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メンタルヘルスケアに漢方薬は効果ある? 精神科医が不安や気分の落ち込みと漢方薬の効果を解説

 公開日:2023/07/13
メンタルヘルスケアに漢方薬は効果ある?精神科医が不安や気分の落ち込みと漢方薬の効果を解説

西洋医学とは全く異なる特徴を持つ東洋医学。そのなかでも「漢方薬」は、ドラッグストアなどで気軽に購入できることから、馴染みがある人も多いと思います。はたして、漢方薬は身体的な症状だけでなく、メンタルのトラブルにも効果があるのでしょうか。今回は、「渋谷365メンタルクリニック」の堀内先生に解説していただきました。

堀内 智博

監修医師
堀内 智博(渋谷365メンタルクリニック)

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杏林大学医学部卒業。その後、精神科医として複数の病院に勤務。2023年、東京都渋谷区に「渋谷365メンタルクリニック」を開院。一般人にも理解しやすい精神科医療を目指し、産業医活動もおこなっている。日本精神神経学会認定専門医・指導医・認知症診療医。精神保健指定医、認知症サポート医、日本医師会認定産業医。日本ADHD学会会員。

不安や気分の落ち込みなどのメンタル不調の主な原因や症状を精神科医が解説 生理前や更年期の女性は要注意

不安や気分の落ち込みなどのメンタル不調の主な原因や症状を精神科医が解説 生理前や更年期の女性は要注意

編集部編集部

身体的に健康な人でも、不安を感じたり、気分が落ち込んだりすることはあると思います。一体、何が原因なのでしょうか?

堀内 智博先生堀内先生

様々な原因が考えられます。例えば、職場においては人間関係のトラブル、仕事量や責任などがメンタル不調の原因になります。また、家庭環境や金銭トラブル、住環境などもメンタル不調の原因になり得るでしょう。そのほかにも、個人的な要因として、ストレスが苦手な人や、新入社員などでコミュニケーションスキルがまだ成長中なことも関係しています。

編集部編集部

メンタル不調になると、どのような症状が表れるのでしょうか?

堀内 智博先生堀内先生

感情面では「憂うつ感が強い」「意欲が出ない」「何をしても楽しいと感じられない」などが起こります。その一方、身体面では「不眠」「食欲不振」「頭痛」「肩こり」「倦怠感」「便秘」「下痢」などが起こることもあります。

編集部編集部

メンタル不調でとくに注意したいタイミングはありますか?

堀内 智博先生堀内先生

メンタル不調はいつでも起こり得ますが、例えば女性の場合、生理前は女性ホルモンのバランスが乱れるため、バイオリズムの崩れやメンタル不調を感じやすいとされています。

編集部編集部

ほかに気をつけるべきタイミングはありますか?

堀内 智博先生堀内先生

更年期もメンタル不調を感じやすいタイミングとされています。女性はもちろんですが、男性にも更年期があり、この時期は意欲が低下したり、倦怠感を覚えたり、集中力が低下したり、イライラしやすくなったりすることがあります。

編集部編集部

更年期でも意欲の低下や倦怠感など、うつに似た症状が起きるのですね。

堀内 智博先生堀内先生

たしかに、更年期でもうつに似た症状が表れますが、更年期の場合は男女ともに「ホットフラッシュ」の症状がみられます。ホットフラッシュがあるかどうかは、一般的なうつと更年期障害を鑑別する手段の1つとされています。

メンタルが不安定な症状や自律神経の乱れには漢方薬が効く? 当帰芍薬散や加味逍遙散はどんな効果があるの?

メンタルが不安定な症状や自律神経の乱れには漢方薬が効く? 当帰芍薬散や加味逍遙散はどんな効果があるの?

編集部編集部

メンタル不調は、どのようにして改善できるのでしょうか?

堀内 智博先生堀内先生

決して1人で悩まずに、メンタルクリニックや心療内科に通院して専門家の治療を受けることが必要です。医療機関では薬物療法だけでなく、カウンセリングや認知行動療法など様々な治療法を適切に用いて不調の改善を目指します。

編集部編集部

メンタルケアに漢方薬を使うこともできるのですか?

堀内 智博先生堀内先生

はい。漢方薬はメンタル不調の改善にとても有効で、西洋医学の薬物とは全く異なる機序を持っています。西洋医学では「不安」や「高血圧」など、それぞれの症状に異なる薬を処方するのが一般的ですが、漢方薬はこれらの心身の症状を総合的に捉え、根本的な解決を目指します。

編集部編集部

どのような漢方薬を用いるのですか?

堀内 智博先生堀内先生

例えば、「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」は、生理不順や更年期障害などによく処方される漢方薬で、血の巡りを良くしたり、体を温めたりするほか、ホルモンバランスを整えてくれます。同じく「加味逍遙散(かみしょうようさん)」も月経前症候群(PMS)など、女性の悩みによく処方される漢方薬で、イライラや倦怠感などを改善する効果が期待できます。

編集部編集部

色々な漢方薬が用いられるのですね。

堀内 智博先生堀内先生

はい。そのなかでも加味逍遙散は非常に高い効果が期待できる漢方薬で、レディースクリニックやメンタルクリニックでもよく処方されています。

編集部編集部

男性でも使えるのですか?

堀内 智博先生堀内先生

もちろん男性でも使用できます。ただし、男女問わず漢方薬は本人の体質にあったものを選ぶことが肝心です。同じ更年期障害を抱えた人でも、体質が違えば処方する漢方薬も全く異なるため、専門の医師への相談をおすすめします。

編集部編集部

ドラッグストアなどでも漢方薬が市販されていますが、自分で選ぶのは難しいのですね。

堀内 智博先生堀内先生

そうかもしれませんね。様々な種類の漢方薬が売られていますし、自分に合っていない漢方薬はかえって症状を悪化させる原因になることもあります。そのため、漢方薬に詳しい医師に見立ててもらうことが必要です。

メンタルの不調で漢方薬を服用する際の注意点やメリット・デメリット 漢方治療以外でメンタルを安定させる方法も

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編集部編集部

漢方薬でメンタルの不調を改善するメリットはなんでしょうか?

堀内 智博先生堀内先生

一般的な西洋医学の薬と異なり、漢方薬は眠くなるといった副作用が少ないというメリットがあります。また、依存性が少なく、量の増減がしやすいというのもメリットと言えるでしょう。さらに、漢方薬は体質改善もできることがあり、西洋医学の薬にはできないことです。根本的に体質を変えて、整えていくことで心身の健康を向上させることが期待できます。

編集部編集部

漢方薬は、西洋医学の薬と併用することはできるのですか?

堀内 智博先生堀内先生

はい。西洋医学の薬と併用することで、症状のさらなる改善が期待できるというメリットがあります。

編集部編集部

反対に、漢方薬にデメリットはありますか?

堀内 智博先生堀内先生

西洋医学の薬にも当てはまることですが、漢方薬には「長く飲むことで効果を感じられる薬」と「すぐに効果が期待できる薬」があります。使用するタイミングや量なども見立てが難しいという特徴があります。また、漢方薬の中には副作用の強く出る可能性があるものもあります。そのため、使用には医師の助言が必要であることがデメリットと言えるかもしれません。

編集部編集部

漢方薬は「苦くて美味しくない」という印象があります。

堀内 智博先生堀内先生

たしかに、そのようなイメージがあるかもしれませんね。しかし、自分に合った漢方薬であれば、むしろ美味しく感じられることもありますし、そもそも「苦くて美味しくない」と感じるのは、その漢方薬が自分に合っていないからかもしれません。もし、薬を一定期間服用しても「まずい」「美味しくない」と感じる場合には、医師に相談することをおすすめします。

編集部編集部

漢方薬を使用する以外に、メンタルを安定させる方法はありますか?

堀内 智博先生堀内先生

基本的なことですが、まずは生活習慣を整えましょう。栄養バランスのとれた食事、良質な睡眠は大切です。お酒の量が多すぎても、うつ状態を引き起こすので注意が必要です。また、家族や友人、必要があればカウンセラーなどに話を聞いてもらうことも重要です。新しい視点が加わることで、ものの見方が変わることもあります。1人で抱えず、誰かに話を聞いてもらうのは、メンタルを安定させる上で大事なことです。

編集部編集部

色々な方法があるのですね。

堀内 智博先生堀内先生

それから、瞑想や自律訓練法という手段もありますし、ストレス発散に向いた趣味を見つけるのもメンタルを安定させるのに役立つでしょう。いずれにしても、「自分に合った方法」を見つけることが大切です。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

堀内 智博先生堀内先生

一般的に、漢方薬は「効果が弱い」と思われがちですが、その薬が自分に合う場合には劇的な効果がみられることもありますし、そのときの効果はうまく当てはまる人には西洋医学に勝るとも劣りません。しかも、漢方薬は副作用が少ないものが多いのです。漢方薬は決して万能ではありませんが、漢方薬の使用は医師にとって治療の選択肢が増えることにつながります。また、患者さんにとっては、西洋医学では治せないものを改善できる可能性が生まれることになります。もし漢方薬に興味がある場合は、西洋医学と漢方薬の両方を使える医師に相談してみるといいのではないでしょうか。ウェブサイトに「漢方薬を処方している」と書いている医療機関を受診したり、実際に診察を受けてみて漢方薬を処方してもらえるか確認したりするのもいいでしょう。セカンドオピニオンも利用して、自分に合った治療法を探してみてはいかがでしょうか。

編集部まとめ

漢方薬は「長く飲み続けなければいけない」「効果が出るまでに時間がかかる」というイメージがありますが、自分に合う場合にはスパッと切れ味のいい効果を発揮することもあります。もし、メンタルの不調など心身トラブルで悩んでいる場合には、漢方薬を扱う医師に相談してみてくださいね。

医院情報

渋谷365メンタルクリニック

渋谷365メンタルクリニック
所在地 〒150-0002 東京都渋谷区渋谷2-1-11 郁文堂青山通りビル8階
アクセス 東京メトロ「表参道駅」 徒歩6分
JR・東京メトロ・東急線「渋谷駅」 徒歩7分
診療科目 精神科、心療内科

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