「尿検査のpH」の異常は何が原因かご存じですか?考えられる病気と改善法を医師が解説!

尿検査のpHとは?メディカルドック監修医が、pHの数値から何がわかるのか、数値が高い・低い場合に疑われる原因や、正常に保つための過ごし方について解説します。

監修医師:
杉本 大(医師)
日本内科学会認定医・専門医、消化器病学会専門医、消化器内視鏡学会専門医、プライマリーケア学会認定医
目次 -INDEX-
尿検査のpH(尿pH)とは?
尿検査におけるpH(水素イオン指数)とは体内の酸・塩基平衡(酸性とアルカリ性のバランス)を反映する重要な指標です。具体的に何がわかるか解説していきます。
尿検査のpHの基準値はpH4.5〜7
人が生命活動に重要な代謝を行うには、血液中のpHを7.4前後で一定に保つ必要があります。余分になった酸やアルカリを体外に出すための方法の一つが尿中に排泄する方法で、その結果が尿pHとして示されます。通常は弱酸性(尿pH6.0〜6.5前後)ですが、食事や運動によって常に変動します。基本的な基準値はpH4.6〜7.5ですが、施設によってはpH4.5〜8.0までを正常範囲としていることもあります。
尿検査のpH値が高い場合や低い場合体のどんな健康状態がわかる?
pHが高い場合(アルカリ尿=pH8.0以上)は嘔吐や過換気症候群で体から酸が喪失し体がアルカリ性に傾いている時です。また細菌が尿素を分解してアンモニアを生成している尿路感染症も、尿のpHが高くなります。pHが低い場合(酸性尿=pH5.0未満)は激しい運動のあとや、糖尿病や痛風、飢餓状態などによって体に多くの酸性物質が作られることが原因です。尿に排泄する酸が増えることで、尿pHが低くなります。
尿のpH値が変動する主な原因と健康への影響
尿のpHが変動する主な原因はどういったものがあるでしょうか。また健康にどんな影響を与えるものなのでしょうか。詳しく解説していきます。
尿検査で酸性尿とアルカリ性尿の数値は?
よく理科の実験などで酸性といえばpH7未満ですが、健康な人の尿では通常弱酸性でpH6前後であることが多いです。そのため病的な意義をもつ酸性尿のpHはもっと低く、通常は5.0〜6.0未満としているところが多いです。またアルカリ尿はpH7.5〜8.0以上としているところが一般的です。
酸性尿になる原因と食生活の影響
酸性尿になる原因は、体の代謝や食事内容によって体内の酸が増加し、尿に排出される酸の量も増えることです。体の状態の変化による原因では、脱水状態、空腹・飢餓状態、激しい運動の後、コントロール不良の糖尿病などが挙げられます。食生活では動物性たんぱく質を多く摂取(特に肉、魚、卵など)すること、糖質を過剰摂取することが原因として多いです。高たんぱくと炭水化物中心の食事は酸性尿になりやすい食事ともいえます。
アルカリ性尿になる原因と食生活の影響
アルカリ性尿になる状態は、体内で酸が喪失しアルカリが多い状態になることのほかに、食事の影響や尿の中にある細菌の影響で尿自体がアルカリ性になる状態が多いです。体の変化では嘔吐により胃酸が体外に喪失することや、過換気症候群で体内の二酸化炭素が減っている状態になると体がアルカリに傾くため、アルカリ尿になります。ほかにアルカリ尿となる特徴的な原因として、尿路感染症(特にウレアーゼ産生菌)が挙げられます。この細菌は尿の中にある尿素を分解し、アルカリ性であるアンモニアを尿中に作るため、尿自体がアルカリ性を示すことが多いです。アルカリ性尿になりやすい食事は野菜(特に葉物)、果物、海藻類、きのこが挙げられます。これらは代謝されるとアルカリ性の物質に変化するためです。野菜中心の生活をしている人は、アルカリ性尿になりやすい食事をしているといえます。
「尿検査のpH」の異常で気をつけたい病気・疾患
ここではメディカルドック監修医が、「尿検査のpH」の異常から疑われる病気を紹介します。どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
糖尿病
糖尿病とは、血糖値が慢性的に高くなる病気で主にインスリンの分泌低下や作用不足によって起こります。1型と2型にタイプが分かれており、1型糖尿病は突然インスリンが作れなくなったことで発症するもので、根本的な原因が不明なこともあります。2型糖尿病は生活習慣の乱れから、インスリンの量が足りない状態、もしくはうまく作用できなくなることで発症することが多いです。糖尿病では糖分をうまくエネルギーに利用できない状態となっていることから、体はエネルギーを得るため脂肪を分解します。脂肪を分解する過程でケトン体と呼ばれる酸性物質が作られます。この酸性物質を尿中に排泄した結果、酸性尿となりやすいです。1型糖尿病の場合は、インスリン補充が治療の絶対条件になります。2型糖尿病の場合は、生活習慣の是正と内服治療でコントロールできる場合があります。どうしてもコントロールがつかない場合は2型でもインスリン投与を行うことも少なくありません。健診で空腹時血糖値やHbA1cが正常範囲より高い、尿検査で糖分が検出されたなどあれば、一般内科や内分泌内科の受診を考えましょう。自覚症状がない場合もありますが、のどの渇きが強い、食べているのに体重が減っている、尿の回数が多いなどの症状があるときは早めの受診を考えましょう。
痛風(高尿酸血症)
痛風とは、血液中の尿酸が増え(高尿酸血症)、関節に結晶として沈着し炎症を起こす病気です。代表的なものは足の親指の付け根が突然腫れて強い痛みがでるもので、痛風発作と呼ばれています。まさに「風が吹いただけでも痛い」という強い痛みがでます。尿酸は酸性の環境では溶けにくく、アルカリ性で溶けやすいという特徴があります。尿が酸性化しているときは、血液以外の場所も同様に酸性化しています。酸性化された関節液内では尿酸が結晶化しやすくなるため、痛風発作がより起こりやすくなります。予防法としては尿量を1日2L以上保つように飲水をすること、野菜・果物を多く摂取し尿をアルカリ化する、生活習慣の改善を行うなどです。発作が起きてしまった場合は、安静と鎮痛剤(NSAID)内服などが中心となります。発作が起こる前であれば自覚症状はありません。健診などで尿酸値が高いと指摘された場合は内科受診をしましょう。尿酸値が9.0mg/dLより高いようなら痛風のリスクが高まるといわれているので、早めに内科受診を考えましょう。痛風発作が起きてしまったときは内科か整形外科の受診をお勧めします。
尿路感染症
尿路感染症とは、尿の通り道(尿道・膀胱・腎臓)に細菌が感染する病気です。感染した部位によって腎盂腎炎や膀胱炎と呼ばれることもあります。女性に多く、疲労や脱水、排尿を我慢することなどがきっかけになります。おもな症状は排尿時の痛み、頻尿、残尿感です。腎盂腎炎まで悪化すると、発熱や腰痛などがみられることが多いです。Proteus mirabilisをはじめとするウレアーゼ産生菌が尿路に存在すると、尿中の尿素を分解してアンモニアを産生します。アルカリ性であるアンモニアが尿中に出てくるので、尿自体もアルカリ性になります。予防方法は、水分を多く摂取して尿を増やし細菌を流す、排尿を我慢しない、疲労を残さないなどです。排尿時の痛みや残尿感などの症状が出てくるようであれば、抗生物質を投与します。症状が一時的な違和感のみであれば、水分摂取などで様子を見ます。しかし数日症状が持続する、もしくは症状の悪化があるようなら内科か泌尿器科の受診を考えましょう。治療をして改善しても再度症状が出てくる場合は尿路に異常がある可能性があるため、内科ではなく泌尿器科の受診をおすすめします。
尿路結石
尿の成分(カルシウム、シュウ酸、尿酸など)が結晶化し、石のように固まった結石が尿路にできる病気を尿路結石といいます。突然の激しい背部痛、血尿、吐き気が代表的な症状です。発症の誘因は、水分不足、食生活の偏り、運動不足、尿路感染症などです。結石は種類ごとにできやすい尿pHがあります。酸性尿の環境でできやすい結石は尿酸結石とシスチン結石です。酸性の環境では、これらの成分が溶けにくく結晶化しやすいためです。一方アルカリ尿でできやすい結石は、リン酸カルシウム結石と感染結石が挙げられます。これらはアルカリの環境のほうが溶けにくい性質を持ちます。予防法は、水分摂取と尿pHのコントロールです。尿のpHが酸性・アルカリ性に大きく傾いているときは、それを是正するような食事バランスにすることです。尿路結石を発症しているときは強い痛みがある事が多いので、まず痛み止め(NSAID)を使います。内服と坐剤のどちらも使用できますが、発症時は嘔気もしばしばあること、薬効の吸収は坐剤のほうが速いことから、まず坐剤を用いる場合が多いです。また、その時の結石の場所と大きさで、自然排石が期待できるかどうかを確認します。破砕など結石に対して必要な処置が必要であれば、泌尿器科で処置を行うことが多いです。軽度の痛みや血尿があるときも泌尿器科を受診するようにしましょう。
腎疾患(腎不全・ネフローゼ症候群など)
腎臓は老廃物の排泄、水分・電解質の調整、酸塩基バランス(pH)の維持をするための調節を行っています。腎不全はネフローゼ症候群などが原因で、腎臓の働きが低下し、老廃物や酸が十分に排泄できなくなる状態のことです。高血圧や糖尿病などの生活習慣病や、慢性腎炎、年齢なども要因とされています。腎不全の特徴的な尿pHの値はありません。血液中のpHの調整ができなくなるので、酸性から正常範囲、アルカリ性まで幅広く変動します。腎不全の原因が生活習慣病からであれば、その管理が大切です。低下した腎機能が回復することは稀であり、なるべく腎臓に負担をかけないように塩分制限やたんぱく制限、水分を適量に摂取することなどを行います。浮腫が目立つようなら利尿剤などの投薬を行います。最終的に末期腎不全の状態になる場合には、透析療法が必要です。自覚症状が出にくい病気なので、症状がなくても健診で蛋白尿や血尿が出ている、血液検査でクレアチニンの数値が高いことがあるようなら、内科や腎臓内科を受診するようにしましょう。
尿検査のpHを改善する正しい対処法や過ごし方のポイント
食事のバランスを見直す
酸性尿になりやすい食品は、肉類、魚、卵、チーズ、白米・パン(精製穀物)などです。高たんぱくと精製炭水化物中心の食事では酸性に傾きやすくなります。この場合は、副菜として野菜を摂取するようにする、水分を多く摂取するなど、バランスの良い食事に整えましょう。アルカリ尿になりやすい食品は、野菜(特に葉物)、果物、海藻、きのこです。カリウムや有機酸(クエン酸)を多く含み、それらが代謝されるとアルカリとして働くためです。健康的な食事の人はアルカリ尿になりやすくなっています。そのため、多少の肉・魚・卵などの動物性たんぱくを摂取し、バランスをとるようにしましょう。
水分補給と生活習慣の改善
水分摂取により尿が多く作られることで、尿中の酸やアルカリも薄まるため偏りが是正されます。そのための水分摂取目安は1日1.5〜2.0Lとされ、尿がしっかり出ている状態を作ることが大事です。水分補給の工夫として、こまめに分けて飲む(1回量を200ml程度)、起床後や食間、運動後は特に意識して飲むようにする、寝る前は少なめにして夜間頻尿にならなくするなど工夫して行います。
「尿検査のpH」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「尿検査のpH」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
尿pHは8以上で高くても6未満で低くても結石ができやすくなるのでしょうか?
杉本 大(医師)
その通りです。ただ、できる結石の種類が異なります。尿pH8以上では、アルカリ環境で沈殿しやすいリン酸カルシウム結石や感染結石ができやすくなります。尿pH6未満では、酸性の環境で溶けにくい尿酸結石とシスチン結石ができやすいです。
尿検査でpHの数値が高めと言われましたが、問題があるのでしょうか?
杉本 大(医師)
普段から野菜や果物、海藻類などを多く摂取している人ではアルカリ尿になりやすい状態になっています。pH7.6以上大きく偏っていなければ、自覚症状もなく血液検査や他の尿検査で異常もなければ問題ありませんが、動物性たんぱく質不足の可能性もあるので、食事バランスを少し見直しても良いかもしれません。
尿がアルカリ性(pH7以上)に傾く原因は何ですか?
杉本 大(医師)
体の状態が原因な時は、嘔吐による胃酸喪失や過換気症候群で二酸化炭素を過剰に排出しているときです。体がアルカリ性に傾いているので、尿もアルカリ性になります。また、普段の生活で、野菜・果物・海藻類などの健康的な食事をしている人は、尿がアルカリ性になりやすいです。尿路感染症の中で、原因細菌がウレアーゼ産生菌の場合は尿素をアンモニアに分解することで尿がアルカリ性になります。また尿自体を長時間放置してしまうと、細菌が増殖し、同様の機序でアルカリ性に尿が変化する可能性があるため注意が必要です。その他、薬の作用で尿をアルカリ性にするものもあります。
尿検査でpHが高いのと低いのどちらが危ないでしょうか?
杉本 大(医師)
どちらのほうが危ないと一概に決めることは難しいです。原因と症状の強さなどから危険度は変わってくると思います。生命にかかわるような重病のときは、体が酸性に傾くので、尿検査のpHは低くなる可能性があります。ただ、腎不全になってしまうとそのバランス調整もできなくなるので、尿pHだけで判断するのは難しいです。尿pHが低いときは生活習慣病を中心に、尿pHが高いときは尿路感染症を念頭に原因を考える必要があるので、どちらが危ないとは言い切れないのです。
まとめ
尿検査の中の尿pHの解説と尿pHから何がわかるかを解説しました。現在の自分の尿pHがわかると、現在の食事の偏りの程度が把握できるようになります。酸性に傾いているようなら、野菜・果物不足等の可能性、アルカリ性なら肉や魚などのたんぱく質不足の可能性が考えられます。また全体的に水分摂取不足かもしれません。
尿pHだけでは、なにか特定の病気がわかるわけではありません。ただ全体のバランスを見る指標としては、一つの参考値になります。生活スタイル以外の原因で酸性尿やアルカリ尿になっている場合は、なにか病的な原因がある可能性があります。無症状な疾患も多く、健診で初めて指摘される場合も少なくありません。尿検査ではほかにも多くのことがわかりますが、体全体のバランスを推測できる尿pHもこの記事でより興味をもっていただければ幸いです。
「尿検査のpH」の異常で考えられる病気
「尿検査のpH」から医師が考えられる病気は6個ほどあります。
各病気の詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
一般内科・内分泌内科の病気
一般内科・内分泌内科系
- 糖尿病
- 高尿酸血症・痛風
腎臓内科の病気
腎臓内科系
整形外科の病気
整形外科系
泌尿器科の病気
尿pHは基準値より高くても低くても、それぞれ疾患があります。症状が軽ければ内科へ。痛みが強い場合などは泌尿器科や整形外科なども考えましょう。
「尿検査」が望ましい症状
「尿検査」を受診すべき症状は7個ほどあります。
各症状の詳細についてはリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
内科的には糖尿病や腎不全などの可能性、突然の腰痛は尿路結石などの泌尿器科領域の疾患が考えられます。
参考文献



