目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 健康診断
  4. 「血糖値の基準値」はご存知ですか?正常範囲はどれくらいなのか医師が解説!

「血糖値の基準値」はご存知ですか?正常範囲はどれくらいなのか医師が解説!

 公開日:2025/05/21
「血糖値の基準値」はご存知ですか?正常範囲はどれくらいなのか医師が解説!

血糖値の基準値とは?Medical DOC監修医が血糖値が高くなる原因・低くなる原因・予防法などを解説します。

木村 香菜

監修医師
木村 香菜(医師)

プロフィールをもっと見る
名古屋大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院や、がんセンターなどで放射線科一般・治療分野で勤務。その後、行政機関で、感染症対策等主査としても勤務。その際には、新型コロナウイルス感染症にも対応。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。

血糖値とは?

血糖値とは、血液中のブドウ糖の濃度のことを指します。膵臓で作られるインスリンというホルモンが血糖値を一定に保っています。
健康診断での血糖値の項目は、空腹時の血糖値(FPG)と、最近1〜2ヶ月ほどの血糖値を評価するHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の2つが一般的です。
今回の記事では、血糖値の正常値や、高くなるあるいは低くなる理由について詳しく解説します。ぜひ参考にしてみてください。

血糖値の基準値

血糖値の基準値は、人間ドック・予防医療学会の判定区分では以下のように区分されています。成人と小児でも基本的に基準値は変わりませんが、糖尿病のコントロールに際しては多少違いがあります。

成人の血糖値の基準値

正常値はFPG 99mg/dL以下かつHbA1c 5.5以下です。
FPG 126mg/dL以上かつHbA1c 6.5以上の場合は糖尿病の疑いがあります。そのため、精密検査を受ける必要があります。
糖尿病の方の場合、合併症予防の観点からの血糖コントロール目標値は7.0%未満、FPG130mg /dL未満、食後2時間血糖値180mg/dLとされています。

小児の血糖値の基準値

小児の血糖値の基準値も、基本的には成人と変わりません。
小児期・思春期および若年成人(25歳未満)の方の糖尿病の場合、成人のものに少し追加される形となります。血糖コントロール目標値は7.0%未満、FPG70〜130mg /dL未満、食後2時間血糖値90〜180mg/dL、就寝前血糖80〜140mg/dLとされています。
より小さなお子さんになればなるほど、重症な低血糖を避けることが第一目標となります。その点が、成人の目標値との違いと関連しています。

食後の血糖値の基準値

食事をすると、栄養素の一つである糖が腸から吸収され、血液中の血糖値が高い状態になります。食後の血糖値がどれくらいなのかを測るための検査としては、ブドウ糖負荷試験(oral glucose tolerance test:OGTT)があります。
OGTTの2時間値が140mg/dL以下は正常、200mg/dL以上では糖尿病の疑いがあるとされます。

血糖値が高くなる原因

血糖値の調整のためには、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンが重要です。しかし、インスリンが十分に効果を発揮できない場合や、インスリンの分泌が低下してしまった場合に血糖値が高いままになってしまいます。なお、インスリンが効きづらくなることをインスリン抵抗性といいます。ここでは、こうしたインスリンに関係する事項や、その他の血糖値が高くなる原因について解説しましょう。

肥満

肥満は、インスリンが効きづらくなる原因となります。肥満になる要因としては、運動不足並びに高脂質食に代表される欧米型生活習慣が挙げられます。

運動不足

運動不足も肥満の原因となり、インスリンが効きづらい状況を引き起こしてしまいます。
骨格筋はブドウ糖取り込みにとって重要な臓器であることが知られています。そのため、運動不足によって筋肉が減少してしまうことは、血糖値が上がってしまう原因になります。

ストレス

ストレスがかかると、糖尿病のコントロールが不良になるという研究結果があります。ストレスがインスリン抵抗性に何らかの影響を与えている可能性が示唆されています。

膵臓のインスリン分泌機能の低下

慢性膵炎など、膵臓からインスリンを分泌する機能が失われている状態では血糖値が上がってしまいます。糖尿病のタイプの一つである1型糖尿病では、自己免疫学的なメカニズムで膵臓のインスリン分泌細胞が破壊されてしまいます。その結果、インスリンが不足してしまうため、血糖値のコントロールが悪くなります。

血糖値を上げるホルモンの過剰な分泌

成長ホルモンなど、血糖値を上げる方に働くホルモンがあります。そうしたホルモンが過剰に分泌されるような病気の場合、血糖値が高くなってしまうことがあります。例えば、下垂体性成長ホルモン分泌亢進症などの病気があります。下垂体性成長ホルモン分泌亢進症は、末端巨大症、下垂体性巨人症とも呼ばれており、指定難病となっています。

血糖値が低くなる原因

血糖値が逆に低くなってしまうと、身体にさまざまな不調が現れます。例えば、汗がよく出る、不安になる、脈が速くなる、手や指が震えるといったものです。こうした低血糖症状がある場合や、低血糖症状の有無にかかわらず血糖値が70mg/dLより低い場合には低血糖と診断されます。ここでは、血糖値が低くなってしまう原因を解説します。

糖尿病の治療薬の影響

低血糖症状は、特に糖尿病の治療中の方にみられることが多い状態です。
糖尿病の治療に使われる薬の中には、低血糖を引き起こす副作用があるものがあります。食事量、特に炭水化物の不足や、食事時間の遅れ、空腹時の運動、薬剤の量が多かったことなどが、低血糖の引き金になります。
血糖値が50㎎/dL未満になると、意識がもうろうとしてしまうなど、非常に危険な状態になることもあります。できるだけ早く、ブドウ糖を口にするなどの対応をとることが必要です。

インスリンの過剰分泌

糖尿病の薬の影響の他にも、低血糖は起こります。大きく分けると、空腹時に起こるものと食後に起こるものに分けられます。
空腹時の低血糖の原因の一つに、インスリンが大量に分泌されてしまう病気があります。例えば、膵臓にできるインスリノーマという病気は、インスリンを過剰に分泌するため、低血糖発作の原因となります。

コルチゾールの分泌不足

副腎という腎臓の上の方にある小さな臓器からは、血糖値を上げる働きを持つコルチゾールというホルモンが分泌されています。副腎の機能が低下してしまう副腎不全では、このホルモン分泌も低下し、結果として低血糖となる場合があります。

胃の切除後

食後の低血糖症状の原因の一つに、胃などの消化管手術後があります。後期ダンピング症候群とも言われており、日本では胃の切除後5〜10%にみられるとされています。腸に炭水化物が急速に流れ込むため、高血糖状態になります。すると、その状況に反応し、インスリンが大量に放出されるため、食後2〜3時間後に血糖値が下がります。そして、全身倦怠感や発汗、めまい、脱力感、失神などがみられます。

早期の糖尿病

食後に低血糖症状が出現する原因としては、前述の消化管手術後の他、早期糖尿病、特発性があります。早期糖尿病の場合、食後のインスリン分泌が過剰になってしまうため、食後の血糖値が下がってしまうという機序が考えられています。
一方で、糖尿病かどうかを調べる検査で問題がない方でも、食後に低血糖状態になり、脱力感や冷や汗が現れることもあります。これは特発性反応性低血糖と呼ばれる状態です。原因などについては、現在も研究が進められている段階です。
食後に低血糖症状が続くようであれば、一度内分泌内科を受診しましょう。

血糖値を正常に抑えるための予防法

ここからは、血糖値を適切な範囲にするために大切な生活習慣を紹介します。

標準体重を保つ

肥満によって、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの効きが弱くなってしまいます。
適切なカロリー摂取量を意識し、肥満を改善、予防するようにしましょう。
必要なカロリー推定量は、基礎代謝量と身体活動レベルから計算することができます。
食生活のポイントとしては、脂質や糖質のとりすぎに気を付け、野菜やキノコ等、食物繊維豊富な食物を積極的にとるようにしましょう。

運動

運動することで、手足などの骨格筋を十分に鍛えることができます。
運動には、骨格筋への血液中のブドウ糖取り込みを促進させ、エネルギー消費につながります。さらに、中性脂肪を減少させ、インスリン抵抗性を改善する効果もあります。
目安としては、週に150分以上(3日間以上にわたって行い、活動がない日が連続して2日を超えないように)のややきつめからきつい有酸素運動となります。また、筋力トレーニングとして、週に2〜3日、連続しないように、5種類以上の運動を組み合わせたものを最低1セット行うことが推奨されます。

禁煙

タバコは、血糖値に悪影響を与えることが知られています。喫煙している場合には、禁煙をおすすめします。

節酒

飲酒も、血糖値に悪影響を与えることが知られています。
ほどほどの量にしておきましょう。

ストレス管理

ストレスがかかった状態が長く続くと、血糖値が高くなってしまう可能性があります。
気晴らしを見つける、ヨガや瞑想などのリラクゼーション方法を身に着けるなどで、ストレス管理スキルを身に着けるとよいでしょう。

「血糖値の基準値」についてよくある質問

ここまで血糖値の基準値について紹介しました。ここでは「血糖値の基準値」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

血糖値の正常範囲はどれくらいなのでしょうか?

木村 香菜木村 香菜 医師

血糖値の正常範囲は、空腹時血糖値99mg/dL以下、HbA1c5.5%以下となっています。
健康診断などで、この範囲を超えた値が出ている場合は、生活習慣改善と経過観察、場合によっては精密検査が必要となります。

編集部まとめ

今回の記事では、血糖値の正常値や高くなるあるいは低くなる原因などについて詳しく解説しました。血糖値が高くても、特に症状が現れない場合もあります。普段から適正体重を保つ、運動をするなどし、健康的な生活を送るようにしていきましょう。

「血糖値」の異常で考えられる病気

「血糖値」から医師が考えられる病気は9個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

内分泌内科の病気

消化器内科の病気

血糖値に異常をきたす病気としては、上記のようなものがあります。健康診断で異常を指摘された場合や、特に食後に震えや冷や汗が生じるといった症状が続く場合には、内分泌内科を受診しましょう。

この記事の監修医師