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『萎縮性胃炎』は『胃がん』につながる可能性があるの?症状についても解説!

 更新日:2024/01/09
『萎縮性胃炎』は『胃がん』につながる可能性があるの?症状についても解説!

萎縮性胃炎をご存じですか?
本記事では、萎縮性胃炎とは?症状や治療法について以下の点を中心に紹介します。

・萎縮性胃炎とは
・萎縮性胃炎の診断方法
・萎縮性胃炎と胃潰瘍の違い

萎縮性胃炎について知るためにぜひ最後までお読みください。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

萎縮性胃炎とは

萎縮性胃炎とは

萎縮性胃炎とは何ですか?

萎縮性胃炎は、胃の内壁が炎症を起こし、正常な胃粘膜が退化してしまう疾患です。主に中高年の人に見られ、胃酸や胃液の分泌量が低下し、胃の消化機能が低下する特徴があります。萎縮性胃炎は症状が軽い場合もありますが、重篤な場合は胃潰瘍や胃がんのリスクが高まることもあります。

萎縮性胃炎の主な症状は何ですか?

萎縮性胃炎の主な症状は、以下のようなものがあります。

胃痛や不快感: 腹部に痛みや圧迫感、不快感が生じることがあります。食事後や胃が空の状態で症状が悪化することもあります。

消化不良: 食事の消化が滞り、胃もたれや膨満感、胃部の重さを感じることがあります。食欲不振や吐き気も見られることがあります。

胃酸の逆流: 胃酸の分泌が低下するため、胃酸が逆流しやすくなり、逆流性食道炎や胸やけ、酸っぱい味が口に上がることがあります。

貧血や倦怠感: 胃内の炎症により鉄分の吸収が妨げられるため、貧血や倦怠感が生じることがあります。

胃からの出血: 胃粘膜が退化することで血管が露出し、胃からの出血が生じることがあります。便や嘔吐物中に血液が混じる場合は、注意が必要です。

これらの症状がある場合、早期に医師の診断を受けることが重要です。消化器内科や胃内視鏡検査などの医療機関を受診し、適切な治療をしましょう。

萎縮性胃炎の原因は何ですか?

萎縮性胃炎の原因は複数あります。以下に代表的な原因を挙げます。

ヘリコバクターピロリ菌感染:ヘリコバクターピロリ菌は胃の粘膜に感染し、炎症を引き起こすことがあります。ピロリ菌が胃の粘膜に感染すると、菌が作り出すアンモニアや毒素によって胃粘膜が損傷し、炎症が起こります。この炎症が長期にわたって続くと、胃液や胃酸を分泌する組織が減少し、胃の粘膜が萎縮してしまいます。除菌されない限り、ピロリ菌は胃の中にすみ続け、時間をかけて胃の粘膜を損傷していきます。

自己免疫反応:免疫システムの異常により、胃粘膜の細胞が攻撃され、炎症が生じることがあります。具体的な原因はまだ解明されていませんが、遺伝要素や環境要因が関与していると考えられています。

高齢: 年齢とともに胃粘膜の細胞が退行的な変化を起こし、萎縮性胃炎のリスクが増加します。特に60歳以上の高齢者に多く見られます。

胃炎や胃潰瘍の経験: 長期にわたる胃炎や胃潰瘍の歴史がある場合、胃粘膜の損傷や瘢痕形成が進み、萎縮性胃炎を引き起こす可能性があります。

これらの要因が一因または複数の因子と組み合わさることで、萎縮性胃炎が発症すると考えられています。

萎縮性胃炎の診断方法

萎縮性胃炎の診断方法

萎縮性胃炎の診断方法は何ですか?

内視鏡検査(胃カメラ): 萎縮性胃炎に対しては、内視鏡検査を実施して、胃の粘膜の状態を詳しく確認します。胃カメラ検査で、胃炎の有無やヘリコバクター・ピロリ感染の有無を検査します。

ペプシノゲン検査: 萎縮性胃炎と胃がんの関連性を評価するために、ペプシノゲン検査を行うこともあります。ペプシノゲンは胃粘膜から分泌されるタンパク質であり、そのレベルを調べることで胃の健康状態を評価します。

組織検査: 胃内視鏡検査で異常が見つかった場合、組織を採取して病理検査を行います。これにより、胃粘膜の炎症の程度や組織の変化を詳しく評価できます。

診断には医師の専門的な判断と検査結果の総合的な評価が重要です。早期の診断と治療は、萎縮性胃炎による合併症や進行を防ぐために重要です。

萎縮性胃炎を疑った際はどの診療科に行けばいいですか?

萎縮性胃炎を疑った場合、以下の行動を取ることが推奨されます。

消化器内科を早期に受診する:慢性胃炎は自覚症状が乏しいまま萎縮性胃炎まで進行してしまうことがあります。そのため、早期の消化器内科への受診が重要です。また、ご家族に胃がんになった方やピロリ菌感染陽性の方がいる場合には、特に症状がなくても消化器内科を受診してピロリ菌感染の有無や胃粘膜の状態を確かめることをおすすめします。

胃カメラ検査を受ける:胃炎の診断とピロリ菌感染の確認のために、胃カメラ検査が不可欠です。胃粘膜の状態を確認し、萎縮の有無など粘膜の状態を詳細に観察します。疑わしい病変がある場合には組織を採取して病理検査を行います。採取した組織を検査することでピロリ菌感染の有無も確認できます。

以上の行動を取ることで、萎縮性胃炎の早期発見と適切な治療が可能となります。また、診療科としては、消化器内科を受診することが推奨されています。消化器内科では、胃炎の原因を特定し、治療に移れます。

萎縮性胃炎と胃潰瘍の違いは何ですか?

萎縮性胃炎と胃潰瘍は、胃の病気ではありますが、以下に示す点で異なります。

病態: 萎縮性胃炎は、胃の粘膜が退行的な変化を起こし、胃の健康な組織が減少する状態です。一方、胃潰瘍は胃の内壁に生じる傷や潰瘍のことを指し、胃の組織が局所的に破壊される状態です。

原因: 萎縮性胃炎は、胃粘膜の退行的変化が主な原因であり、ヘリコバクター・ピロリ感染や自己免疫反応などが関与していると考えられています。一方、胃潰瘍は、ヘリコバクター・ピロリ感染や非ステロイド性抗炎症薬の使用、ストレスなどが原因となることがあります。

症状: 萎縮性胃炎の主な症状は胃痛や消化不良、吐き気などです。一方、胃潰瘍は胃痛が主な症状とされており、激しい痛みや胃の不快感が現れることがあります。

合併症: 萎縮性胃炎は、胃がんのリスクが高まる可能性があります。一方、胃潰瘍は、出血や穿孔といった合併症が起こることがあります。

診断や治療には医師の専門的な判断が必要であり、胃の病態や症状の違いを正確に判断するためには、内視鏡検査や検査結果の評価が必要です。

萎縮性胃炎の治療法と予防

萎縮性胃炎の治療法と予防

萎縮性胃炎は治癒可能ですか?

萎縮性胃炎は、胃の粘膜が退行的な変化を起こす状態ですが、適切な治療と生活習慣の改善によって治癒することが可能です。

主な治療法としては、以下のようなものがあります。

ヘリコバクター・ピロリの除菌治療:ヘリコバクター・ピロリ菌が感染している場合、抗生物質と制酸剤の組み合わせによる除菌治療が行われます。

栄養療法:ビタミンやミネラルの補給、バランスの良い食事、消化しやすい食材の選択など、胃粘膜の回復を促すための栄養療法が行われます。

生活習慣の改善:禁煙や適度な運動、ストレスの管理など、生活習慣の改善が重要です。

萎縮性胃炎は進行性の病態ではありますが、早期の診断と適切な治療によって胃粘膜の改善や症状の緩和が期待できます。

萎縮性胃炎の治療にはどのような薬が使用されますか?

萎縮性胃炎の治療には、以下のような薬が使用されることがあります。

抗ヘリコバクター療法: 萎縮性胃炎に関連する主要な要因として、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染があります。抗生物質と制酸剤の組み合わせによる抗ヘリコバクター療法が行われ、菌の除菌を目指します。

食事療法: 萎縮性胃炎では、胃の消化機能が低下していることがあります。消化しやすい食事や栄養バランスの良い食材を選ぶことが重要です。また、ビタミンやミネラルの補給も考慮されます。

抗炎症薬: 胃の炎症を軽減するために、抗炎症薬が使用されることもあります。

ただし、具体的な治療方法や使用する薬物は、患者の症状や病状に合わせて医師が判断します。

萎縮性胃炎の食事療法にはどのような制限がありますか?

萎縮性胃炎の食事療法では、以下のような制限があります。

刺激物の制限: 辛い食べ物や刺激の強い調味料、香辛料などの摂取を控える必要があります。これらの食品は胃の粘膜を刺激して炎症を悪化させる可能性があります。

脂質の制限: 高脂肪の食品や揚げ物、油っぽい料理の摂取を制限する必要があります。これによって胃の負担を軽減し、症状の悪化を防げます。

消化の難しい食品の制限: 萎縮性胃炎では胃の消化機能が低下しているため、消化の難しい食品の摂取を制限する必要があります。生の野菜や果物、肉の筋繊維の多い部分などは注意が必要です。

酒やタバコの制限: アルコールやタバコは胃の粘膜を刺激し、炎症を悪化させる可能性があります。できるだけ摂取を控えるか、適量に抑えるようにしましょう。

食事の回数と量の調整: 一度に大量の食事を摂取せず、軽食や小分けにして何度かに分けて摂ることが望ましいとされています。また、食事の際によく噛んでゆっくりと食べることも大切です。

医師や栄養士の指導を受けながら、適切な食事プランを作りましょう。

萎縮性胃炎は再発する可能性がありますか?

萎縮性胃炎は再発する可能性があります。一度治癒しても、胃の状態や生活習慣の改善が十分でない場合、または原因となるヘリコバクター・ピロリ菌が再感染した場合に再発することがあります。

また、萎縮性胃炎は胃がんの前がん病変と考えられているため、胃がんのリスクが高まる可能性もあります。再発のリスクを最小限に抑えるためには、医師のアドバイスを受けることが大切です。

萎縮性胃炎は癌につながる可能性がありますか?

萎縮性胃炎は胃がんの前がん病変とされており、癌につながる可能性があります。特にヘリコバクター・ピロリ菌感染と萎縮性胃炎が重なる場合には、胃がんの発症リスクが高くなります。したがって、萎縮性胃炎を持つ人は、胃がんの定期的なスクリーニングや胃カメラ検査を受けることが重要です。早期の発見と治療は、胃がんの予防や進行防止に役立ちます。

萎縮性胃炎を予防するにはどうすればいいですか?

萎縮性胃炎を予防するためには以下のような方法があります。

ピロリ菌の除菌治療:慢性胃炎の約80%以上がピロリ菌感染が原因とされています。ピロリ菌が胃の粘膜を傷つけて、慢性胃炎を引き起こし、これが長期化すると胃の粘膜が薄くなり、痩せてしまう萎縮性胃炎を引き起こします。ピロリ菌の除菌治療を行うことで、胃炎の症状の改善及び再発予防を図りましょう。

生活習慣の改善:胃炎の原因となる過度な飲酒や喫煙はもとより、香辛料などの刺激物の摂取、食べ過ぎや飲み過ぎなどに注意し、生活改善を心掛けましょう。ストレスを溜めずに、良質の睡眠と栄養バランスのとれた食事、適度な運動によって、胃炎の症状の改善及び再発予防を図りましょう。

定期的な胃カメラ検査:一度ピロリ菌に感染したことがある方は、除菌治療を行っても胃がんのリスクはゼロにはならないので、ピロリ菌感染歴のある方は、定期的に胃カメラ検査を受けることをお勧めします。

これらの方法を実行することで、萎縮性胃炎の予防に役立ちます。ただし、これらの方法が全ての人に適用できるわけではなく、個々の健康状態や生活習慣によるため、具体的な方法を試す前に医師と相談することを推奨します。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

自分の体と向き合い、適切な治療と生活習慣の改善を行うことで、症状の緩和や再発予防につながります。食事に気を付け、ストレスを軽減することも大切です。定期的な検査と医師の指導を受けながら、自身の健康に向き合いましょう。

編集部まとめ

萎縮性胃炎
萎縮性胃炎症について紹介してきました。

・萎縮性胃炎とは、胃の内壁が炎症を起こし、正常な胃粘膜が退化してしまう疾患のこと
・萎縮性胃炎の診断方法は、「内視鏡検査」「ペプシノゲン検査」「組織検査」などがある
・萎縮性胃炎の主な症状は胃痛や消化不良や吐き気が起こる。胃潰瘍は胃痛が主な症状で、激しい痛みや胃の不快感が現れる。

これらの情報が萎縮性胃炎について知りたい方の参考になれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事の監修医師