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「脳血管障害」の主な症状・初期症状・なりやすい人の特徴はご存知ですか?

 公開日:2025/02/06
「脳血管障害」の主な症状・初期症状・なりやすい人の特徴はご存知ですか?

脳血管障害とは?Medical DOC監修医が脳血管障害の症状や種類・初期症状・原因・なりやすい人の特徴・後遺症・余命・生存率・予防法などを解説します。

上田 雅道

監修医師
上田 雅道(あたまと内科のうえだクリニック)

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福島県立医科大学医学部卒業。名古屋掖済会病院脳神経内科、豊橋市民病院脳神経内科、名古屋大学大学院医学系研究科神経内科学、中部ろうさい病院神経内科医長を経て、あたまと内科のうえだクリニック院長に。医学博士。日本神経学会専門医・指導医、日本内科学会総合内科専門医、愛知県難病指定医、麻薬施用者免許、日本頭痛学会会員、日本認知症学会会員。

「脳血管障害」とは?

脳血管障害は脳に血液を送る血管にトラブルが起こり、脳の一部がダメージを受ける病気の総称です。脳血管障害には脳出血、脳梗塞、くも膜下出血があります。

脳血管障害の種類

脳出血

脳出血は血管がやぶれることで起こります。出血した部位の脳が障害を受けて、手足に力が入らない、しびれ、ろれつが回らないなどの症状が出てきます。

脳梗塞

脳梗塞は血管がつまることで起こります。必要な血液が脳に送られなくなり、脳が障害を受けてしまいます。手足に力が入らない、しびれ、ろれつが回らないなどの症状が出てきます。

くも膜下出血

くも膜下出血は、くも膜という脳を覆う膜と脳の間に出血することをいいます。くも膜下出血は脳動脈瘤が破裂することで発症することが多く、非常に強い頭痛が突然に起こり脳が障害を受けます。症状は重く、意識が悪くなることが多いです。

脳血管障害の代表的な症状や特徴

脳血管障害にはさまざまな症状があり、代表的な症状の特徴を解説していきます。

麻痺

顔や手足に脱力が生じることがあります。
片方の顔が麻痺したり、腕が上がらない、手をうまく使うことができない、ふらついて歩くことができないといった症状が出現します。
このような動きに関する症状は自分や周囲の人も気がつきやすいので、症状に気がついたらすぐに病院を受診して診察を受けるようにしてください。

ろれつが回らない、言葉が出てこない

ろれつが回らず話している言葉が不明瞭になったり、話そうとしても言葉がうまく出てこないといった症状が出現することがあります。
このような症状がみられたら、すぐに病院を受診して診察を受けるようにしてください。

頭痛

頭痛はくも膜下出血で特にみられやすく、非常に強い痛みが突然に出現します。
経験したことがないような強い頭痛、突然に起こった頭痛は危険性が高い場合があり、すぐに病院を受診してください。
くも膜下出血が起こると意識が悪くなっていることも多く、救急車での搬送が必要になります。

脳血管障害の前兆となる初期症状

脳血管障害の初期症状は力が入らない、しびれ、ろれつが回らない、頭痛などの症状であることが多いですが、一時的な症状で回復してしまうこともあり注意が必要です。
ふだん経験しない症状があれば病院を受診して診察、検査を受けるようにしてください。

力が入らない、しびれ

片方の顔が麻痺したり、手足に力が入りにくくなることがあります。しびれが出ることもあります。
うでが上がらない、手を使いにくい、ふらついて歩きにくい、しびれといった症状は始めは軽かったり、しばらくして症状がなくなってしまうこともあります。
しかし症状がなくなって安心しているとその後に麻痺が強く出現してしまうことがあるので、症状が軽かったり、なくなったりしてもすぐに病院を受診してください。

ろれつが回らない、言葉が出てこない

ろれつが回らない、言葉が出てこないといった言語の症状が最初にみられることがあります。
手足が普段通りに動いていたとしても脳血管障害の症状である可能性があり、すぐに病院を受診して診察を受けるようにしてください。

頭痛

頭痛は普段から悩んでいる人も多いので注意が必要です。
ふだん頭痛がない人が突然頭痛を感じたり、ふだんから頭痛に悩んでいる人もいつもと違う頭痛、強い頭痛、突然に起こる頭痛を感じたらすぐに病院を受診して診察を受けるようにしてください。
ふだんから頭痛がある人は、いつもの頭痛とは違うということを医師にしっかりと伝えるようにしてください。

脳血管障害の主な原因

脳血管障害は生活習慣病が原因となることが多いです。代表的なものを解説していきます。

高血圧

上の血圧が140mmHg以上、または下の血圧が90mmHg以上、あるいはこれら両方を満たす場合に高血圧となります。
高血圧によって動脈硬化が進み、脳血管障害のリスクが高くなります。
高血圧は自覚症状がないことが多く、自分では高血圧と気がつきにくいです。健康診断などで高血圧が見つかったときは、内科、循環器内科への受診がおすすめです。

糖尿病

糖尿病はインスリンが不足したり、インスリンの働きがわるくなることによって血糖が高い状態が続く病気です。インスリンには血糖値を下げる働きがあり、インスリンの作用が不足することによって血糖が高い状態が続きます。
血糖が高い状態が長く続くと、動脈硬化が進み脳血管障害のリスクが高くなります。
糖尿病は初期の場合、自覚症状がありません。糖尿病が進行すると口が渇く、水分を多く飲む、尿が多くなる、体重がへる、疲れやすくなるといった症状が出てきます。健康診断で高血糖が見つかった場合は内科、糖尿病内科への受診がおすすめです。

脂質異常症

脂質異常症とは、空腹時のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が140mg/dL以上、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が40mg/dL未満、中性脂肪が150mg/dL以上のいずれかを満たす場合のことをいいます。
脂質異常症で自覚症状はありませんが、健康診断で見つかることがあります。コレステロールや中性脂肪の異常が見つかったときは内科で相談してみてください。

脳血管障害の後遺症

脳血管障害によって手足の麻痺、しびれ、言語障害、認知機能障害などの症状が出てしまい、治療やリハビリテーションを行なっても症状の一部が残ってしまうことがあります。
発症からおよそ6か月を目安に後遺症として考える必要もあります。

麻痺、しびれ

顔や手足に麻痺、しびれの症状が残ることがあります。
手に麻痺やしびれの後遺症があると食事のときにはしやスプーンをうまく使うことができなかったり、着替えやトイレの際にも苦労することが多くなります。
足に後遺症があるとふらついてしっかりと歩くことができなかったり、転びやすくなってしまいます。歩行に不自由があると移動につえや車いすが必要になることもあります。
転んでしまうとけがや骨折をしてしまう危険性があるので、転倒の予防が必要です。

言語障害

ろれつが回らない、言葉がうまく出てこないといった言語の障害が残ってしまうことがあります。
言語の後遺症によってコミュニケーションに困難が生じて、本人はもちろん家族や友人など周りの人もストレスをかかえてしまいます。障害の程度によって、コミュニケーションの手段に工夫が必要になります。
ろれつが回らないといった症状がある場合に、飲みこみの機能も低下していることがあります。むせてしまって肺炎を起こしたり、のどをつまらせてしまう危険性もあり注意が必要です。食形態を工夫して飲み込みやすいものを食べる必要があります。

認知機能障害

脳血管障害によって認知機能が低下してしまうことがあります。
アルツハイマー型認知症で記憶障害が目立つことに対して、脳血管障害による認知機能障害では目的のある行動をする遂行機能の障害が目立つことが多いです。体は動くのに自分で服を着替えることができない、ふだん使いなれている物の使い方がわからない、といった症状がみられることがあります。
認知機能の障害によって、日常生活でもできないことが出てきます。自分でできることと、できないことを周囲の人も理解してサポートを受けることが必要になります。

脳血管障害になりやすい人の特徴

脳血管障害になりやすい人は、高血圧、糖尿病や脂質異常症のリスクが高くなるような生活習慣がある場合が多いです。

過食

塩分の摂りすぎは高血圧の原因となり、脂肪の摂りすぎやカロリーオーバーは脂質異常症、糖尿病のリスクが高くなります。

肥満

肥満は高血圧、糖尿病、脂質異常症のリスクが高くなります。適切な体重を維持するために、まずは食べ過ぎないことが重要で、運動習慣があるといいです。
週2日程度、30分を目安に散歩をしたり、体調によって動くことがむつかしい場合は体操やストレッチも有効です。

過度なストレス

過度なストレスも生活習慣病のリスクが高くなるため、日頃からストレスを解消することが重要です。
ストレスの解消方法はさまざまですが、ストレッチやスポーツをして体を動かしたり、十分な睡眠、読書、友人との会話などゆったりとした時間を過ごすこともいそがしい現代には必要です。

脳血管障害の予防法

生活習慣病を予防していくことが脳血管障害のリスクをへらすことにつながります。

食生活の見直し

塩分、脂肪の摂りすぎやカロリーオーバーを見直すことで生活習慣病を予防することができ、脳血管障害のリスクをへらすことができます。
厚生労働省の日本人の2020年度版食事摂取基準 では、1日の塩分摂取量は6g未満を目標としています。日本人の塩分摂取量は男性で11g程度、女性で9g程度とされており、かなり多くなってしまっています。
塩分が多くなりやすい外食を避ける、家庭でも減塩の調味料を使うといったことから始めるといいでしょう。
肉類の脂身、鶏肉の皮、バターなどの動物性脂肪は、血中LDLコレステロールを上げる飽和脂肪酸が多く含まれています。また、脂肪は9kcal/gと炭水化物やタンパク質 (4kcal/g)に比べて高カロリーです。
肉類は赤身の肉や鶏肉であれば皮をのぞいて食べるといいでしょう。
バターの使いすぎにも注意しましょう。

禁煙をする

喫煙は動脈硬化を進行させてしまいます。喫煙習慣のある人はすぐに禁煙をしましょう。
自分で禁煙をすることがむつかしい場合は禁煙外来を受診することも検討してみてください。

運動習慣

1日30分以上の有酸素運動ができると、筋力や心肺機能、適切な体重の維持に有効です。
ただし、自分の体力や体調に合わせて無理のない範囲で運動をしましょう。近所の散歩など始めやすいことから取り組むといいでしょう。
動くことがむつかしかったり、体力に自信がない場合は体操やストレッチも有効です。

「脳血管障害」についてよくある質問

ここまで脳血管障害について紹介しました。ここでは「脳血管障害」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

脳血管障害の死亡率はどれくらいでしょうか?

上田 雅道上田 雅道 医師

脳血管障害の死亡率に関して、脳血管障害全体の5年生存率が約62%というデータがあります(脳卒中 32:572–578.2010)。約38%の方は脳血管障害を発症して5年以内に何らかの理由で死亡していることになります。
脳血管障害の中でも、くも膜下出血や脳出血は発症から間もない時期に死亡することが多いなど、脳血管障害の種類(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)によっても違いはありますが、脳血管障害は決して軽い病気ではないことがわかります。
脳血管障害は再発するたびに後遺症は強くなり、身体機能は低下してしまいます。飲み込みの機能が低下すると誤嚥(ごえん:飲み込んだものが気管や肺に入ってしまうこと)による肺炎を起こしやすくなり、生命に関わることもあります。

編集部まとめ

脳血管障害は発症すると生命に関わったり、後遺症に悩むことが多い病気です。
しかし高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病を予防したり、食生活を見直したり運動を続けることで脳血管障害のリスクをへらすことができます。脳血管障害は予防することがとても大切です。今日からできることをはじめていきましょう。

「脳血管障害」と関連する病気

「脳血管障害」と関連する病気は3個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

生活習慣病は脳血管障害を発症する要因となります。上記に挙げたような高血圧、糖尿病や脂質異常症のリスクが高くなるような生活習慣を避けることが予防につながります。

「脳血管障害」と関連する症状

「脳血管障害」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 力が入らない
  • しびれ
  • 話しにくい
  • 飲み込みにくい

これらのような症状が急に出現した場合には、すぐに病院を受診しましょう。

この記事の監修医師

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