「バリウム検査の前日」は何を控えた方が良いのか?苦しくならないコツを医師が解説!
公開日:2025/10/08

バリウム検査の前日はどのようなことをすれば良いでしょうか?メディカルドック監修医が検査前日の食事や飲み物などに関する注意点、当日の流れやこの検査で分かる病気についてご紹介します。

監修医師:
木村 香菜(医師)
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名古屋大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院や、がんセンターなどで放射線科一般・治療分野で勤務。その後、行政機関で、感染症対策等主査としても勤務。その際には、新型コロナウイルス感染症にも対応。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。
目次 -INDEX-
「バリウム検査」とは?
まずは、バリウム検査とはどのような検査なのかについて解説します。バリウム検査とは?
胃のX線検査(バリウム検査)は、発泡剤によって胃を膨らませ、造影剤であるバリウムを飲むことで胃粘膜の表面を詳しく観察する検査です。胃がん検診として、50歳以上の方に対しては、バリウム検査が胃の内視鏡検査(胃カメラ検査)のどちらかを隔年で受けることが推奨されています。バリウム検査の特徴としては、受診者さん自身が撮影台の上で右回転する、圧迫フトンでみぞおちのあたりを抑える、ベッドの移動により頭を低くした体勢になるなどがあります。こうしてさまざまな角度から胃の撮影を行うことで、胃の粘膜表面を詳細に描出することができます。 バリウム検診のメリットとしては、バス検診などでも行える手軽さ、検査時間の短さ、安価な費用などが挙がります。さらに、バリウム検査は基本的に放射線技師が担当するため、医師が行う胃カメラ検査よりも人手の面で勝るという点もあります。こうした理由から、今まで胃がん検診ではどちらかというとバリウム検査が優先されてきたという面はあります 一方で、バリウム検査には被曝の問題があります。また、バリウムが誤って気管に入る誤嚥、バリウムが腸内で固まってしまうことでの腸閉塞などのリスクも低いながらあります。 このようなメリット、デメリットを理解した上でバリウム検査と胃カメラ検査のどちらを受けるかを決めることが大切です。バリウム検査は何科で検査できる?
バリウム検査は、胃がん検診や人間ドックの際に受けられる検査です。健康診断科や消化器内科で検査を受けることができるでしょう。50歳以上から胃がんの罹患リスクが高まることもあり、バリウム検査を受けるのであれば50歳が一つの目安となります。一方、現状では40歳以上の方に対してバリウム検査による胃がん検診も可能とされています 。バリウム検査の費用は?
胃のバリウム検査(上部消化管造影検査)の診療報酬点数は、造影剤使用撮影と特殊撮影(スポット撮影)の組み合わせで算定されます。具体的には、造影剤使用撮影が154点 、特殊撮影(スポット撮影)が270点で、これに診断料72点と透視診断料110点が加算されます。診療報酬1点は10円に相当しますので、3割負担の場合、約2,000円となります。これに初診料などが加わります。胃がん検診などの場合は、原則全額自己負担となります。自治体によっては、がん検診に対して補助を受けられることもあります。お住まいの地域でのがん検診については、公式ホームページや広報などで確認してみましょう。「バリウム検査の前日」の注意点
それでは、バリウム検査前日の注意点を述べていきます。バリウム検査の前日は薬を服用して良い?
バリウム検査の前日は、特に中止すべき薬剤はありません。通常通りに薬を飲みましょう。他にバリウム検査の前日の注意点は?
その他、バリウム検査の前日に注意すべき点として、食事以外には特記すべき注意点はありません。しかし、検査前72時間排便がない方は、腸閉塞になるリスクを考え、安全性の面からバリウム検査を受けられない場合があります。 普段から便秘がちな方は、排便の様子や状況について再度確認しておくことをおすすめします。「バリウム検査の前日」の飲食について
バリウム検査前日の食事は何時までに済ませればよいのか、飲水は可能なのかなど関しての注意点について説明していきます。バリウム検査の前日の食事はどうすれば良い?
バリウム検査前日は油っぽいものを避け、消化がよいものを食べるようにすると良いでしょう。 例えば、消化の良い食品としてはお粥やご飯、うどん、パンなどの主食があります。主菜としては、脂肪の少ない肉や魚類(かれい、鮭、帆立、牡蠣など)が良いでしょう。野菜は、きゃべつやほうれん草、小松菜、白菜、かぶ、大根、にんじん、玉ねぎ、かぼちゃ、じゃがいも、里芋などの煮物や茹で野菜がおすすめです。果物では、りんごやメロン、バナナ、桃、くだものの缶詰が良いですね。食事メニューとしては、うどんや野菜の煮物などがあるでしょう。バリウム検査の前日の食事はいつまでに済ます?
検査前日の夜10時以降から検査終了までは禁食となります。胃に食物の残りなどがあると、検査が正確に行えない可能性があるためです。検査前日の食事の時間は、検診を受けようとする医療機関や検査が午前か午後どちらかなどによって、多少異なる場合があります。事前の説明資料などをチェックしておきましょう。バリウム検査の前日はお酒やコーヒー、炭酸水は避けて水を飲むのが良い?
バリウム検査前日は、脱水の予防のために夜間の水分摂取は可能です。しかし、アルコールは禁止なので、飲酒は避けましょう。水や白湯は飲んでも問題ありません。しかし、お茶やコーヒー、炭酸水などは避けるようにしましょう。「バリウム検査」の当日の流れ
バリウム検査当日の流れは以下のようになります。バリウム検査の当日の流れ
バリウム検査の最初に、粉の発泡剤を少量のバリウムで飲みます。次第に胃が膨らみ、ゲップが出やすくなるので、飲み込むようにして我慢しましょう。次に、バリウムをゆっくりでよいので、むせないよう気をつけて飲みます。飲んだら撮影台に立ちます。施設によっては、撮影台に立ってから薬剤を飲むこともあります。あとは、放射線検査技師の指示に従い、右回転したり、うつ伏せで頭を下げた姿勢になったり台が動いていきます。途中、何回かX線撮影を行います。検査が終了したら、飲食可能です。便を出やすくするため、たくさん水を飲むようにしましょう。バリウム検査では、食道から胃、十二指腸までの臓器の形や異常を調べることができます。粘膜表面がなめらかでない状態や、潰瘍などで窪んだ部分にバリウムが溜まった状態、ポリープ、胃の変形などがわかります。バリウム検査の当日の注意点
高血圧や心臓病の方は、検査開始2時間前までに、コップ1杯(200ml)ほどの水または白湯で薬を内服してください。一方、糖尿病の方は検査当日の朝の内服薬やインスリンの使用は避けてください。バリウム検査は絶食で行うため、低血糖になるリスクが高まるためです。それ以外の薬については、主治医に確認の上、検査前後どちらかで内服するかの指示を仰ぎましょう。「バリウム検査」で異常を指摘された場合、胃カメラを受けた方が良い?
バリウム検査で異常を指摘された場合には、精密検査として胃カメラ検査を行うことが一般的です。胃カメラ検査では、胃の中を直接観察することができるため、より早期の胃がんや粘膜の病変を見つけることが可能です。精密検査として胃カメラ検査を受ける場合は、保険適用となります 。健康診断・血液検査の「バリウム検査」の異常で気をつけたい病気・疾患
ここではメディカルドック監修医が、「バリウム検査」に関する症状が特徴の病気を紹介します。どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。胃がん
胃がんは、胃の粘膜の細胞ががん化したものです。ヘリコバクターピロリ菌の感染によって、慢性的に胃の粘膜に炎症が生じることが大きな原因として知られています。 胃がんは早期の段階では症状が出ないことも多いですが、病気が進行すると胃の痛みやみぞおちの不快感、胸焼けなどの症状が現れます。 バリウム検査では、隆起性(周りよりも盛り上がった)病変や、陥凹性(周囲よりも凹んだ)病変が検出されることがあります。 胃がんの治療法には、手術や薬物療法、放射線治療などがあり、患者さんの病気の進行度や体力などに応じて決められます。食道がん
食道がんは食道の粘膜ががん化したものです。飲酒や喫煙がリスクファクターとなります。 早期では無症状のことも多いですが、進行すると胸の違和感やつかえ感、体重減少、胸や背中の痛み、咳、嗄声(声のかすれ)などが現れます 。バリウム検査では、食道腫瘍や食道腫瘍疑いなどといった所見として認められる場合があります。食道がんの治療としては、内視鏡的な切除、手術、放射線治療、薬物療法などがあります。食道裂孔ヘルニア
食道裂孔(れっこう)ヘルニアは、胃の一部が食道を通る穴(食道裂孔)から胸のほうへ飛び出してしまう状態です。加齢や肥満などによって、横隔食道靭帯が緩むことが原因となります。食道裂孔ヘルニアは、胃が変形してしまうので、胃食道逆流症や逆流性食道炎が起こりやすくなります。 胸焼けや長引く咳、口の中が酸っぱく感じるなどの症状がよくみられます。 根本的な治療法は、手術になります。胃・十二指腸潰瘍
胃・十二指腸潰瘍は、胃の攻撃因子(胃酸)と防御因子とのバランスが崩れ、胃や十二指腸の壁が傷つき、えぐれてしまう病気です。ヘリコバクターピロリ菌やNSAIDs(非ステロイド抗炎症薬)などが原因として知られています。 バリウム検査では、胃粘膜の欠損が認められます。 潰瘍から出血している場合には、内視鏡的な止血治療がまず検討されます。ピロリ菌陽性の場合には除菌療法が適応となります。適応外の場合には、プロトンポンプインヒビター(PPI)などの薬物治療が行われます。胃炎
胃炎は、何らかの原因で胃の粘膜に炎症が起こっている状態です。バリウム検査では、慢性胃炎、萎縮性胃炎、びらん性胃炎などの所見として認められます。 炎症が長引くと、粘膜が薄くなったり、胃の機能が低下したりすることもあります。また、ピロリ菌感染や長期の薬剤使用(例:NSAIDs)などが関与しているケースもあります。早期に生活習慣の見直しや適切な治療を行うことが重要です。「バリウム検査の前日」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「バリウム検査の前日」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
バリウム検査の前に水を飲んだ場合、検査を受けられますか?
木村 香菜 医師
バリウム検査の直前に水を飲むと、正確な判定ができない可能性があります。飲んだ水の量などにもよりますが、一度健康診断を受けようとする医療機関のスタッフに確認してみましょう。
数日便を見れば、バリウムが完全に排出されたか分かりますか?
木村 香菜 医師
バリウムが便中に排出されると、白っぽい色となります。数日の間便を観察し、徐々に通常の色に戻っていくことが想定されます。不安なことがあれば、検診を受けた医療機関に問い合わせてみましょう。




