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「果物をよく食べている人はうつ病になりにくい」国立精神・神経医療研究センターが発表

 公開日:2023/10/04
果物を食べることでうつ病予防効果

国立精神・神経医療研究センターらの研究グループは、「果物をよく食べている人はうつ病になりにくい」という研究結果を報告しました。この内容について、稲川医師に伺いました。

稲川 優多

監修医師
稲川 優多(医師)

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自治医科大学勤務。医学博士、公認心理師。日本精神神経学会精神科専門医・指導医・認知症診療医、日本老年精神医学会専門医・指導医、日本医師会認定産業医、精神保健指定医。

研究グループが発表した内容とは?

国立精神・神経医療研究センターらの研究グループが発表した内容について教えてください。

稲川 優多医師稲川先生

国立精神・神経医療研究センターらの研究グループは、長野県南佐久郡に住む、1990年時点で40~59歳の男女のうち、1995年と2000年の食事調査アンケートに回答した、かつ2014~15年実施の「こころの検診」に参加した1204人のデータを統計的に解析しました。このうち、93人がうつ病と診断されています。

研究グループは、野菜や果物の摂取量を5つのパターン(野菜と果物・野菜・果物・ジュースを除いた果物・フラボノイドが豊富な果物)に区別し、それぞれの摂取量を五分位で分けました。そのうえで、第1五分位群と比べて第5五分位群のうつ病罹患(りかん)率がどの程度変化するか、多変量ロジスティック回帰分析をおこないオッズ比(OR:odds ratio)を算出しました。その結果、ジュースを除いた果物(OR:0.34, 95% CI:0.15-0.77)とフラボノイドが豊富な果物(OR:0.44, 95% CI:0.20-0.97)に関しては、年齢や性別などを調整したうえで有意にうつ病リスクを低減させることが示されました。一方で、ジュースを含めた果物・野菜・果物と野菜の摂取量とうつ病発症リスクには、有意な関連は認められませんでした。さらに、野菜や果物に含まれるビタミンCなどの個々の栄養素と発症リスクについても、統計的な関連はありませんでした。

研究グループは、「果物に含まれるフラボノイドというポリフェノールの一種が、うつ病予防に有効だとする見方が強いです。フラボノイドは、うつ病の発症メカニズムとされる脳由来の神経栄養因子の増加や酸化ストレスや神経炎症を抑える可能性があると推測されています」としながらも、フラボノイドの有効性については「ジュースを除く果物全体とフラボノイドの豊富な果物の両者で予防効果があったことから、うつ病になりにくくなるのは、フラボノイドというより果物全般が持つ抗酸化作用などによるものと考えます」との見方を示しています。

今回の発表内容への受け止めは?

国立精神・神経医療研究センターらの研究グループが発表した内容についての受け止めを教えてください。

稲川 優多医師稲川先生

論文中でも触れられていますが、果物を積極的に摂取する人たちは普段から健康意識が高い人である可能性が考えられるため、フラボノイドなどの栄養素がどの程度うつ病発症を低減させるかは今後の研究が待たれます。また、研究参加時の年齢が40~59歳までという限定的な群を対象にしているため、より若年の人にも同様の結果を期待できるかは不明です。とはいえ、フラボノイドや生の果物が抗うつ効果を示唆する重要なコホート研究であり、うつ病の神経炎症仮説を支持する可能性もあります。質の高い疫学的研究が精神疾患の病態理解を促し、基礎から臨床まで幅広い示唆を投げかける貴重な研究の一例であると言えるでしょう。

研究結果を普段の生活でどのように活かせる?

国立精神・神経医療研究センターらの研究グループによって、果物を多く食べる人はうつ病になりにくくなることが示されましたが、実際の生活でどのように役立ちそうですか?

稲川 優多医師稲川先生

果物はジュースに加工されると抗酸化作用が弱まり、グリセミックインデックス(GI)の値が高くなることで、高用量摂取するとうつ病リスクが上がるという先行研究もあります。つまり、果物を摂取する際には、生の果物を摂取するように心がけることが重要ということになります。また、生の果物というものは加工品では味わえない美味しさがあると思います。果物本来の味わいがもたらす心理的な効果にも期待したいところです。

まとめ

国立精神・神経医療研究センターらの研究グループは、「果物をよく食べている人はうつ病になりにくい」という研究結果を報告しました。研究グループは「果物を意識的に摂取することは、心の健康に有用であると思います。ただし、ジュースだと抗酸化作用が低下するので、加工されていない果物の摂取をおすすめします」ともコメントしています。

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