「サイトカイン」とは?働きが悪くなると「全身性エリテマトーデス」を発症するの?

サイトカインとは?メディカルドック監修医がサイトカインストームとは何か?・マクロファージとの関係・種類・働き・炎症症状が起きた時の働きなどを解説します。

監修医師:
宮部 斉重(聖マリアンナ医科大学 免疫学・病害動物学 宮部研究室)
目次 -INDEX-
「サイトカイン」とは?

サイトカインは、免疫細胞や血管内皮細胞などから分泌される情報伝達のメッセージ物質です。体内で異物が侵入したり組織が損傷すると、サイトカインが分泌され、他の免疫細胞に「どこでどんな反応を起こすべきか」という情報を伝えます。これにより免疫反応が組織的に進行し、感染の制御や組織修復が促進されます。
「サイトカインストーム」とは?

サイトカインストームとは、サイトカインが過剰に分泌され免疫反応が暴走する状態です。本来は体を守るために働くはずの免疫反応が制御できなくなり、発熱、強い炎症、臓器障害などを引き起こし、重症化することがあります。重症感染症や自己免疫疾患、がん治療の副作用などでみられることがあり、近年では重症ウイルス感染との関連でも注目されています。
「サイトカイン」と「マクロファージ」の関係とは?

マクロファージは免疫の最前線で異物を認識し、処理する免疫細胞です。この際、サイトカインを大量に分泌して周囲の免疫細胞に情報を送ります。そのためサイトカイン産生の中心的な役割を担うのがマクロファージであり、炎症が強い場では非常に活発にサイトカインが分泌されます。
サイトカインはどこから分泌されるの?

サイトカインは、主に以下の細胞から分泌されます。
・マクロファージ
・リンパ球(T細胞・B細胞)
・好中球、
・血管内皮細胞・線維芽細胞
これらの細胞が連携して免疫反応をコントロールします。
サイトカインの種類

サイトカインにはさまざまな種類があり、それぞれ異なる役割を担っています。ここでは代表的なサイトカインの種類と、その働きについて解説します。
インターロイキン(IL)
どんな物質?
インターロイキン(Interleukin:IL)は、主に免疫細胞同士の情報伝達を担うサイトカインです。現在では多数のインターロイキンが知られており、免疫反応の調節に中心的な役割を果たします。
どんな働きをする?
免疫細胞の活性化や増殖を促す
炎症反応を引き起こす、または抑制する
免疫反応の強さや持続時間を調整する
一部のインターロイキンは、関節リウマチや自己免疫疾患などの病態と深く関わっており、治療薬の標的にもなっています。
インターフェロン (IFN)
どんな物質?
インターフェロン(Interferon:IFN)は、主にウイルス感染時に分泌されるサイトカインです。感染が起こったことを周囲の細胞や免疫系に伝える役割があります。
どんな働きをする?
ウイルスの増殖を抑える
感染細胞を免疫細胞に認識させやすくする
免疫細胞の働きを活性化する
ウイルス感染防御に重要ですが、過剰に作用すると免疫異常に関与することもあります。
ケモカイン
どんな物質?
ケモカインは、免疫細胞を特定の場所へ導く働きを持つサイトカインの一種です。「細胞の道しるべ」のような役割を果たします。
どんな働きをする?
· 炎症や感染が起きている部位へ免疫細胞を集める
· 免疫細胞の移動方向を決定する
· 局所的な炎症反応を形成する
慢性炎症や自己免疫疾患などでは、ケモカインの働きが病気の持続に関与します。
腫瘍壊死因子 (TNF)
どんな物質?
腫瘍壊死因子(Tumor Necrosis Factor:TNF)は、強い炎症作用を持つ代表的なサイトカインです。
どんな働きをする?
· 炎症反応を強く促進する
· 免疫細胞を活性化する
· 感染防御に重要な役割を果たす
一方で、過剰に分泌されると慢性的な炎症や組織障害の原因となるため、治療の対象となることがあります。
サイトカインの働き

サイトカインは、免疫反応や炎症反応を調整する重要な役割を担っています。体内で異常が起こった際に、免疫細胞同士が連携して適切に対応できるよう働きます。
免疫細胞の活性化
細菌やウイルスが体内に侵入すると、免疫細胞はサイトカインを分泌し、免疫反応を開始します。これにより、免疫細胞が活性化され、感染防御に必要な反応が素早く立ち上がります。
炎症の誘導
サイトカインは炎症反応を引き起こし、異物の侵入部位に免疫細胞を集めます。発熱や腫れ、痛みといった炎症症状は、サイトカインの作用によって生じるものです。
細胞の移動制御
ケモカインを含むサイトカインは、免疫細胞を炎症や感染が起きている場所へ誘導します。これにより、必要な免疫細胞が適切な場所に集まり、効率よく防御反応が行われます。
免疫反応の調整
サイトカインには、免疫反応を促進するものだけでなく、過剰な反応を抑えるものもあります。このバランスによって、免疫反応が必要以上に強くなりすぎるのを防いでいます。
組織修復の促進
炎症が落ち着いた後も、サイトカインは組織修復に関与します。傷ついた組織の回復を促し、体を元の状態に戻す役割を果たします。
炎症症状があるとサイトカインはどんな働きをする?

体内で炎症が起こると、免疫細胞からさまざまなサイトカインが分泌されます。
これらのサイトカインは、炎症を起こして異物を排除する働きと、過剰な炎症を抑える働きの両方を担っています。
炎症性サイトカイン
炎症性サイトカインは、感染や組織の損傷が起きた際に分泌され、免疫反応を強める役割を果たします。
主な働き
発熱を引き起こし、病原体の増殖を抑える
炎症部位の血管を拡張し、免疫細胞を集める
痛みや腫れなどの炎症症状を生じさせる
これらの反応は体を守るために必要ですが、過剰になると組織障害や全身症状につながることがあります。
抗炎症性サイトカイン
抗炎症性サイトカインは、炎症反応が必要以上に強くならないように調整する働きを持ちます。
主な働き
炎症性サイトカインの作用を抑える
免疫反応を穏やかにし、炎症を終息へ導く
組織の修復や回復を促す
炎症性サイトカインと抗炎症性サイトカインのバランスが保たれることで、体は適切な免疫反応を維持しています。
サイトカインの働きが悪くなるとどんな病気になりやすい?

サイトカインは免疫反応を適切に調整する役割を担っていますが、その働きが過剰になったり、逆に弱くなったりすると、さまざまな病気を引き起こしやすくなります。
関節リウマチ
関節リウマチは、免疫の異常によって関節の滑膜に慢性的な炎症が起こる病気です。
炎症性サイトカインが過剰に分泌されることで、関節の痛みや腫れ、変形が進行します。
抗リウマチ薬や生物学的製剤など、免疫やサイトカインの働きを調整する治療が行われます。関節の痛みや腫れが数週間以上続く場合は、膠原病・リウマチ内科への受診を検討しましょう。
全身性エリテマトーデス
免疫の異常により、自分自身の臓器や組織を攻撃してしまう自己免疫疾患です。
サイトカインのバランス異常が、全身の炎症を引き起こします。
治療法として、免疫抑制薬やステロイド治療が中心となります。
原因不明の発熱、関節痛、皮疹が続く場合は膠原病・リウマチ内科へ早めに受診しましょう。
炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)
腸管で免疫反応が過剰になり、慢性的な炎症が続く病気です。
炎症性サイトカインが腸の粘膜障害に関与します。
抗炎症薬や免疫調整薬による治療が行われます。
腹痛や下痢、血便が続く場合は消化器内科への受診が必要です。
重症感染症
感染症に対する免疫反応が過剰になることで、サイトカインストームが起こる場合があります。これにより全身の炎症や臓器障害が引き起こされます。
治療として、集中治療や免疫反応を抑える治療が必要になることがあります。
高熱や意識障害、呼吸困難などがある場合はすぐに救急科、感染症科を受診してください。
アレルギー疾患
免疫反応のバランスが崩れ、特定の物質に過剰反応することで起こります。サイトカインの働きの偏りが関与します。治療法は、抗アレルギー薬や原因物質の回避が中心となります。
症状が繰り返し出現する場合はアレルギー科、内科、皮膚科への受診をおすすめします。
「サイトカイン」についてよくある質問

ここまでサイトカインについて紹介しました。ここでは「サイトカイン」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
高齢者になるとサイトカインの分泌が増えるのでしょうか?
宮部 斉重
加齢により慢性的な軽度炎症が起こりやすくなり、一部の炎症性サイトカインが増える傾向があります。
まとめ
サイトカインは、免疫細胞同士の情報伝達を担う重要なメッセージ物質であり、感染症の防御、炎症の調整、組織修復など、私たちの体を守るために欠かせない働きをしています。一方で、その分泌や作用のバランスが崩れると、サイトカインストームのような重篤な状態や、自己免疫疾患、慢性炎症性疾患などの発症・悪化につながることもあります。
特に、マクロファージをはじめとする免疫細胞との密接な関係や、炎症性サイトカインと抗炎症性サイトカインのバランスが、健康維持の鍵となります。サイトカインは「多すぎても少なすぎても問題が生じる」繊細な仕組みの上に成り立っているのです。
発熱や関節の腫れ、強い倦怠感などの炎症症状が長引く場合には、サイトカインの異常が関与している可能性もあります。症状が続く、悪化する場合には自己判断せず、内科や専門医を受診することが大切です。サイトカインの仕組みを正しく理解することは、感染症や炎症性疾患への理解を深める第一歩です。体のサインを見逃さず、早期の対応を心がけましょう。
「サイトカイン」と関連する病気
「サイトカイン」と関連する病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
サイトカインの異常や慢性的な炎症は、免疫疾患だけでなく、動脈硬化や心不全といった循環器系の病気、さらには婦人科系の病気など全身のさまざまな疾患に深く関わっています。
「サイトカイン」と関連する症状
「サイトカイン」と関連している、似ている症状は4個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
サイトカインが過剰に分泌されると、強い炎症反応が引き起こされ、これらのような症状が長引くことがあります。気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
参考文献
- Murphy K, Weaver C. Janeway's Immunobiology. 10th ed. Garland Science; 2022.
- Dinarello CA. Overview of the IL-1 family in innate inflammation and acquired immunity. Immunol Rev. 2018
- Miyabe et al, Chemokines in rheumatic diseases: pathogenic role and therapeutic implications. Nat Rev Rheumatol. 2019
- McNab F, et al. Type I interferons in infectious disease. Nat Rev Immunol. 2015
- Fajgenbaum DC, June CH. Cytokine Storm. N Engl J Med. 2020
- Franceschi C, et al. Inflammaging and ‘Garb-aging’. Trends Endocrinol Metab. 2017




