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「下部消化管内視鏡検査」はなぜ左向きに寝て行うのか?検査の流れも医師が解説!

 公開日:2025/10/07
「下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)」の検査の流れはご存じですか?医師が解説!

下部消化管内視鏡検査とは?メディカルドック監修医が検査前日から当日までの流れと注意点、検査を受けたことによる合併症の可能性、検査で発見できる病気についてご紹介します。

木村 香菜

監修医師
木村 香菜(医師)

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名古屋大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院や、がんセンターなどで放射線科一般・治療分野で勤務。その後、行政機関で、感染症対策等主査としても勤務。その際には、新型コロナウイルス感染症にも対応。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。

「下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)」とは?

下部消化管内視鏡検査、通称大腸内視鏡(大腸カメラ)検査は、直径が1㎝ほどの内視鏡を肛門から挿れ、大腸の中を調べる検査です。 直腸から結腸といった大腸、小腸の一部を観察し、ポリープやがん、炎症などを診断することが可能です。病変の一部を切り取って調べる生検、ポリープや早期の大腸がんを内視鏡的に切除するポリペクトミーなども行うことができます。

「下部消化管内視鏡検査」は何科で検査できる?

下部消化管内視鏡検査は、消化器内科や健康診断科などで検査できることが多いと考えられます。 健康診断の検便検査で、便潜血が陽性の結果だった場合には、精密検査を受けることが勧められます。その検査として下部消化管内視鏡検査を受ける場合、診療報酬点数は約1,500点となります。1点は10円に相当し、さらに患者さんそれぞれの保険負担割合によって費用はことなります。3割負担の方の場合には、約5,000円となり、この料金に初診料などが加わります。 人間ドックや大腸がん検診の一環として下部消化管内視鏡検査を受ける場合には、基本的には全額自己負担となります。医療機関によっても異なりますが、約20,000円が相場となります。 精密検査の場合でも、人間ドックの場合でも、ポリペクトミーなどの処置があれば、その費用も加わります。こうした処置は、保険診療の範囲になります。

下部消化管内視鏡検査と大腸内視鏡検査の違いは?

下部消化管内視鏡検査と大腸内視鏡検査の違いについて簡単に触れておきましょう。 両者はほぼ同じです。下部消化管とは主に大腸や直腸、肛門を指しますが、小腸の中部から末端である空腸や小腸も含まれる場合があります。 小腸も、胃カメラや大腸カメラで一部を観察することは可能です。しかし、小腸を全て観察することは難しかったため、現在ではカプセル内視鏡やバルーン内視鏡といった特殊な機械が開発されています。 一般的には、下部消化管内視鏡では、大腸を観察する、と考えておいて差し支えないでしょう。

下部消化管内視鏡検査の合併症

下部消化管内視鏡検査に際しては、頻度は低いものの偶発症(ぐうはつしょう)が起こることがあります。なお、偶発症とは、手術や検査の際に偶然に起こる症状などのことを指します。2019-21年までの3年間で、大腸内視鏡に関連した偶発症は0.046%でした。

穿孔

全体としては頻度が低いものの、穿孔といって大腸の壁に穴が空いてしまうことが起こりえます。治療のために手術が必要となる場合も多いです。

出血

大腸の壁を傷つけることなどによって、出血が起こってしまうこともあります。多くは内視鏡的な治療によって処置は可能と考えられます。

徐脈

大腸内視鏡検査の際、心臓の脈がゆっくりになる徐脈(じょみゃく)が起こることもあります。これは、迷走神経反射が起こることが原因として考えられ、特に鎮静剤を用いる時に起こりやすいという報告もあります。

嘔吐

大腸内視鏡検査の前には、たくさんの経口下剤を飲む必要があります。中には、飲みきれずに吐いてしまう方もいます。吐いてしまった場合でも、安静にすれば症状は改善することが多いですが、医療スタッフの指示を仰ぎましょう。

腹痛

嘔吐と同様に、大量の下剤内服などが原因となり腹痛を起こしてしまう場合もあります。もし、検査終了後に腹痛が起こった場合には、検査を受けた医療機関に相談するようにしましょう。

下部消化管内視鏡検査の流れ

下部消化管内視鏡検査の流れについて解説していきます。

下部消化管内視鏡検査当日の流れと注意点

検査当日の朝食は絶食となります。心臓の薬や、血圧の薬は飲んでも問題ありません。まず、病院では液体の下剤を飲みます。下剤は便などの腸の内容物を取り除き、検査をより効果的に行うために飲むものです。1から2リットルほど飲みます。便意が生じたらトイレに行きます。その間にも水やお茶、スポーツ飲料などの水分摂取には制限はありません。便に塊がなくなり、透明な液体状になり色も透明からやや黄色がかったくらいになったら、検査可能となります。実際の検査では、肛門から内視鏡を挿入し、大腸の観察を行います。検査中は、ゆっくりとお腹で呼吸するようにするとリラックスでき、苦しさを和らげることができます。検査後は、特に食事の制限はありませんが、検査のために送り込んだ空気のためにお腹が膨らんだ感じがあります。ガスを適宜自分で出すようにしましょう。 また、鎮静剤を用いた場合には、1時間ほど安静にしてから帰宅します。当日は車の運転ができないことには注意しましょう。検査中にポリープ等が見つかった場合には、ポリペクトミーといって内視鏡的に電気メスで焼き切ることがあります。その際には、出血を予防するために、1週間ほど禁酒となります。また、お腹に力を入れるような運動も1週間程度は避けましょう。その他の注意点等については、医師や看護師からの説明があると考えられます。わからないことがあれば、質問してみましょう。

なぜ左側臥位で見るのか?

下部消化管内視鏡検査は、体の左側を下にした左側臥位で行うことが一般的です。大腸は、肛門側から直腸、S状結腸、下行結腸、横行結腸、上行結腸と続きます。下行結腸は体の左側を走行しているので、左側を下にすると内視鏡が重力に沿って自然に左側に落ちるようなルートを辿りやすくなります。すると内部の観察がしやすくなるという利点があります。こうした理由から、左側臥位での観察が行われることが多いと考えられます。 腸の形状に合わせて、仰向けや右向きなど、患者さんの体の向きを適宜変えながら検査を行います。

下部消化管内視鏡検査前日の食事は?

下部消化管内視鏡検査前日の食事は午後9時頃までとします。食物繊維が豊富な野菜や、豆類、海藻類は避けるようにしましょう。水やお茶などの水分補給は問題ありません。 寝る前に下剤を飲むようにします。詳しくは、検査を受けようとする病院などの指示に従うようにし、疑問点があれば問い合わせるようにしましょう。

下部消化管内視鏡検査が受けられる便の性状は?

下部消化管内視鏡検査で正確に腸の中を調べるためには、腸の中に便が残っていないようにする必要があります。そのため、淡い黄色の透明な性状になるまで便を出すようにします。

下部消化管内視鏡検査の結果

下部消化管内視鏡検査では、異常なしのほか、大腸がんやポリープ、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患といった所見が認められることがあります。 また、検査の際に組織をとって詳しく調べる生検を行うこともできます。

「下部消化管内視鏡検査」の異常で気をつけたい病気・疾患

ここではメディカルドック監修医が、「下部消化管内視鏡検査」で見つかる病気を紹介します。 どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

大腸がん

大腸がんは、結腸や直腸にできるがんのことです。日本では、S状結腸と直腸に多くみられます。良性の腫瘍である腺腫から発生するタイプと、正常粘膜から発生するタイプがあります。 早期の段階では症状はみられないことがほとんどです、しかし、進行してがんが大きくなると便に血が混じって血便や下血を起こしたり、便に赤く血液がついたりといった症状が出現します。 大腸がん検診としては、日本では便潜血反応をみるものがあります。便を2日分採取し、血の成分が混じっていないかを調べます。もし1回でも陽性となった場合には、精密検査を受けるようにしましょう。精密検査の方法としては、大腸内視鏡検査が一般的です。

大腸ポリープ

大腸ポリープは、大腸の粘膜から飛び出した、茎のような部分があるできもののことです。 大腸のポリープは、胃の場合とは異なり、多くは腫瘍性のものです。大部分は腺腫という良性の腫瘍ですが、大きくなるにつれてがんに置き換わっていくといわれています。そのため、多くの大腸ポリープは治療の対象となります。腺腫の場合は内視鏡で切除可能です。また、腺腫からがんが見つかった場合には、もっと大きな手術で病変を追加で切除することが必要なこともあります。

炎症性腸疾患

炎症性腸疾患は、腸に炎症が慢性的に起こり、よくなる(寛解)と悪くなる(再燃)を繰り返すような疾患を総称したものです。一般的には潰瘍性大腸炎とクローン病の2つの病気を指します。潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜が直腸から連続しておかされ、びらんや潰瘍ができてしまいます。長期間、広範囲の大腸に炎症が続くと、がん化する傾向があることも知られています。 一方、クローン病は飛び飛びに大腸の粘膜をおかし、小腸や大腸の回盲部と言われる部分、肛門によくできることが知られています。 いずれも、なかなか治らない下痢や血便、発熱、体重減少などが症状として認められます。こうした症状が続く場合には、消化器内科を受診しましょう。

「下部消化管内視鏡検査」についてよくある質問

ここまで下部消化管内視鏡検査を紹介しました。ここでは「下部消化管内視鏡検査」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

下部消化管内視鏡検査は麻酔をした方が良いですか?

木村 香菜木村 香菜 医師

下部消化管内視鏡検査は麻酔なしでも可能です。しかし、痛みに対して不安がある方などに対しては、少しうとうととするような薬(鎮静剤)を使うことがあります。完全に意識がなくなった状態ではありません。苦痛を少なく検査を受けたいという方は、検査を受けようとする施設に鎮静剤の使用の有無に関して問い合わせると良いでしょう。

下部消化管内視鏡検査の前日に控えた方が良い食べ物はありますか?

木村 香菜木村 香菜 医師

下部消化管内視鏡検査の前日は、食物繊維の多い食べものや、消化の悪いものは控えた方が良いでしょう。例えば、ごぼうなどの根菜類や、脂っこいものなどがあります。

まとめ

今回の記事では、下部消化管内視鏡検査について解説しました。下部消化管内視鏡検査は大腸がん検診の精密検査として行われるほか、人間ドックなどでも行われています。下痢や血便など気になる症状がある方は、消化器内科を受診しましょう。

「下部消化管内視鏡検査」の異常で考えられる病気

「下部消化管内視鏡検査」から医師が考えられる病気は3個ほどあります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

消化器内科系の病気

下部消化管内視鏡検査では、上記のような病気を発見することができます。気になる症状がある方は、消化器内科の受診をおすすめします。

この記事の監修医師