「血管性認知症」の初期症状・なりやすい人の特徴はご存知ですか?医師が徹底解説!
血管性認知症とは?Medical DOC監修医が血管性認知症の症状や特徴・原因・なりやすい人の特徴・初期症状・原因・余命・進行速度・治療法・予防法などを解説します。
監修医師:
上田 雅道(あたまと内科のうえだクリニック)
福島県立医科大学医学部卒業
名古屋掖済会病院 脳神経内科 医員
豊橋市民病院 脳神経内科 医員
名古屋大学大学院医学系研究科 神経内科学
中部ろうさい病院 神経内科 医長
目次 -INDEX-
「血管性認知症」とは?
血管性認知症は、脳卒中によって脳の細胞がダメージを受けることで起こる認知症のことをいいます。特に脳梗塞によって起こることが多くなっています。
脳卒中は脳の血管に障害が起こる病気の総称で、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血があります。
日本ではアルツハイマー型認知症についで多く、認知症全体のおよそ2割が血管性認知症とされています。
血管性認知症の代表的な症状や特徴
血管性認知症は脳卒中によって認知機能が低下しているため、いくつかの特徴があり解説していきます。認知機能とは、記憶力、判断力、思考力、集中力など、さまざまな知的機能をふくみます。
アルツハイマー型認知症と比べると理解しやすくなります。
症状の段階的な悪化
脳卒中が起こることで急に認知機能が悪化することがあります。脳卒中の再発の場合でも、例えば新しい梗塞が加わるたびに症状が段階的に悪化して行きます。
アルツハイマー型認知症のようにゆっくりと認知機能が悪化していく様子とはことなります。急な認知機能の悪化があった場合は脳卒中を起こしている可能性があるため、すぐに病院を受診するようにしてください。
認知機能障害
血管性認知症では、記憶障害(もの忘れ)は初期からみられる症状とは限りません。
アルツハイマー型認知症では初期から記憶障害が目立つことと比較して、血管性認知症では目的のある行動をする遂行機能の障害が初期に目立つことがあります。
「まだら認知」といって、ある分野のことはしっかりとできるのに他のことはさっぱりできなかったり理解できないといった症状も血管性認知症の特徴のひとつです。
認知機能障害以外の症状
血管性認知症では認知機能障害のほかに、力が入りにくいといった運動障害、しびれなどの感覚障害などが初期から目立つことがあります。これは脳卒中による症状であり、アルツハイマー型認知症ではこれらの症状は初期にはみられません。
気分が落ち込んでうつ状態になったり、感情失禁といって急に泣き出したり笑い出したりとその場の状況に合わない感情を表したりすることもあります。
血管性認知症の前兆となる初期症状
血管性認知症は症状が突然現れたり、急に悪化することもあります。
認知機能が低下するだけでなく、手足に力が入らない、しびれる、うまく話すことができないなどの症状が早期からみられます。
認知機能の低下
脳卒中がおこることで急に症状が出できます。
もの覚えが悪くなった、日付や時間がわからなくなった、自分で服を着ることができなくなった、ふだん使いなれているものの使い方がわからなくなった、などの症状に注意が必要です。
認知機能が急に悪くなった場合はすぐに病院を受診してください。
力が入らない、しびれ
脳卒中によって手足に力が入らないといった症状が出ることがあります。うでが上がらない、指をうまく使えない、立ち上がることができない、ふらつくといった症状がみられます。
しびれの症状も体のさまざまな部位に出ることがあります。
うまく話すことができない
ろれつが回らずうまく話すことができない、言葉が出てこない、または言葉を理解することができないなどの言語の症状がみられることがあります。
血管性認知症の主な原因
血管性認知症は脳の血管トラブル、つまり脳梗塞、脳出血、くも膜下出血によって起こります。
脳梗塞
脳梗塞は脳の血管がつまることによって、脳の神経細胞が死んでしまう病気のことです。脳梗塞によって、認知機能が悪化してしまうことがあります。
脳出血
脳出血は脳の血管がやぶれることで、脳の中に出血してしまう病気です。出血することで脳が圧迫されて脳の機能が低下し、認知機能が悪化してしまうことがあります。
くも膜下出血
くも膜下出血は主に脳動脈瘤(脳の血管のこぶ)が破裂することによっておこります。重症になりやすく、発症すると命が助かっても認知機能は障害を受けることが多いです。
血管性認知症になりやすい人の特徴
血管性認知症は脳卒中によって起こるので、脳卒中のリスクが高い人は血管性認知症になりやすいといえます。高齢の人や、もともと認知機能が低下していた人はさらに注意が必要です。
生活習慣病
高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病は脳卒中のリスクとなります。生活習慣病が重度であったり、複数の病気を合併していると脳卒中のリスクが高くなったり、脳卒中が重症となりやすいです。
生活習慣病を予防するためには、食生活は特に重要です。食べすぎ、塩分のとりすぎ、脂肪分のとりすぎに注意してください。
運動不足や肥満も生活習慣病のリスクとなるので、運動習慣を持つことや、適切な体重を維持することが大切です。
男性
厚生労働省の患者調査によると、脳卒中は70歳代までのすべての年代で男性が女性より多く発症していました。脳卒中のリスクが高い分、血管性認知症にも注意が必要です。
高齢者
脳卒中の重症度にもよりますが、高齢の人が脳卒中になると血管性認知症になりやすくなります。脳卒中がおこった後に回復しにくい、認知機能が若いころより低下していたということが影響しています。
血管性認知症の余命
血管性認知症の余命は5年程度といわれています。
血管性認知症は直接の死因にはなりにくいですが、脳卒中が再発することによって命にかかわることがあります。脳卒中の再発を予防することが重要です。
血管性認知症の進行速度
血管性認知症は脳卒中が再発することによって認知機能が悪化します。
脳卒中の再発がなくても、本人の状態によってわずかに認知機能が変化することはありますが、脳卒中が再発していくことで認知機能は段階的に悪化していきます。
血管性認知症の男女比
血管性認知症は男性に多く、男女比はおおよそ2:1といわれています。男性の方が脳卒中になりやすいことが影響していると考えられます。
血管性認知症の治療法
血管性認知症の治療は脳卒中の再発を予防することと、認知症の症状を緩和することが目的です。
薬物治療
脳卒中を予防するため、脳卒中の原因となる生活習慣病を治療するために薬物治療を行います。
認知症の精神的な症状に対しても薬物治療を行うことがあります。
生活習慣の改善
適切な食事は脳卒中の予防に重要です。塩分をおさえることで高血圧の予防となり、カロリー制限は糖尿病の予防、脂肪分を少なくすることは脂質異常症の予防に役立ちます。
バランスの取れた食事が生活習慣病の予防、脳卒中の予防に大切です。
運動習慣、禁煙も生活習慣病や脳卒中の予防に重要です。
リハビリテーション
リハビリテーションを行うことで認知機能の悪化を防ぎ、回復させることを目標にします。
血管性認知症は認知症症状以外にも運動の障害、感覚の障害、言語の障害があることが多く、これらのリハビリテーションも重要です。
血管性認知症の予防法
血管性認知症を予防するためには、脳卒中を予防することが必要です。
食生活を見直す
生活習慣病を予防して脳卒中のリスクを下げることが重要です。
塩分を減らして高血圧を予防する、食べすぎないようにして糖尿病を予防するようにしましょう。適切な体重を維持して肥満の防止に役立ちます。
運動習慣を持つ
運動する習慣があると生活習慣病を予防しやすくなります。ストレスの解消になることもあります。
禁煙する
喫煙は脳卒中のリスクを高くします。喫煙する人はすぐに禁煙するようにしましょう。
「血管性認知症」についてよくある質問
ここまで血管性認知症について紹介しました。ここでは「血管性認知症」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
血管性認知症はいずれ回復するのでしょうか?
上田 雅道 医師
脳卒中を発症して認知機能が障害を受けた場合は、リハビリテーションをすると認知機能が回復することがあります。しかし、回復が難しい場合も多く、血管性認知症は予防することが非常に重要です。
血管性認知症とアルツハイマー型認知症の違いについて教えてください。
上田 雅道 医師
アルツハイマー型認知症は症状がゆっくりと進行します。血管性認知症は脳卒中を起こして進行するため急に発症したり、再発するたびに段階的に症状が悪化します。また血管性認知症には脳卒中による運動障害や感覚障害、言語障害などの症状もあることが特徴的です。
編集部まとめ
血管性認知症は脳卒中によっておこるため、脳卒中を予防することがとても大切です。
高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病の予防や治療はもちろん、運動習慣をもつ、禁煙をすることは、今すぐに始めるといいです。
「血管性認知症」と関連する病気
「血管性認知症」と関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
血管性認知症は脳卒中によって発症するため、脳卒中の予防として生活習慣病の予防策を講じることがまずは大切です。
「血管性認知症」と関連する症状
「血管性認知症」と関連している、似ている症状は4個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- もの忘れ
- 力が入らない
- しびれ
- 話しにくい
これらのような脳卒中を疑うような症状が急に出現した際には、すぐに医療機関を受診することをお勧めします。