更年期障害の治療法『ホルモン補充療法(HRT)』副作用や薬の選び方は? 【婦人科医が解説】
女性の更年期には、ほてりやイライラなどさまざまな不調が起こります。「更年期障害」と一口にまとめられることが多い症状ですが、なかには日常生活に支障がでたり、対人関係がうまくいかなくなったりすることもあります。そのような場合に有効な治療がホルモン補充療法(HRT)です。そこで、ホルモン補充療法とはどのような治療なのか、ショコラウィメンズクリニックの木崎先生に教えていただきました。
監修医師:
木崎 尚子(ショコラウィメンズクリニック)
目次 -INDEX-
女性の更年期障害の治療で用いられるホルモン補充療法(HRT)とは?
編集部
更年期症状や更年期障害とは何ですか?
木崎先生
更年期になると、女性ホルモンの一種であるエストロゲンの分泌量が減少します。それに伴い、身体に出るさまざまな症状のことを更年期症状といい、その症状によって日常に支障をきたすことを更年期障害といいます。
編集部
更年期障害はどのようにして治療するのですか?
木崎先生
さまざまな治療法がありますが、外部からエストロゲンを補って諸症状を軽減する方法があります。これを「ホルモン補充療法(HRT)」といいます。
編集部
具体的に、どんな症状を軽減できるのですか?
木崎先生
ほてりやのぼせなど、いわゆるホットフラッシュと呼ばれる症状や、突然の発汗に対して効果が期待できます。そのほか、動悸、足腰の冷え、疲労感、イライラ、気分の落ち込みなどの改善も期待できます。また、骨粗しょう症や動脈硬化、認知症などの病気を予防する効果もあるとされています。
編集部
どこでその治療を受けることができるのですか?
木崎先生
まずは更年期障害に関する知識や経験が豊富な婦人科にご相談ください。必要に応じて、ホルモン補充療法を行っても問題がないかなどの検査をして、適応と診断された場合には、治療開始になります。
婦人科医が薦める更年期障害のホルモン補充療法(HRT)の選び方 薬の種類・効果について
編集部
エストロゲンはどのようにして補充するのですか?
木崎先生
大きく分けると、「経口剤(飲み薬)」と「経皮吸収型製剤(貼り薬、または塗り薬)」があります。それぞれ特徴が異なるので、適切なものを選択します。また症状によっては、腟に錠剤を深く挿入する腟錠を使う場合もあります。
編集部
それぞれの投与方法に、どんな特徴があるのですか?
木崎先生
飲み薬は腸管から吸収され、肝臓を通過したあとに効き目が現れる薬です。投与が簡単で、どこでも持ち歩きできて便利というメリットがあります。
編集部
そのほかの投与方法はいかがでしょうか?
木崎先生
貼り薬は、成分が皮膚から直接血管に吸収されることで効果が現れます。張り替えるタイミングは薬によって異なり、1週間に2回張り替えが必要なものと、2日に1回張り替えが必要なものがあります。塗り薬も皮膚から直接血管に成分が吸収されて効果が現れるもので、基本的に毎日塗る必要があります。それから腟錠は、症状によって投与のタイミングが異なります。
編集部
選び方のポイントは何でしょうか?
木崎先生
飲み薬は手軽で簡単というメリットがありますが、その反面、長期に服用すると胃腸や肝臓に負担がかかる人もいます。そのため、一般的には塗り薬や貼り薬の方が副作用が少なくておすすめとされています。
編集部
では、塗り薬や貼り薬を選択するのが良いのでしょうか?
木崎先生
必ずしもそうとは限りません。体質的にかぶれやすい人や、皮膚が弱くてアルコールが苦手という人もいます。また、貼り薬は冷蔵保管のものもありますので、ライフスタイルによっては使用が難しいこともあります。あるいは、人によって「飲み薬の方が飲み忘れることがなくて楽」ということもあります。このように、患者さんによってご希望が異なるため、その人に合わせた薬剤を使用します。
編集部
実際の投与方法はどのように決めますか?
木崎先生
子宮があるかどうか(子宮を摘出しているかどうか)、閉経からの経過年数など、一人ひとりの状況によって投与方法は異なります。例えば子宮のある人は、子宮体がんを予防するためにエストロゲンに加えて黄体ホルモンも一緒に使用します。また、エストロゲンと黄体ホルモンの両方を一度に補充できる貼り薬もあります。詳しくはかかりつけ医にご相談ください。
更年期治療のホルモン療法には不正出血などの副作用がある? 効果が出るまでの期間や考えられるリスクは?
編集部
更年期治療のホルモン補充療法には副作用があるのですか?
木崎先生
よく見られるものとしては、不正出血、乳房のはり・痛み、おりもの、下腹部のはり、吐き気、頭痛などがあります。治療を続けるうち症状が消えていくことが多いのですが、どうしても辛い場合には投与量を減らしたり、治療を中断したりすることがあります。
編集部
そのほかに気を付けるべきことはありますか?
木崎先生
特に閉経後10年以上経っている人、または60歳以上の人が新たにホルモン補充療法を行う場合は、血栓症などのリスクが高くなるとされています。
編集部
乳がんとの関連性を指摘されることがありますが、いかがでしょうか?
木崎先生
念のため、ホルモン補充療法を行うときには毎年乳がん検診を受けるようおすすめしています。一般に、ホルモン補充療法の治療期間が5年以上になると乳がんの発症リスクが少しずつ高くなると言われていますが、ホルモン補充療法の期間が5年未満でもほかの要因で乳がんが発症することもあります。あるいは、ホルモン補充療法を開始する前にすでに小さながんが存在していて、それが徐々に大きくなっていることもあります。そのため定期的に乳がん検診を受けることが大切です。
編集部
ホルモン補充療法を開始して5年以上経つと乳がんのリスクが高まるということは、それ以上、治療を続けない方が良いということですか?
木崎先生
いえ、そういうわけではありません。必ずしもやめなければならないわけではないので、乳がん検診を定期的に受診しながら、安全に治療を継続していただければと思います。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
木崎先生
更年期の症状は多くの女性が感じている一方で、「私はあの人と比べて症状が軽いから」「ホットフラッシュがないから」などの理由から受診を躊躇う人が多くいらっしゃいます。ですが、他人と比べることなくご自身が「辛い」と思ったら、それはもう治療の対象となります。人と比べず、ぜひ気軽に病院を受診してください。更年期の症状には個人差があり、治療を開始する前に更年期障害と断定することは困難な場合もあります。また、一旦治療を開始してみて症状が軽減された時点で、「更年期症状だった」とわかることもあります。困っていることがあれば、ぜひ、更年期障害の治療に詳しい婦人科にご相談ください。
編集部まとめ
さまざまな症状に悩まされる更年期障害。誰にも相談できず、長くひとりで苦しんでいる人もいるかもしれません。しかしホルモン補充療法を行うことで症状の改善を期待することはできます。もし悩んでいる場合には、ぜひ、婦人科医に相談してみましょう。
医院情報
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