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「ピロリ菌検査の費用」はご存知ですか?保険適用・自費診療の費用も医師が解説!

 公開日:2025/01/23
「ピロリ菌検査の費用」はご存知ですか?保険適用・自費診療の費用も医師が解説!

ピロリ菌検査の費用はいくら?Medical DOC監修医がピロリ菌検査の費用・種類・生命保険や保険適応の有無・自費診療の費用・検査の流れ・わかる病気などを解説します。

木村 香菜

監修医師
木村 香菜(医師)

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名古屋大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院や、がんセンターなどで放射線科一般・治療分野で勤務。その後、行政機関で、感染症対策等主査としても勤務。その際には、新型コロナウイルス感染症にも対応。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。

ピロリ菌検査の費用はいくらかかるの?

ヘリコバクター・ピロリ菌(ピロリ菌)とは、ヒトの胃に住みつく細菌のことです。胃・十二指腸潰瘍の原因となる他に、MALTリンパ腫という病気や胃がんのリスクになることが知られています。
今回の記事では、ピロリ菌に感染しているかどうかの検査にはどれくらいの費用がかかるのか、また、どのような検査があるのかについて詳しく解説していきます。

保険適用となった場合のピロリ菌検査の費用

ピロリ菌検査の保険適応となる方は、以下のいずれかのうち、ピロリ菌感染が疑われる場合のみとなります。
① 内視鏡検査または造影検査において胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の確定診断がなされた患者
② 胃MALTリンパ腫の患者
③ 特発性血小板減少性紫斑症の患者
④ 早期胃癌に対する内視鏡的治療後の患者
⑤ 内視鏡検査において胃炎の確定診断がなされた患者

ピロリ菌検査が保険適用となる際には、胃の内視鏡検査が必須となります。そして、内視鏡検査でピロリ菌感染を疑う場合に、尿素呼気試験や便検査などのピロリ菌検査を行う流れとなります。
そのため、ピロリ菌検査が保険適用になる際には、多くの場合には内視鏡検査と各種検査の費用などが合わさった金額となります。多くの方は3割負担で検査を受けられるため、通常は5,000円から7,000円程度の自己負担額となります。

自費診療となった場合のピロリ菌検査の費用

ピロリ菌検査が自費診療となる場合、費用は全額自己負担です。
この場合は、健診や人間ドックのオプションとしてピロリ菌検査を受ける場合が想定されます。費用はクリニックや病院によって異なりますが、通常は5,000円から20,000円程度かかります。費用は、検査方法や病院の規模などよっても差があります。
一方で、自治体によっては特定の年齢層の方において、ピロリ菌検査を公費補助で行っている場合があります。例えば、名古屋市では、市内の20歳以上39歳以下の方に対し、血中ピロリ菌抗体検査を無料で受けることができます。

生命保険が適用となった場合のピロリ菌検査の費用

通常、ピロリ菌検査に生命保険は適用されません。
生命保険は、入院や手術などに対して給付金を支払うものであり、検査に対する補償はありません。しかし、検査の結果として疾患が発見され、それに基づいて治療が行われた場合、生命保険の保障が該当する可能性はあります。
その場合には、各生命保険によって決められた金額が補助される場合があります。

ピロリ菌検査はどこでできるの?

ピロリ菌の検査は、さまざまな場所で受けることができます。まず、一般的な病院やクリニックでは、胃の不調や潰瘍の疑いがある場合に、ピロリ菌検査を受けることができます。特に消化器系の症状がある場合は、消化器専門のクリニックに相談するのがよいでしょう。
また、健康診断センターでも、ピロリ菌検査を行っている場合があります。検査項目に含まれている場合、健康診断の一環として簡単に検査を受けることが可能です。さらに、消化器疾患を専門に扱う医療機関でも、ピロリ菌検査を実施していることが多いため、専門的な診断や治療を希望する場合は、こうした施設を利用するのも一つの方法です。

ピロリ菌検査の種類

ここでは、ピロリ菌検査についてご紹介します。大きく分けると、胃の内視鏡による生検(せいけん、つまり胃の細胞や組織を採取する検査)が必須のものと、そうでないものに分かれます。

迅速ウレアーゼ試験(RUT)

迅速ウレアーゼ試験は、内視鏡検査中に採取した胃の組織を用いて行われます。ピロリ菌が持つウレアーゼという酵素の働きにより、胃の中の尿素が分解され、アンモニアが発生することを確認する検査です。
メリットは、この検査は特異度が高いので、迅速ウレアーゼ試験陽性の場合はピロリ菌陽性と判定してほぼ間違いないということです。また、結果が数時間程度と早くでることも利点です。
一方、デメリットとしては、抗生物質を服用していると正確な結果が得られないことがあるという点です。この場合には、抗生物質を検査前2週間は少なくとも中止することが望ましいとされています。

培養法

培養法は、内視鏡で採取した胃の組織を専用の培地で培養し、ピロリ菌の有無を確認する検査です。
メリットとして、検出したピロリ菌に対し、抗菌薬の感受性検査を行うことができることがあります。これによって、最適な抗生物質を選ぶための情報を得ることが可能です。
デメリットは、結果が出るまでに時間がかかること(通常数日から1週間程度)と、内視鏡検査が必要となることです。

鏡検法

鏡検法(きょうけんほう)は、内視鏡で採取した胃の組織からホルマリン固定組織標本を作成し、顕微鏡で直接観察する方法です。
メリットは、ピロリ菌の存在を直接目視できるだけでなく、胃の組織の状態も調べることができる点です。
デメリットは、培養法と同様に胃の内視鏡検査が必須である点です。

尿素呼気試験(UBT)

尿素呼気試験(UBT)は、13Cで標識した尿素が含まれた試薬を飲み、その後に吐く息の中に含まれる二酸化炭素を測定することでピロリ菌の有無を調べる検査です。
ピロリ菌がいる場合、ピロリ菌のウレアーゼが尿素を分解し、標識された二酸化炭素(13CO2が発生します。吐いた息の中の二酸化炭素に含まれている、13Cの増加率を測定します。
メリットは、痛みなどがない非侵襲的な検査であり、簡単で感度・特異度ともに高いことです。
デメリットは、抗生物質や制酸剤の使用が検査結果に影響を与える可能性があるので、事前の注意が必要である点です。

抗ピロリ菌抗体測定法

抗ピロリ菌抗体測定法は、血液中のピロリ菌に対する抗体を測定する方法です。過去または現在の感染を確認することができます。
メリットは採血だけで検査が可能なため、簡便であることです。デメリットは、過去の感染も検出されるので、現在の感染状況が正確にわからない場合があることです。また、キットによっては精度や特性に注意が必要です。

便中ピロリ菌抗原測定

便中ピロリ菌抗原測定は、便中に含まれるピロリ菌の抗原を測定する検査です。
便を提出することで、現在の感染を確認することができます。
メリットは、非侵襲的で簡便に検査ができることです。デメリットは、検体の採取や保存方法に注意が必要なことや、抗原が検出されにくい場合があることです。

ピロリ菌検査の目的と当日の流れ

それでは、ピロリ菌検査の目的や当日の流れ、注意すべき点などについて説明していきます。

ピロリ菌検査の目的

ピロリ菌検査の主な目的は、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、または胃がんなどの疾患のリスクを確認するためです。 ピロリ菌はこれらの疾患と密接な関係があることがわかっており、早期に発見して除菌治療を行うことで、症状の悪化を防ぐことができます。

ピロリ菌検査の前日の注意点

検査の前日には、抗生物質や制酸剤などの薬を服用している場合、検査結果に影響を考慮する可能性があるため、医師の指示に従って服薬を中止する場合があります。また、尿素呼気試験の場合は、食事や飲酒を避けるように指示されることもあります。

ピロリ菌検査の当日の流れ

当日は、検査の種類に応じて、内視鏡検査や呼気試験が行われます。内視鏡検査の場合、局所麻酔や鎮静剤が使用されることがあり、準備に少し時間がかかる場合があります。呼気試験や血液検査、便検査の場合は、比較的短時間で済むことが多いです。

ピロリ菌検査の当日の注意点

当日は、検査の種類に応じて飲食の制限があることや、鎮静剤を使用した場合は車の運転を控えるなどの注意点があります。また、内視鏡検査を受ける場合は、少し体に負担がかかるため、検査後は休憩を取るようにします。病院やクリニックによっても多少は異なりますが、約1時間は安静にして、状態をチェックすることがすすめられます。

ピロリ菌検査でわかる病気・疾患は?

ここではMedical DOC監修医がピロリ菌検査でわかる病気・疾患について解説します。

胃がん

胃がんは、胃の粘膜にできる悪性腫瘍で、発症原因の一つにピロリ菌感染があります。ピロリ菌に長期間感染することで、胃の粘膜に慢性的な炎症が引き起こされ、胃がんのリスクが高まります。早期の胃がんでは自覚症状が少ないことが多く、進行するにつれて食欲不振や体重減少、胃痛、吐血などの症状が現れます。
胃がんの治療は、がんの進行度によって異なり、内視鏡的切除や手術、化学療法、放射線治療が行われます。ピロリ菌感染が確認された場合は、除菌治療を行うことで再発リスクの軽減が期待されます。食欲不振や体重減少、持続する胃の痛みなどがある場合は、早めに病院を受診することが大切です。胃がんが疑われる場合は、消化器内科や消化器外科を受診し、内視鏡検査などの診断を受けることになります。

胃・十二指腸潰瘍

十二指腸潰瘍は、十二指腸の粘膜が損傷し、穴ができる状態を指します。主な発症原因としては、ピロリ菌感染とNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)の長期使用があります。ピロリ菌は、胃や十二指腸の粘膜を炎症させ、潰瘍を引き起こしやすくします。主な症状は、空腹時や夜間に悪化する腹痛です。
治療には、ピロリ菌感染が確認された場合に除菌治療が行われるほか、酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬(PPI)が処方されます。強い痛みや吐血、黒い便が見られた場合は、消化管出血や穿孔の可能性があるため、速やかに病院を受診することが必要です。十二指腸潰瘍が疑われる場合は、消化器内科を受診し、内視鏡検査を受けることが一般的です。

慢性胃炎

慢性胃炎は、長期間にわたって胃の粘膜が炎症を起こしている状態で、その主な原因としてピロリ菌感染が挙げられます。ピロリ菌は、胃粘膜を萎縮させ、胃の機能を低下させることがあります。また、ストレスや不規則な食生活、過度な飲酒や喫煙も、慢性胃炎の原因となることがあります。
ピロリ菌が原因の慢性胃炎の場合、除菌治療を行うことで胃の炎症を改善し、さらなる悪化を防ぐことができます。また、胃酸を抑える薬や生活習慣の改善も治療において重要な要素です。胃の不快感や胃もたれ、食欲不振が長期間続く場合は、早めに消化器内科を受診し、ピロリ菌検査や内視鏡検査を受けることをおすすめします。

「ピロリ菌検査の費用」についてよくある質問

ここまでピロリ菌検査の費用などを紹介しました。ここでは「ピロリ菌検査の費用」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

ピロリ菌検査は定期的に受診した方がいいのでしょうか?

木村 香菜木村 香菜 医師

ピロリ菌検査を定期的に受ける必要はありません。ピロリ菌は一度感染すると、自然に消失することがほとんどないため、一度感染が確認された場合は除菌治療を行うことが推奨されます。除菌が成功したかどうかを確認するためにフォローアップ検査を行いますが、その後に再感染のリスクが低ければ、定期的な検査は不要です。ただし、胃がんや胃潰瘍の既往がある方、またはピロリ菌の再感染リスクが高い環境にいる方は、必要に応じて医師と相談しながら再度検査を検討することが望ましいです。

健康診断でピロリ菌に感染していることはわかりますか?

木村 香菜木村 香菜 医師

通常の健康診断では、ピロリ菌感染の検査は含まれていないことが多いです。ただし、オプションとしてピロリ菌検査を追加できる健康診断もあります。ピロリ菌検査を希望する場合、健康診断の際に追加項目としてリクエストするか、消化器内科を受診して専門的な検査を受けることが推奨されます。尿素呼気試験や血液検査、便中抗原検査など、簡便な方法で感染の有無を確認できますので、胃の不調がある場合には検査を検討するとよいでしょう。

編集部まとめ ピロリ菌検査の費用は保険適用になる場合もある!

ピロリ菌は、胃の病気に関わる重要な原因です。症状がある方は、早めに検査を受け、適切な治療を行うことが大切です。検査費用について不安な場合でも、保険適用や公的補助を活用できることがあるため、まずは医療機関で相談してみてください。自分の健康を守るためにも、ぜひ検査を検討してみてください。

「ピロリ菌検査」の異常で考えられる病気

「ピロリ菌検査」から医師が考えられる病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

消化器内科の病気

血液内科の病気

  • 特発性血小板減少性紫斑症

これらの病気が「ピロリ菌検査」で異常が見つかった場合に考えられる主な疾患です。異常が検出された際は、各専門科での診断と治療が推奨されます。

この記事の監修医師