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「血液検査における各項目の基準値」はどれくらい?発見できる病気も医師が解説!

 公開日:2025/09/02
「血液検査における各項目の基準値」はどれくらい?発見できる病気も医師が解説!

血液検査の基準値はどれくらい?Medical DOC監修医が成人・小児・高齢者・の基準値・発見できる病気などを解説します。

伊藤 陽子

監修医師
伊藤 陽子(医師)

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浜松医科大学医学部卒業。腎臓・高血圧内科を専門とし、病院勤務を経て2019年中央林間さくら内科開業。相談しやすいクリニックを目指し、生活習慣病、腎臓病を中心に診療を行っている。医学博士、産業医、日本内科学会総合内科専門医、日本腎臓学会腎臓専門医、日本透析医学会透析専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本医師会認定産業医、公認心理師。

血液検査とは?

血液検査とは、採取した血液を用いて行う検査全般を指します。身体の状態を評価し、病気の診断や治療をするために大切な検査です。血液検査でわかる項目はたくさんありますが、大まかに3種類に分かれています。

・生化学検査
タンパク質、糖、カルシウムやカリウムなどの電解質といった色々な成分について、血液中にどれくらい含まれているか調べる検査です。高脂血症、糖尿病などの生活習慣病や、甲状腺機能などの内分泌機能の異常、肝臓、腎機能の異常などの病気がわかります。

・血球系検査
赤血球、白血球、血小板を調べる検査です。貧血や炎症、感染症や血液に関わる病気などがわかります。

・免疫検査
体の中での炎症の有無や、自己免疫疾患の有無、肝炎などの感染症の有無を調べる検査です。

血液検査の基準値

ここで、血液検査でわかる主な項目の基準値を紹介します。基準値は受診する医療機関によって異なりますので、結果に記載された基準値をご確認ください。
以下では、日本人間ドック・予防医療学会に掲載されている項目・基準値をご紹介します。

成人の基準値

健康診断で測定されることが多い項目の基準値は以下のようになっていますが、検査を受ける医療機関によって多少前後することがあります。ここでは、日本人間ドック・予防医療学会または日本臨床検査医学会が示す項目・基準値をご紹介します。

項目 基準値(基準範囲)
総タンパク(TP) 6.5~7.9(g/dL)
アルブミン(ALB) 3.9以上(g/dL)
AST(GOT) 30以下(U/L)
ALT(GPT) 30以下(U/L)
γ-GTP 50以下(U/L)
クレアチニン(CRE) 男性1.00以下、女性0.70以下(㎎/dL)
eGFR 60.0以上(mL/分/1.73㎡)
尿酸(UA) 2.1~7.0以下(㎎/dL)
中性脂肪(TG) 30~149(㎎/dL)
HDLコレステロール 30~39(㎎/dL)
LDLコレステロール 60~119(㎎/dL)
Non-HDLコレステロール 90~149(㎎/dL)
血糖値(空腹時) 99以下(㎎/dL)
HbA1c 5.5以下(%)
赤血球(RBC) 男性4.35~5.55、女性3.86~4.92(106/μL)
ヘモグロビン(Hb) 男性13.1~16.3、女性12.1~14.5(g/dL)
ヘマトクリット(Ht) 男性40.7~50.1、女性35.1~44.4(%)
白血球(WBC) 3.1~8.4(103/μL)
血小板(PLT) 14.5~32.9(104/μL)
CRP 0.30以下(㎎/dL)

小児の基準値

小児の年齢は明確な定義がありませんが、医学的には15歳未満を指すことが多いです。小児の中でも発達段階によって基準値が違いますが、ここでは「小児臨床検査基準値」として公表されているもののうち、12歳の基準値をご紹介します。

項目 基準値
総タンパク(TP) 6.3~7.8(g/dL)
アルブミン(ALB) 3.8~4.7(g/dL)
AST(GOT) 男性15~31、女性15~30(IU/L)
ALT(GPT) 男性9~32、女性9~28(IU/L)
γ-GTP 男性8~37、女性8~34(IU/L)
赤血球(RBC) 男性4.15~5.40、女性4.07~5.10(106/μL)
ヘモグロビン(H) 男性12.2~15.7、女性11.9~14.9(g/dL)
ヘマトクリット(Ht) 男性35.8~45.0、女性35.0~43.0(%)
白血球(WBC) 男性4.0~10.7、女性3.8~10.1(103/μL)
血小板(PLT) 18.0~44.0(104/μL)

高齢者の基準値

高齢者は、成人の上限を超えた65歳よりも上の年齢を指します。ここでは、70歳の基準値として示されているものをご紹介します。

項目 基準値
アルブミン(ALB) 男性3.7~4.3、女性3.8~4.4(g/dL)
AST(GOT) 男性8~20、女性8~16(U/L)
ALT(GPT) 男性21以下、女性17以下(U/L)
γ-GTP 男性40~90、女性15~45(U/L)
クレアチニン(CRE) 男性1.1~1.5、女性0.8~1.4(㎎/dL)
尿酸(UA) 男性4.4~6.4、女性3.7~5.9(㎎/dL)
中性脂肪(TG) 男性51~167、女性70~154(㎎/dL)
HDLコレステロール 男性40~60、女性45~65(㎎/dL)
LDLコレステロール 男性90~150、女性105~145(㎎/dL)
血糖値(空腹時) 男性92~116、女性104~130(㎎/dL)
HbA1c 男性4.4~6.6、女性4.8~6.6(%)
赤血球(RBC) 男性3.47~4.63、女性2.74~3.44(106/μL)
ヘモグロビン(Hb) 男性11.1~14.5、女性10.6~13.6(g/dL)
ヘマトクリット(Ht) 男性32.3~42.7、女性31.7~40.9(%)
白血球(WBC) 男性4.9~7.5、女性4.7~7.1(103/μL)
血小板(PLT) 男性15.6~26.6、女性16.3~28.7(104/μL)

血液検査結果の見方と項目別の基準値・異常値一覧

ここまでは血液検査について基本的なことを紹介しました。再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。

血液検査結果の見方と項目別の主な所見

血液検査結果は、測定値、もしくは(+)または(-)が記載されています。受診した医療機関によりますが、表で一覧になっている場合が多いでしょう。
人間ドックや健康診断では項目ごとにA~Eで判定され、Cの場合は要再検査・生活改善、Dの場合は要精密検査・治療、とされます。判定を確認し、C、D判定がある場合は放置せず、結果に記載された指示に従ってください。

血液検査の項目別異常値と精密検査内容

血液検査で異常や再検査・精密検査を指摘された場合、まず該当するのがどの項目か確認しましょう。様々な項目を調べているため、項目によって精密検査を受ける際に受診する診療科が異なるためです。結果表からでは詳しい緊急度がはっきりわからないことがあるため、指示があった場合はなるべく早めに受診することをおすすめします。再検査で異常値が持続しているかを確認し、医師が必要とした場合は精密検査として他の検査を行います。精密検査では、超音波検査、CT、内視鏡、MRIなどが行われることが多いですが、医師の判断によって一概には言えません。再検査の結果、実際に病気と診断された場合は治療や経過観察が行われます。治療内容も項目によって多岐に渡りますので、担当医に確認しましょう。

「血液検査」で発見できる病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「血液検査」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

肝臓の病気

血液検査でASTやALT、γ-GTPといった肝機能を反映する酵素が基準を超えている場合は、肝臓の病気が疑われます。肝臓が何らかの原因で障害されたり炎症を起こしたりしていることを示しており、具体的には脂肪肝、ウイルス性肝炎、アルコール性肝炎、自己免疫性肝疾患、胆嚢炎などの肝胆道系疾患などの病気の可能性があります。脂肪肝が原因の場合は体重や食事内容のコントロールといった生活習慣の見直しが有効です。また、ウイルス性肝炎は必要に応じて抗ウイルス治療を行います。
精密検査を勧められた場合は、一度消化器内科を受診しましょう。

腎臓の病気

血液検査でクレアチニン(CRE)や、eGFRが基準範囲を超えている場合は腎臓の病気が疑われます。腎臓は血液をろ過して老廃物を体外へ排出する働きを担っていますが、腎機能が低下すると老廃物が体内に蓄積し、さまざまな障害を引き起こします。腎臓病を起こす疾患としては、腎炎、高血圧や糖尿病など生活習慣病に伴う腎障害、自己免疫疾患、多発性嚢胞腎などの病気があります。腎臓病はまず原因に対する治療が必要です。その上で血圧などを適切に管理して腎臓への負担を減らし、塩分やタンパク質の摂取量を調整するなどの工夫を行います。疾患により治療法が異なります。精密検査を勧められた場合は腎臓内科を受診しましょう。腎臓病が進行すると、透析治療が必要になる場合もあります。一度進行すると腎機能の改善が困難なことが多いです。早めの精査、治療が勧められます。

糖尿病

健康診断では空腹時血糖値、HbA1c(ヘモグロビンA1c)などの数値が基準範囲を超えている場合は糖尿病が疑われます。糖尿病はインスリンの作用不足のために血液中のブドウ糖(血糖)値が慢性的に高くなる病気です。インスリンを合成・分泌する膵のランゲルハンス細胞の破壊がインスリン欠乏の主要な原因の1型糖尿病とインスリン分泌低下やインスリン抵抗性などが影響している2型糖尿病に分かれます。日本では生活習慣と遺伝的要因が関与する2型糖尿病が大半を占めています。2型糖尿病の原因としては、過食、運動不足、肥満、ストレス、加齢、遺伝要素などです。
治療では食事療法・運動療法・薬物療法といった生活習慣の改善のほか、必要に応じて薬物療法やインスリン注射を行います。腎症や網膜症、動脈硬化、神経障害などの合併症を防ぐためにも、精密検査を勧められたらなるべく早めに内科、または糖尿病内科を受診しましょう。

脂質異常症

血液検査では、LDL(悪玉)コレステロールの増加、HDL(善玉)コレステロールの低下、中性脂肪(トリグリセリド)の増加があった場合、脂質異常症が疑われます。脂質異常症自体は自覚症状がほとんどありませんが、放置すると動脈硬化が進行して心筋梗塞や脳梗塞などの重大な疾患を引き起こすため注意が必要です。発症には脂質や糖質の多い食事、運動不足、ストレス、肥満などの食生活や生活習慣の影響が大きく関わっています。遺伝的な原因のために脂質異常を起こす「家族性高コレステロール血症」という病気もあります。健康診断で脂質異常を指摘された場合には早めに内科を受診しましょう。

貧血

貧血とは、血液中の赤血球やヘモグロビンの量が不足し、全身に十分な酸素を運べなくなる状態を指します。血液検査でヘモグロビン(Hb)値が基準範囲より低い場合に貧血と診断されます。鉄欠乏性貧血をはじめ、骨髄の異常による再生不良性貧血や、慢性的な病気のために起こる貧血など色々な種類があります。最も多い鉄欠乏性貧血の原因としては、偏った食生活、月経、消化管からの慢性的な出血などが考えられます。精密検査で貧血の原因を特定し、栄養状態の改善や消化管の病気の治療など、それぞれに合わせた治療を行います。
精密検査の指示のほか、めまいや息切れ、疲れやすさなどの症状がある時は早めに医療機関を受診しましょう。最初に受診するのは内科が適切ですが、受診必要に応じて婦人科や消化器内科を紹介されることもあるでしょう。

感染症

白血球やCRPの数値が基準範囲を超えている場合、何らかの感染症にかかっている可能性が考えられます。しかし、自己免疫疾患などによる炎症でも同様の所見がみられることもあります。採血結果のみでは区別がつかないです。そのほかの症状を確認したり、追加の血液検査をしたりする必要があります。
精密検査の指示があった場合、まず内科を受診しましょう。

「血液検査の基準値」についてよくある質問

ここまで血液検査の基準値について紹介しました。ここでは「血液検査の基準値」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

血液検査ヘマトクリットの基準値を教えてください。

伊藤 陽子医師伊藤 陽子(医師)

日本臨床検査医学会のガイドラインによると、
男性: 40.7% ~ 50.1%
女性: 35.1% ~ 44.4%
とされています。医療機関ごとに若干異なる場合がありますので、ご自身が検査を受けた医療機関の基準値をご確認ください。

血液検査でがんを発見できますか?

伊藤 陽子医師伊藤 陽子(医師)

前述の血液検査で調べる項目は、スクリーニング検査です。がんを発見するきっかけになる可能性もありますが、必ず見つけられる保証はありません。血液検査として腫瘍マーカーが調べられますが、腫瘍マーカーが高値だからと言ってがんであると言い切れず、特に早期の場合はがんであっても高値にならないとされています。よって、確実にがんを発見できるとは言えません。

編集部まとめ

血液検査ではさまざまな項目を調べており、それぞれに基準値が設定されています。肝臓、腎臓、糖尿病、貧血、感染症など多くの病気の可能性がわかるのが血液検査です。精密検査の指示を受けたら、どの項目が当てはまっているか確認して早めに受診しましょう。自覚症状がなくても病気が進行している可能性もありますので、早期発見・早期治療につなげましょう。

「血液検査」の異常で考えられる病気

「血液検査」から医師が考えられる病気は9個ほどあります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

肝臓の病気

腎臓の病気

  • 慢性腎障害

生活習慣病

上記の病気は考えられる病気のごく一部です。また、血液検査だけでは診断できない場合も多いため、健康診断などで異常を指摘された場合には再検査を受診しましょう。

この記事の監修医師