「うつ病」になりやすい性格・傾向をご存じですか? うつ病の前兆も医師が解説

誰でも落ち込んだり、元気が出なかったりすることはありますが、そんなとき「もしかしてうつ病かも……」と考えたことはないでしょうか? じつは、うつ病にはなりやすい性格や傾向があり、そのような条件に当てはまる人は、うつ病の兆候が見られたとき注意した方が良いかもしれません。うつ病になりやすいのはどんな人なのか、メンタルドクタークリニックの紫藤先生にメディカルドック編集部が聞きました。

監修医師:
紫藤 佑介(メンタルドクタークリニック)
「うつ病になりやすい性格」とは?

編集部
うつ病になりやすい性格や傾向はあるのですか?
紫藤先生
あります。一般的に言われているのは、「真面目な人」や「責任感が強い人」「完璧主義の人」「自分に厳しい人」はうつ病になりやすいということです。
編集部
なぜ、真面目な人や責任感が強い人はうつ病になりやすいのですか?
紫藤先生
そういう人は他人からの頼みを断ることができず、全部自分で引き受けてしまい、ストレスを溜め込んでしまうことが多いからです。完璧主義のために、途中で手を抜いたり投げ出したりすることができず、自分で自分を追い詰めてしまうということもあります。
編集部
ほかには、どんな性格の人がうつ病になりやすいのですか?
紫藤先生
「周囲に気を使い過ぎ」たり、「凝り性」だったりする人も、うつ病になりやすいとされています。周囲に気を使う人は、心のなかでは苦しんだり落ち込んだりしていても、周囲に気を使わせないように無理に頑張り過ぎることがあります。そのため、ストレスがどんどん溜まってうつ病になりやすいのです。
編集部
凝り性の人はなぜ、うつ病になりやすいのですか?
紫藤先生
凝り性の人は執着気質で、一旦これと決めたことに取り組んだら途中で弱音を吐かず、完璧を目指してしまう傾向があります。結局、何でも一人で抱え込んでしまい、うつ病になりやすいのです。
うつ病になりやすい性格の人は、どんなタイミングでうつ病を発症するのか?

編集部
そのような性格の人は、どのようなタイミングでうつ病を発症するのですか?
紫藤先生
たとえば受験で不合格になった、会社でミスが連続した、大きな失敗をしたといったようなとき、うつ病を発症することがあります。失敗したという経験により、過度なストレスにさらされたり、自己否定の感覚や劣等感などを覚えたりすることで、「自分はダメな人間だ」と落ち込み、うつ病を発症してしまうのです。
編集部
そのほか、どんなタイミングでうつ病を発症しやすいのですか?
紫藤先生
たとえば、大切な人やものを失う喪失感がきっかけで、うつ病を発症することがあります。そのほか、環境の変化や人間関係のトラブル、経済的な困窮などがきっかけになることもあります。
編集部
同じようなことが起きても、うつ病になる人とならない人がいるのはなぜですか?
紫藤先生
これにはいろいろな原因が考えられますが性格の違いや、ストレスに対する耐性や抵抗性などが大きく関係していると思われます。
うつ病になりやすい性格の人が示す、うつ病のサインとは?

編集部
うつ病には兆候やサインがあるのですか?
紫藤先生
はい。たとえば気分が落ち込んだり、悪いことばかり考えてしまったりするのは、うつ病のサインと考えられます。以前なら楽しめたようなことも、楽しく感じられないようになることも要注意です。
編集部
ほかに、どのような兆候やサインがありますか?
紫藤先生
早めに気づいた方がよいサインに、眠れない、反対に寝すぎるといった睡眠障害があります。また、うつ病の兆候は心だけでなく、体にも現れることがあり、疲れやすくなる、頭痛、腹痛などはその典型です。
編集部
体に症状が出ることもあるのですね。
紫藤先生
はい。それから、これまで自分ができていたことができなくなるのも、うつ病のサインです。仕事に集中できない、家を出るのが億劫に感じられる、家事や入浴、歯磨きなど、「本来ならやらなければならないことが面倒になる」といった症状が見られたら要注意です。
編集部
そのような兆候やサインが見られたら、どうしたらよいのでしょうか?
紫藤先生
早めに、心療内科や精神科などの医師に相談することをお勧めします。症状がひどくならないうちに医療が介入できれば、日常生活を改めたり、考え方の癖を見直したりすることで改善が期待できるかもしれませんし、回復もスムーズになります。反対に、治療の開始が遅れれば遅れるほど回復が遅くなり、治療も難渋することが考えられます。困っていることがあれば、早めに医師に相談しましょう。
編集部
最後に、メディカルドック読者へのメッセージがあれば。
紫藤先生
「うつ病になりやすい人は真面目で責任感が強い人が多い」と言われています。そういう人は、知らないうちに自分を追い込んだり、弱音を吐けずに自分のなかで溜め込んだりするケースが多いのです。また、仕事のパフォーマンスが下がった分、それを“量”でカバーしようとするために、ますますハードワークになってしまう、というマイナスのサイクルに陥る人も少なくありません。頑張ることが悪いわけではありませんが、「普段できていることができていない」「頭が回らない」「疲れやすい」など、本来の状態と違うと感じた場合は一旦立ち止まって、まずはパフォーマンスを戻すことが大切。ぜひ、早めに医師に相談してほしいと思います。
編集部まとめ
真面目で責任感が強いということは美徳ではありますが、その反面、頑張りすぎて心身の状態を崩してしまう、ということもあります。もし、「なんか調子がずれているな」「普段の自分と違うな」という違和感を覚えたら、ぜひ医師に相談を。仕事や勉強のパフォーマンスを良好に保つためにも、早めに受診するようにしましょう。
医院情報
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診療科目 | 精神科、心療内科 |