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「バリウム検査の下剤を飲まない」とどうなる?効かない場合の対処法も医師が解説!

 公開日:2025/08/28
「バリウム検査の下剤を飲まない」とどうなる?効かない場合の対処法も医師が解説!

Medical DOC監修医がバリウムの下剤の種類・どれくらいで効果が出るのか・効きすぎると現れる症状や対処法などを解説します。

齋藤 雄佑

監修医師
齋藤 雄佑(医師)

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日本大学医学部を卒業。消化器外科を専門とし、現在は消化器外科、消化器内科、産業医を中心に診療を行っている。現在は岩切病院、永仁会病院に勤務。
日本外科学会外科専門医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。

バリウム検査とは?

バリウム検査は、X線を使用して食道、胃、十二指腸などの消化管の状態を調べる検査です。造影剤として使用されるバリウムは白く粘性のある液体で、飲むことで消化管の内側の壁がX線に鮮明に映し出されるようになります。この検査により、胃炎の有無や潰瘍、腫瘍、ポリープ、胃の動きの異常などを確認することができます。

バリウムの下剤の種類

バリウムは体内に残ると固まりやすく、腸閉塞などのリスクがあるため、検査後には速やかに排出する必要があります。そのために使用されるのが下剤です。

酸化マグネシウム(例 マグミット®)

酸化マグネシウムは、腸内で水分を吸収し、便を柔らかくすることで排出しやすくするタイプの緩下剤です。直接腸を刺激する作用は弱く、比較的穏やかに作用します。腹痛・下痢などの副作用が少ないため、広く使われています。高齢者や、普段から便秘がちではない方にも処方しやすい薬です。

センノシド(例:プルゼニド®)

センノシドは大腸を刺激して排便を促す刺激性下剤の一種です。生薬由来の成分を含んでいます。刺激性下剤の中でも比較的効果が強く、バリウムの排出を確実に行う必要がある場合に用いられます。

ピコスルファートナトリウム(例:ラキソベロン®)

ピコスルファートナトリウムは、大腸を直接刺激して蠕動運動(便を押し出す動き)を促進するタイプの刺激性下剤です。少量でも効果を発揮します。少量で効果が期待できるため、バリウムの排出を確実に促したい場合に処方されます。液体タイプが多く、飲みやすいという利点もあります。

モビコール®

モビコール®は、ポリエチレングリコール(PEG)を主成分とする浸透圧性下剤で、腸内の水分量を増やして便を柔らかくし、排便を促します。腸を刺激しないため、腹痛を起こしにくいのが特徴です。便を軟化させて自然な排便を促すため、バリウムの排出にも有効です。

ルビプロストン(例:アミティーザ®)

ルビプロストンは、小腸の動きを活発にし、腸液の分泌を促すことで便を柔らかくし、排便を助ける新しいタイプの下剤です。刺激性下剤とは異なる作用機序を持つため、従来の刺激性下剤で効果が不十分な場合や、刺激性下剤による腹痛などの副作用を避けたい場合に検討されることがあります。

バリウム検査後どれくらいで下剤を服用すればいいの?

バリウム検査が終わったら、下剤をいつ飲むべきでしょうか?検査終了後、できるだけ早く下剤を服用することが重要です。一般的には、検査終了後すぐに、もしくは医師や技師から指示されたタイミングで服用します。これは、バリウムが腸内で固まる前に排出を促すためです。検査後、時間が経てば経つほどバリウムが固まりやすくなり、排出が困難になる可能性があります。

バリウム検査後どれくらいで下剤の効果が現れる?

バリウム検査後に飲んだ下剤は、何時間後に効果が出るでしょうか?下剤の種類にもよりますが、一般的には服用後6〜12時間以内に排便が始まります。個人差があり、早ければ2時間ほどで効果が出ることもあります。下剤の効果が現れると、白い便(バリウム便)が出始めます。バリウムがすべて排出されるまでには、何度か排便があることが一般的です。便の色が通常の便の色に戻るまで、水分をこまめに摂りながら、下剤の効果を待ちましょう。

バリウム検査後に下剤を飲まないとどうなる?

便秘・バリウム宿便

検査後に下剤を飲まなかったり、飲んでも効果が不十分だったりすると、バリウムが腸内で固まって便秘になります。お腹の張りや痛みを感じることもあります。便秘が進行すると、バリウムが石のように硬い塊(バリウム宿便)となり、自然な排便が非常に困難になります。

腹痛・腹部膨満感

バリウムが腸内に停滞することで、お腹が張って苦しくなったり、鈍い痛みや強い腹痛を感じたりすることがあります。腸の動きが悪くなることで、腸内のガスが溜まりやすくなり、腹部膨満感が強くなります。

腸閉塞

最も重篤な合併症の一つが腸閉塞です。固まったバリウムが腸管を完全に塞いでしまい、便やガスが流れなくなります。吐き気、嘔吐、腹部の膨満感、腹痛などの症状が現れます。腸閉塞は入院を要する状態であり、放置すると腸に穴があく(腸穿孔)など命に関わる事態に発展する可能性があるので注意が必要です。

憩室炎

腸管に小さな袋状の突起(憩室)がある場合、バリウムがその憩室に入り込んで炎症を起こすことがあります。腹痛や発熱、下痢などの症状が見られます。憩室炎は、炎症が進行すると腸管に穴が開いたり、膿がたまったりすることがあり、外科的な治療が必要になる場合もあり、気をつけなければなりません。

下剤が効きすぎてしまった場合の症状や対処法

下剤が効きすぎてしまうと、以下のような症状が現れることがあります。

下痢・腹痛

下剤の量や種類、個人の感受性によっては、水のような下痢が続いたり、キリキリとした腹痛が起こったりすることがあります。症状が軽度であれば、しばらく様子を見ましょう。脱水にならないよう、スポーツドリンクや経口補水液などで水分をこまめに補給してください。食事は消化の良いものを少量ずつ摂るようにし、刺激物や油っこいものは避けてください。

脱水症状

ひどい下痢が続くと、体内の水分だけでなく電解質(ナトリウム、カリウムなど)も失われ、脱水症状を起こすことがあります。症状としては、口の渇き、尿量の減少、めまい、立ちくらみ、倦怠感などです。重度になると意識障害を起こすこともあります。水分補給を最優先に行います。水だけでなく、電解質を補給できるスポーツドリンクや経口補水液を摂りましょう。症状が改善しない場合や、めまい、意識が朦朧とするなどの重い症状が出た場合は、すぐに医療機関を受診してください。

肛門周囲の不快感・痛み

頻繁な排便や下痢によって、肛門周囲の皮膚がかぶれたり、痛みやヒリヒリ感を感じたりすることがあります。排便後は優しく洗い流すか、お尻拭きなどで清潔に保ち、乾燥させましょう。必要であれば、市販の軟膏やワセリンなどを塗って保護することも有効です。

下剤を飲んでもバリウムが排出されない場合の対処法

下剤を服用してもバリウムがなかなか排出されない場合は、以下のような対処法があります。

水分を積極的に摂る

下剤の効果を助け、バリウムの排出を促すためには、十分な水分摂取が不可欠です。水やお茶、スポーツドリンクなどを積極的に、こまめに飲むようにしましょう。これにより、バリウムが柔らかくなり、排出しやすくなります。

体を動かす

適度な運動は腸の動きを活発にし、排便を促す効果があります。軽くウォーキングをしたり、家の中で体を動かしたりするだけでも効果が期待できます。ただし、激しい運動は避け、体調に合わせて無理のない範囲で行いましょう。

お腹を温める・マッサージする

温かいタオルなどでお腹を温めたり、お腹を優しくマッサージしたりすることも、腸の動きを刺激し、排便を促すのに役立ちます。

追加の下剤を服用する(医師の指示のもと)

処方された下剤を飲んでもバリウムが排出されず、お腹の張りや痛みが続く場合は、自己判断せずに医療機関に連絡しましょう。追加の下剤が必要な場合や、他の対処法が必要な場合もあるため、必ず医師の指示を仰いでください。

バリウム検査後に下剤を飲む際の注意点

バリウム検査後に下剤を飲む際には、いくつかの注意点があります。

検査後すぐに飲んだ方がいいのか

検査が終わったらできるだけ早く下剤を服用することが推奨されます。バリウムは時間が経つと固まりやすくなるため、速やかに排出を促すためです。ただし、医療機関から具体的な指示があった場合は、それに従ってください。検査後、下剤を服用し、白い便が出るまでは、消化の良いものを控えめに摂るのが安心です。特に、下剤を服用した直後は、胃腸への負担を減らすためにも、刺激の強いものや脂っこいものは避けましょう。バリウム便が確認できて、体調が落ち着いてから徐々に通常の食事に戻していくと良いでしょう。

水分摂取をしっかり行う

下剤の効果を助け、バリウムの排出を促すためには、水分摂取が必要です。バリウムの排出をスムーズにするために、下剤の効果を待っている間も、こまめな水分補給が非常に重要です。水、お茶、スポーツドリンクなどを積極的に摂りましょう。脱水症状の予防にもつながります。

便の色を確認する

バリウムを排出すると、最初は白い便が出ます。その後、徐々に通常の便の色に戻っていきます。白い便が確認できなくなるまで、しっかりとバリウムが排出されたかを確認することが大切です。完全に白い便が出なくなってから、通常の生活に戻りましょう。

アルコールの摂取を控える

アルコールは利尿作用があり、脱水を促進する可能性があります。また、胃腸に負担をかけることもあるため、バリウムを完全に排出し終えるまでは、アルコールの摂取は控えるようにしましょう。

体調の変化に注意する

下剤服用後、腹痛がひどい、吐き気がする、発熱がある、意識が朦朧とするなど、いつもと違う体調の変化があった場合は、すぐに医療機関に連絡し、指示を仰いでください。

「バリウムの下剤」についてよくある質問

ここまでバリウムの下剤について紹介しました。ここでは「バリウムの下剤」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

バリウムを完全に出し切るまでどれくらいかかりますか?

齋藤 雄佑医師齋藤 雄佑医師

バリウムが完全に排出されるまでの時間は個人差がありますが、通常は下剤服用後24時間以内にほとんど排出されます。しかし、便秘気味の方やバリウムの量が多い場合は、24時間以上かかることもあります。便の色が通常の便の色に戻るまで、しっかりと排出されたかを確認することが大切です。2〜3日経っても白い便が出ない場合は、医療機関に相談することをおすすめします。

まとめ バリウム検査の後は早めに下剤で出しましょう

バリウム検査は、消化管の状態を詳しく調べるために非常に有効な検査ですが、検査後のバリウムの排出が非常に重要です。下剤を適切に服用し、バリウムを速やかに体外へ排出することで、便秘や腸閉塞といった合併症のリスクを避けることができます。もし、下剤を飲んでもバリウムが排出されない場合や、下剤が効きすぎて体調がすぐれない場合は、我慢せずに医療機関にご相談ください。バリウム検査後の疑問や不安があれば、いつでも医師や医療スタッフに尋ねて、安心して検査を受けてください。

「バリウム検査」の異常で考えられる病気

「バリウム検査」から医師が考えられる病気は12個ほどあります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。 バリウム検査は、これらの病気の早期発見に役立つ重要な検査です。気になる症状がある場合は、定期的な検査を受けることをお勧めします。

この記事の監修医師