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「尿検査の基準値」って?結果の見方と異常値で考えられる病気を解説【医師監修】

 更新日:2025/07/16
「尿検査の基準値」って?結果の見方と異常値で考えられる病気を解説【医師監修】

尿検査の基準値とは?Medical DOC監修医が発見できる病気や対処法などを解説します。

木村 香菜

監修医師
木村 香菜(医師)

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名古屋大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院や、がんセンターなどで放射線科一般・治療分野で勤務。その後、行政機関で、感染症対策等主査としても勤務。その際には、新型コロナウイルス感染症にも対応。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。

尿検査とは?

尿検査は、尿を調べることでさまざまな病気、特に膀胱や腎臓などの泌尿器の異常を調べることができる検査です。 腎機能を評価する検査としては、血液検査でのクレアチニンという項目や、それによって計算されるeGFRなどもあります。しかしながら、尿検査はおしっこを採るだけの簡単な検査で、採血の際の痛みといった問題もありません。 尿は、腎臓の働きによって作られ、膀胱で貯められ、ある程度貯まったら外に排出(排尿)されます。 尿は、腎臓の糸球体という毛細血管の塊のような構造で濾過(ろか)され、血液中の老廃物や塩分が原尿の中に排出されます。健康な方の場合には、赤血球や蛋白質は濾過されることなく、血液中に残ります。そして、原尿は尿細管という部分で99%ほど再吸収されます。こうしたメカニズムのどこかに病気があると、尿にも異常が現れる場合があります。 しかし、腎臓の病気は、症状が現れにくい場合もあります。症状がない段階での学校や職場、地域などの健康診断の際に尿検査の異常があり、発覚するケースも多いです。 そのため、尿検査は腎臓や膀胱などの病気を早期発見するために重要といえるでしょう。 今回の記事では、尿検査の基準値について詳しく解説します。

尿検査の検査項目と基準値

ここでは、健康診断などでもよく調べられる尿検査項目について解説します。 尿検査は、通常試験紙法での尿スクリーニング検査を指します。 尿検査は、健康診断や、何らかの病気が疑われた際などに行われます。 試験紙に特定の指示試薬が染み込ませてあり、それと尿との反応を見て検査結果を判定します。こちらに紹介したもののほか、pH、ウロビリノーゲンや亜硝酸塩(細菌尿)などのチェックも可能です。

尿蛋白

尿蛋白は、尿中に蛋白質が含まれていないかどうかを調べるものです。 正常であれば尿から蛋白は検出されません。 尿中の蛋白濃度(mg/dL)が高くなるにつれ、検査紙での判定は+,++,+++,++++の順に高まります。 +の場合、時間をあけての再検査、++以上の場合には精密検査が推奨されます。 +かつ、血糖値の異常もある場合には、糖尿病に関するより詳細な検査が進められます。 陽性になるような病気としては、急性・慢性腎炎、腎盂腎炎、ネフローゼ症候群、発熱や過労、その他の心疾患や腎病変などがあります。

尿糖

尿糖は、尿中にブドウ糖が含まれていないかどうかを調べるものです。 正常であれば尿からブドウ糖は検出されません。 尿中のブドウ糖濃度(mg/dL)が高くなるにつれ、検査紙での判定は+,++,+++,++++の順に高まります。 +の場合、時間をあけての再検査、++以上の場合には精密検査が推奨されます。 陽性になるような病気としては、糖尿病、膵炎、肝疾患、甲状腺疾患、妊娠、ステロイドの長期投与時などがあります。

尿潜血

尿潜血は、尿中にヘモグロビンが含まれていないかどうかを調べるものです。 なお、ヘモグロビンとは、赤血球に含まれる蛋白質・色素のことで、酸素を全身に運搬する役割を持っています。血液が赤く見えるのは、このヘモグロビンがあるからです。 正常であれば尿からヘモグロビンは検出されません。 尿中のヘモグロビン濃度(mg/dL)が高くなるにつれ、検査紙での判定は+,++,+++,+++の順に高まります。 +の場合、時間をあけての再検査、++以上の場合には精密検査が推奨されます。 尿蛋白+かつ、尿潜血+の場合には、精密検査が勧められます。 陽性になるような病気としては、腎や尿管、膀胱、尿道、前立腺の炎症、腫瘍、結石、溶血性の病気などがあります。

尿沈渣(尿の顕微鏡検査)の見方

尿沈渣(ちんさ)検査は、試験紙法よりもさらに詳しい検査と言えるでしょう。 尿を遠心分離して得られた尿中の固形成分を顕微鏡で観察するものです。 顕微鏡で観察した際の1視野あたりに、以下のようなものが見えるか、またどの程度見えるかによって判定されます。なお、視野あたりは「/HPF」と表記されますので、結果にこのような記載があった際には参考にしてみてください。

赤血球・白血球

赤血球や白血球は、5/HPF未満が正常です。5/HPF以上になると経過観察あるいは、10/HPF以上では精密検査が推奨されます。 腎臓や尿路の病気や、全身性の出血性疾患の一部でみられることがあります。

円柱

円柱は、顕微鏡で観察した際にみられる、辺縁が並行になり両端が丸くなった形をしている構造の総称です。さまざまな種類があります。 硝子円柱は、蛋白質が尿細管の中に溜まった際にできるもので、健康な人でも激しい運動後にみられることがあります。 一方、上皮円柱、顆粒円柱、ろう様円柱、脂肪円柱、赤血球円柱、白血球円柱、空胞変性円柱は、いずれも病気の可能性を示唆します。一つでもあれば精密検査が勧められます。

細菌・真菌・寄生虫など

細菌は、「bact」と表記されることもあります。細菌+の場合には尿路感染症が疑われます。しかし細菌があっても、白血球が同時に認められなければ問題はないとされています。 真菌は、カビの一種であり、特別な治療を要さないことが多いです。しかし、糖尿病などの免疫低下がある場合には注意が必要です。 原虫には、性感染症の原因の一つとなるトリコモナスなどがあります。原虫が認められた場合には、要治療となります。

「尿検査」で発見できる病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「尿検査」に関する病気を紹介します。 どのような病気や症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

IgA腎症

IgA腎症は、世界で最も多い腎炎で、特に日本含む東アジアに多いとされています。 血尿や蛋白尿がみられ、未治療では透析にいたることもある病気なので、日本では「指定難病」となっています。原因は不明ですが、IgAという抗体の異常によるのではと考えられています。 治療には降圧薬やステロイドなどの免疫抑制薬、扁桃摘出術が行われる場合もあります。

急性糸球体腎炎

急性糸球体腎炎は、扁桃炎などが治癒してから約10日後に発症する、腎臓の糸球体に起こる炎症のことです。顔やまぶた、足のむくみ、尿が褐色、コーラ色になるという肉眼的血尿、尿量減少、高血圧が主症状です。血尿や蛋白尿、時には急激な腎機能低下も起こります。 A群β溶連菌が原因となることが最も多く、小児や若い方で多くみられます。 治療は、尿の減少や高血圧、むくみに対しては、安静と塩分・水分制限が行われます。一時的に入院し、利尿薬や高圧薬を投与する場合もあります。 腎機能は自然に改善することが多いですが、中には腎障害が残ってしまう場合もあります。 風邪が治ってからしばらくして、尿の異常やむくみが現れた際には、腎臓内科の受診をしましょう。

薬剤性腎障害

薬剤の中には、腎臓の特に尿細管細胞にダメージを与えてしまうものがあります。こうした薬剤による腎機能障害を薬剤性腎障害と呼びます。予防のためには腎機能や脱水などの評価を行います。尿の異常に加え、皮疹や発熱などを伴う過敏性腎障害という病態もあります。 何らかの薬を開始してから、尿が出にくい、色が変わったなどの症状が出た際には、主治医やかかりつけ医に相談するようにしましょう。

糖尿病関連腎臓病

腎臓は、全身の病気によってもダメージを受けることがあります。 その中でも、糖尿病関連腎臓病(DKD)は糖尿病による合併症の一つとして知られています。他の合併症には、神経障害、網膜症があります。 初期には微量アルブミン尿があり、蛋白尿や腎機能障害が次第に進み、最終的には腎不全に至ります。このDKDは、現在日本で透析導入の原因となる腎臓病の第一位とされています。治療においては、食事療法や運動などの生活習慣改善、血糖や血圧、脂質の管理などが重要です。

腎硬化症(高血圧性腎障害)

高血圧状態が長く続くと、全身の動脈硬化が引き起こされます。腎臓の血管も例外でなく、糸球体が障害を受けてしまいます。現在、腎硬化症は透析導入の原因疾患の第2位となっています。 降圧薬や運動習慣、塩分制限が治療のために重要です。健康診断などで高血圧を指摘されたら、放置せずに生活習慣改善や内科受診をするようにしましょう。

腎盂腎炎

大腸菌などが膀胱から尿の流れる方向とは逆に、腎臓にも感染してしまった結果、腎臓に激しい炎症が起こった状態を腎盂腎炎といいます。膿尿(のうにょう)という膿がまじったような白い尿、細菌尿、蛋白尿がみられます。高熱や背中の圧痛、吐き気や嘔吐といった全身の症状も現れます。放置しておくと敗血症になる恐れもある病気です。治療は抗菌薬の投与などが行われます。

尿検査で異常が見つかった時の対処法

尿検査で異常が見つかった場合には、腎臓内科や内科、泌尿器科を受診するようにしましょう。特に尿蛋白や血尿などがあり、血圧や血糖値など異常がある場合や、全身のむくみやだるさなどがある場合は、早めの受診をするようにしてください。

「尿検査の基準値」についてよくある質問

ここまで尿検査の基準値について紹介しました。ここでは「尿検査の基準値」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

尿検査項目の一覧について教えてください。

木村 香菜木村 香菜 医師

基本的な尿検査項目は、尿蛋白、尿潜血、尿糖などがあります。より詳細に調べる場合には、顕微鏡で尿をチェックする尿沈渣の検査があります。尿沈渣では、尿中の赤血球や白血球、各種円柱などのチェックをします。

尿蛋白の基準値はmg/dLでいくつですか?

木村 香菜木村 香菜 医師

Ames試験紙による尿スクリーニング検査の場合、尿中蛋白濃度が30mg/dL以上で「+」。15mg/dL以上で「±(疑陽性)」と判定されます。試験紙法で「―(陰性)」と判定される尿蛋白濃度は15mg/dL未満であり、これが実質的な基準値(正常範囲)と考えられます。

まとめ

今回の記事では、尿検査について解説しました。尿の異常からは、主に腎臓や膀胱などの病気が疑われますが、中には全身の病気の合併症となっている場合もあります。早期発見によって、腎機能が低下してしまうことを予防できる、あるいはゆるやかにできることもあります。健康診断などで尿検査異常が出た場合には、きちんと医療機関で精密検査を受けるようにしましょう。

「尿検査」の異常で考えられる病気

「尿検査」から医師が考えられる病気は29個ほどあります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

腎臓内科系の病気

泌尿器科系の病気

内分泌内科系の病気

消化器内科系の病気

血液内科系の病気

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