「赤血球の基準値」はご存知ですか?高いとどんな病気が考えられるか医師が解説!

赤血球の基準値はどれくらい?Medical DOC監修医が赤血球の年齢別の基準値や発症しやすい病気や日常生活で気をつけるポイントなどを解説します。

監修医師:
伊藤 陽子(医師)
目次 -INDEX-
血液中の赤血球とは?
赤血球(RBC)とは血液の主成分です。血液は赤血球・白血球・血小板の「血球」と「血漿」に分けられます。血液全体の約45%が血球で、そのうち約96%が赤血球です。
赤血球は、骨髄に存在する造血幹細胞が細胞分裂を繰り返して作られます。血液を作る調整をしているのが、腎臓で作られるエリスロポエチンという造血ホルモンです。赤血球の寿命は120日程度で、古くなった赤血球は脾臓で破壊されます。
赤血球数とヘモグロビン(Hb)などの値により、貧血や多血症の評価ができます。
血液中の赤血球の役割と成分
赤血球の役割は酸素を細胞に運搬し、細胞から二酸化炭素を回収して肺に運びます。赤血球の成分の大部分はヘモグロビンです。
赤血球と白血球の違い
赤血球と白血球はどちらも骨髄の中にある、造血幹細胞で作られます。体の中で赤血球は「運搬」・白血球は「防御」の働きをしていて、役割が違います。
白血球は血液に含まれる血球の一つです。
白血球の役割は体内に侵入した細菌やウイルスなどの異物の排除をし、体を守ることです。白血球が減少すると抵抗力が低下し、感染症にかかりやすくなります。血液検査の白血球の数値は、炎症や白血病などの病気の診断や治療経過の評価に用いられます。
赤血球とヘモグロビンの違い
赤血球の成分はヘモグロビンと水です。ヘモグロビンは鉄を含むヘムという色素とグロビンというたんぱく質からできています。鉄は酸素と結合しやすいため、ヘモグロビンが酸素と結合することで赤血球が酸素を運ぶことが可能となります。
血液検査の赤血球の基準値
血液検査では、赤血球は血液1μL中の赤血球の個数、ヘモグロビンは血液1dL中のヘモグロビンの量(g)で表されます。ヘマトクリット(Ht)は血液中にある赤血球の容積の割合(%)です。赤血球・ヘモグロビン・ヘマトクリットの異常値は貧血や多血症の有無や診断に用いられます。
男女別・赤血球の基準値
赤血球の基準値は男性と女性では数値が異なります。
| 男性 | 女性 | |
|---|---|---|
| 赤血球 | 4.35〜5.55×10⁶/μL | 3.86〜4.92×10⁶/μL |
| ヘモグロビン | 13.7〜16.8 g/dL | 11.6〜14.8 g/dL |
| ヘマトクリット | 40.7〜50.1% | 35.1〜44.4 % |
赤血球の計算方法(MCV/MCH/MCHC)
赤血球数とヘモグロビン量とヘマトクリットを用いて赤血球指数を計算することで、赤血球の状態がわかります。
赤血球指数は平均赤血球体積(MCV)、平均赤血球ヘモグロビン量(MCH)、平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)の3種類です。
・MCVとは、赤血球1個の平均容積で、赤血球の大きさがわかります。
計算方法
MCV(fL)=Ht (%) ÷ RBC (10⁶/μL) ×10
例:Ht 40 (%) RBC 4.50 (10⁶/μL) の場合
40 ÷ 4.50 × 10 ≒ 88.9 MCVは88.9 (fL)です。
| 男性 | 女性 | |
|---|---|---|
| MCV基準値 | 84.6〜98.6fL | 83.2〜97.8fL |
・MCHとは、赤血球1個の中に入っているヘモグロビンの量で、赤血球の重さになります。
計算方法
MCH(pg)=Hb (g/dL) ÷ RBC (10⁶/μL) ×10
例:Hb 14.0 (g/dL) RBC 4.50(10⁶/μL) の場合
14.0 ÷ 4.50 × 10 ≒ 31.1 MCHは 31.1(fL)です。
| 男性 | 女性 | |
|---|---|---|
| MCH基準値 | 28.3〜33.4pg | 26.9〜32.9pg |
・MCHCとは、赤血球1個の中のヘモグロビン濃度で、赤血球の濃さがわかります。
計算方法
MCHC(%)=Hb (g/dL) ÷ Ht (%) ×100
例:Hb 14.0 (g/dL) Ht 40(%) の場合
14.0 ÷ 40 × 100 ≒ 35.0 MCHCは 35.0(%)です。
| 男性 | 女性 | |
|---|---|---|
| MCHC基準値 | 32.0〜35.4% | 31.5〜35.0% |
赤血球の大きさや濃さがわかると、貧血の種類を分類できます。原因を明確にするためには別の項目の血液検査など、詳細な検査が必要になります。
貧血の分類
| 分類 | MCV(fL) | MCHC(%) | |
|---|---|---|---|
| 小球性低色素性貧血 | ≦80 | ≦30 | 鉄欠乏性貧血、サラセミア、鉄芽球性貧血 |
| 正球性正色素性貧血 | 81〜100 | 31〜36 | 溶血性貧血、急性白血病、再生不良性貧血、腎性貧血 |
| 大球性高または正色素性貧血 | 101≦ | 31〜36 | 巨赤芽球性貧血、肝硬変、甲状腺機能低下症 |
赤血球の数値が高いとどんな病気が考えられる?
赤血球の数値が基準値より高い場合を多血症といい、脱水・喫煙・無呼吸症候群などが原因で高くなっている可能性があります。基準値より低い場合は貧血が疑われます。
多血症
多血症とは赤血球の数が多くなることで、血液が濃くなり、血管の中に血栓ができやすくなる状態です。血液検査ではヘモグロビン・ヘマトクリットの項目が高くなります。
相対的赤血球増加症、絶対的赤血球増加症、二次性赤血球増加症があります。
相対的赤血球増加症は、赤血球の数は変わらず、脱水などで血漿が減少し、赤血球が増加したように見える状態です。肥満や高血圧なども相対的赤血球増加症の原因になります。
治療法は脱水がある場合はその改善をします。肥満や高血圧があれば、それらのコントロールが必要です。
絶対的赤血球増加症は、真性多血症と呼ばれます。遺伝子の変異が起こり、赤血球を作る造血幹細胞の異常で赤血球が過剰に産生されることが原因です。初期では症状がないことが多く、進行すると頭痛やめまいなどの症状が現れます。
治療法は瀉血(血液を抜き取ること)と薬物療法です。
二次性赤血球増加症は、真性多血症以外の原因で赤血球が増加している状態です。
赤血球を作るホルモンの過剰分泌が原因で赤血球が過剰に産生され、赤血球が増加します。
喫煙は、体内の酸素が欠乏するため赤血球が増加します。
睡眠時無呼吸症候群や心不全など、血液中の酸素が不足した状態も赤血球が増加する原因です。
治療法は原因疾患の治療や禁煙を行います。
健康診断などで赤血球やヘモグロビンが高いと指摘されたり、頭痛・めまいなどの症状がある場合はすみやかに血液内科を受診しましょう。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群とは睡眠時に何度も呼吸が止まる病気です。睡眠中に酸欠状態になり、高血圧・心筋梗塞などの心血管疾患や多血症など様々な合併症を起こしやすくなります。
睡眠中に気道が狭くなったり、塞がることが原因です。
肥満・扁桃腺肥大・鼻炎などがあり、口呼吸・あごが小さい・飲酒などは気道が狭くなりやすく、発症のリスク因子になります。
症状はいびき・日中の眠気・夜間の頻尿・頭痛などです。
治療法は医療機関を受診し、睡眠時無呼吸症候群の検査結果によって診断されます。CPAPという空気を送る機械を睡眠時に装着する治療法やマウスピースによる治療法があります。
肥満の解消・鼻の病気の治療・横向きで寝るなど寝姿勢の工夫などで改善する場合もあるため、まず医療機関で相談をしてみましょう。
また、いびきや日中の眠気などの症状や肥満がある場合は、睡眠時無呼吸の検査や治療ができる内科、耳鼻科や睡眠外来などを受診することがお勧めです。
貧血
貧血とは赤血球やヘモグロビンが低下した状態です。診断基準はヘモグロビン値が男性13g/dL未満、女性12g/dL未満です。
症状は疲れやすい・息切れ・顔色が悪いなどですが、慢性的な貧血ではヘモグロビンが8〜9g/dL位まで自覚症状が表れない場合もあります。
貧血の種類は様々あり、赤血球指数で分類されます。
- 最も多い貧血の原因は、鉄欠乏性貧血です。鉄欠乏性貧血は体内の鉄不足が原因です。
- 巨赤芽球貧血は、胃切除後のビタミンB12の欠乏や吸収不良などによる葉酸欠乏が原因です。
- 腎臓病や甲状腺機能低下症などの慢性疾患や再生不良性貧血・白血病など血液の病気も貧血の原因になります。
治療は原因により異なります。鉄欠乏性貧血や巨赤芽球貧血は、食事療法や必要に応じて薬物療法を行います。貧血になる原因疾患がある場合はその治療を行います。
健康診断などで赤血球やヘモグロビンが低いと指摘されたり、疲れやすい・息切れ・顔色が悪いなどの症状がある場合は、すみやかに内科を受診しましょう。
赤血球の基準値についてよくある質問
赤血球の基準値はどれくらいが正常ですか?
伊藤 陽子(医師)
赤血球の基準値は男性4.35〜5.55×10⁶/μL、女性3.86〜4.92×10⁶/μLです。
赤血球の数値が低い場合はどうすれば改善できるのですか?
伊藤 陽子(医師)
赤血球の数値が低い場合には、貧血が考えられます。この貧血の治療は原因によって異なります。鉄欠乏性貧血や巨赤芽球貧血は、食事療法や必要に応じて薬物療法を行いますし、何らかの貧血になる原因疾患がある場合は、そちらの疾患の治療を行います。
赤血球の数値が高い場合、どのような病気が考えられますか?
伊藤 陽子(医師)
赤血球の数値が高い場合、考えられる病気は多血症です。赤血球は脱水や喫煙が原因で、みかけ上数値が上がる場合があります。造血ホルモンの上昇や遺伝子の変異で赤血球が過剰に作られ、多血症になっている可能性もあります。
赤血球の数値が高い場合はすみやかに医療機関を受診しましょう。
血液検査で赤血球が基準値以下の人は貧血の治療が必要ですか?
伊藤 陽子(医師)
貧血であると疲れやすい・息切れ・顔色が悪いなどの症状がみられることもあります。治療を行った方が良いでしょう。
血液検査の検査項目のRBCとWBCどちらが赤血球の数値ですか?
伊藤 陽子(医師)
血液検査の検査項目にある赤血球の数値はRBCです。RBCはred blood cell count、WBCはwhite blood cell countの頭文字です。覚え方は赤血球は赤=red、白血球は白=whiteと考えると覚えやすいでしょう。
まとめ 赤血球の基準値から高いと多血症、低いと貧血の疑いがあります!
赤血球の基準値から高いと多血症、低いと貧血の疑いがあります。どちらも初期の段階では自覚症状が表れない場合があります。合併症の予防や原因疾患を見逃さないためにも、赤血球の異常値を指摘されたら、すみやかに医療機関を受診しましょう。
「赤血球」の異常で考えられる病気
「赤血球」から医師が考えられる病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
高値の場合
血液内科の病気
低い場合
赤血球は基準値より高くても低くても多血症や貧血などの病気を発症している可能性があります。初期の段階では自覚症状がないことが多いです。放っておくと重症化する可能性があるため、健康診断などで赤血球の異常を指摘されたら、早めに医療機関を受診しましょう。




