「血圧を下げる薬」にはどんな『種類』があるかご存じですか?服用の注意点も医師が解説!

高血圧の薬にはどんな種類があるかご存じですか?メディカルドック監修医が種類・効果・薬を使用する際の注意点などを解説します。

監修医師:
伊藤 陽子(医師)
目次 -INDEX-
高血圧と薬物療法・降圧剤
まずは、高血圧とは何なのか、そしてどのような状況になると降圧剤による薬物療法が必要になるかを見ていきましょう。高血圧とは?
高血圧とは、血圧(心臓から送り出された血液が動脈の壁を押す圧力)が、基準値よりも慢性的に高い状態を指します。 高血圧と診断される基準値は、診察室での血圧(診察室血圧)と家庭での血圧(家庭血圧)で少し異なります。| 高血圧と診断される基準値 | |
| 診察室血圧 | 140/90mmHg以上 |
| 家庭血圧 | 135/85mmHg以上 |
高血圧で投薬・降圧薬による治療が必要になるケースとは?
高血圧で薬による治療が必要になるのは、以下のケースです。 ・診察室血圧が180/110mmHg以上など、非常に高く頭痛などの自覚症状を伴う場合(ただし、白衣高血圧が疑われる場合には自宅での血圧を確認が必要) ・診察室血圧が140/90mmHg以上で、脳や心臓の病気になるリスクが高い(すぐに投薬治療が必要) ・生活習慣の改善で十分に血圧が下がらなかった 血圧の数値以外に「脳心血管疾患のリスク」として考慮される要因を、いくつか紹介します。| 血圧以外に脳心血管病になるリスクを高める因子 | 臓器障害や脳心血管病の既往歴 |
|---|---|
| ・高齢(65歳以上) ・性別(男性) ・喫煙 ・脂質異常症 ・糖尿病 |
・脳出血 ・脳梗塞 ・心筋梗塞 ・心房細動 ・腎臓病 |
血圧を下げる薬の種類
血圧を下げる「降圧薬」は、血圧を下げる仕組みによってさまざまな種類があります。ここからは、代表的な5種類の降圧薬について解説します。カルシウム拮抗薬
カルシウム拮抗薬は、血管の収縮に関わる「カルシウムイオン」の通り道を妨げて、血管を拡張させることで血圧を下げる薬です。即効性があり、緊急時に使用することも多いです。代表的な成分に、「アムロジピン」「ニフェジピン」などがあります。 動脈硬化の進行を防ぐ効果、心臓を守る効果をもつ薬もあり、非常によく使われている種類です。ただし、血管を広げることにより、以下の副作用が起こることがあります。・めまい・ふらつき
・顔のほてり
・頭痛
・むくみ
・動悸
・歯肉肥厚(歯茎が腫れる)
・便秘
副作用が気になる場合、薬の量を調整したり他の薬に変更したりすることもあります。受診時に医師へ相談しましょう。また、グレープフルーツジュースといっしょに飲むと、薬の効果が強くなりすぎてめまい・ふらつきが出やすくなります。薬の服用中はグレープフルーツジュースは控えるようにしましょう。
アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)
アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)は、血圧を上げる「アンジオテンシンⅡ」というホルモンが血管の受容体(受け皿)に結合するのを妨げて、血圧を下げる薬です。腎臓や心臓を守る作用もあり、カルシウム拮抗薬と並んで非常によく使われる種類です。代表的な薬には、「オルメサルタン」「カンデサルタン」などがあります。 代表的な副作用は、以下のとおりです。・めまい・ふらつき
・高カリウム血症
・血管浮腫(まぶたや唇が腫れる)
なお、胎児に異常が見られたという報告があるため、妊娠中の方がARBを服用することはできません。ARBは比較的副作用の少ない降圧薬[陽伊3] ですが、飲んでいて気になる症状が出た場合は医師へ相談しましょう。
アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)
アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)は、血圧を上げるホルモン「アンジオテンシンⅡ」を作る「ACE」という酵素のはたらきを阻害し、血圧を下げる薬です。腎臓や心臓を守ったり、心筋梗塞や脳梗塞などのリスクを下げたりする効果もあります。 先ほど説明したARBとこのACE阻害薬は、どちらもアンジオテンシンⅡを抑える薬ですが、はたらく場所が少し異なります。ARBはアンジオテンシンⅡがはたらく場所(受容体)をブロックし、ACE阻害薬はアンジオテンシンⅡ自体が作られるのを防ぎます。ACE阻害薬のおもな副作用は、以下のとおりです。・空咳(からぜき)
・高カリウム血症
・血管浮腫(まぶたや唇が腫れる)
ACE阻害薬に特徴的な副作用は、息苦しさや痰はないのに乾いた咳が出る「空咳」です。これは、アンジオテンシンⅡが作られるのを阻害する際に、咳を起こす「ブラジキニン」という物質が体内で増えてしまうために起こります。空咳は薬の開始から1週間~数ヶ月以内に起こるケースが多く、中止すれば通常1週間以内に治まります。 咳が続く場合は、主治医に相談しましょう。また、ACE阻害薬もARBと同様に妊娠中の女性は服用できません。
β(ベータ)遮断薬
β(ベータ)遮断薬は、体を興奮させる交感神経が心臓に作用する「β受容体」という部分をブロックする薬です。薬によってβ受容体のはたらきが抑えられると心臓の拍動がゆっくりになり、1回の心拍で送り出される血液量が少なくなります。その結果、血管にかかる圧力が下がり、血圧が下がるのです。 β遮断薬の特徴は、心臓を休ませる作用が強いことです。そのため、心不全、狭心症、心筋梗塞の治療後など、心臓に負担がかかっている状態の方によく使われます。また、交感神経が強くはたらいている若い方の高血圧や頻脈傾向がある方などにも有効です。β遮断薬のおもな副作用は、以下のとおりです。・徐脈(脈が遅くなりすぎる)
・めまい
・むくみ
・倦怠感、だるさ
・息苦しさ
β遮断薬のなかには、気管支にも作用し、気管支を狭めて呼吸症状が出る可能性があるタイプもあります。そのため、気管支喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患:有害物質(おもにタバコの煙)を長年吸い込むことにより肺のはたらきが悪くなる病気)がある方は、気管支への影響が少ないタイプが処方されます。
利尿薬
利尿薬は、腎臓に作用して体内の余分な塩分(ナトリウム)と水分を尿として排泄させる薬です。体内の水分量が減ると、血管を流れる血液の量も減少して、血管にかかる圧力(血圧)も下がります。 体内の水分と塩分の両方を減らせるため、心臓の機能が落ちている方やむくみの強い方、減塩が難しい方、腎機能が低下している方にもよく使われます。利尿薬の代表的な副作用は、以下のとおりです。・体内のミネラルバランスの崩れ(低ナトリウム血症・低カリウム血症・高カリウム血症など)
・めまい・ふらつき
・腎機能障害
・血糖値や尿酸値の悪化
異常が出ていないかは定期的な血液検査で確認しますが、ふらつきや手のしびれなどがあらわれた場合は早めに医師へ相談しましょう。 なお、副作用ではありませんが、薬を飲んだあとは尿量が増えるため、トイレが近くなります。外出時はトイレの場所を事前に確認しておくと安心です。 なお、トイレに起きる回数が増えると夜の睡眠に影響するため、朝に服用するのが一般的です[陽伊1] 。
高血圧の薬を服用するにあたっての注意点
高血圧の薬は、長く飲むケースが一般的です。ここで紹介する注意点を知っておくことで、よりしっかりとした効果を安全に得られるようになります。ぜひ覚えておいてください。医師の指示を守って薬を服用する
高血圧の薬は、血圧の数値や年齢、持病、体質などに合わせて、種類や量、いつ飲むか等を調整して処方しています。そのため、「最近調子が良いから」と薬の量を減らしたり、服用を中止したりすることは絶対にしないでください。 自己判断で薬を中断すると、それまで抑えられていた血圧が急激に上昇する「リバウンド現象」が起こる危険があります。この急激な血圧上昇が、脳出血や心筋梗塞など、大きな病気の引き金になることもあるのです。血圧が安定しているのは薬が適切に効いているからで、決して「治った」わけではありません。また、急に血圧が上がった場合も、自己判断で手持ちの薬を増やすのは避けましょう。薬は種類ごとに血圧を下げる効果やタイミングが異なるため、自己判断での増量はさらなる体調悪化を引き起こす恐れもあります[陽伊1] 。 薬について気になることがある場合は、必ず主治医へ相談しましょう。薬を服用して副作用が出た場合
医師の指示通りに服用していても、体質によっては薬の副作用が出ることがあります。 血圧の薬の代表的な副作用を、以下にまとめました。・めまい・ふらつき
・だるさ
・空咳
・歯茎の腫れ
・息苦しさ
・発疹
・唇やのどの腫れ
とくに意識を失うほどのめまい・ふらつきや、発疹、唇やのどの腫れが出た場合は重い副作用が出ている可能性も考えられます。すぐに受診してください。ただし、感じている体の不調が副作用によるものなのかは診察を受けないと分かりません。気になる症状が出た場合は自己判断で薬を中止するのではなく、まずは主治医へ相談しましょう。
血圧をさげる薬は飲み合わせに注意
血圧を下げる薬は、特定の薬や食品といっしょに飲むと効果が弱まったり強まりすぎたりすることがあります。市販薬(特に風邪薬)などとの併用は気をつけなければならないこともあります。薬剤師や医師に確認をしましょう。 生活のなかで注意が必要なものを、2つ紹介します。| 飲み合わせに注意が必要なもの | 対象となる血圧の薬 | 理由 |
|---|---|---|
| グレープフルーツジュース | カルシウム拮抗薬 | グレープフルーツジュースがカルシウム拮抗薬が代謝されるのを妨げて、血液中の薬の量が多くなる可能性があるため |
| 非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAIDs) | ARB・ACE阻害薬・β遮断薬・利尿薬など | 薬の作用を弱めたり、腎臓の機能を下げやすくしたりする可能性があるため |
「高血圧」で気をつけたい病気・疾患
ここではメディカルドック監修医が、「高血圧」により引き起こす可能性がある病気を紹介します。どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。高血圧
高血圧は、血圧が基準値よりも慢性的に高い状態が続く病気です。家庭での血圧が135/85mmHg以上、医療機関(診察室)での血圧が140/90mmHg以上の場合、高血圧と診断されます。血圧が高いと全身の血管が徐々にダメージを受け、動脈硬化や脳や心臓の病気になるリスクが高まります。ホルモン分泌をはじめとする特定の病気や薬の副作用によって血圧が上がる場合もありますが、日本人の高血圧の多くは以下に挙げる複数の要因が関わって発症します。・塩分の過剰摂取
・肥満
・飲酒
・運動不足
・遺伝的要因
・ストレス
生活習慣の見直しで血圧が下がらない、脳や心臓の病気になるリスクが高いなどの場合は血圧を下げる薬(降圧薬)による治療をおこないます。家庭での血圧が高い、健康診断で異常を指摘されたなどの場合はかかりつけの内科や循環器内科を受診しましょう。
動脈硬化
動脈硬化とは、血管が硬く・もろくなり、弾力性を失った状態です。慢性的な高血圧によって血管の壁が傷つくと、そこにコレステロールなどが沈着して「プラーク」と呼ばれる塊ができます。これが進行することで、血管が硬く、狭くなるのです。また、高血圧以外に加齢や喫煙、脂質異常症、糖尿病なども動脈硬化のリスク因子です。 動脈硬化自身には、自覚症状がほとんどありません。しかし、放置して心臓や脳の血管が詰まると狭心症や心筋梗塞、脳梗塞、脳出血などの脳や心臓の重大な病気、手足の血管が詰まると手足の冷えや痛みにつながります。 硬くなった動脈を元の状態に戻すのは困難です。そのため、動脈硬化の原因となる高血圧や脂質異常症などの治療、生活習慣の改善などをおこないます。改善せずに心臓や脳への悪影響が出る場合は、手術によってプラークを取り除いたり新しい血液の通り道を作ったりするケースもあります。 高血圧や脂質異常症などを指摘されたら必ず内科を受診し、適切なコントロールをおこないましょう。動脈硬化のリスクが高い場合は、循環器内科を紹介されることもあります。脳梗塞
脳梗塞とは、脳の血管が詰まって血液が流れなくなり、その先の脳組織が壊死(えし)する病気です。原因ごとに、高血圧による動脈硬化やプラークによって脳の血管が詰まる、脈の乱れや心臓病によって心臓にできた血の塊(血栓)が脳に飛んで詰まるなどのパターンがあります。脳梗塞になると、以下のような症状があらわれます。・顔の片側がゆがんだりしびれたりする
・片側の手足に力が入らない
・言葉が出なかったり、人の言うことが理解できなかったりする
脳梗塞は、発症から数時間以内なら血栓を溶かしたり取り除いたりする治療が可能です。気になる症状があれば、すぐに救急車を呼び脳神経外科を受診しましょう。
くも膜下出血
くも膜下出血は、脳の表面を走る動脈にできた「脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)」というこぶが高血圧をはじめとする負荷により破裂し、脳を覆う「くも膜」の下に出血が広がる病気です。 発症すると、今まで感じたことのないような激しい頭痛を突然感じ、意識を失うこともあります。 くも膜下出血と分かったら、まずは脳動脈瘤がまた破裂するのを防ぐために、動脈瘤にクリップをかける、プラチナ製のコイルで充填するなどの手術を行います。手術後も脳梗塞や脳血管の縮みが起こる可能性があるため、集中治療室での厳密な管理が必要です。 突然の激しい頭痛があらわれた場合は救急車を呼び、すぐに専門の治療ができる脳神経外科を受診しましょう。心筋梗塞
心筋梗塞は、心臓の筋肉(心筋)に血液を送る「冠動脈」が詰まって血流が止まり、酸素や栄養が不足した結果心臓の筋肉が壊死する病気です。心筋梗塞の代表的な症状は、以下のとおりです。・突然の締め付けられるような胸の痛み
・激しい脈の乱れ
・息苦しさ
・吐き気・冷や汗
似たような胸の痛みが出る病気「狭心症(安定狭心症)」との違いは、安静にしていても痛みが続き、症状が30分以上持続する点です。医療機関では、カテーテルという細い管を使って詰まった部分を風船で膨らませる、別の部分の血管を使って詰まった血管の代わりを作る[陽伊3] などの手術をおこないます。 どちらの治療も、できるだけ早く始める必要があります。気になる症状があらわれたらすぐに救急車を呼び、専門的な治療ができる医療機関を受診しましょう。
腎不全
腎不全は、血液をろ過する腎臓の機能が低下し、体内の老廃物を尿として排泄できなくなる状態です。腎不全はさまざまな病気が原因となる事がありますが、近年多いものは高血圧を含めた生活習慣病に伴う慢性腎不全です。 高血圧が長期間続くと、血液をろ過する腎臓の細い血管にも動脈硬化が起こります。その結果徐々に腎臓の血流が悪くなって機能が低下するのが高血圧による慢性腎不全です。 慢性的に低下した腎機能を回復させることは難しいため、血圧をコントロールして進行を予防することが非常に大切です。腎臓の機能が失われた場合は、血液中の老廃物を取り除く「透析」が必要になります。 腎不全は症状が出ないケースが多く、尿が出ない、むくんでいるなどの症状が出たときにはかなり進んでいるケースも少なくありません。健康診断で腎臓の検査値の異常を指摘された場合は早めに内科を受診し、尿に関する異常が出ている場合はすぐに内科や専門の腎臓内科を受診しましょう。高血圧の対処法・改善法は?
高血圧の対処法や改善法について、解説していきます。血圧は薬の服用がないと下がらないのか
人によっては、生活習慣の改善(減塩・運動・痩せることなど)で血圧が下がることもあります。高血圧の治療は、まずは生活習慣の見直しから始まります。 ただし、血圧が非常に高い方や高血圧によって脳や心臓の病気になるリスクの高い方は、「高血圧」と診断された地点で薬が始まるケースも少なくありません。 また、薬を服用して血圧が安定している場合、薬をやめると血圧が上がる可能性が高いと考えられます。血圧の薬の必要性はご自身の血圧や持病などによって異なるため、受診時に医師と相談してみてください。生活習慣を改善すると血圧は下がるのか
以下のような生活習慣を改善すると、血圧が下がることが期待できます。| 生活習慣の注意 | 具体例やポイント |
|---|---|
| 食塩制限 | ・食塩を1日6g未満に制限する ・減塩食品に切り替える、管理栄養士による指導を受けるなどの方法がある |
| カリウム不足を防ぐ | ・1日あたり野菜350g、果物200g、低脂肪牛乳や乳製品、緑茶、コーヒーなどを組み合わせて摂取する ・主食に全粒穀物を取り入れる、豆類や魚類を積極的に取り入れるなども効果的 ・腎機能低下によってカリウム制限がある方は、医師の指導を優先する |
| 肥満を防ぐ | ・BMIは25未満を維持する |
| 運動する | ・有酸素運動とレジスタンス運動(筋力トレーニング)を組み合わせる ・有酸素運動は毎日30分以上(10分以上の継続が望ましい)、レジスタンス運動は8~10種類の運動を2~4セットおこなうとよい ・無理のない範囲から少しずつ増やしていく |
| 節酒・禁煙する | ・男性ならアルコール量にして20~30mL、女性はその半分の10~20mL以下に制限する ・加熱式たばこをはじめとする新型たばこを含め、禁煙する |
| 睡眠やストレスに注意する | ・6~8時間を目安に十分な睡眠をとる ・ストレスを溜めないようにする |
「血圧を下げる薬」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「血圧を下げる薬」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
血圧が高い人はどのくらいの数値から薬を飲むべきですか?
伊藤 陽子(医師)
どのくらいの血圧から薬が必要になるかは、「現在の血圧」と「その方が持つ心臓・脳の病気に関わるリスク」によって異なり、個人差があります。 たとえば血圧が140/90mmHgの基準値を少し超えた場合、その方に脂質異常症や喫煙習慣、脳や心臓の持病がなければまずは生活習慣の改善で様子を見ます。ただし、同じ140/90mmHgを少し超えた場合でも、脳や心臓の持病、糖尿病、たんぱく尿をともなう慢性腎臓病などのある方は、すぐに血圧の薬を開始することもあります。 なぜなら、高血圧の治療目的は単に「血圧を下げること」ではなく、「持続的な高血圧によって起こる脳や心臓のリスクを下げること」「高血圧の方がより健康で快適に暮らせるようにすること」だからです。そのため、リスクが脳や心臓の病気になるリスクが高い方ほど、薬物治療によるしっかりとした血圧コントロールが早くから必要になります。気になることは主治医に確認し、疑問点を解消して治療にのぞみましょう。
高血圧に効く代表的な薬はなんでしょうか?
伊藤 陽子(医師)
高血圧に効く代表的な薬は、以下の5種類です。
・カルシウム拮抗薬
・アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)
・アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)
・β遮断薬
・利尿薬
これらの薬はそれぞれ異なる方法で血圧を下げ、場合によっては組み合わせることもあります。
現在の日本で治療のベースによく使われるのは、カルシウム拮抗薬とARBです。どちらも血圧を下げる効果が安定しており、臓器を保護する効果も期待できます。
ただし、使う薬の種類や量は、血圧の状態や持病の有無などによって異なります。どの薬が一番効くかは人によって異なるため、医師の処方した種類と量を守って服用しましょう。
自分に合う血圧の降圧剤は何科の病院で相談できますか?
伊藤 陽子(医師)
降圧薬については、内科で相談できます。 心不全や狭心症などの病気もある場合は循環器内科、腎機能の低下がある場合は腎臓内科が専門ですが、「内科」であれば基本的な高血圧の治療は問題なくおこなえます。ただし、紹介状を持たずに入院のベッド数が200床以上ある総合病院を受診すると、「保険外併用療養費(選定療養費)」という自費の負担が発生する可能性があります(令和7年11月現在)。そのため、まずは地域のかかりつけを担う内科クリニックや中小病院が基本の受診先となるでしょう。 血圧の治療は、長く続けることが基本です。「健康診断で血圧の異常を指摘された」「過去に血圧の薬を飲んでいたが、やめてしまい最近血圧が上がっている」などの方は、ご自分が相談しやすい内科をぜひ探してみてください。
高めの血圧を下げる薬で注意すべき副作用はありますか?
伊藤 陽子(医師)
高血圧の薬にも副作用はあり、とくに注意すべき内容は薬の種類によって異なります。
代表的な副作用を、いくつか紹介します。
・めまい・ふらつき:薬を飲み始めて体が慣れるまでや、血圧が下がりすぎたときに起こりやすい
・むくみ・ほてり:カルシウム拮抗薬によって血管が広がると起こる場合がある
・空咳:息苦しさのない乾いた咳で、ACE阻害薬で起こる場合がある
・徐脈:β遮断薬によって脈がゆっくりになりすぎると起こる場合がある
・唇の腫れ:ARBやACE阻害薬によってまれに起こる
副作用の種類や強さと現在の体調によって、薬を継続するか変更・減量するかは異なります。気になる症状が出た際は、早めに主治医へ相談しましょう。
まとめ 血圧を下げる薬はしっかりと続けることが大切!
高血圧の薬(降圧薬)には多くの種類があり、それぞれ異なる方法で血圧を下げてくれます。どの薬が合うかは個人差があり、医師が血圧の数値や持病などから判断して処方しています。 高血圧治療は「ただ数値を下げること」ではなく、高血圧によって起こる脳梗塞や脳出血、心筋梗塞などの重い病気を防ぐことや体調を良くすることが目的です。自覚症状がなくてもしっかりと治療を続け、ご自身の健康を守っていきましょう。「血圧」の異常で考えられる病気
「血圧」から医師が考えられる病気は7個ほどあります。 各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。 高血圧を放置すると動脈硬化が進み、脳や心臓、腎臓などの重大な病気が起こるリスクが上昇します。医師の指示に従い、適切な治療をおこないましょう。「血圧」の異常で考えられる症状
「血圧」から医師が考えられる症状は6個ほどあります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。関連する病気
- 頭が痛い
- めまい
- ふらつき
- 動悸
- 息苦しさ
- 胸の痛み




