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「くも膜下出血の後遺症」となる症状はご存知ですか?後遺症が残る確率も医師が解説!

 公開日:2024/07/01
「くも膜下出血の後遺症」となる症状はご存知ですか?後遺症が残る確率も医師が解説!

くも膜下出血の後遺症にはどんな症状がある?Medical DOC監修医がくも膜下出血の後遺症・後遺症が残る確率・寿命・生存率・リハビリ法なども解説します。

村上 友太

監修医師
村上 友太(東京予防クリニック)

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医師、医学博士。福島県立医科大学医学部卒業。福島県立医科大学脳神経外科学講座助教として基礎・臨床研究、教育、臨床業務に従事した経験がある。現在、東京予防クリニック院長として内科疾患や脳神経疾患、予防医療を中心に診療している。
脳神経外科専門医、脳卒中専門医、抗加齢医学専門医。日本認知症学会、日本内科学会などの各会員。

「くも膜下出血」とは?

くも膜下出血とは、脳卒中(脳血管障害)のうちの一つで、脳の表面にある血管が破れて出血し、その出血がくも膜下腔という空間に拡がった病気です。
発症原因は、大人の場合は、脳動脈瘤の破裂が原因のほとんどです。
一方で、子供の場合は、脳動静脈奇形という生まれつきの脳血管異常の破裂が原因の多くを占めます。
くも膜下出血は年間10万人あたり約20人に発症すると言われています。生命の危機に瀕する病気であり、おおよその数字ですが、発症した人の3人に1人は死亡し、3人に1人は何らかの後遺症が残り、残りの3人に1人だけが社会復帰できると言われています。
このように、一命を取り留めても後遺症で苦しむ患者さんは多くいらっしゃいます。

「外傷性くも膜下出血」とは?

くも膜下出血は、前述のような脳動脈瘤破裂などの脳血管の異常によるくも膜下出血だけではなく、外傷性くも膜下出血というものもあります。これは字の如く、怪我(頭部打撲)などの外的要因によってくも膜下出血が起こった状態です。
外傷性くも膜下出血は、交通事故や転落事故などの頭部外傷の病歴や、CTやMRI検査などの画像診断などから診断します。
打撲の影響で出血があったケースだけではなく、脳内の出血が起こった影響で怪我をしたというケースのどちらも考えられます。そのため、頭部外傷がある場合でも、脳動脈瘤の破裂やその他に出血する可能性のある脳血管異常を検索するために、詳しい検査を行うこともあります。
外傷性くも膜下出血の症状や後遺症は、外傷による脳損傷の程度次第で変わります。

くも膜下出血の後遺症

脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血では、発症時の重症度や、発症後数ヶ月間に訪れるいくつかの乗り越えるべき山を乗り越えられるか、ということで後遺症が残るかどうかが決まります。
発症時から重度の意識障害であったり、出血の程度がひどい場合には外科治療は難しい状態となります。
外科治療が可能である場合には、発症後すぐに動脈瘤の再破裂予防の手術治療を行います。
その後は、脳梗塞発症予防の治療を行います。発症後2週間の間は脳血管れん縮といって血管が縮み込んで血流が乏しくなり脳梗塞を発症する可能性の高い期間だからです。この最初の2週間の治療期間によって、今後の後遺症のおおよその重症度がつかめます。
くも膜下出血を発症してから1〜3ヶ月後の期間に、正常圧水頭症といって認知症の症状を示す病気を起こして手術治療が必要となる可能性があります。
その後、リハビリやくも膜下出血再発予防の薬物治療などを継続します。
いろいろな後遺症が考えられますが、ここでは多く見られる後遺症をご紹介します。

意識障害

意識障害とは、自分や周囲の状況、時間的な感覚について判断できない状態のことをいいます。簡単に言えば、受け答えがしっかりできない状態です。
意識障害には、呼びかけに応じ、受け答えの一部は可能という状態から、刺激を与えても反応に乏しいというような状態までさまざまな程度があり、脳の病気以外でも意識障害を生じることがあります。
くも膜下出血によって脳内にダメージを受けた場合には意識状態が悪いままで経過することがあります。意識状態を司る脳幹部という領域や、脳内の広い領域にダメージを受けた場合に見られる状態です。
このような場合、寝たきりの状態が続き、目を開けるだけ、あるいは簡単な言葉を発するだけといった重い後遺症となることがあり、退院後も介護度の高い状態となります。

麻痺や感覚障害

くも膜下出血の後遺症として、手足や顔の運動麻痺(片麻痺)、感覚障害・しびれの症状が挙げられます。
運動麻痺とは、体を動かす指令が行き届かなくなるために動かすことができなくなってしまう状態を指します。脳の障害では片麻痺といって、体の左右のどちらかの半身に麻痺が生じることが特徴的です。
感覚障害とは、皮膚や筋肉からの情報が正しく脳に伝わらなかったり、脳がそれを正しく認識できなかったりするために生じる状態を指します。例えば、温度や痛みが感じにくい、体がどのような体勢にあるのかわからない、などといった症状です。
麻痺や感覚障害の強さや生じている部位については、どの脳領域がどの程度ダメージを受けたかによってさまざまです。
脳のダメージの程度やダメージを受けた脳領域、治療をどれだけ早く開始できたか、リハビリテーションの取り組み方によって、回復の度合いは異なります。時間とともに回復することは期待できますが、完全な回復は難しい場合もあります。
発症後は、二次的な合併症や怪我を防ぐため、日常生活の動作や環境の改善が重要です。麻痺や感覚障害がある状態での体をうまく動かすことや道具を使うなど、ケガをしないように注意する必要があります。バリアフリーな生活空間の工夫を行うことや日常の中で感覚障害に適応する方法を学ぶことが必要となります。

高次脳機能障害

高次脳機能障害とは、前頭葉や側頭葉などが障害を受けたときに出現する、記憶力の低下や集中力の低下、精神的な疲れやすさ、性格の変化などが生じた状態です。
くも膜下出血などの脳卒中の場合に比べて、外傷性くも膜下出血のような頭部外傷の場合には、運動麻痺よりも高次脳機能障害が目立ちやすいことや、脳の広範なダメージを負うためにいろいろな症状が混在することが特徴的です。
また、脳卒中は中高年以上に多い病気ですが、頭部外傷を受ける年齢は幅広いため、復学や復職など社会生活への復帰が大きな問題になります。麻痺症状がないために一見問題なさそうに見えても、社会生活をするときに課題が多いという悩みがつきまといます。周囲の方はどのようなことが苦手となっているのかを十分に認識することが重要です。

てんかん

くも膜下出血をはじめ脳卒中後にてんかんが発症しやすくなることが知られています。
てんかんとは、脳内での電気的な異常活動が繰り返し起こる病気です。てんかんには、大きく脳卒中などの脳の病気が原因で生じるものと、原因が特定できないものとの2つに分類されます。手足のガクガクブルブルと震えて意識が悪くなるとい症状のイメージが強いかも知れませんが、急にことばが出なくなる、急に笑る、舌を動かすなど、さまざまなパターンの症状があります。
治療には抗てんかん薬という薬物療法を行いますが、適切な診断及び治療を行うには専門医の診察が望ましい病気です。睡眠不足や精神的なストレス、薬の飲み忘れなどによって発作を起こしやすくなるため、これらはできるだけ避けるように気をつける必要があります。症状が落ち着けば、てんかんの治療(薬の服用)を終えることもできますが、その際には慎重な判断が必要といわれています。

外傷性くも膜下出血の後遺症

外傷性くも膜下出血の主な症状は頭痛です。脳卒中で見られるような筋力低下やしびれなどの症状が見られることは多くありません。
前述のように、外傷性くも膜下出血の後遺症は、脳組織のダメージの大きさで変わります。
頭部外傷があった際に、くも膜下出血の出血だけではなく、脳挫傷や急性硬膜下血腫などの脳の損傷を伴う場合には生命の危機や重い後遺症となる可能性が高まります。
出血量が少なければ、後遺症はほとんどないか、あっても軽くすむことが期待できます。
ただし、出血量とは関係なく脳震盪や軸索損傷など脳組織へのダメージが大きいために後遺症が現れる場合もあるので、注意は必要です。

高次脳機能障害

高次脳機能障害とは、記憶や注意、認知的な判断などを行う高次な脳機能に障害があり日常生活や社会生活に支障が生じる状態のことです。
具体的には、認知症や注意障害、計画や社会能力の低下などが含まれます。これらの症状は特に前頭葉や側頭葉などが損傷を受けた場合に認められる傾向があります。記憶を留めておくことができない、作業をやり遂げることができない、判断することが苦手になる、性格が変わるなど、さまざまな症状が見られます。
高次脳機能障害の治療は、認知リハビリテーションが中心です。これは、患者さんの現状の能力やニーズに合わせた練習や、日常生活における工夫などを提案するものです。
高次脳機能障害は、見た目には認識しづらいことが多いため周囲の人々が理解しづらいことがあります。しかし、患者さんの生活の質に大きな影響を及ぼす後遺症であるため、周囲の理解やサポートが非常に重要といえます。

てんかん(外傷性てんかん)

頭部外傷後にてんかんを起こすことがあります(外傷後てんかん)。脳の損傷が大きいほどてんかんは発症しやすいため、頭部外傷を受けた直後から抗てんかん薬を用いて治療をしていきます。
てんかんの治療は基本的に抗てんかん薬を服用する薬物療法です。しかし、薬でのコントロールが難しい場合には外科治療を行うこともあります。
てんかんを発症した場合、運転に支障するおそれのある発作が2年間ない、などの条件をクリアできないと車の免許取得・更新ができません。主治医と相談してください。

くも膜下出血発症後に後遺症が残る確率はどれくらい?

冒頭に説明したように、くも膜下出血を発症すると半数以上の方が死亡するか何らかの後遺症が残ると言われており、社会復帰できる方はおおよそ3人に1人の割合と言われています。社会復帰している方の中で軽い後遺症が残っている方も少なくありません。後遺症がほとんどないという状態の方は文献にもよりますが、10-20%程度と言われています。
そのため、くも膜下出血を発症してしまうと何らかの後遺症が残る確率は、80-90%程度あるといえるでしょう。

くも膜下出血の寿命・生存率

文献にもよりますが、過去40年間は減少しているものの、依然として死亡率は25~50%と高いと言われています。
くも膜下出血は、発症時に症状や所見によって重症度を判定します。その重症度が高いものは予後は悪いと言われています。入院後に集中治療を行いますが、重症の場合、1年後の生存率は60%程度という報告もあります。

くも膜下出血の後遺症を軽減するリハビリ

くも膜下出血の後遺症に対して、継続的にリハビリテーション(リハビリ)を行うことでさまざまな症状の軽減につながります。症状が軽い場合には短期間のリハビリで改善しますが、症状が重い場合には長期間にわたってリハビリを継続する必要があります。
リハビリ方法は、個々の患者さんの状態に応じて異なりますが、理学療法(PT)と作業療法(OT)、言語聴覚療法(ST)というさまざまなアプローチで進めていきます。医師が中心となってリハビリ計画を立てますが、理学療法士と作業療法士、言語聴覚療法士、看護師、栄養士、ソーシャルワーカーなどを含めたチームで対応します。
家族や周囲の方は、どのような後遺症があってどのようなサポートが必要なのかを理解することが重要です。

理学療法(PT)

理学療法とは、主に運動麻痺や運動機能の回復を目的としたリハビリのことです。
くも膜下出血を発症したことによってベッド上で寝ている時間が長いと体全体の筋力が痩せてしまう、という問題があります。そのため、筋力を維持・強化し、日常生活動作を自分で行うことができるように練習していきます。
基本動作の練習では、起き上がる、座る、立つ、歩くといった基本的な動作に必要な体の動きや筋力を評価し、うまくできない動作があれば練習します。
日常生活動作の練習では、平地や段差がある道での歩行、階段の上り下りやトイレ、入浴などを練習します。自転車などを用いて心肺機能を高める体力強化の練習を行うこともあります。

作業療法(OT)

作業療法とは、主に手の細かい動きなどをメインにした日常生活動作の向上を目的としたリハビリのことです。
日常生活動作に必要な手や腕の細かい動きや機能を評価し、食事やトイレ、着替え、歯磨き、字を書くことなどの練習を行います。症状に応じて補助用具をうまく使えるように練習します。
注意障害や記憶障害などの後遺症がある場合には、日常生活での注意の向け方や、記憶を留める方法、メモやスケジュール表などを活用する練習などを行うことがあります。

言語聴覚療法(ST)

言語聴覚療法とは、主に食事の取り方やコミュニケーション能力の向上を目的としたリハビリのことです。
食べ物を安全に食べるために喉の動きに問題がないかどうかを評価し、喉の動きの状態に合わせた食形態の工夫を行い食べ方の指導を行います。食べるために必要な舌・口唇・頬などの動きの練習や適切な食事姿勢をとる練習も行います。
コミュニケーションや日常生活の支障となる言語障害などの高次脳機能障害の評価を行います。言語障害を持つ場合には、発話練習や聞き取り練習などを通して、コミュニケーションが測れるようにトレーニングします。リハビリしていく中で問題となる症状が見つかればそれに応じた練習も行って、退院後の注意すべき点や対応方法について検討します。

「くも膜下出血の後遺症」についてよくある質問

ここまでくも膜下出血の後遺症を紹介しました。ここでは「くも膜下出血の後遺症」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

くも膜下出血発症後に社会復帰できるまでの期間を教えてください。

浅野 智子浅野 智子 医師

社会復帰までの期間は、後遺症の程度次第です。
一般的には、頭部外傷によるくも膜下出血などの場合は、脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血に比べると復帰できる可能性は高いのですが、個々のケースとしか言えません。

くも膜下出血発症後に言語障害や記憶障害のような後遺症が残ることはありますか?

浅野 智子浅野 智子 医師

もちろん、あります。くも膜下出血による脳へのダメージは大きいので、言語障害や記憶障害の後遺症はありえます。どの脳領域へのダメージかによって、後遺症の症状や程度は変わります。

くも膜下出血の治療・退院後に気をつけるべき注意点があれば教えてください。

浅野 智子浅野 智子 医師

ここでは、脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血について説明します。
脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血の場合は、前述のように乗り越えるべき山が複数あるので、一定期間を経過しないと後遺症を残すかどうかは断言できません。
くも膜下出血の発症時のダメージや、その後の脳血管れん縮による脳梗塞、正常圧水頭症、てんかんの発症などいろいろな後遺症の原因となるイベントが起こる可能性があります。リハビリによってある程度回復しますが、もともとの生活レベルに戻ることが難しく介護度が高くなることもあります。
リハビリ時に症状の評価を行いますが、できることとできないことを理解しそれに応じた対応が必要となります。

編集部まとめ

くも膜下出血はとても重篤な病気であり、一命を取り留めても何らかの後遺症が残る可能性が高いです。
非外傷例では、大人は脳動脈破裂によるものがほとんどです。再出血や脳血管れん縮、正常圧水頭症を発症する可能性もあり、長期間にわたって慎重な治療が必要となります。
脳動脈瘤の破裂を予防する治療はありますので、生活習慣を見直すことや、年齢や家族歴から心配であれば脳ドックを受けるなど、日頃から対策していくことが大事だと思います。

「くも膜下出血」と関連する病気

「くも膜下出血」と関連する病気は12個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

内科の病気

  • 高血圧症

脳神経外科の病気

遺伝性の病気

上記のようにくも膜下出血を起こす病気はさまざまですが、日頃から予防対策を立てることが可能な病気も多くあります。このうち、成人の場合には脳動脈瘤の破裂が主な原因ですが、家族内でくも膜下出血を発症したことがある人がいたり、脳動脈瘤を指摘されたことがある人がいたりする場合には、定期的な脳ドックを受けて血管の異常の有無を確認することをお勧めします。

「くも膜下出血」と関連する症状

「くも膜下出血」と関連している、似ている症状は9個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 突然の強い頭痛
  • 激しい嘔気・嘔吐
  • 意識障害
  • 昏睡
  • めまい、ふらつき
  • 視野異常
  • 手足の麻痺
  • 血圧上昇

くも膜下出血の症状で多いのは、突然の頭痛や嘔気・嘔吐、意識障害などですが、列挙した症状も突然現れた場合にも注意は必要です。すぐに医療機関で検査を受けて治療を進めるようにしてください。

参考文献

  • 脳卒中治療ガイドライン2021

この記事の監修医師