日前に自覚される場合もあります。そしてただの肩凝りであれば、押したら痛い、や、ひねったら痛い、といった特徴を伴うことがありますが、くも膜下出血の頭痛の場合はそれらに関係なく頭痛が持続し、また突然生じるため、患者さんは頭痛が起きたときのことを覚えているケースも多いです。その他、突然瞼が下がる、視力が落ちた、ものが二重に見える、呂律困難や運動麻痺といった脳神経症状などを伴う場合もあります。そういった症状がみられる場合は、早期の脳神経外科の受診をお勧めします。

編集部まとめ

ここまでくも膜下出血の前兆症状についてまとめてきました。「頭痛」と一言でいっても、自分での判断は難しいと思います。実際、世の中の多くは一次性頭痛といって、画像検査で頭の中に明らかな異常のない頭痛です。しかし本当に危険な頭痛というのはある日突然、強烈な形で襲ってきます。またもともと頭痛もちの人であっても、少しでも「いつもと違うな」、と感じる場合や脳神経の症状などを伴う場合は、すぐに病院受診することをお勧めします。そして予防のためには、脳ドックなどの検査を受けて、自分の脳の健康状態とともに、脳の血管の異常の有無を確認しておくことが大切かもしれません。

「くも膜下出血」と関連する病気

「くも膜下出血の前兆」と関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

脳神経科の病気

けがなどのエピソードがない場合には、脳の血管の病気によって発症する可能性があります。類似する症状が見られる疾患を上記に列挙しています。

「くも膜下出血」と関連する症状

「くも膜下出血」と関連している、似ている症状は8個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 突然のとても強い頭痛
  • 首や肩凝りのような頭痛
  • 嘔吐、吐き気
  • 失神、意識障害
  • 手足や顔面の麻痺
  • 呂律困難
  • 急に瞼が下がる、物が二重に見える

これらの症状が急に出現した場合にはくも膜下出血を発症している可能性があります。いつもと異なる頭痛がある場合は早急に医療機関を受診しましょう。

この記事の監修医師