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普段から口腔内を清潔に保つことが、全身の健康に直結するってホント?

 更新日:2023/03/27

マスク着用の生活がスタンダードになるにつれて、口臭や口腔(こうくう)内の菌への関心が高まってきたように思います。そこで「口から経由した菌によって身体疾患が起こる」という話も耳にするようになりました。今回は、「赤坂さくら歯科クリニック」土黒先生に解説していただきます。

土黒 さくら 医師

監修歯科医師
土黒 さくら(赤坂さくら歯科クリニック 院長)

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鹿児島大学歯学部卒業。その後、東京医科歯科大学臨床研修歯科医や民間歯科医院勤務を経験する。2020年、東京都港区に「赤坂さくら歯科クリニック」を開院。完全個室の自由診療クリニックであり、歯周病菌のPCR検査や虫歯菌の培養検査を含む「歯科ドック」、インビザライン・キレイラインなどのマウスピース矯正治療も多数おこなっている。日本口腔インプラント学会、日本歯周病学会、日本顕微鏡歯科学会の各会員。インビザライン認定ドクター。

統計が示す、歯周病と生活習慣病の関係

統計が示す、歯周病と生活習慣病の関係

編集部編集部

「口内の病気」と「体の病気」は、関係あるのでしょうか?

土黒 さくら 医師土黒先生

あります。その最たるものが「歯周病」と「メタボリックシンドローム」だと思います。20歳から56歳までの男女約1000人を追跡した調査によると、歯周病を疑われた人は、歯周病ではないと診断された人よりも、「高血圧」や「肥満」、「脂質異常」、「高血糖」である割合が“明らかに”高かったそうです。

編集部編集部

歯周病とメタボリックシンドロームが関連しているということですか?

土黒 さくら 医師土黒先生

はい。「高血圧」「肥満」「脂質異常」「高血糖」はメタボリックシンドロームの指標とされています。もちろん、歯周病でない人がメタボリックシンドロームになることもありますが、「歯の病気」と「体の病気」が無関係ではないと示されているように思えます。

編集部編集部

歯周病の行き着く先が、生活習慣病というわけですか?

土黒 さくら 医師土黒先生

生活習慣病の定義は曖昧ですが、動脈硬化にはじまり、心不全や脳卒中、内臓疾患などに発展する可能性があるということです。こうした各疾患を「ドミノ」に例えたとき、その最初の1枚が歯周病になり得ることから、「メタボリックドミノ」という言葉も定着しはじめています。一方、糖尿病の人が歯周病になる逆のケースも考えられます。

編集部編集部

歯周病の原因が菌によるものだとしたら、他人に感染しますよね?

土黒 さくら 医師土黒先生

その可能性はあります。頻度として多いのは、ご家族やパートナーへの感染です。お子さんに自分の箸で食べ物を与えたり、キスしたりと、考えられる経路は様々です。つまり、ご自身の歯周病菌が身内の身体疾患をも招きかねないということになります。

歯周病予防は身体疾患予防を兼ねる

歯周病予防は身体疾患予防を兼ねる

編集部編集部

歯周病菌の感染によって、生活習慣病が起こるということですか?

土黒 さくら 医師土黒先生

たしかに歯周病菌も原因の1つですが、必ずしもそうではありません。歯周病でない人が生活習慣病にかかっていることからも明らかです。ただし、血中に歯周病菌という菌が侵入すれば、何かしらの悪さをするでしょう。動脈硬化や心筋梗塞が、その一例です。

編集部編集部

生活習慣病以外の病気は考えられますか?

土黒 さくら 医師土黒先生

有名なのは「妊婦さんの早産」です。子宮が歯周病菌に感染して炎症を起こすと、早産に至る割合が5倍以上も上昇するそうです。また、歯周病とアルツハイマー型認知症の関係性も報告されています。

編集部編集部

「歯周病にならなければ生活習慣病になりにくい」ということにはなりませんか?

土黒 さくら 医師土黒先生

歯周病予防は生活習慣病予防を兼ねています。当然ですが、先述した早産も防ぐことができます。ですから、今回のテーマである「普段から口腔内を清潔に保つことが、全身の健康に直結する」と考えていいのではないでしょうか。加えて、歯周病で良く噛めなくなると、それだけで消化器に負担がかかります。歯周病を放置していいことは何もないので治しましょう。

間違ったセルフケアという盲点

間違ったセルフケアという盲点

編集部編集部

そうなると、家庭でのデンタルケアが求められそうですね。

土黒 さくら 医師土黒先生

はい。ぜひ、しっかり取り組んでください。ただし、間違った方法やお口の中を傷つけるような強いブラッシングは逆効果になりかねません。そのため、定期的に歯科医師や歯科衛生士さんに見せて、「採点」してもらうようにしましょう。そして、正しい方法を身につけてください。

編集部編集部

実際、歯科医師が今回のような「身体疾患のリスク」について言及することはあるのでしょうか?

土黒 さくら 医師土黒先生

私は積極的に言及しています。例えば、妊婦さんがつわりなどでブラッシングをおろそかにしていると、前述のような早産リスクがあるので、しっかりと説明するようにしています。出産後はますます自分の時間がもてなくなるので、出産前に正しいデンタルケア方法を身につけていただきたいと思っています。

編集部編集部

そもそも、歯周病に気づかないと知らないうちにドミノ倒しがはじまってしまいますよね?

土黒 さくら 医師土黒先生

そうなります。実際、多くの人が歯周病に気づかず、ドミノ倒しをはじめてしまっている印象です。初期の歯周病は自覚症状がほとんどないため、受診の必要性を感じない人が多いのだと思います。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

土黒 さくら 医師土黒先生

お口の健康に自信がある人こそ、歯科医院を受診していただきたいです。じつは歯周病だったり、疾患がなくてもきちんと磨けていなかったりと、何かしらのリスクをおもちだと思います。適切な処置やアドバイスをさせていただくので、私たち歯医者にお口の中をチェックさせてください。

編集部まとめ

口を経由した菌による身体疾患は、消化器に限らず、歯ぐきから血管を介して発症することがあるようです。だとすれば、胃酸では封じ込めきれません。もし、歯周病で出血しているようなら、そのリスクはさらに高まります。もちろん、歯周病予備軍の人も、将来的なリスクを抱え続けているということです。自覚の乏しい歯周病のチェックを、歯科医院でなるべく早めにおこなっておきましょう。

医院情報

赤坂さくら歯科クリニック

赤坂さくら歯科クリニック
所在地 〒107-0052 東京都港区赤坂5-4-6 赤坂三辻ビル5F
アクセス 東京メトロ千代田線「赤坂駅」 徒歩1分
東京メトロ南北線・銀座線「溜池山王駅」 徒歩7分
東京メトロ銀座線・丸ノ内線「赤坂見附駅」 徒歩8分
診療科目 歯科

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