ストレスホルモン「コルチゾールの働き」はご存知ですか?医師が徹底解説!

コルチゾールは体内でどんな働きをしているの?Medical DOC監修医がコルチゾール値が高いと現れる症状・値が低いと現れる症状・異常な値で発症しやすい病気などを解説します。

監修医師:
伊藤 陽子(医師)
目次 -INDEX-
「コルチゾール」とは?

コルチゾールとは、副腎から分泌されるホルモンの一つです。主な働きは、肝臓で糖を作りだしたり、脂肪分解などの代謝の促進、抗炎症作用など体にとって重要な働きを担っています。また、ストレスを受けた時にコルチゾールの分泌が増加し、血圧や血糖値をあげてストレスに適応するのを助けます。このため、コルチゾールは「ストレスホルモン」とも呼ばれているのです。
コルチゾールはどこから分泌されるの?

コルチゾールは左右の腎臓の上あたりにある副腎という臓器、この副腎の外側にある皮質という部位から分泌されます。
コルチゾールの働き

コルチゾールは多様な働きを持っています。以下にその代表的な働きの例を挙げて整理していきましょう。
血糖値をあげる
肝臓での糖の産生を促進して血糖値を上昇させます。また、筋肉や脂肪では、インスリンによる糖の取り込みを抑えインスリン抵抗性を示すようになります。これらの働きにより血糖値は上昇し、糖尿病を合併しやすくなります。
タンパク質の代謝
骨格筋などの蛋白質の分解を促進し、アミノ酸が血中に放出されます。このアミノ酸が肝臓で糖を作る原料となります。
脂質代謝への働き
脂肪組織での脂肪の分解を促進し、遊離脂肪酸をエネルギー源として供給します。
抗炎症作用・免疫抑制反応
炎症性のサイトカインの産生を抑え、炎症反応を鎮める働きがあります。T細胞を中心とした細胞性免疫を抑制して自己免疫反応やアレルギー反応を抑える一方、感染症に対しての免疫反応も弱め、感染症のリスクは上昇します。
血圧や電解質への働き
尿中のナトリウムの排泄を減少させ、体内でのナトリウム濃度が上昇することで体液量が増加します。これにより、血圧が上昇し、高血圧を合併することもあります。
体内のコルチゾール値が高くなるとどんな症状が現れる?

満月様顔貌など体の変化
体内のコルチゾール値が高くなると、特徴的な症状があらわれます。顔がむくんだように丸くなる満月様顔貌、頸部~肩甲部に脂肪が沈着して盛り上がる野牛肩、四肢は細いにも関わらず体幹に脂肪が蓄積する中心性肥満、皮膚が薄くなる皮膚菲薄化、腹部などに皮膚が伸展されることにより生じる腹部赤色皮膚線条、近位筋の筋力低下などがみられるようになります。
これらの体の所見はクッシング症候群の特徴的な所見です。
糖代謝異常
コルチゾールによって肝臓での糖産生が促進され、筋肉や脂肪組織でのインスリンによる糖の取り込みが阻害されます。これらの働きにより血糖値が高くなり、糖尿病を発症しやすくなります。
高血圧
コルチゾールはミネラルコルチコイド作用も持っており、腎臓でナトリウムの再吸収を亢進して体内でのナトリウム濃度を上昇させ、体液量を増やします。また、心拍出量が増加し、収縮期血圧が上昇します。末梢の血管抵抗を増加させる作用もあり、循環血液量が増加することと合わさり血圧が上昇しやすくなるのです。
骨粗しょう症
コルチゾールが過剰となると、若年での圧迫骨折が起こりやすくなり、このため低身長や背部痛がみられることが多いです。若いにも関わらず椎体の圧迫骨折を認める場合には、整形外科や内分泌内科で相談をしてみましょう。
うつ症状
コルチゾールの分泌が過剰になるとうつ病の発症が多くなることが分かっています。はっきりとした機序はよく分かっていません。しかし、コルチゾールの過剰以外でもうつ病となる事もあるため、気分の落ち込みや集中力の低下、睡眠障害など気になる症状がある場合にはまず精神科や心療内科を受診してみましょう。
体内のコルチゾール値が低くなるとどんな症状が現れる?

全身倦怠感
慢性的な強い倦怠感や脱力感が持続し、日常生活にも支障が出るほどの状態となる事もあります。コルチゾールの不足により糖を作り出しにくくなりエネルギーの供給が不十分になる事も原因として考えられます。
筋力低下・体重減少
慢性的なコルチゾールの低下で筋力の低下がみられます。また、食欲低下や消化器症状を伴うことで体重が減少することもあります。
低血圧
コルチゾールが不足すると、血圧が低くなりやすく、特に立ち上がった時に血圧が急激に下がることで立ちくらみを起こす起立性低血圧を起こしやすいと言われています。
消化器症状
慢性的なコルチゾールの低下で、食欲低下や嘔気、嘔吐、下痢、便器、腹痛などのさまざまな消化器症状がみられることがあります。消化器症状がみられることで、より体重減少が進んでしまうこともあります。
精神症状(無気力・不安・うつ)
無気力や抑うつ症状、不安感、集中力の低下、記憶障害などがみられることもあります。
コルチゾール値に異常があるとどんな病気が考えられる

クッシング症候群
クッシング症候群とは、副腎からのコルチゾールの作用が過剰になる事により、さまざまな症状がみられる病気です。コルチゾールは副腎から分泌される重要なホルモンですが、多すぎても少なすぎても問題となりやすいです。この症候群では、前述したような特徴的な身体所見を伴います。クッシング症候群には副腎の異常でコルチゾールが過剰に分泌される副腎性クッシングと、副腎皮質刺激ホルモンACTHの過剰が原因となる(ACTH依存性クッシング)、ステロイド内服などのコルチゾールと同様の作用を持つ薬剤による病態(薬剤性クッシング)があります。
クッシング症候群は特徴的な身体所見の他に、高血圧、耐糖能異常、骨粗しょう症、月経異常やうつ病などの重大な合併症がみられます。このため、治療が必要となります。疑われる症状があった場合には内分泌内科を受診して相談しましょう。
アジソン病
副腎皮質からは、アルドステロン、コルチゾール、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、デヒドロエピアンドロステロンサルフェート(DHEA-S)が分泌されています。これらのホルモンが慢性的に低下した状態を慢性副腎皮質機能低下症と言います。副腎皮質自体の病変が原因となる原発性慢性副腎不全の中で特に後天性のものがアジソン病です。
アジソン病の原因は、特発性が42.2%、結核性が36.7%、その他が19.3%です。
アジソン病の症状は、全身倦怠感、筋力低下、低血圧がみられ、悪心、嘔吐などの消化器症状、無気力や不安、うつ症状などの精神症状がみられます。また、皮膚や肘、膝などに色素沈着がみられます。
治療法としては、副腎皮質ホルモンを補充することです。症状からアジソン病を疑った場合には、内分泌内科を受診して相談しましょう。
クッシング病
クッシング症候群のうち、下垂体からの副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が過剰に分泌されることが原因となるACTH依存性クッシング症候群、さらにその中で下垂体に原因がありACTHが過剰となる病気がクッシング病です。クッシング症候群のうち、副腎性が5割、クッシング病が4割と言われています。
クッシング病の症状は、クッシング症候群と同様の症状です。また、ACTHが多くなると皮膚のこすれる所や関節の皮膚が黒っぽくなります。病気が進行すると感染に弱くなり、敗血症で命を落とすこともあるため、注意が必要です。
クッシング病の原因は下垂体腺腫であることが多いです。このため、手術により下垂体腺腫を摘出することが最善の治療法となります。下垂体腺腫が非常に小さいことが多いため非常に見つけにくいこともあります。
「コルチゾールの働き」についてよくある質問

ここまでコルチゾールの働きについて紹介しました。ここでは「コルチゾールの働き」についてよくある質問に、メディカル監修医がお答えします。
コルチゾールには筋肉を分解する働きがあるのでしょうか?
伊藤 陽子(医師)
コルチゾールの働きで筋肉の蛋白が分解され、アミノ酸が放出されます。このアミノ酸が肝臓に運ばれ、アミノ酸を供給源として糖がつくられます(糖新生)。一連のコルチゾールの働きにより、筋肉が分解され筋力低下が起こります。
コーヒーの摂取でコルチゾール値を減らすことはできるのでしょうか?
伊藤 陽子(医師)
コーヒーの摂取はむしろコルチゾールの分泌を増加させる可能性があると報告されています。このため、日内変動でコルチゾールが低下する起床後1時間程度でコーヒーを飲むことが仕事の効率を上げる方法としてよいのではないかと言われています。しかし、性別やストレス、食事の影響などで反応が低い場合もあるため注意が必要です。
まとめ:コルチゾールは命を維持するために重要なホルモン!
コルチゾールは副腎皮質という部分から出る、ストレスに対抗するホルモンで、主要な働きは「糖新生(糖を増やす)」と「抗炎症作用」です。このため、エネルギーを供給したり、炎症を抑えるために体内で働いています。
しかし、過剰になりすぎると、糖尿病になりやすくなったり、高血圧、感染に対しての免疫機能の低下をきたすこともあり、注意が必要です。また、コルチゾールが低くなりすぎても、倦怠感や低血圧、体重減少をきたし日常生活に支障が出ます。このため、バランスが非常に重要です。
「コルチゾール」と関連する病気
「コルチゾール」と関連する病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
精神科系
コルチゾールは多くても少なくても異常が起こります。また、さまざまな働きがあるため、血圧や糖代謝、脂質代謝や精神などの病気を引き起こすことも考えられます。
「コルチゾール」と関連する症状
「コルチゾール」と関連している、似ている症状は9個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 血圧が上がる
- 顔が丸くなる
- 手足は細いが、体の中心に脂肪がつく
- 皮膚が黒ずむ
- だるい
- 体重減少
- 下痢・便秘
- 嘔気
- 無気力
コルチゾールが低かったり、高かったりと異常がある場合にみられる症状の一部を紹介しました。コルチゾールは多様な症状に関係することが多いです。気になる症状がある場合には内分泌内科で相談をしてみましょう。




